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小川雄太郎_発表スライド_高専HNK_7月月例会

Yutaro Ogawa
July 21, 2022
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 小川雄太郎_発表スライド_高専HNK_7月月例会

本スライドは、「ヒューマンネットワーク高専(HNK)月例会(2022年07月度)」(22/07/21(木) 19:30 ~21:30)の発表で使用したスライドとなります
https://hnk.connpass.com/event/253259/

Yutaro Ogawa

July 21, 2022
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Transcript

  1. 0 自己紹介とスキルセット紹介 01 高専に入学して騙された、驚いたこと5つ 02 高専生は卒業後に大学・大学院生時代を どのように過ごしたのか。一例を紹介 03 社会人になり、企業で働く(6年目) 04

    高専生だった頃の自分や現役高専生に向けた 5つのアドバイス 05 高専OB/OGによる人生振り返り ~ 高専時代、大学・大学院、インターン、社会人生活~ 22年7月 小川 雄太郎(明石高専 電気情報工学科 09年卒)
  2. 2 小川 雄太郎(おがわ ゆうたろう) 家族構成:長男(8カ月)と妻の3人家族 1986年:兵庫県西宮市 生まれ 2002年:明石高専 電気情報工学科入学 ※潮寮で寮生活(高専入学から20年が経過)

    2007年:東京大学工学部 精密工学科編入学 2016年:東京大学大学院 新領域創成科学研究科 博士号取得 (脳機能計測と神経細胞集団の数理モデルに関して) 16年~17年:東京大学 先端科学技術研究センター 特任研究員(ポスドク) 17年~22年:株式会社電通国際情報サービスにてAI関連の受託案件・製品開発・研究な どに従事 22年7月~:転職。株式会社松尾研究所 シニア・リサーチャー(≒東大松尾研のBiz) 【他】 ・19年~21年:早稲田大学 グローバルエデュケーションセンター非常勤講師 毎年、講義「AIビジネスクリーションα、β」の年間2コマを担当 ・18年~現在:日本ディープラーニング協会 委員 (※その他、自己紹介詳細はこちら [link]) 略歴
  3. 3 私、小川雄太郎は、2002年に明石高専 電気情報工学科に入学しました。5年間の寮生活を経験し、 その後、2009年に東京大学工学部 精密工学科へ編入学しました。東京大学では、脳機能計測(脳 波・脳血流等)、そして脳内の神経細胞集団の活動を数学的に表現して解析する研究で博士号を取得 しました。その後1年間ポスドク研究員で働いた後、新卒で株式会社電通国際情報サービス(業種: SIer)に入社し、5年3カ月働いたのち、この7月1日に転職をしました。 本講演の目的(1/2) 5年前、電通国際情報サービス(通称ISID)に新卒入社した当時の私は完全なIT&AIの初心者でした。そして配属先

    部署にて「AI・ディープラーニングに取り組みます」と言われたため、Pythonなどについて、何も知らないところ から取り組みはじめました。 現在の私は、機械学習・ディープラーニング・AIを活用した「ITシステム」を実際に実装する人、システム構築の プロジェクトマネジメントをする人、自社のシステム構築だけでなく顧客のITシステムの構築を案件として推進す る人、AI・機械学習関連の研究をする人、そしてこうした取り組みをする9名のメンバーで構成されるグループの リーダーとして、グループ設立から、日々のマネジメント、採用等を実施する人でした(※6月末まで)。
  4. 7 AI関連技術の実装力 クラウド関連の技術力 アジャイル・スクラム開発の スキル 研究力(脳科学) ロボット系の実装スキル (ROS 2、デジタルツイン) ITシステムの構築スキル

    Biz系:社内新規事業立案系 教育系・大学教員 (早稲田大学21年度まで、他) 外部活動(DL協会、HNK) 私のスキルセット 一覧
  5. 8 ・AI関連書籍を5冊出版 [書籍一覧 Amazon link] ・AzureのAI系がメイン ・MVP【AI】:日本6人目 ・AI系の講師をする資格も保有 ・書籍を1冊出版 ・Kenのプロフェッショナル

