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スタートアップのアイデア選定ガイド

 スタートアップのアイデア選定ガイド

ディープテックのアイデアが思いついたときに、それがスタートアップになりうるのかどうかを考える際のガイドです。「リスクが高いもの」「人が欲しがるもの」「スケールするもの」の三つの観点で条件を整理しています。

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Takaaki Umada / 馬田隆明
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September 01, 2022
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Transcript

  1. Takaaki Umada / 馬田隆明
    東京大学 FoundX(インセプションプログラム)
    https://foundx.jp/
    Deep Tech スタートアップ入門 (3)
    スタートアップの
    アイデア選定ガイド💡

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  2. 2
    あまりスタートアップのことを
    知らない方向けのスライドです

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  3. 3
    スタートアップは急成長する
    急成長するためには
    いくつか考えるべきことがある

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  4. スタートアップのアイデアの 3 つのガイド
    スタートアップとして急成長するためには、アイデアとして
    以下の 3 つの基準を満たす必要があることが多い。
    スタートアップのアイデア、プロダクト、チーム、実行力 パート1 /スタートアップ = 成長 4
    リスクの高い
    アイデア
    人が欲し
    がるもの
    スケール
    するもの

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  5. ① リスクの高いアイデアに挑む
    スタートアップは、大企業が手を出さないような不確実性の高
    い領域に挑むことで、急成長するための機会を掴む。
    5
    リスクの高い
    アイデア
    人が欲し
    がるもの
    スケール
    するもの

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  6. ビジネスには主に技術リスクと市場リスクがある
    様々な事業が異なるリスクを取っている。
    6
    技術リスク
    市場リスク
    🩺医療系
    💊創薬 🤖ロボット系
    📱アプリ
    🌎Web/SaaS
    📕規制系 🧰新ハードウェア
    👨‍💼コンサル 📰メディア
    🍆八百屋
    💻半導体
    ⚡エネルギー
    スモールビジネス
    の領域

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  7. 7
    明らかなビジネス機会なら
    資源の豊富な大企業が強い
    スタートアップは
    他の人が恐れてしまうぐらいの
    リスクの高いアイデアに挑む

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  8. 「悪く見えるけれど、実は良いアイデア」を狙う
    スタートアップのアイデア、プロダクト、チーム、実行力 パート1 8
    悪く見える
    アイデア
    良い
    アイデア
    「悪く見えるけれど実は良いアイデア」
    「リスクと不確実性が高すぎるアイデア」
    をあえて狙うのがスタートアップ

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  9. 急激な変化と不確実性によって生まれる機会を活かす
    以下のような変化の兆しがあれば、スタートアップとして挑戦
    すやすい時期が来ている可能性がある。
    9
    ⬆️ 性能の向上
    一部の技術の性能が向上す
    ることで、できなかったこ
    とができるようになる。
    例)CPU、通信帯域
    🔃 社会情勢
    社会情勢が急に変わること
    で、ニーズや価値のものさ
    しが変わる。
    例)経済安保、COVID-19
    ⬇️ コストの低下
    費用や学習コストが大幅に
    低下することで、これまで
    と違う使い方が可能に。
    例)太陽光発電、機械学習
    ↔️ 政策転換
    政策や規制が変わって可能
    なことが増えたり、お金が
    流れ込んだりする。
    例)規制、脱炭素
    ⤴️ 普及
    デバイス等が短期間で急激
    に普及することで人々の生
    活や行動が変わる。
    例)スマートフォン
    ↗️文化の変化
    社会規範や文化が変わって
    過去はやりづらかったこと
    が普通になる。
    例)シェアリング

