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失敗から学ぶ起業入門 ~いつの日も問題は鶏と卵~

Ryosuke Yoshizaki
August 04, 2018
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失敗から学ぶ起業入門 ~いつの日も問題は鶏と卵~

Ryosuke Yoshizaki

August 04, 2018
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  1. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 2 会社概要 *機械学習とディープラーニングを含む 協力会社

    会社名 株式会社キカガク 設立日 2017年1月 代表 吉崎 亮介 所在地 東京都豊島区池袋 PLAN ACTION DO CHECK We provide education in the best style for you 人工知能(AI)*における教育と コンサルティングサービスを提供
  2. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 3 吉 崎 亮

    介 株式会社キカガク 代表取締役社長 代表者紹介 人と人とが教え合える 優しい世界をつくる ✓日経ビッグデータ -「機械学習のデータはそ もそも企業内にない、地道に整える企業が 優位に立てる」 (2017.10.20) ✓共同通信社 -AIどう使う? 教育で 社会への橋渡しを 26歳社長「好き なことで生きる」(2018.1.23) 掲載された 記事の紹介 1991年生まれ 京都出身 舞鶴工業高等専門学校 画像処理とロボット制御の 研究に従事 ITベンチャー 企業へ就職 京都大学大学院 機械学習による 製造業のプロセ ス改善に従事 株式会社 キカガク 設立 東京大学 客員研究員 へ就任 コンサルティング現場で 得た知見を教育へ 教育 コンサル ティング
  3. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 起業ストーリー 4 • 起業を考え始めた理由

    • 起業を決意した理由 • 起業すると何をしたか • 創業した会社を辞めた理由 • ひとりで会社を始めるべき人とそうでない人 • 事業を選ぶまでの道のりとキャッシュフロー問題 • 作ると売るは別問題 • オフィスを借りるのが大変 • メンバーを集めることが大変 • アライアンスが大変 • 組織づくりは大変 • 資金調達は大変 • それでも起業は楽しい • 1年半取り組んで見えてきた課題と解決策
  4. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 起業を考え始めた理由 5 ✓ 同世代に起業している人がいることに驚く

    ✓ 親近感が湧く 起業家育成プログラム(GTEP)参加時 ✓ 先輩に誘われてこっそり準備開始 ✓ 起業へ挑戦することは成功しても失敗しても、 市場価値は高まると判断 新卒時代(ITベンチャー)
  5. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 起業を決意した理由 6 ✓ 起業の計画を始めたときに期限を決めており、日が近

    づいてきたので、締め切りの日に決意して話した ✓ 初経験であったので、辞めることは本当に怖かった ✓ それでもやろうと思えたのは、一緒に創業してくれる 仲間がいたため 腹がくくれず、計画を始めてから6か月経つ…
  6. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 起業すると何をしたか 7 ✓ まずはプロダクト(Webサービス)を作って、仮説検

    証に専念 ✓ PDCAを早く回すため、必要最低限な機能は何かに専 念して作ることを覚えた ✓ 手持ちの少ない資金でPMF(Product Market Fit)の 検証とマーケティングする手法を覚えた ✓ 作ると売るがあってビジネスが成立することを痛感 ↓ 事業を考えた 作りはできるが、売るができない
  7. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 起業すると何をしたか 8 ✓ C向けのサービスでは、マネタイズが厳しい

    ✓ 100万人といったユーザー数があれば大きなチャンス であるが、ユーザーを獲得するには最初に巨額の広告 費用が必要で、キャッシュフロー的に難しく、資金調 達をしない限り成し遂げられないが、ユーザーのつい ていないサービスに投資をする人はいないジレンマ ✓ 月額300円でも高く感じることに対し、1万人有料ユー ザーがついても、300万円にしかならない、C向けの知 名度のわりに売り上げ少ない問題に気づく 人生初のマネタイズ
  8. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 創業した会社を辞めた理由 9 ✓ スタートアップかスモールビジネスか経営の違い

