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H30年3月16日 国立市 就労シンポジウム 高次脳機能障がい

asayume001
March 16, 2018
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H30年3月16日 国立市 就労シンポジウム 高次脳機能障がい

第5回国立市就労シンポジウム、第一部当事者の高次脳機能障がい当事者から伝える”再び働く”の講演資料です。

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March 16, 2018
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  1. 注意障がい 7 •集中したいことに集中 できない •注意したくないことに注 意がいく という、「注意の制御」が苦手に なり、情報処理の初期段階で適 切な情報にありつけない。 集中を維持できない(持続性)

    ・1時間くらい作業をすると集中が切れる ・一日のうち、午前より午後に集中が切れる ノイズを排除できない(選択性) ・喫茶店など雑多な環境で、音が聞き分けられない ・仕事中に気になることができると、そちらに引っ張られる 切り替え・取捨選択が難しい(転換性) ・大きな出来事が気になり、極度に引っ張られる ・突然・想定外の事象が入ると思考が止まる 複数に気を配れない(配分性) ・グループディスカッションが苦手 ・手際よく複数の業務をこなすのが苦手
  2. 記憶障がい 8 新しいこと • 新しい人の名前が覚えられない • 新しい仕事が覚えられない ▪日常的なこと • 今日、何日?

    • 薬の飲み忘れ・飲んだ忘れ ▪関与度の低いこと • 世間話・雑談が覚えられない • 日常の出来事(関心低)が覚えられない ▪複雑・煩雑なこと • グループディスカッションが苦手 • スケジュールが重なると忘れる •新しいこと •無意識・副次的なこと •煩雑な状況下 の記憶が良く無い。100%不可で はないが、新しいことを覚えるのに とても労力がかかる。 もしくは覚えられない。
  3. 遂行機能障がい 9  事前計画 • 事前の準備が苦手 • 趣味の釣りの準備が苦手 • 料理・掃除の準備・段取り・片付け苦手

     複数同時進行 • 複数の事を同時にこなすのが苦手 • 「ながら行動」が苦手 • 工程や手順が複雑になるとこなせない  次を考えながらの行動 • 先のことを頭の中で描けない(記憶低下も含む) •段取り・事前準備 •複数同時処理(ながら行動) •次に何をする? に弱く、「気が回らない人~要領 がわるい人」と捉えられてしまう。
  4. よくわからないまま、半年後に就労復帰。 お試し 勤務 通常勤務 6ヶ月 受療 復職 気分 よくわからない なんでリハ受け

    てるの?位の認 識。まったく理 解してない。 回復期 いつ戻る?今でしょ。 「とにかく早く仕事に 戻せ」と豪語。 リハ後半 よくぞ生還!! よくぞ戻ってき た。おめでとう。 復職時 急性期 受傷から半年。障がいのことは説明されていたが、よく自覚しておらず、 急ぎ足で就労復帰しました。が、しかーし… 入院 通院リハビリ 7ヶ月~9ヶ月 なんか変だぞ。 仕事のこと忘れてる し、思い出しても上 手くこなせない。 復職後 11
  5. 「なんか変だぞ!?」の連続で混乱。  名前を憶えられない  新しい業務覚えられない  企画がまとめられない  話がかみ合わない 

    金銭処理にミス  スケジュールにミス  なんでもミス・・・ 通常勤務に戻ってわずか1-2ヶ月。病前あたりまえに出来ていたことが できない「なんか変だぞ!?」の状況が多発。会社に「障がいを気付きに 行っている状況」となり混乱が生じた。 12
  6. 先が見えなくなり不安。 13 就業 病気 障がい 金銭面 住宅ローン 老後 家族 先が見えない!

