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内製化組織の歩みとこれからの課題。-技術アーキテクチャと組織アーキテクチャ-

Avatar for Masatsugu Matsushita Masatsugu Matsushita
November 15, 2025
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 内製化組織の歩みとこれからの課題。-技術アーキテクチャと組織アーキテクチャ-

本気のエンジニアリングチームを作る、という決意のもと、大企業/金融というフィールドでプログラマー集団として
自分たちでアーキテクチャを選択し、DXへの貢献を目指して走ってきました。
これまで構築してきたシステムを概観するとともに、組織の大規模化に伴って、さまざまな課題があり、共通プラットフォームや分業、プロセスなどの必要性も見えてきました。
一方で、硬直した組織は技術的挑戦を難しくしたり、「インフラのことは知らない」のような官僚主義的な文化が生まれる恐れもあります。
これらに対して私たちはどのように解決しようとしているのか、現時点での考え方を共有したいと思います。

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Masatsugu Matsushita

November 15, 2025
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Transcript

  1. 2 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 目次 1.

    エンジニア視点から内製化を振り返る 2. 技術アーキテクチャ 3. 直面している課題とこれからの挑戦
  2. 3 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 自己紹介 Javaプログラマー。ソフトウェアアーキテクト

    所属: 株式会社クレディセゾン エンタープライズ開発センタ 経歴: 文系大学院 -> IT研修講師 -> SI屋 -> フリーランス -> 株式会社クレディセゾン エンジニア 趣味: 演劇/読書(歴史書)/柔術(柔道)/最近料理に目覚めました。 クレディセゾンでの仕事: • 基幹システム(オープンGW、Netアンサー)内製化/クラウドリフト • AWS上にPCI-DSS準拠基盤構築。 • 現在は主にコールセンターの音声基盤クラウド化に従事。
  3. 4 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 会社紹介 “私たちは「セゾン・パートナー経済圏」の構築と「総合生活

    サービスグループへの転換」を目指し、グローバルなノンバ ンクへの挑戦をしていきます。” カード事業だけでなく、ファイナンス事業も含めた総合サー ビス企業を志向。近年はグローバルでの事業も。
  4. 5 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL クレディセゾンの内製化組織 •

    テクノロジーセンター • 2019 年 CTO直轄で、最初に立ち上がった。 • 当初は新規サービス、後に、スマホアプリとアプリのバックエンドの内製 化を行う • 既存の情報システムとは別の組織として活動 • ベンチャー出身者が多かった • エンタープライズ開発センタ • 社内システムの改善や基幹/周辺システムの内製化を目指して、エンタープ ライズ畑(SIや情報システム子会社出身)のエンジニアを採用して発足。テ クノロジーセンター内の1チームだったが、現在は分離。 • JJUG登壇経験者が4人います。。。 • 今日は主にこちらの部署の話。
  5. 6 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL We are

    hiring カジュアル面談やってます!
  6. 9 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 入社前 •

    元々現場のプログラマーとしてスタートしてなかった。 • 講師として勉強しながら、できる限りを教えていた。 • Java、アーキテクチャ、テスト技法、アジャイル • 経験がない分、知識で補い、社内のツールなどを自作していた • 研修という形でプロジェクトマネジメント/ステークホルダーマネジメントを経験 • システムインテグレータのアーキテクトとして、プロジェクトを経験。 • プロジェクト自体はなんとかうまくいったが、、、「もっとできる」とい う感触 • フリーランスとして独立して、内製化、顧客視点でより価値を出せるソフ トウェア開発を模索。JTCをもっと支援したい、という気持ち
  7. 10 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL SIでやった時の不満 •

    コード品質や内部設計自動テストやCI/CDを駆使してもっと少人数でより効率的 に、迅速に開発できる。 • 顧客の要求により柔軟に対応できる。 • イテレーショナルに開発すれば、もっと、エンジニアに負荷なく、心理的に楽 に開発できる。 • 技術リスクを理解して、技術検証などをもっと気軽にできれば、より先進的で 効果的な技術を採用できる (SIでも、顧客によってはできてるところもあった。現在では増えているとは思う。 当社もその一つ)
  8. 11 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 入社当初 CTOブログ公募

    第二弾。2020年夏くらいに内定->入社は2021年 最初はびっくりするほどこじんまりとしたチームだった。 進行中のEJB2のレガシーシステムリプレースに介入して、自分たちでやることに。 エンジニア転職組は2名。社内異動してきたエンジニア10名の体制で始まる。。。
  9. 12 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL ホストとオープン基盤の中継システムである オープンGWの内製化

    • The レガシー • EJB2のレガシーシステム • 独自プロトコル[ソケット接続]でホストと接続 • 過去履歴がコメントアウト • classファイルを列挙してリリース承認 • classファイルを配備してリリース -> ベンダーさんとも協力体制気づいて、内製チーム主導でアーキテクチャ再設計/ クラウドに移行
  10. 13 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 過去発表 オープンGW内製化

    Fin-JAWS 第28回 クレカのオープンイノベーションの今。セキュリティを添えて https://www.youtube.com/live/4mvjGbsYAEs JSUG勉強会2023その2 クレディセゾンでのSpring・AWS活用事例 https://www.youtube.com/live/TCgfz6xux9E ➔ SIで感じた不満を全部解消できたプロジェクト。実際に作って、 リスクを下げてプロジェクトに適用することで普通のWFなら尻込みする ような変更もやり切れた。
  11. 14 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 基幹周辺システムを次々と内製化 •