    スクラム関連資格と実務 AI関連技術の実装力 クラウド関連の技術力 アジャイル・スクラム開発の スキル スキルセット その1
  6. 9 ・脳機能計測 & 脳の数理モデル。 視床-皮質ループによる時間遅れ 微分方程式を多様体上に縮約 ・高専ロボコン全国大会に出場、 国技館でロボット操縦 ・前職では、ROS2×深層強化学 習×デジタルツインの技術検証

    なども実施 研究力(脳科学) ロボット系の実装スキル (ROS 2、デジタルツイン) [その他の 論文一覧は こちらから] ・Python系がメイン ・フルスタックに近いT型人材 ・The SIよりは、AI系のSI構築 ITシステムの構築スキル [解説動画 (5分)は こちらから] スキルセット その2
  7. 10 ・AI機能を搭載した自社製品開発 ・深層強化学習などの受託案件 ・川崎F様とのインターン作成 ・データサイエンティスト職設立 ・早稲田大学にて非常勤講師 (19~22年度)。講義名は「AI ビジネスクリーションα、β」 ・経産省:AI活用人材育成講座 (活用講座)(無料動画講義)

    Biz系:社内新規事業立案系 教育系・大学教員 (早稲田大学21年度まで、他) ・ディープラーニング協会・人 材育成委員会の委員(G検定 等) ・ヒューマンネットワーク高専 (HNK)アドバイザー 外部活動(DL協会、HNK高専) [link] [link] … [link1] [link2] [link1] [link2] スキルセット その3
  8. 12 ▪▪や▪▪の授業がある・・・ 01 ▪▪がない・・・ 02 ▪▪ではない▪▪を使う人がいる! 03 ▪▪は恐怖の連続。TVも見れない! 04 ▪▪して金稼げると思ったのに、

    ▪▪って何だ? 05 高専に入学して騙された、驚いたこと5つ 当日の発表で詳細説明 ※今は改善されていると思います。現役高専生から「昔とは違う!今どきの高専生活」のような発表を聞いたり、 対談やパネルディスカッションしてみたいです
  9. 13 歴史や地理の授業がある・・・ 01 クラス替えがない・・・ 02 英語ではない言語を使う人がいる! 03 寮生活は恐怖の連続。TVも見れない! 04 即就職して金稼げると思ったのに、編入学って何だ?

    05 高専に入学して騙された、驚いたこと5つ 当日の発表で詳細説明 ※今は改善されていると思います。現役高専生から「昔とは違う!今どきの高専生活」のような発表を聞いたり、 対談やパネルディスカッションしてみたいです
  10. 15 [1] 東大は編入の際、制度上1学年留年となり、教養課程(大学2年生)から⇒後々考えると良い経験でした(後述) [2] 大学の高専編入組は仲良くなりやすいです(東大編入組等は高専生の一学年、すなわち全国約1万人のトップ層約 15人が集まる場所です。面白い人かつ変人が多い;ロボコン全国優勝、数学オリンピックモンゴル代表、すぐにε-δ 論法で話したがる、そして当然のように皆乗っかっていく・・・、皆TOEIC800弱以上。この傾向は、他の旧帝大編 入組も類似かと。各高専のトップクラスの集まりは、楽しく、かつ貴重な人脈。今もつながっている友人が多い) [3] 大学生というのは高専生とはまた違った凄い存在に感じました。高専生の生活とは大違い。バイトして、サーク

