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エンジニアリング マネージャーの 成長の道筋とキャリア id:daiksy (粕谷大輔) 2025-09-17 Developers Summit 2025 KANSAI A-5 1

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はてなの技術組織 | マトリクス組織 3 デザイングループ エンジニアは開発グループと技術グループの両⽅に所属します。開発グループが縦軸、技術グループは横軸 の組織で、技術グループはエンジニアの成⻑と技術の展開を担当します。 エンジニアの⼈数は100名強です。 はてなブログ マンガアプリ toitta Mackerel Des Des Des Des 技術グループ Eng Eng Eng Eng

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はてなの技術組織 | マトリクス組織 4 デザイングループ エンジニアは開発グループと技術グループの両⽅に所属します。開発グループが縦軸、技術グループは横軸 の組織で、技術グループはエンジニアの成⻑と技術の展開を担当します。 エンジニアの⼈数は100名強です。 はてなブログ マンガアプリ toitta Mackerel Des Des Des Des 技術グループ Eng Eng Eng Eng daiksyは ここを見ているので 「技術グループ長」

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エンジニアリングマネージャ ● 一口にエンジニアリングマネージャといっても... ○ 10人のチームのEMと100人の技術組織のEMなど規模の違い ○ 会社や事業のフェーズによる期待されるものの違い 5

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例) EMの求人(職務内容) ● はてな ○ プロダクト開発チームの成長を通して、会社全体の業績向上への貢献 ○ 事業計画を踏まえた、育成・配置の検討 ○ メンバーの目標設計、評価 ○ 上記事柄に対してのメンバーへの技術的、メンタリングなどのあらゆ る支援 ○ エンジニアの採用業務 6

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例) EMの求人(職務内容) ● Deep Researchによる職務内容の類型 ○ プレイングマネージャー型 ■ EMでありながら自ら開発の現場に立ち、実装や設計などの業務も担うタイプで す。小規模な組織や受託開発企業、新規事業立ち上げ期のスタートアップに多く 見られ、チームリーダー兼エンジニアとして振る舞います。 ○ ピープルマネージャー型 ■ メンバーの育成や評価、採用など人材マネジメントに主眼を置くタイプのEMで す。中~大規模のプロダクト企業で多く、技術的な細部よりも組織としてエンジ ニアが最大の成果を発揮できる環境づくりにフォーカスします。 7

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例) EMの求人(職務内容) ● Deep Researchによる職務内容の類型 ○ プロセス推進・ブリッジ型 ■ 開発プロジェクトの円滑な推進と開発プロセス整備に注力するタイプです。複数 チームの進捗管理やタスク割り当て、スケジュール設計、品質管理といったプロ ジェクトマネジメント業務が中心となります。 ○ 技術戦略リード型 ■ 技術選定やアーキテクチャ設計など技術戦略の策定・実行を主導するタイプのEMで す。新規プロダクト開発や高度な技術領域(AI、クラウドネイティブなど)を扱う 企業で見られ、テックリード的役割とマネジメントを兼ねます。 8

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エンジニアリングマネージャーのキャリア ● 規模や仕事の違いに加えて、キャリアの違いもある ○ EM1年目の人と、10年目の人の仕事の違い ○ そもそもどうやって学ぶのか? 9

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エンジニアリングマネージャーのキャリア ● 社内のEMが情報共有する会での、ある人の感想 ○ 「認定スクラムマスター研修を受講したが、スク ラムマスターになるための学習は何を学べばよい かがわかりやすかった」 ○ → なにを勉強したらEMになれるのか難しい 10

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このセッションでは ● はてなで作成しているEMのキャリアラダー や、グレードごとの評価軸を紹介します ● EMの入口としてdaiksyが考える学習の一歩を 紹介します ● EMの育成や成長の参考に 11

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EMの4領域 ● 広木大地さんによるEMの活動の分類 ○ ピープルマネジメント ○ プロジェクトマネジメント ○ テクノロジーマネジメント(プラットフォームマネジメント) ○ プロダクトマネジメント ● はてなでもこれを参考にEMのスキルを整理しました 12

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ピープルマネジメント ● 育成 ● 採用 ● メンタリングとコーチング ● 組織内の”人の関係性”の整え ● カルチャーの醸成 13

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プロジェクトマネジメント ● 開発の不確実性のコントロール ● スケジュール・スコープ・リスク管理 ● 開発プロセスに対する熟達 ● リーン・アジャイル 14

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テクノロジーマネジメント ● 開発技術についての知識・経験 ● DevOps ● 技術的負債のマネジメント ● ソフトウェア品質 ● 開発生産性 ※広木さんは最近ここを「プラットフォームマネジメント」として「4つのP」という言い方をされているが、はてな社内では以前からの表現であ る「テクノロジーマネジメント」という名前で扱っている 15

