Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

業務効率化のためのAIエージェント開発の勘どころ【第6回 GenerativeAI勉強会 発表資料】

Ryohei Kamiya
July 18, 2024
190

業務効率化のためのAIエージェント開発の勘どころ【第6回 GenerativeAI勉強会 発表資料】

<まとめ>
・AIエージェントは世界的なメガトレンド
・「AIエージェントの使いどころ」は生成AIの特徴と人の心理的傾向から選ぶのがオスススメ
・生成AI使用時のリスクを恐れて「何もしない(リスク回避)」ことこそ、リスクが大きい
・リスク対策は「回避」だけじゃない。他にもある。
・短縮可能な時間の幅が広く、不確実性の削減量が大きいほど、AIエージェントの応用先として価値が高い
・生成AIの入出力を「うまく」つなぐためには「生成AIの出力の制御」が必要
・生成AIの出力の主な制御方法は3種類
・出力をうまく制御できさえすれば他は通常のプログラミングと同じ

Ryohei Kamiya

July 18, 2024
Tweet

Transcript

  1. 登壇者 自己紹介 ©株式会社LABBIZ 2 神谷 亮平 株式会社LABBIZ 代表取締役CTO 略歴 2007年に東京大学大学院を修了後、新卒で精密機器メー

    カーに入社。半導体素子開発と電子透かし応用システム 開発を担当。 ビッグデータ分析会社の新規事業担当エンジニア、IoTス タートアップの研究開発エンジニアを経て2016年に LABBIZ を創業。 2018年に技術支援先の不動産スタートアップにCTOとし て参画。BtoC から BtoBへの事業転換のタイミングで、金 融機関への製品カスタマイズ導入を主導。 2023年 に LABBIZ 代表取締役 CTO に復帰。
  2. 2.6~4.4兆 ドル 6.1~7.9兆 ドル 生成AI市場の予測(グローバル) ©株式会社LABBIZ 5 生成AIは、16 のビジネス機能にわたる 63

    のユースケースにおいて、年間 2.6 兆ドル から 4.4 兆ドルの経済的メリットをもたら す可能性があります。 また、知識労働者の活動全体に適用された 場合に実現する可能性のある生産性の無数 の向上を含む、生成 AI の経済的メリット の合計は、年間 6.1 兆ドルから 7.9 兆ドル に上ります。 【引用元】 The economic potential of generative AI: The next productivity frontier https://www.mckinsey.com/capabilities/mckinsey-digital/our-insights/the-economic-potential-of-generative-ai-the-next-productivity-frontier
  3. 生成AIとAIエージェント ©株式会社LABBIZ 8 用途 用途例 • 文章生成 • 画像生成 •

    音声生成 • 動画生成 • テキストの入力に基づいて画像を生成する。 • 質問に対して自然な回答文章を生成する。 用途 用途例 • 特定または一連のタスクの自動化 • パーソナルアシスタント スケジュール管理、リマインダー設定、メモ取り などの日常業務を支援 • AIエンジニア 要件に合った動作するプログラムを自動生成 • AIリサーチャー 調査対象や内容をインプットすると、調査を実行 して調査報告書を生成する 生成AI AIエージェント 生成AIを 内部で利用
  4. ©株式会社LABBIZ 10 世界のメガトレンド AI エージェント Gartner Predicts the Rise of

    Autonomous Agents https://www.cxtoday.com/contact-centre/gartner-predicts-the-rise- of-autonomous-agents/ 「AIエージェント」が開発現場の 常識変える、要件定義からテスト まで自動化対象に https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02831/051500001/ 世界最大規模の ICTリサーチ&アドバイザリ企業Gartner 日経BP社メディア XTECH 連載記事
  5. 【事例紹介】自社開発AIエージェント「 AI要件定義API 」の生成内容 ©株式会社LABBIZ 14 20画面以上のプロトタイプを生成 60ページ以上の要件定義書ドラフトを生成 プロジェクト概要 • プロジェクトの背景・目的