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  10. 技術の変化だけではなく、社会の変化にも目を向ける
    科学であれば技術の変化が新しい機会をもたらすが、ビジネス
    の場合は技術と社会の両方から機会を得ることもできる。
    10
    ⬆️ 性能の向上
    一部の技術の性能が向上す
    ることで、できなかったこ
    とができるようになる。
    例)CPU、通信帯域
    🔃 社会情勢
    社会情勢が急に変わること
    で、ニーズや価値のものさ
    しが変わる。
    例)経済安保、COVID-19
    ⬇️ コストの低下
    費用や学習コストが大幅に
    低下することで、これまで
    と違う使い方が可能に。
    例)太陽光発電、機械学習
    ↔️ 政策転換
    政策や規制が変わって可能
    なことが増えたり、お金が
    流れ込んだりする。
    例)規制、脱炭素
    ⤴️ 普及
    デバイス等が短期間で急激
    に普及することで人々の生
    活や行動が変わる。
    例)スマートフォン
    ↗️文化の変化
    社会規範や文化が変わって
    過去はやりづらかったこと
    が普通になる。
    例)シェアリング










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  11. 11
    リスクの高い挑戦をするからこそ
    ベンチャーキャピタルからの
    資金調達もできる

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  12. 12
    詳しくは以下のスライドで
    https://speakerdeck.com/tumada/sutatoatupute-you-falsekao-efang-aidea-shi-chang-zi-jin-diao-da-hazimetefalsesutatoatupu-2

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  13. ② 人が欲しがるものを作る
    ビジネスを行う上では、人が欲しがるものを作り、それを提供
    することで対価を得る必要がある。
    スタートアップ = 成長 13
    リスクの高い
    アイデア
    人が欲し
    がるもの
    スケール
    するもの

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  14. 14
    製品やビジネスの多くは
    顧客の課題を解決することで
    対価を得る
    (Deep Tech は B2B が多いので特にその傾向が強い)

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  15. 課題を解決することで、価値を生み、対価を得る
    15


    課題 解決策
    「課題」を「解決」することで「価値」を生むことができる。
    両者のフィットが大きいほど、生まれる価値は大きくなる。

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  16. Deep Tech は解決策があって、課題を探すことが多い
    16
    課題 解決策
    解決策のコアとなる技術がすでにあり、その技術に合う課題を
    探すことが多い。
    どの課題に取り組む
    かが決まって
    いないことが多い
    解決策のコアとなる
    技術はすでにある

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  17. Deep Tech が課題解決のときに注意するべきこと
    ディープテック・スタートアップは解決策が決まっていて、
    課題を選ぶ場合が多い。その際に注意するべきことは以下。
    17
    ① 顧客の具体的な課題を選ぶ
    メディア等で指摘される社会課題や、抽象
    的な市場の課題ではなく、お金を払ってく
    れる「顧客の課題」を選ぶこと。
    論文だと「●●という社会課題を解決でき
    るかもしれない」などでも構わないが、ビ
    ジネスの場合は、顧客の具体的かつ直近の
    課題でなければ対価を貰えない。
    ② ベストな解決策になる
    自社の技術や製品が課題解決できたとして
    も、「その他のたくさんの解決策の中で、
    これがベスト」と評価されなければ選ばれ
    ない。
    「確かにその技術で課題は解決できるけれ
    ど、他の技術のほうがより安く、より多く
    解決できる」のであれば、顧客は別の技術
    を使う(そしてそういうことは Deep Tech
    ではとても多い)

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  18. 18
    SISP はとても大変
    課題を探している解決策
    (Solution in Search of a Problem)
    Deep Tech スタートアップは
    課題を探している解決策になりがち。でも……

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  19. 19
    Deep Tech スタートアップは
    “今の技術で楽に解けそうな
    課題や応用先”
    を探して右往左往した結果、結局
    “難しいし時間はかかるけれど
    ストレートで大きな課題”
    に戻ってくることも多い

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  20. 20
    詳しくは以下のスライドで
    https://speakerdeck.com/tumada/liang-ike-ti-woxuan-bu-jia-zhi-hake-ti-dejue-maru

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  21. ③ スケールするものを作る
    スケールさせることができ、かつ大規模になる必要がある。
    21
    リスクの高い
    アイデア
    人が欲し
    がるもの
    スケール
    するもの