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プロダクトマネジメント ● 事業とエンジニアリングの橋渡し ● プロダクトの価値にフォーカスした仕組みづくり ● ソフトウェア要求 / 仮説・検証サイクル ● マーケティング・セールスのエンジニアリングによる支援 ● UX/ユーザビリティ ● プロダクト倫理/法務理解 16

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17 引用元: エンジニアリングマネージャ/プロダクトマネージャのための知識体系と読書ガイド (https://qiita.com/hirokidaichi/items/95678bb1cef32629c317) ● すべてをカバーするのは難しい ● ピープルマネジメントとテクノ ロジーマネジメントを軸に、事 業やチーム事情に応じて他の領 域を習得していく EMのカバー範囲

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EMが扱う4領域と個性 ● 4領域のどの分野が得意か = 「EMの個性」 ● 最初に紹介したEMの求人の類型も4領域のいずれに期 待を強く持つかで変わっている 18

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EMのキャリア ● EMは元エンジニアにしかなれない職種だろうか? ○ デザイナー出身のEM ○ プランナー出身のEM 19

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EMのキャリア ● EMは元エンジニアにしかなれない職種だろうか? ○ いても良いと考えている ■ プロダクト開発チームでエンジニアとの開発を長く 経験していて、開発プロセスを熟知しているデザイ ナーはEMになれるのでは? ■ 4領域ではテクノロジーよりもプロダクトやプロ ジェクトの領域に強いタイプ 20

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EMのキャリア ● 4領域のスキルの掛け合わせによってEMの能力を考える ● スキル分類によってはEMの先のマネージャーへの分岐もある 21

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ロールモデルイメージ(例) 22 PdMタイプ ピープル: LV 1 プロジェクト: LV 3 プロダクト: LV 3 テクノロジー: LV 2 PdM | EM(見習い) ピープル: LV 3 プロジェクト: LV 5 プロダクト: LV 5 テクノロジー: LV 2 EM ピープル: LV 7 プロジェクト: LV 5 プロダクト: LV 7 テクノロジー: LV 4 PdM ピープル: LV 5 プロジェクト: LV 8 プロダクト: LV 10 テクノロジー: LV 5 PjMタイプ ピープル: LV 1 プロジェクト: LV 3 プロダクト: LV 1 テクノロジー: LV 3 PjM | EM (見習い) ピープル: LV 3 プロジェクト: LV 5 プロダクト: LV 3 テクノロジー: LV 3 EM ピープル: LV 6 プロジェクト: LV 5 プロダクト: LV 3 テクノロジー: LV 3 PjM ピープル: LV 3 プロジェクト: LV 10 プロダクト: LV 4 テクノロジー: LV 4

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はてなのEMの能力分布 23 daiksy: プロジェクト, ピープルが得意 onk: テクノロジー特化, ピープルも得意 yigarashi: バランス良く得意 4領域の得意分野で個性が出る。はてな全体、あるいは チーム全体でケイパビリティが埋まれば良い。

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4領域それぞれのレベル感 24 レベル 影響範囲 ピープルマネジメント プロジェクトマネジメント テクノロジーマネジメント プロダクトマネジメント LV1~2 自分・ペア相手 1on1実施、相談相手になる タスク見積・進捗の可視化 見習いスクラムマスター コードレビュー・開発支援 技術的議論に参加 プロダクトの基本仕様理解 QA観点で貢献 LV3~4 部署内の4~5人 (チーム全体) チーム目標への巻き込み 育成・評価参加 チームの計画立案とリスク管理 スクラムマスターとして責任を 負える 技術的意思決定への貢献 生産性指標を活用 チームで仮説検証をまわせる ユーザー課題の把握 LV5~6 部署全体 10人以上 評価・目標管理の責任を負う チーム構造の改善・カルチャー 醸成 ステークホルダー連携 複数チームの連携調整 開発プロセス方針策定 技術的負債管理の主導 DevOps・SRE方針整備 事業目標との接続 プロダクトロードマップ支援 LV7~8 複数チームあるいはグループ 全体 組織横断での人材育成 育成、採用戦略設計 グループ単位の計画/スコープ 管理 大型案件のリスク統括 技術戦略立案・実行推進 横断技術課題への対処 プロダクトの成長戦略への参画 PM・UXチームとのプロセス設 計 LV9~10 本部全体/会社全体 組織戦略/人事制度設計への 関与 全社カルチャー変革の推進 開発体制の設計 経営層との技術意思決定支援 技術ブランド形成 長期技術投資や研究開発方針 事業戦略とプロダクト戦略の融 合 意思決定の場での技術的示唆

