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『源氏物語』の引き歌をベクトル検索によって検出する方法

Yasuhiro Kondo
June 12, 2024
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 『源氏物語』の引き歌をベクトル検索によって検出する方法

Yasuhiro Kondo

June 12, 2024
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  1. 背景 1 - 引き歌とは 源氏物語・柏木「短める命待つ間も,つらき御心は見えぬべければ」 (短く見えるこの命待つ間でも,つらいお気持ちが見えてしまうので)   (古今集・雑下・平貞文)「ありはてぬ命待つ間のほどばかり憂きこと繁く思 はずもがな」 (限りある人生の間くらいは,嫌なことをあまり考えたくないものだな)

    『源氏物語』の読者は、「命待つ間」でかならず「ああ、あれね」と『古今 集』のこの和歌を連想する=このような暗示的な和歌の引用を「引き歌」と言 う。(実は、「命待つ間」という表現は、著名な日本古典でこの二つだけ。) 4
  2. 背景 2 - 解決されていない問題 平安時代のミームであるので、単に語句が一致していれば必ず「引き 歌」になるわけでもないわけで、文脈全体の類似度が必要になってく る。『源氏物語』の引き歌がどれであるのかについては、すでに室町時 代の『源氏物語』注釈書にその研究が見え、各種和歌作品からの「引き 歌」が、現在では全部で1000個程度あがっているが、全貌は明らかで はない。

    先の「幸せならOK」や、DOGE(柴犬のかぼす・暗号通貨)でも、あと 100年もすれば、インターネット・ミームであることがわからなくなっ てしまうだろう。文化・文脈の解釈が重要である。ミームは、世界の文 学にも多い技法。「人はパンのみにて生くるものにあらず」(聖書)6
  3. 主要参考文献・謝辞 伊井春樹編, 『源氏物語引歌索引』, 笠間書院, 1974 近藤泰弘, 「《文化資源》としてのデジタルテキストー国語学と国 文学の共通の課題としてー」, 『国語と国文学』77巻11号, 1999

    鈴木日出男, 『源氏物語引歌総覧』, 風間書房, 2013 リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子〈増補新装版〉』紀伊國 屋書店・2006 16 この研究を進めるにあたり、国立国語研究所の「日本語歴史コーパス」 (CHJ)を使用しました。関係者の皆様に感謝申し上げます。