    ル活動して、授業出て、合コンに行き、企業でインターンして、研究もする。兵庫県明石市の田舎の生活スピードと、 東京という街で過ごす若者の生活スピードの違い、そして大学生のマルチタスク能力に圧倒された。一週間でやって いること・経験していることの密度が、高専4、5年生と、東京という街の大学1、2年生では違いすぎ。東京という日 本の中心で経験できる情報量は圧倒的 [4] 授業と学部の卒業研究は無双できます。どこの大学であろうが、高専であろうが、使う教科書に違いはほぼなく、 教える講義範囲もそれほど違いはないためです。一度授業を経験している高専生は大学の授業や学部卒研は簡単に感 じます。何より高専のときの学びを再学習し、深く落とし込むことで、知の土台をしっかり構築できたと感じます 東京大学工学部 精密工学科時代(大学生活編)
  11. [1] ジャン負けで人気0の工学部自治会(丁友会 [link])の学科代表に ➡ 学科40人のじゃんけん負けで委員になったのですが、この団体は過去には面白いことしていたと知ります ➡ 東大工学部として公式にいろいろな活動ができることを知ります ➡ 当時、2009年頃は今よりまだまだ就活ルールが厳しく、企業が大学の構内に入ってイベントをしたり、学生と 話をしたり、リクルート活動ができなかった時代(※そのため、「OB/OG訪問」という謎の単語が作られ、「卒

    業生が研究室などに遊びに行くだけですよ~、大学内での企業活動ではないです~」という形が取られていた) ➡そこで、この工学部丁友会の代表となり、東大工学部・工学系院生・情報理工院生が集まる学生企業交流会的 なイベントを企画し、東大学内の食堂で開催。自分(たち)で企業に電話や連絡して参加企業を集め、学生も自 分たちで1日200人超を集客する「産業セミナー」というイベントを開催 ➡上記のイベントで稼げた数百万円を、東大工学部ロボコン部等に寄付しスポンサーしたり、東大の学祭の工学 部の展示をパワーアップさせる学科展示の補助金にしたり、工学部の留学希望学生の費用補助に回したり。。 「東大工学部を活性化させる」というビジョンの下、工学部の起業家志望の学生が、実際に自分たちで数百万円 を動かして活動する、起業に向けたサンドボックスのような疑似ベンチャー組織を作っていました ➡最初の頃はメンバが足りなくて私が誘ったメンバ:同じクラスの▪▪さんや、私の次の代表▪▪さんなどなど 16 東京大学工学部 精密工学科時代(課外活動編 その1:大学内での活動) 当日の発表で詳細説明
  12. ➡東大時代にもっと自分のレベルを上げないと、アカデミックにせよ、ビジネスにせよ、自分の能力は低すぎ る・・・と思わせられる先輩たちと出会いました(学振の育志賞、東大総長賞をとるような先輩たち) ➡先輩たちと肩を並べるには、一度社会に出て、ビジネススキルとITスキルを磨きたいと考えました (また、大学の先生からビジネス・企業へは転職しづらいが、ビジネス・企業から大学の先生になるのは、まず まず多いです。自分が成長でき、かつ、「将来的な選択肢が狭まらない方向を選ぶ」が私の行動基準の一つ) ➡そこで大学院時代に、脳・神経科学系の研究について研究室見学に来たことがあった株式会社電通国際情報 サービス(通称ISID)に新卒で入社(昨月まで5年3カ月在籍)[link1][link2] ➡とても成長でき、楽しく、素晴らしい会社でした。今の私へと育ててくれた会社です ➡同期は22歳の大卒、24歳修士卒。私は30歳博士卒新卒新人?としてキャリアを開始しました。 ITはほぼ何も分からず素人だったので、新卒研修でITのイロハから。また、新卒入社時はPythonなんて聞いたこ