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  22. 「スケールする」ための条件
    スケールするためには、「スケールのしやすさ」と「スケール
    したときに十分に大きくなるか」を考える必要がある。
    22
    ① スケール自体の容易さ
    ソフトウェアの場合、複製にコストがほと
    んどかからないため、技術面では比較的楽
    (もちろん難しいことも多い)。
    Deep Tech の場合は、スケールするために
    様々な要素(戦略や技術コスト等)を勘案
    しなければならなくなり、スケールそのも
    のが難しく、そのための時間もかかる。
    ② スケール後の最大値
    スタートアップは、当たる可能性が小さく
    ても、当たったときの最大値が大きい必要
    がある。
    市場規模や売上の推定を事前に行っておく
    ことで、スタートアップとなれるかがある
    程度検算できる。

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  23. 特にスケールしたときの最大値には気を付ける
    23
    ① スケール自体の容易さ
    ソフトウェアの場合、複製にコストがほと
    んどかからないため、技術面では比較的楽
    (もちろん難しいことも多い)。
    Deep Tech の場合は、スケールするために
    様々な要素(戦略や技術コスト等)を勘案
    しなければならなくなり、スケールそのも
    のが難しく、そのための時間もかかる。
    ② スケール後の最大値
    スタートアップは、当たる可能性が小さく
    ても、当たったときの最大値が大きい必要
    がある。
    市場規模や売上の推定を事前に行っておく
    ことで、スタートアップとなれるかがある
    程度検算できる。
    最大値を初期から
    意識しておく

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  24. 24
    スタートアップを目指すなら
    まずは最初の 10 年で
    100 億円以上
    の売上になるかを
    初期から考えておく

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  25. 100 億円達成のために必要な顧客単価と顧客数
    年間売上 100 億円を目指すなら、どの程度の顧客単価と顧客数
    が必要かを計算してみる。
    The Angel VC: Five years later: Five ways to build a $100 million SaaS business (christophjanz.blogspot.com) 25
    顧客単価(年) 必要な顧客数 スタートアップの例 顧客層
    100 億円 1 社 SpaceX 政府、エンタープライズ
    10 億円 10 社 Palantir 政府、エンタープライズ
    1 億円 100 社 Workday エンタープライズ
    1000 万円 1000 社 Snowflake 中~大企業
    100 万円 10,000 社 Slack 小~中企業
    10 万円 100,000 社 Mailchimp 個人~小規模企業
    1 万円 1,000,000 人 Spotify 個人
    1000 円 10,000,000人 デバイスあたりのライセンス 個人、デバイス
    100 円 100,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス
    10 円 1,000,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス

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  26. 顧客単価ごとに異なる難しさがある
    The Angel VC: Five years later: Five ways to build a $100 million SaaS business (christophjanz.blogspot.com) 26
    顧客単価(年) 必要な顧客数 スタートアップの例 顧客層
    100 億円 1 社 SpaceX 政府、エンタープライズ
    10 億円 10 社 Palantir 政府、エンタープライズ
    1 億円 100 社 Workday エンタープライズ
    1000 万円 1000 社 Snowflake 中~大企業
    100 万円 10,000 社 Slack 小~中企業
    10 万円 100,000 社 Mailchimp 個人~小規模企業
    1 万円 1,000,000 人 Spotify 個人
    1000 円 10,000,000人 デバイスあたりのライセンス 個人、デバイス
    100 円 100,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス
    10 円 1,000,000,000 個 デバイスあたりのライセンス デバイス
    営業を雇えないが、顧客にとっては高価格で難しい価格帯
    業務委託なら稼げてしまうが、スケールしづらい価格帯

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  27. 27
    Deep Tech を扱う企業は
    業務委託や実証実験で
    十分に稼げてしまうことも多いので
    スケールのための製品開発が
    中々進まない場合も……
    そうなると「急成長する」スタートアップではなくなってしまいがち
    ※ 技術によっては受託等を続けてタイミングを待つ場合もある
    ※ 必ずしもスタートアップという道を選ばなくても良い