    オープンGWに続いて、会員向けシステムのNetアンサーを内製化。 • StrutsベースだったものをSpring Bootに移植。 • 2026年には下記システムが内製化予定 • アプリ向けAPI/認証基盤であるセゾンコネクト • コールセンター向け顧客管理システムであるSora Netアンサー更改については去年のJJUG資料を参照 https://kazokmr.hatenablog.com/entry/2024/11/03/163453
  12. 15 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 社内改善系プロジェクト オープンGW内製化と同時期に社内システムの一部機能改善や社内向け業務改善用

    システムも開発/リリース システム部門以外の社内の多くのユーザーにインパクトを与える。伴走型開発。 • SMS送信用共通API • マニュアル/ナレッジ共有システム • ワークフローシステム • 本人確認画像送受信システム • その他。。。
  13. 16 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL ファイナンス事業 カード事業以外の金融事業も内製化へ

    • リース事業の顧客向け契約管理システム • 家賃保証基幹システム • その他。。。
  14. 17 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 内製するのが当たり前の会社に 常に内製でできないか、が選択肢に

    2026年にはカード事業に関しては、メインフレーム以外の相当数のシステムが内 製化される想定。 Javaは原則21。25へのアップデートも計画中。 仮想スレッドも活用。 インフラやDB、フレームワークなどは継続して保守運用の中でアップデートを組 み込む。5年に一回などの大規模リプレースはしない。 ユーザーとの直接対話もハードルが低い。定期的にユーザーと話ししながら開発 したり、利用している現場を見せてもらったり。
  15. 19 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 組織としての考え方 専門家であり、クリエイターであるソフトウェアエンジニアの能力を最大限に発揮し、

    長くいてもらうことが会社にとってもメリットになる ➔ 技術選択はあまり統制しない(してない) • エンタープライズ開発センタ全体の共有事項(ルールではない) • 基本Javaで開発。 • Lambdaは自由。Python/node.js/go/Java • 基本Spring Boot。 • インフラはAWS • RDBはRDS/AuroraのPostgreSQL • フロントエンドは最近はSvelte採用する場合は多い。初期はvue.js • 言語は基本はTypeScript • アプリの脆弱性はSnykで検査 • Github/Github Action
  16. 20 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL インフラの大体の傾向 •

    カード事業の元々ベンダーで開発/管理していた大規模システムはEKS • 現行の仕組みなどを柔軟に対応できる • 統制その他の仕組みがある程度できている • 保守体制もできている • とはいえ、プラットフォーム化/運用は改善の余地大いにあり。 • スクラッチ開発のものはECSやApp Runnerなど
  17. 21 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 例えば帳票エンジン システムインテグレータでよく利用されていた大手ベンダー製のものは採用しな

    い傾向。良いと思ったものはベンチャーでもどんどん採用。 • カード会員明細レポートはフロントでPDFを生成するyagisan-report • 社内向けはExcelで帳票設計ができるように • OSSベース or Docurain社
  18. 23 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 大きくなった組織の課題 インフラまで見れる人が不足

    バージョンアップ/脆弱性管理などの運用負荷 セキュリティが不安。。。 大規模システムの設計/マネジメント できる人に負荷が集中。。。
  19. 24 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 時にはSI的な管理が必要になる •

    規模が大きなシステムは小さなシステムとは異なるアプローチが必要 • 設計戦略/テスト戦略 • 内部品質と自動テストを開発に組み込めなかった場合もあった • 経験あるエンジニアの不足。規模の見込みの甘さ ➔人海戦術での手動テスト/性能改善/品質管理 = SI屋での火消し • 教育はもちろん、参考になる標準テンプレートなどが必要?ルール化するべ き? • 現場エンジニアが主体となって技術を選び、活用する余地は残したい。
  20. 25 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL EKSをどこまで活用するか 個別個別でリーダー層がフルスタックエンジニアとしてインフラも見ている体制

    の限界。。。 同じようなことを繰り返しやっている。 -> 小さなシステムまでEKSをプラットフォームとして提供する? -> AWSのIaCをテンプレート化?
  21. 26 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 開発プロセスを整備? チーム毎に定義

    Scrumのスプリントっぽいことをやってる場合が多い スクラムマスターとかPOみたいなロールはなし。 CTO以下、あまりカチッと決めるのを嫌がる文化がある。個人的にも標準的なプ ロセスってのがあまり好きではない。
  22. 27 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL コスト削減ではないよりインパクトの追求 •

    モダンなアーキテクチャと開発プラクティスを適用すると、コスト削減効果は 明確に出るようになった。(当社比) • より前向きなサービス開発/ビジネス価値の追求のフェーズに移行している • 小さな改善としてはある程度できているものもある • もちろん、安定して上記をやり切る底上げは必要 • サービス提供の可能性 • インドグループ会社では内製したシステムをSaaSとして外販しはじめている。 • まだ見えていないが、それだけの品質を求めていきたい。
  23. 28 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL 組織の形? インフラ/プラットフォームを分離して、よりサービスメニュー化し、アプリケー

    ションエンジニアはアプリケーション開発に集中する? この方向はやりすぎるのは良くない、というのがシニアエンジニアの共通見解 ではある。専門家、専門チームはいるとしても、できる人はフルスタック志向 でいきたい。 意図的に役割を曖昧にしている部分はある。
  24. 29 © 2025 CREDIT SAISON CO., LTD. CONFIDENTIAL We are

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