    ともなく、AIもほぼ理解できていなかったのですが、 AI関連のグループに部署配属されたため、PythonやAIの自 己学習を業務後に行うようになりました (2017年夏頃から開始し、翌年にはAI系に関して雑誌連載や書籍の出版などを実施するようになりました) 21 (株)電通国際情報サービス 時代
  13. 41 01英語をしっかり勉強しよう。1年生から計画的に。5年生でTOEIC750くらいを目指す ・高専生にとって英語は大学編入試験で必要という面もありますが、それ以上に、社会人になっての必須スキルです ・例えば、私の電通国際情報サービスでの新卒時のメンター社員はインドネシアの方でした(日本語完璧でしたが)。 またMicrosoftのUS本社をはじめ、仕事での英語MTGは2、3カ月に1回程度でした ・もう、現代社会はこのようなグローバルな状態(3カ月に1回くらいは英語MTG、周囲に海外からのメンバ)が普通 の世の中です。とくにCOVID-19で海外の方とのテレカンMTGが世界中で当然になったので、英語MTGが増えました ・高専卒業生として優秀であれば、日本のトップクラスの人材ということです。日本のトップクラスの人材というこ とは、必然的に海外の方と関わることになり、結果、海外の方との仕事、そして英語MTGが入ってきます ・上記の記載は多少大げさですが、皆様は職場でも部署代表として、海外の方とのMTGに出ることが多いでしょう

    ・私のグループメンバーに対する教育方針は「これからは、配偶者・パートナーの業務都合で地球上のどこで働くか 分からない時代。たとえば南アフリカに行ったとしても、そこで家族を養っていける人間になってください」でした ・そのためには英語力は必須です。そこで新規に採用した新メンバーは、まず英語MTGに強制投入して、英語力の不 足を実感してもらい、社内の英会話教育を積極的に受講してもらい、「次のMTGではもっと内容を理解し、役立てる ようにするぞ」となるよう促していました ・英語の映画を字幕なしで理解するのは難しいですが、自分の業務や研究関連での英語MTGはそれなりに簡単です ・社会人になってから海外の人と仕事できる英語力を、高専の1年生のうちから少しずつ磨いてください
  14. 44 02 高専生は即戦力と呼ばれ、就活でも有利だが、私は修士卒まで行くことをお勧めします ・最近は、「高専生 即戦力」という文字が躍る記事が多く感じます [日経の例 link1 link2] ・とはいえ、そもそも高専生は高度経済成長期(1954年~1973年頃)の1962年に、「即戦力人材」を育てる機関 として設立されました。そのため高専は設立当初から「即戦力」というキーワードは当然のことでした

    ・しかしその後、日本がバブル時代に入るとのJapan as No.1時代が訪れます。世界で一番儲けている国という時 代です(私はバブル期の好景気は、為替の円安効果×国内40歳人口増加×東京への若者の移動、が主要因と考えて います) ・重要な点は、現在と高専設立時の1962年(60年前)を比べると、日本における、大学・大学院進学率が各段に 向上したことです(1960年頃の15%から、2000年代には55%へ 下図 [link1][link2])
  15. 46 02 高専生は即戦力と呼ばれ、就活でも有利だが、私は修士卒まで行くことをお勧めします ・その結果、最近はコロナ前とは違って、日本企業には余裕がなくなってきているように感じます([1] 新ビジネ スや研究・開発を減らし、既存ビジネスの人員強化。[2] 新卒採用・中途採用の人数を絞り、優秀な人だけ採用) ・しかし生産年齢人口も減少し、優秀な中途人材は奪い合いとなり、中途採用がうまくいかない企業が多いです ・それならば、新卒社員を即戦力にしたいと考えます。しかし、リーマンショック回復後から約10年、大学で甘々 に?育った人材を、企業は「現場で育てる」という仕組みでやってきた(やってくる余裕があった)。しかし近年

    は先行き不透明感が出てきたので、今いざ突然「新卒社員を即戦力に」と実践しようにも、現場にはその余裕がな くなってきた(またリモートワーク主体となり、リモートワーク主体の現場?で、これまでのように新卒社員を育 てるスキームも基本的には確立できていない)。それなら、始めから即戦力性の高い人材を求めるようになった (※このような、企業が採用において即戦力性人材を求めるのは不景気に入ると毎度の現象です。2009年のリー マンショック後も就活のキーワードは即戦力でした [下図2012年 link])
  16. 47 02 高専生は即戦力と呼ばれ、就活でも有利だが、私は修士卒まで 行くことをお勧めします ・令和の現在、コロナや国際情勢による景気の先行き不透明感(私的にはもう折れた)によって企業に余裕がなく なってきて、少しでも即戦力性の高い学生を新卒採用したいというニーズが、より強くなっています ・その結果、「即戦力性の高い人材として、高専卒の学生」、「高専という教育機関」が脚光を浴びる形になります ・重要な点が2つあります [1] 高専の先生方が時代の変化に合わせて、常に「即戦力人材を育てる」という高専教育の理念と実際のカリキュラ