    ✓ 前者はキャッシュフロー対策として投資を受けてレバ レッジをかける戦略で、後者は小さく利益を出して、 その利益を投資に回してレバレッジをかける戦略 ✓ 作るメンバー集めもお金だけでは解決できない 売るのも人を雇ったからといって自動化できない むしろ最初は社長が営業に行って一次情報を取るべき だと感じていた ✓ 売りながら知見を貯めて、そのお金でメンバーを集め て、スケールする事業を探すスモールビジネスを選択 VCからの調達が決まった
  9. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 創業した会社を辞めた理由 10 スモールビジネスで稼ぎ、その利益をスモールビジネス 向けとスタートアップと両方に投資していくことで、手

    堅く稼ぐ強固な体制は維持したまま、スケールすること ができるサービスに挑戦できる方針とした 失敗しても会社が倒産しないリスクヘッジがメリットで、 デメリットはスピードが遅くなること ↓ キャッシュエンジン経営 選択した戦略
  10. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved ひとりで会社をやるべき人とそうでない人 11 ✓ 会社員をしている人はなかなか辞められないので、ひ

    とりでは創業は心細いかもしれない ✓ 作ると売るは両方必要なため、この両方のファクター がそろっていればメンバーは少ない方が楽 ✓ 意思決定のスピードは次第に上がっていくが、起業し ようと決断できない人は社長は向いていない ✓ 社員が増えてくるとさらに他人の気持ちも考慮した意 思決定も増え、自分のことを決めるよりはるかに難し いため、自分のことを決められない人はパンクする ひとりの創業と3人の創業を経験して
  11. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 事業を選ぶまでの道のりとキャッシュフロー問題 12 ✓ 全財産の50万円を創業資金に

    ✓ 驚いたこととして、売り上げもたっていない中で役員 報酬を最初の3カ月で決めないといけない ✓ 売り上げが直近でたたないサービスの場合、役員報酬 は0円として資本金にまわさず貯金しておいた方が良い 役員報酬をとると、所得税が課税されるため お金の話
  12. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 事業を選ぶまでの道のりとキャッシュフロー問題 13 ✓ 上場企業在籍時に上限金額300万円のクレジット

    カードを作った ✓ 場所代とWeb集客の広告費をカードで払い、当日に 現金で回収して、キャッシュフロー的に事業継続可能 ない仕組みを構築 ✓ 月300万円使えるような感覚があるが、支払いが2 か月先であるため、常に支払いが2か月分ストックさ れており、約2か月で300万円を使えるような感じ ✓ 現金が貯まればその現金で請求書払いや銀行振り込み できるところを対応していき、キャッシュフロー的に 遅らせたいものはカードを使っていった キャッシュフローの話
  13. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 事業を選ぶまでの道のりとキャッシュフロー問題 14 ✓ システム開発は企画から開発・納品・検収と開発コス

    トが先にかかることに対して、支払いが遅いため、額 が大きくてもすべて断るようにしていた ✓ 起業直後は回収までが早い仕事と、検収などで手戻り が少ない仕事を選ぶべき ↓ 売る ≠ お金の回収 仕事の受け方
  14. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 作ると売るは別問題 15 ✓ メンバーが少ない中、プロダクトは作らないといけな

    いし、売らないといけないし、常に時間を工夫して使 わないといけない ✓ HPはWordpressで作り、有料のテンプレートを購入 ビジュアルが綺麗なデザイン=伝わるではない ✓ 更新が一番重要であり、Word感覚で更新できるものが 一番良いし、引き継ぎも楽 ✓ 常に継続的な更新と、自分よりもスキルが低い人への 引継ぎを意識して技術選定すべき 時間の使い方
  15. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 作ると売るは別問題 16 ✓ 教育ではカリキュラム作りがプロダクト制作に相当