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  28. ※ 大学発企業は約 20% しか売上 1 億円を超えてない
    ほとんどの大学発ベンチャーは売上 1 億円を超えていない。
    どういった企業になりたいか次第だが、スタートアップを狙う場合は注意する。
    大学発ベンチャー(METI/経済産業省) 28
    2021 年の売上
    大学発ベンチャーで一番多いのは
    1000 ~ 5000 万円未満の売上の企業。
    売上の経年変化
    しかも 1 億円以上の売上の企業の割合は
    全体の中で年々減少傾向にある。
    (※ 企業の報告数は 330 から 430 で毎年変わっている)
    22% 21%
    18% 18% 17%
    0%
    10%
    20%
    30%
    2017 2018 2019 2020 2021
    売上 1 億円以上の大学発ベンチャーの割合 (%)
    79
    21
    32
    15
    109
    38
    57
    1
    0
    20
    40
    60
    80
    100
    120

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  29. 29
    大きくて難しくてリスクの高い
    課題と市場を選ばないと
    スタートアップ的な
    スケールもしづらい

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  30. まとめ: アイデア選定の 3 つの条件
    それぞれの問いに Yes と答えられれば、スタートアップになり
    うる。
    スタートアップのアイデア、プロダクト、チーム、実行力 パート1 /スタートアップ = 成長 30
    リスクの高い
    アイデア
    人が欲し
    がるもの
    スケール
    するもの
    他の人が恐れるぐらい
    十分にリスクの
    高いアイデアか?
    最終的に
    スケールするか?
    顧客の課題に対す
    る解決策であり、
    ベストなものか?

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  31. FoundX の紹介
    31

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  32. FoundX - 東京大学のスタートアップ支援プログラム
    32
    東京大学 FoundX は東京大学 産学協創推進本部の下部組
    織です。東京大学 本郷キャンパスの近くに 3 つの施設を構
    え、起業志望者向けのプログラムを複数提供しています。
    投資は行いませんが、無償での個室貸与やプログラムの提
    供、起業家コミュニティへの参加を支援します。
    🔥
    興味
    情熱
    Fellows (9 か月) Founders (9 か月)
    👨‍👩
    ‍👧 ‍👦
    共同創業者
    の説得
    💰
    有利な
    資金調達
    🤝
    フル
    コミット
    🏆
    ビジネス
    実績
    📝
    初契約
    初売上
    💻🤖
    製品開発
    と改善
    💲
    助成金や
    コンテス

    賞金の獲

    Deep Tech 起業ゼミ (9 か月)

    試行
    錯誤
    🌱
    アイデア
    の種
    💡
    検証された
    アイデア
    📚
    起業家の
    基礎知識
    &スキル
    🔨
    プロト
    タイプ
    🙎
    顧客イン
    タビュー

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  33. プログラムの対応表
    33
    Deep Tech
    起業ゼミ
    (毎月 10 日締切)
    Deep Tech 系で
    アイデアを探している
    卒業生・研究者の個人
    技術を持っていて
    助成金を獲得したい
    研究者の個人
    Fellows
    Program
    (毎月 10 日締切)
    Deep Tech 系のみの支援
    アイデアを持っていて
    資金調達をしたい
    卒業生のチーム
    Founders
    Program
    (3/1, 6/1, 9/1, 12/1 締切)
    アイデアは何でも OK
    (Deep Tech から B2C まで全てが対象)

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  34. スライド著者 & FoundX 運営
    馬田隆明 (東京大学 FoundX ディレクター)
    University of Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual
    Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリス
    トとしてスタートアップ支援を行う。スタートアップ向けのスライド、
    ブログなどの情報提供を行う。
    サイト: https://takaumada.com/
    34
    スタートアップの
    方法論の基礎
    Amazon
    (2017年3月)
    起業環境の重要性と
    アクセラレーター
    の設計方法
    Amazon
    (2019年4月)
    スタートアップの
    公共や規制との
    付き合い方
    Amazon
    (2021年1月)
    スタートアップに
    ついてのスライド
    Slideshare
    SpeakerDeck

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  35. 35
    https://foundx.jp/
    ご応募お待ちしています
    😊

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