    ム作成&講義を実施し、高専制度設立当初からの高専理念を体現して下さっているため、高専という組織の良さは保 たれています。高専において、時代に合わせたカリキュラムを作り、実践してくださっている先生方へ感謝致します [2] 企業が「即戦力性の高い人材として、高専卒の学生を」という文脈で求めているのは、基本的に「高専卒・即就 職」の20歳の学生ではありません・・・。もちろん私はそのような人生選択も否定しないですし、生き方は人それぞ れ(私の高専同期で卒業後即就職し幸せに暮らしている友人もたくさんいます)。ただし、社会で一般的に謳われる 「高専生 即戦力」とは、高専を卒業して、大学・大学院を卒業した新卒学生を指しています。「高専生は即戦力」 と言われたりもしますが、それが本当なら学部生、修士卒より給与が高くすべきですが、そんなことはなく逆です。 (例)企業において、高専卒を学部卒や修士卒以上の年収で新卒採用する会社を私は聞いたことがないです。少なく ともプライム市場(旧東証一部)の企業でそのような企業あるのだろうか? 当日の発表で詳細説明
  17. 49 02 高専生は即戦力と呼ばれ、就活でも有利だが、私は修士卒まで行くことをお勧めします ・私の参考アドバイスとしては、高専卒業後、修士までは卒業してから就職するのが良いです その理由は2点あります [1] 昨今はリカレント教育や生涯教育が重要視される時代です。社会人になってからも大学や大学院に行く人が増 えています(会社で働きながら夜間や通信や休業日に。もしくは、退職して完全に学生となって等) しかし、働きながらの「学部・修士」の卒業は大変です。授業は基本的に昼間が多いです。学部・修士は卒業研究 もあります。その結果、選べる大学や大学院、コースが限られてきます。とくに家族がいる場合、さらには子供が

    いる場合では、企業で働きつつ普通に大学の学部、修士に進学するのは非常に大変です。 一方で、「博士課程」であれば働きながら行くケースはさらに増えており、また企業での仕事内容が博士課程の 研究に直結している場合もあります。ろんぱく(論文博士)もありますが、普通の博士課程(課程博士)を卒業す る社会人も多いです。今後もますます増えるでしょう。博士課程であれば、授業も少なく、また研究も一人で進め、 ときおり先生とMTGという感じで進められます。そのため、博士課程は後からでもどうにかなりますが、修士まで は後から通うのは大変なので、先に進学・卒業しておく方が良いです。また、後述する、「社会人になるまでに習 得したい知識・スキル」の獲得期間を考えても、修士までは時間が欲しいです(と、私は考えます。具体的に習得 したい内容はこの後、03にて解説します)
  18. 50 02 高専生は即戦力と呼ばれ、就活でも有利だが、私は修士卒まで行くことを お勧めします ・私の参考アドバイスとしては、高専卒業後、修士までは卒業してから就職するのが良いです その理由は2点あります [2] 高専卒として、確かに即戦力で企業の現場で働くことはできます。ただし現在は人生100年時代であり、20歳 で就職してから、おそらく50年ほど働き続けることになります(現在の定年は65歳が大半ですが、70歳以上とな るでしょう)。今、即戦力で働けても、会社はあなたの今の即戦力な部分を使い倒すだけで、会社があなたや社員