    ✓ 数式が多かったり図が多かったりすると、2日間のテ キストを綺麗につくるためには時間がかかる ✓ その場で手書きして進めることで、授業準備にはほと んど時間をかけずに済んだ上、講義資料のアップデー トを前回の質問を受けた内容を踏まえて授業ごとに行 うことができた ✓ 教える回数が少ないことをパワポにまとめて作るのは 無駄、伝えるための必要最低限を考えた 時間の使い方(作る編)
  16. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 作ると売るは別問題 17 ✓ 集合研修型の教育では個別に営業を行うと費用対効果

    が悪いが、営業しないと集客できないジレンマ ✓ 無料体験会を開催しても、無料のユーザーは優良顧客 との層が異なるため、見込み客でない可能性が高い ✓ 安めの有料のセミナーの場合、500円とるだけでも勉 強会は全然集まらない 時間の使い方(売る編)
  17. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 作ると売るは別問題 18 ✓ 講義の楽しさに応じて参加者が金額を決めてお金を払

    うという仕組み ✓ 無料なら参加するというユーザーの特性を活かし、 入り口は広く、有益な情報に対しては対価を支払うこ とが必要であるという意識を受講生側に作った ✓ 場所代を引いても黒字となり、これだけでも生活して いけるレベル(最高2時間18万円程度、5~15万円) ✓ 多い時には60名程度にオフラインのアプローチをかけ られるため、営業の引き合いがとても多くなり、口コ ミで広まることで取材も増え、結果、受講生も増えた 参加無料のセミナーを開催した
  18. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved オフィスを借りるのが大変 19 ✓ オフィスの審査がほとんど通らない

    ✓ 創業1年未満は決算書がないため、根拠となる数字を 提示することができない ✓ 売り上げがあるが、どの程度利益が出ているか正確に まとめている時間はない ✓ 必要なものは利益の出ている決算書か保証人となって くれる親族のみ 信用がない
  19. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved オフィスを借りるのが大変 20 ✓ オフィスは敷金が思っていた以上にかかる

    最低4か月程度で、多い場合12か月程度 ✓ キャッシュフロー的にかなり圧迫される上、費用では ないため、税金コントロールにも使えない、最も会社 にとっては痛いお金 ✓ 単なる事務所利用でなく、不特定多数の出入りなどが 断られる大きな要因 ✓ 内装も入れると、相当資金に余裕がないとできない ✓ 最初は初期費用が必要最低限のコワーキングスペース から始めると良い キャッシュフローに注意
  20. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved メンバーを集めることが大変 21 ✓ 初期メンバーがどれだけ短い時間で売り上げに貢献で

    きるかが重要(イベントで経由で学生が正社員へ) ✓ Wantedlyなどもあるが、ブログを書く時間を確保しな いといけないため、モチベーションがフェードアウト ✓ スキルがあってもやりたいこととのミスマッチがあれ ば全然ワークしないため、猫の手も借りたいときにで も、猫の手は借りないほうが良い ✓ 最初の1年はどれだけ仕事の量が積み重なっても、他 の人には期待せず、すべての仕事を2人で担当して歯 を食いしばりながら最初の仕組みづくりを行った 人手は常に不足している
  21. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved アライアンスが大変 22 ✓ 時代の流れで声がかかり、運が良かった(重要)

    ✓ 信頼も実績もない中でイベント参加人数(当時800人 超)が理由で納得してもらえた ✓ 意思決定のスピードが1日単位ではないため、そこま で期待しすぎず、自分の事業だけでも回していけるよ う取り組みながら、意思決定を待つことがポイント 大手企業から声がかかる
  22. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 組織づくりが大変 23 ✓ 残業に関する取り決めや休日などの就労規則が必要に