    復帰すればするほど、生じる障がい。 社会復帰に伴い、障がいに気づき、 できない自分に苛立ちを感じ、 5年後、10年後の自分や家族の姿 がイメージできなくなった。 周囲から「見えない」だけではなく、自分からも「見えない」。
  7. それを機に、休転職を繰り返すことに。 通常 通常 通常 障がい者雇用 雇用形態 転職経歴 開示 障がい開示 行政支援

    約10年 発症 介入 相 談 手 帳 取 得 ストレス 受傷してから、おおよそ2-3年で職を変わる苦しい状況が続き、現在4社目。 どうして上手くいかなくて、どうやって落ち着きを取り戻してきたか? 復職 転職① 転職➁ 転職③ 休 職 休 職 休 職 休 職 休 職 14
  8. 苦戦のまとめ:認識~対処するのが難しい障がい。 就労定着に向けて生じる、 高次脳機能障がい特有の、3つの「づらい」の存在。 18 ①認識しづらい 高次脳機能を使う場 面になって顕在化する が、認知機能の低下 でなかなか覚えない。 ➁受容しづらい

    認知機能の低下、見 たくない心理、患者背 景も重なり、受容に時 間がかかる。 ➂対処しづらい 目的達成や問題解決 能力が低下しており、 障がいが見えても、自 分で環境~就業調 整ができない。 突 然 の 認 知 ・ 情 報 処 理 機 能 の 低 下 就 労 不 安 定
  9. 10年かけてやってきたこと。 就労定着に向けて、3つの「づらい」を軽減していく。 20 ①認識しづらい 情報収集と再体験 で障がい認識を促 す。 ➁受容しづらい 繰り返しと振り返り で障がい受容を促

    す。 ➂対処しづらい 自分と周囲のギャッ プを軽減して社会 共生を目指す。 就 労 定 着 突 然 の 認 知 ・ 情 報 処 理 機 能 の 低 下
  10. ➁受容:きっかけ • 就労が上手くいかなかった。 • 障がいを無かった事には できなかった。 • 不安定な状況を断ちた かった。 23

    ひとえに「障がい受容」といってもそんな簡単にできるわけではなく、 10年弱の中で、繰り返し「振り返り」機会を入れることで、少しづつ 「現実逃避はやめて向き合おう」という意識が芽生えました。 自 分 の 意 識 を 変 え る た め に • 執筆・講演・ブログ等通じて、 振り返り・言語化を意識。 • 上記の繰り返しで刷り込み。 • 障がいを開示して再々就職。
  11. ➁受容:゛振り返り “は、受容促進のポイント 24 参考:デービッド・A・コルブ 「経験学習理論」 1.実践 2.経験 蓄積 3.振返り 4.言語・

    理論化 ①苦戦してるときの状況 ここを行ったり来たりしているだけ で、疲弊蓄積するだけだった。 トライ&エラーの連続。 ②振り返りを強化 記憶が悪い=この部分 が弱いことに気づき、メモ 等で意識的に補完。 トライ&エラーに、修正・ 改善が加わる。 「振り返り」「言語・理論化(まとめ化)」の強化で、 自分の状況がすこしずつ理解できるようになった。 経験学習サイクル
  12. ➂共生:代替手段の習得 • メモ帳・ノート必須(ポイントのみ) • 保存先はシンプルに(多く深く複雑にしない) • 保存方法の工夫(色、マーカーで視覚化) • 振り返りの機会を作る(記憶化の促進) 症状

    代替手段 医学的リハで基礎を習得⇒現場で応用。 書ききれないほど、工夫していると思います!!! • 静かな環境にする(イヤホン・パーテッション・角席など) • 複数同時進行を避ける • 定規やポストイットで、注意を制御 • 作業済は取り消し線でマーキング • 不意打ち・突発事象を避けるよう周知 • スマホ×カレンダーまたは手帳必須 • タイマー・アラートを使用(googleカレンダー) • TODOを使用(googleカレンダー) • やるべきリストの活用(優先順位付け) 26 • 休憩を多めに(1時間に1回強制) ※熊本県高次脳機能障害支援センターホームページより引用
  13. ③共生:業務環境の調整 行政支援機構による職場への直接的介入 による職場環境調整と定着支援の実践。 業務内容/就業環境の調整・規定 • 全業務内容の切り出し • できるできないリストの作成 • 上記に基づく配慮要望

    • 就労時間の調整 • 休憩の徹底 • デスク環境の整備 • 就業先メンバーへの障がい特性説明 • 実職場での実践・修正・フィードバック 職業センターのジョブカウンセラー・コーチが職場介入して、下記調 整を実施。 当事者、病院ジョブコーチ、主治医診断書、 リハ診断所見による、職場への障がい説明。 ⇒効果は限定的。なぜなら職場への介入 が直接できないため、その後の調整は当事 者が行う事になる。 そもそも当事者は、調整自体が厳しい。。。 今まで 現在 29
  14. 情報 収集 課題 抽出 企画 提案 業務 遂行 効果 検証