    に幅広い成長の機会をくれない場合(基本、そうです。お金を稼ぐのが最優先)、新しい武器を獲得するのは困難。 それでも今までの日本なら、「メンバーシップ雇用形態」という名の、終身雇用制度のため、生きていけました しかし日本社会でその形は壊れつつあり、メンバーシップ型からジョブ型へ移行しつつあります(欧米では基本)。 例)「終身雇用難しい」トヨタ社長発言でパンドラの箱開くか [link] 例)日経:ジョブ型雇用とは 賃金、職種の価値が左右 [link] ジョブ型では自分で成長しないと給与が上がらないです(上位ジョブになれず、現在のジョブ継続)。そのため 下手をすると生涯賃金が激減します。私は日本においては、 ①中途採用からジョブ型が企業に浸透して企業形態が 徐々に変化、 ②新卒採用はだんだん中途採用と区別がなくなる(欧米はそんな感じ、だから新卒内定率が低い)、 の二つの変化が発生し、日本独自ジョブ型が広がると考えています。また、そこまで極端にジョブ型にならずとも、 私は人生において、「即戦力性」よりも、『即適応性(≒アジャイル)』(新たな技術や変化を素早く学び、自分 の武器にする能力)の方が重要だと考えています(例、私:脳科学の博士号からIT・AIの世界へ即適応) 当日の発表で詳細説明
  19. 52 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・起業家とは:アントレプレナーシップとイントラプレナーシップ アントレプレナーとは、外部起業家(いわゆる、法人登記して会社を起業する起業家) イントラプレナーとは、社内起業家(所属企業内で、新規事業を創り出す企業内起業家)※前職の私はこちら ・起業家精神とは この言葉の定義は人それぞれですが、私の「起業家精神」の定義は以下の通りです [1]

    起業家精神とはアントレ、イントラを問わず、起業家に重要なマインド(考え方)を意味します [2] とくにイントラの場合は、既存事業の歯車となり、自身の成長を考えず、日々働いて稼ぐだけ状態を避けます [3] とくにイントラの場合は、たんなるぶら下がり社員にならないよう気をつけ、自身で成長を意識して働きます [4] 美の実現を目指す:自身が美しいと想う社会・世界を描くことができ、現在および流れゆく未来の社会・世界の 美しくない面を見つけ、それを変えようと行動を起こせる(不満、不快、不便といった「不の解消」という起業家の 考え方はこの一部となります。ただし「不の解消」ではなく「美の実現」としているのが重要ポイントです) [6] 超一流の人材を目指す( 【三流の人材】を普通の人材と定義。【二流の人材】とは三流の人材よりも短時間で同 じ成果を出せる人材(効率性)、【一流の人材】とは二流の人材が何人集まっても作れない独創的成果を創れる人材 (創造性)、【超一流の人材】とは一流の人材が一人では作れない大規模な成果を仲間をともに創れる人材です)
  20. 53 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・起業家精神の中でも、本スライドでは、[4]の「美の実現」を解説します ※美の実現:美の実現を目指す:自身が美しいと想う社会・世界を描くことができ、現在および流れゆく未来の社 会・世界の美しくない面を見つけ、それを変えようと行動を起こせる ・「美の実現」を実行するには、美しい社会・世界を想像したり、現在の社会・世界を見渡してそれに満足するの ではなく、「もっと、ここをより良くしたい」と思える・感じられることが重要です。 ➡そのためには、今までどのように社会・世界が成り立ってきて、今後どのように発展していくであろうか、

    「流 れゆく未来」を想像できる必要があります ➡この「流れゆく未来」を想像できるからこそ、「このままではあかん!」と強く想い、行動に移せます ➡この「流れゆく未来」を想像するのに重要な力が「教養」です ➡「教養」という言葉の定義も難しいですが、私の場合や私の講義では「教養」を以下のように定義します 「教養とは、人間そして人間社会とはどういったもので、どのように形成されてきたのかの知識であり、現状を分 析し、この先の流れゆく未来を想像する能力」
  21. 54 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) (再掲)私は、「教養とは、人間そして人間社会とはどういったもので、どのように形成されてきたのかの知識で あり、現状を分析し、この先の流れゆく未来を想像する能力」と定義しています ➡「人間そして人間社会とはどういったもので・・・」という前半部分が大切な理由は、「人間」、「人間社会」 とはどのようなものなのか、その本質を理解していないと、チームや社会で真のリーダーシップを発揮し、マネジ メントを実践し、チームや組織で大きな価値・成果を作り出すことが難しいからです(超一流人材となるための必 要条件です)