    ✓ バックオフィスを業務委託で頼める人がいると心強い ✓ 就労規則のベースは社長が責任を持って決める 最初から決まっていれば不満を感じないものの、一緒 に考えると不満がでることがあるため注意 ✓ 福利厚生など楽しい部分は社員で全員で相談して決め るとモチベーションも上がるので良い ✓ 給与を適切に決めるのが難しい 経験がない、評価軸もない中、適切な決定が行えない ため、ポジションで初任給は一定にし、売上などの インセンティブ部分でコントロール
  23. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 組織づくりが大変 24 ✓ コミュニケーションロスが多発

    役員が定期ミーティングをして、上長レベルの意思決 定にずれがないよう心掛けている ✓ 自分の時間がないからメンバーを集めるように思える が、マネージメントは最初に一番時間がかかる ✓ ひと段落したときに、事業を停滞させてでも時間を 取ってマネージメントに時間を割き、メンバーの成長 を優先的に支援することで、長い目で見ると、事業が 加速する メンバーが増えると
  24. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved 資金調達が大変 25 ✓ ファイナンスにはデッドとイクイティがある

    ✓ 会社の価値評価が難しいうえ、よくわからない ✓ 皮算用の事業計画書を提出しなければ話が始まらない が、投資を受けた場合、その皮算用から上振れも下振 れも許されない ✓ 日本政策公庫は創業融資で最大1000万円で連帯保証人 無しで、これを借りておくと、敷金などのキャッシュ フロー対策に余裕が出る ✓ 融資の場合、事業計画の話をするが、結局は売り上げ の見込みがあるかで、利益が出ていれば比較的簡単に 借りられる
  25. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved それでも起業は楽しい 27 ✓ やってみないとわからないことがたくさんある

    ✓ 他の人ができていないことを開拓している冒険みたい な感覚が日々続き、同じ日はやってこない ✓ 会社員の時には見えていなかった視点で世の中をとら えられるようになった ✓ 市場価値が高まっているのをひしひしと感じる ✓ メンバーがひとりひとりと増えていく楽しさはたまら ない
  26. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved そして、1年半取り組んでみて見えてきた課題 29 ✓ 単に教えただけでは、ビジネスで活用するという本質

    的な問題を解決できることが少ない ✓ 理由は学習のモチベーションが持続できないであり、 会社に案件がないことから由来している ✓ 会社としては、プロフェッショナルでない人にAI案 件を取ってこないという鶏と卵 ✓ 良い教育とは厳選されたカリキュラムをわかりやすく 教えるだけではなく、モチベーション管理まで行うこ とが重要 ライザップなどではここをしっかり管理している
  27. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved そして、1年半取り組んでみて見えてきた課題 30 ✓ AIにライザップ式を導入したいが、管理できるよう

    なプロフェッショナルが少ない現状 ✓ 学び終えると、教えるよりもプロフェッショナルとし て働くことを選択しがちで、AI教育の採用は大変 ✓ ビジネスでは裾野の広いところをターゲットにするた め入門編が多いが、ビジネス課題の解決をするために 実務に必要な応用は母集団が小さくなるため扱わない ✓ 最新情報のアップデートが早いため、カリキュラムの 更新も頻発 ✓ データ解析は人とのやりとりが多く、ヒューマンスキ ルも成功のための要素で、ここも鍛える必要がある
  28. 2018 Kikagaku, Inc. All Rights Reserved そして、1年半取り組んでみて見えてきた課題 31 ✓ 前の人から教わったことを次の人に教えるバトンをつ

    なぐ教え合いによるCtoCサービスのteach4meをリ リース(戦略はスタートアップ) ✓ マネタイズのポイントは、サービス利用料のC向け、 人材エージェント向けのB向け、カリキュラム提供のB 向けと複数設ける ✓ 教えるとteach4me内でポイントが付与され、現金化 も可能であるが、次のコースを受けられるため、長期 的に利用しても初期費用だけでOK ↓ 講師、カリキュラム、プロフェッショナル人材 これらが不足する大きな問題を解決