    請求 ➂共生:就業内容の切り出しと事前規定 幸いにも残された「情報収集とPCスキル」を活かし、対応可能な 社内業務を中心に再調整。突発的な事に弱い為、事前に業務内容を 規定しています。 •業界情報の探索・収集 •集めた情報の社内アナウンス •集めた情報のストック •社員教育の支援 •その他、定型業務等 社内支援業務 (定型的かつペースの保てる業務) 30 ▪病前の自分の業務項目 PCスキル ▪現在の自分の業務項目 対顧客業務
  15. 業務F 業務E ➂共生:働き方の一元化 マルチからシングルタスクへ 1 週 間 業務 B 業務E

    業務D 業務F 業務C 昼 休 み 業 務 A 同時に複数の業務を抱えていたが、進 捗等が気になり(注意力)、効率も悪 く、疲労もたまりやすい。 業務の計画や進捗等を気にする必要 がなく、疲労もたまりにくい。 午前 午後 ▪調整前の働き方 業務C 業 務 A 業 務 E 業 務 D 業務B 業 務 F 月 - 火 水 - 木 昼 休 み 休 憩 休 憩 休 憩 休 憩 午前 午後 ▪調整後の働き方 31
  16. ➂共生:業務分解と工程の一元化  10の新聞・情報誌より、その日のニュースをチェック  関連ニュースをピックアップ 業務内容:社内ニュースの作成 作業時間帯:9:30-10:30 所用時間:1時間  Wordにコピー&ペースト

     体裁・見出しを整える  ファイル名確認(日付)  データベースに保管  メールのタイトルと見出し一覧を記載  見直し・添付漏れ確認  全社員に送付 業務を、分解・一元化・マニュアル化を実施。就業先にも、これを作る時間的配慮 をもらうよう調整。マニュアルは、新しく転職・転入・移動されてきた方、シニア再雇 用の方などにもわかりやすく、会社全体のパフォーマンス向上にもつながる。 1.ニュースの 選択・抽出 2.社内ニュース作成 3.情報発信 4.保管 32
  17. ➂共生: 「脳疲労」への対処について ▪思考リズムの調整 •考える時間 •振り返る時間 •考えない時間 •忘れる時間 を作る。 ▪日内リズムの調整 •午前勝負

    •毎時5分休憩 •午後15分休息 帰宅後・明日・週末 の事も考えて余力を 残して一日を終える。 朝 夕 月 金 日単位 週単位 帰宅後ぐったり、せっかくの週末も ぐったりで、疲労回復もしないし家族 とのコミュニケーションもおろそかに。 まったく「注意」を要しない時間を、強制 的に作ることで、脳疲労減少~注意力 回復へとつながり、就労以外の日常生 活にも余力が出てきました。 今まで 現在 脳 機 能 35 高 低 ▪脳疲労を何も考えずにやみくもに就業・・・
  18. さいごに。 38 脳障がい者が就労現場で工夫している、  「マニュアル術」は、本人のみならず万 人にわかりやすい。  「視覚・整理術」は、万人が使うデー タベースとしてわかりやすい。 

    「みやすい資料」は、難しい仕事をとっ つきやすくさせる力がある。  「コミュニケーション」は、ギスギスセカ セカを、穏やかなものにする。 目が見えない人は、目が見える人よりも記憶力が良かったり、空気を読むのがうまかったり します。例えば、もともと相手の顔が見えない電話対応では、普通の人よりも目の見えな い人のほうが優れた対応ができる可能性が高い。目が見えないことが、仕事の上でのアド バンテージになることもあるのです。 目は見えないけれど人の話を聴くのが得意という人であれば、心理カウンセリングを行い ながら社員の相談に乗るヘルスキーパーにも向いています。人と話すのが苦手な社員で も、目の見えない人が相手なら安心して話せるというケースもあるからです。 障害があっても活躍できる場所を見つけてあげれば、「バリア」が「バリュー」に変わります。 ※coFFee doctors 産業医 三宅 琢 氏インタビュー記事より抜粋 一次元一軸の世界で生きている私たちは、柔らかく包容力のある社会にする、 むしろ貴重な存在であると思ってます。 ⇒周囲の視点次第で、障がいのあることがアドバンテージになる。