    ➡「どのように形成されてきたのかの知識であり・・・」という後半部分が大切な理由は新たな価値創造に向けた 検討に必要なスキルだからです。 新たなビジネスやサービスを新規立案する際には、マクロな動向(流れゆく未来)を考慮・検討して事業戦略を 立案します。このような際に一般的に使用される便利な考え方として、PESTフレームワークがあります。これを 使用して皆でディスカッションするのが一般的です ➡次ページでPESTフレームワークについて解説します
  22. 55 マクロ分析 PEST Politics:政治・法規制的な要因とその未来動向 Economy:経済的な要因とその未来動向 Society:社会・文化・ライフスタイル的な要因とそれらの未来動向 Technology:技術的な要因とその未来動向 PESTELは、PESTに加えて、 Environment:環境問題に関する要因とその未来動向 Legal:法律の立法や法規制による影響とそれらの未来動向

    が追加です。PESTのSocietyとPoliticsから、EとLを抜き出して強調したい場合に使用します DEEPLISTは、Demographics(人口統計・動態)、Economy(経済)、Environment(環境)、 Politics(政治)、Legal(法規制)、Information(情報、データ)、Society(社会)、 Technology(技術)。とくに自社や他社が持つデータの重要性を強調したい場合に使用します PESTEL マクロ分析の目的は、提案する新規ビジネスに影響を及ぼす可能性があるマクロな要因を整理すること です。よく使用されるフレームワークであるPESTとその派生形を押さえておきます 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) DEEPLIST
  23. 56 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・PEST、PESTEL、DEEPLISTと紹介しましたが、PESTで十分です(PEST考える際にDEEPLISTまで検討して PESTにまとめれば良いです。DEEPLISTのままでは要素が多すぎて扱いづらいので) ➡しかし私が外部のワークショップや勉強会などで他の社会人と一緒になったり、実際にいろいろな活動していて も、新規事業を取り巻くマクロ動向を予測するために必要なPEST(P(政治)、E(経済)、S(社会)、T(技 術)について、深くまともに考察できる社会人にはほとんど出会いません。それはなぜか? ➡その理由こそが、私の教養の定義の「人間社会とはどういったもので、どのように形成されてきたのかの知識で

    あり・・・」の部分になります。要は、近代・現代の政治・経済・社会・技術がどのように形成されてきたのかの 今までの流れをきちんと理解していないので、この先、将来にこれらがどう流れていくのかをきちんと描けないの です。 ➡とくに重要なのは、明治時代になってから(だいたい19世紀以降)、近代から現代から現在までです(政治、社 会は18世紀からになりますが) ➡この、近代政治、近代経済、近代社会、近代科学の、日本および世界での成り立ちと現在までの発展の流れをき ちんと押さえることが大切です
  24. 57 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・一例:榎本武揚(えのもと たけあき)と、日本の近代科学の勃興 榎本武揚(えのもと たけあき)は旧幕臣です。明治維新の戊辰戦争において、幕府側として、 北海道函館にある函館五稜郭に閉じこもり、事実上の独立宣言後、函館戦争の幕府側トップと して新政府側と戦いました(このとき、新選組の土方歳三も幕府側で参戦し、戦死しました。