    • ターゲット • ターゲットの課題 • ソリューションの概要 機能要件(AIが生成) • ユースケース一覧 • ユースケースごとのフローチャート • ER図 • 画面一覧 • 画面遷移図 非機能要件(テンプレート)
  6. 従来 現在(AIエージェント活用) 時間短縮効果 システム開発受託商談 2週間(10日) 2日 従来比5分の1 要求事項整理・可視化 1ヶ月(20日) 1週間(5日)

    従来比4分の1 【事例紹介】自社開発AIエージェント「 AI要件定義API 」活用時の生産性向上効果 ©株式会社LABBIZ 18 ゆえに 400%
  7. 業務効率化のための「AIエージェント」の開発プロセス ©株式会社LABBIZ 20 1 2 3 4 5 効率化/自動化する 業務を選ぶ

    AIエージェントの 「インプット」と「アウトプット」 を定義する 「インプット」から 「アウトプット」までの 間のタスクを分解する 生成AIに各タスクを 実行させる 生成AIの入出力を 「うまく」つないで タスクを統合する 次ページ以降で ①と⑤をご紹介 ②〜④は業務ごとに 異なるため割愛
  8. 人の心理的傾向:認知バイアス ©株式会社LABBIZ 22 認知バイアスとは、人の思考や判断が、 これまでの経験にもとづく先入観によって非合理的になる心理現象のこと。 現状維持バイアス(Status Quo Bias) サンクコストバイアス(Sunk Cost

    Bias) 確証バイアス(Confirmation Bias) 利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic) 損失回避バイアス(Loss Aversion Bias) 現状を維持し続けたいという傾向 既に投資した時間やお金が無駄になるのを避けるために、 非合理的に現状を続けようとする傾向 自分の信念を裏付ける情報のみを重視し、 反対の情報を無視する傾向 直近で思い出せる情報や目立つ情報をもとに判断する傾向 損失を避けることに対して、 利益を得ることよりも強く反応する傾向
  9. 生成AIの特徴と人の心理 ©株式会社LABBIZ 24 評価観点 生成AIの特徴 人の心理(例) スピード 速い 良いね 品質

    間違う ミスが心配だね 入力データ 不定形(制限しづらい) 情報流出が心配だね 出力データ 不定形(予測しにくい) 権利関係が心配だね セキュリティも心配だね 生成AIを使って 損をするリスク
  10. 極論の二択? ©株式会社LABBIZ 27 生成AIを 使って 損をするか? 生成AIを 使わずに 損をするか? 自分で行動は選択できる

    コントロール可能なリスク 「何もしない」でも環境はどんどん変わる ほぼ確定した損 私見 合理的に考えて「生成AIを使う」一択
  11. リスク対策の方法 ©株式会社LABBIZ 28 区分 手段 内容 リスクコントロール 回避 リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。 リターンの放棄を伴う。

    損失防止 損失発生を未然に防止するための対策、予防措置を講じて発生頻度を減じる。 損失削減 事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策。 分離・分散 リスクの厳選を一箇所に集中させず、分離・分散させる対策。 リスクファイナンシング 移転 保険、契約等により損失発生時に第三者から損失補てんを受ける方法。 保有 リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する方法。 引用:2016年版 中小企業白書「第4章 稼ぐ力を支えるリスクマネジメント」 https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b2_4_1_4.html 資料:リスク管理・内部統制に関する研究会「リスク新時代の内部統制」から中小企業庁作成 生成AI使用時のリスクを恐れて「何もしない(リスク回避)」はリターンの放棄を伴う。 リスク対策は「回避」だけじゃない。他にもある。
  12. 生成AI活用のリスクと対策の例 ©株式会社LABBIZ 29 リスク 対策の例 低コスト対策 中コスト対策 高コスト対策 間違うリスク 【