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活用例 25 レベル 影響範囲 相当グレード ピープルマネジメント プロジェクトマネジメン ト テクノロジーマネジメン ト プロダクトマネジメント LV1~2 自分・ペア相手 グレード1~2 LV3~4 チーム内の4~5人 (ユニット全体) グレード3 LV5~6 チーム全体 10人以 上 グレード4 LV7~8 複数チームあるい はグループ全体 グレード5 LV9~10 本部全体/ グレード6以上 ● 採用要望 ○ 〇〇チームのEM ○ M5相当 ○ ラダーの期待位 置は⭐マーク ⭐ ⭐ ⭐ ⭐

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はてなでのEMの評価基準 会社として期待する一般的なマネージャーとし てのスキル + EM4領域で現れる個性 = EMの能 力 26

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はてなでのEMの評価基準 ● 以下の項目ごとに、グレードごとの期待を言語化 ○ 一般的なマネージャースキルの評価項目 ■ 戦略 ■ 実行 ■ ピープルマネジメント ○ EMの個性 ■ 以下の領域の掛け合わせ ● プロダクトマネージメント ● テクノロジーマネージメント ● プロジェクトマネージメント 27

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はてなでのEMの評価基準 28

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はてなでのEMキャリアラダー 29 ● EMの個性を4領域の凹凸で表現 ● 会社としてのEMへの期待を評価軸で表現 ● それぞれのグレードごとの期待の置き方でキャ リアのラダーを示している

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EMのスキル習得・学習 ● EMを目指すには何を学べばよいだろう? 30

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EMのスキル習得・学習 ● なによりもエンジニアリングのスキル ○ プロダクトを実際にリリースするためのスキル ■ ※ 非エンジニアからのEMはその職種の仕事を軸として開発プロセ ス全体に習熟していくことになるだろう 31

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EMのスキル習得・学習 ● スクラムマスタースキル ○ スクラムマスターとしての熟達はEMの登竜門として良い ○ VUCA(変動,不確実, 複雑, 曖昧)な時代に適用するための アジャイルなプラクティスを体系的に学ぶスキルである ○ 書籍や研修など学習のための体系化がなされていて学び やすい ○ #ScrumMasterWay 32

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#ScrumMasterWay ● Zuzi Šochováが提唱するグレートスクラムマ スターへの3つのレベル 33

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#ScrumMasterWay ● レベル1: 私のチーム ○ ここでのスクラムマスターはチームメンバーのようなものです。開発チー ムの視点でものごとを見ていて、いろいろなアジャイルプラクティスを説 明したり、スクラムミーティングをファシリテートしたり、妨害事項を取 り除く手助けをしたり、チームをコーチしたり、すごいチームにしたりし ます。 34 引用元: https://scrummasterway.com/scrummasterway-ja.html

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#ScrumMasterWay ● レベル2: 人間関係 ○ スクラムマスターはチームをもっと高い視点から見ていて、チーム自身が 外界との関係をより良くするための、ティーチング、メンタリング、ファ シリテーション、コーチングのスキルに焦点を当てます。プロダクトオー ナーに優れたビジョンを構築するよう指導したり、他のチームとの会話を 促したりします。自己組織化された大きなエコシステムを構築します。 35 引用元: https://scrummasterway.com/scrummasterway-ja.html

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#ScrumMasterWay ● レベル3: システム全体 ○ スクラムマスターは会社全体を1つのシステムとして捉え、10,000フィー トの距離から俯瞰します。組織の改善点を探します。サーバントリーダー として、他の人がリーダーになり、コミュニティを育て、人間関係を修復 する手助けをすることでしょう。アジャイルの価値を組織レベルに引き上 げます。 ● (引用者注: このレベルのスクラムマスターは、組織によっては別の役割を名 乗っているだろう。その一つがたとえばEM) 36 引用元: https://scrummasterway.com/scrummasterway-ja.html

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#ScrumMasterWay ● 優れたスクラムマスターとして影響力を外に広 げ、そのためのスキルを習得していくことで、 EMのプロジェクトマネージメントやプロダク トマネージメントのスキルを獲得するのがわか りやすいだろう 37

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EMとアジャイルのスキル ● 元サイボウズの天野さんとの企画でも「アジャイルはエン ジニアリングマネージャー(EM)の強力な武器になる」 として、スクラムマスターの経験はマネージャーの土台に なるとの共通見解 38 https://findy-code.io/engineer-lab/scrummaster-letters07

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まとめ ● EMの4領域の凹凸はEMの個性である ● EMの個性+一般的なマネージャーへの期待 = EMの評価 ● 上記の言語化をグレードごとに行い、ラダーを表現 ● EMの学習の手がかりはスクラムマスターとしての学習 39