    回避・保有 】 間違いが許される用途で使う 【 損失防止 】 人が目視で確認・評価したものだ けで出力データを作成して使う 【 損失防止 】 間違いを減らすためにモデルを再 学習・チューニングする 入力データの情報流出リスク 【 移転・保有 】 LLMベンダー/クラウド事業者と の契約でリスクを抑える。 Microsoft / OpenAI / Google / Anthropic などを信頼して使う。 【 損失防止 】 PII(特定個人情報等)検知の仕 組み等を導入して使う 【 回避 】 ネットワークから遮断されたロー カル環境で独自のモデルを学習し て動かす 出力データの権利侵害リスク 【 回避・保有 】 権利侵害がない用途を選んで使う 【 損失防止・移転 】 権利侵害のリスクがないことを調 査・評価して使う。また、損害賠 償対策の保険に加入する。 【 回避・損失防止・移転 】 権利侵害のないデータだけを購入 してモデルを学習して使う。また、 損害賠償対策の保険に加入する。 出力データのセキュリティリスク 【 保有 】 LLMベンダー/クラウド事業者の セキュリティ対策に任せる 【 損失防止・損失削減 】 ファイアウォール・脆弱性スキャ ン・異常検知・仮想環境などの技 術で対策する 【 損失防止・損失削減 】 隔離された環境でセキュリティ対 策専門の職員が生成データを評価 してから使う
  13. AIエージェントの魅力「スピード」を活かせる応用先の特徴 ©株式会社LABBIZ 30 ◯ ◯ の 不 確 実 性

    時間経過 従来 AIエージェント活用時 AIエージェントは 「不確実性(≒間違うリスク)」 を素早く下げるのに役立つ。 ただし、不確実性は残る。 不確実性をゼロにはできない。 短縮可能な時間の幅が広く、 不確実性の削減量が大きいほど、 AIエージェントの応用先として 価値が高い
  14. 「『〇〇の不確実性』を素早く下げる」とは? ©株式会社LABBIZ 31 「『〇〇の不確実性』を素早く下げる」とは、 「目的」「方法」「通信」のいずれか(または複数)の 不確実性を素早く下げるということ 不確実性の種類(※1) 意味 システム開発における例 目的の不確実性

    「何のために何をするか?」が不明確 システムの要件が定まらない 方法の不確実性 「どうやるか?」が不明確 開発体制・プロセス等が定まらない 通信の不確実性 「伝えたいことが正しく伝わっているか?」が不明確 クライアントの説明が分からない ※1. 【参考】広木大地 「エンジニアリング組織論への招待」https://www.amazon.co.jp/dp/4774196053
  15. 業務 不確実性 キャッチコピーのアイデア出し 目的の不確実性、通信の不確実性 ブログの記事の下書きの作成 目的の不確実性、通信の不確実性 メールの下書きの作成 目的の不確実性、通信の不確実性 調査レポートの草稿の作成 目的の不確実性、通信の不確実性

    タスク分解・タスクリストの生成 方法の不確実性、通信の不確実性 プログラムの単体テストケースの生成 方法の不確実性、通信の不確実性 生成AIを使って効率化できる業務(不確実性を含む業務)の例 ©株式会社LABBIZ 32
  16. 【参考】生成AIに聞いてみた「不確実性」のある具体的な業務の例 ©株式会社LABBIZ 33 業界 業務 成果物 不確実性 IT業界 要件定義書作成 要件定義書

    目的の不確実性, 通信の不確実性 IT業界 プロトタイプ制作 プロトタイプのコード 目的の不確実性, 通信の不確実性 建設業 建築プロジェクト提案書作成 プロジェクト提案書 目的の不確実性, 通信の不確実性 建設業 環境評価レポート作成 環境評価レポート 方法の不確実性, 通信の不確実性 教育業界 オンラインコースシラバス作成 コースシラバス 目的の不確実性, 通信の不確実性 教育業界 教材開発 教材、スライド 方法の不確実性, 通信の不確実性 小売業 商品カタログ作成 商品カタログ 目的の不確実性, 通信の不確実性 小売業 広告コピー作成 広告コピー、キャンペーン概要 目的の不確実性, 通信の不確実性 公共事業 政策提言書作成 政策提言書 目的の不確実性, 通信の不確実性 公共事業 公共プロジェクト計画書作成 プロジェクト計画書 方法の不確実性, 通信の不確実性
  17. AIエージェントの使いどころ ©株式会社LABBIZ 34 仕 事 の 完 成 度 時間経過

    従来 AIエージェント活用時 AIエージェントは 素早く仕事の完成度を 高めるのに役立つ ここに AIエージェント 「仕事の完遂」は 引き続き人間の仕事