    ※漫画「ゴールデンカムイ」等では土方は明治も生きてる設定ですが。。。) ここまでが榎本の第一の人生。でも重要なのは彼の第二の人生。 高専関連者も関係が深い「電気学会」は1888年(明治21年)に設立され、現在は、斉藤史 郎先生(東芝)が第107代会長を務めていますが、その初代会長が榎本武揚です。彼は電気学 会をはじめ、日本の明治の科学技術の発展を政治的側面からリードしていきました。 その背景には、榎本は幕末にジョン万次郎のもとで英語を学び、咸臨丸でオランダに留学し て電気通信などの工学関連を学び、帰国。オランダから日本に初めて「モールス信号の電信 機」や 「万国海律全書」(国際法の書籍、これがないと日本は開国しても海外とのやりとり が法に従ってできない)を持ち帰ったりと、幕末において日本一とも言える理系×政治の人材 でした。そのため明治時代は第2の人生として、近代日本のとくに科学技術の発展に尽くした 人物です。彼の人生は面白く、左の書籍がおすすめです(明治時代が丁寧に描かれている)。 榎本武揚―幕末・明治、 二度輝いた男 (PHP文庫) [link]
  25. 58 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・ここまで、 [1] 起業家精神を発揮するには、「美の実現」が大切 [2] 美の実現のためには、「教養」が大切 [3]

    「教養とは、人間そして人間社会とはどういったもので、どのように形成されてきたのかの知識であり、この 先の流れゆく未来を想像する能力」 である [4] 流れゆく未来を想像することは新規事業立案、起業に重要であり、PESTというフレームワークにまとまる [5] PESTフレームワークを使うには未来を想像・検討するために、近代・現代での成り立ちから現在までの流れ を押さえることが大切 と解説しました。 もちろん私自身、上記について完璧とは言えずほど遠いです。 しかし上記を意識し、その学びの時間を大切にしています
  26. 59 そして今、私が高専時代、そして高専卒業後の人生を振り返ると ・東大に編入した際に、制度上で一学年留年となり、教養課程の学び直しの機会が得られた経験は大きかったです ・大学という書籍の宝庫に自由に無料でアクセスできる環境は、お金のない学生時代にはありがたかったです ・高専の授業になぜ歴史(世界史、日本史)、地理(地政学)、政治経済、「公共(22年から)」などの文系科目 あるのだ・・・と当時は不満でした。こうした高専の文系授業は、高校過程として文科省から必須化されているか ら存在しているという側面はあるのだと思います(無くすことはできない)。しかし、高専という場所は、普通 高 校の大学入学共通テスト(旧センター試験) に向けた授業とは違い、起業家精神の教育に重要な講義をしてくれて

    いた!!と今になって気付きます。当時、もっとしっかりと学べば良かった…。もっと先生とディスカッションす れば良かった・・・。と後悔しています ・さらに、高専の普通科教育の先生は高校生を教える教育免許は必須ではなく、むしろほとんどの高専において、 その学問(歴史やら数学やら)で、博士号を取得していることが求められます(次ページ例 [link1 link2]) ・そのため、高専の文系科目の教員の多くは博士号持ちで、その学問の本質的な部分を研究していて、それをうま く教えてくれる先生が多いです(基本的に、博士号持ちの分、普通高校の教員よりもその分野に精通している) 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す)
  27. 62 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、 知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) そして今、私が人生を振り返ると ・高専の文系科目の教員の多くは博士号持ちで、その学問の本質的な部分を研究していて、それをうまい具合に教 えてくれる先生が多かったです ・私が高専に不足していると私が感じるのは、 •高専とは「卒業後に即戦力人材として働ける20歳を育てる機関」という過去からのあり方(実践的専門技術)

    に加えて、 •高専とは、大学共通試験に縛られていない利点を生かし、旧センター試験のための勉強ではなく、起業家精神に 必要な教養の土台を構築する機関(とくに政治、経済、社会、科学技術全般、そして歴史と地政学)という考え方 とその実践(即対応性と価値創造につながる教養の醸成) と、考えています。 現状ですでに近い形が構築できているので、より明確に起業家に必要な教養的観点を意識的に体系化して教えるこ とが大切です。 高専というとどうしても「早期からの実践的専門技術」の教育に焦点が当たりがちですが、 実は「起業家精神や新たな価値創造に重要な教養をじっくりと養える教育機関」である点を、私は強調したいです 当日の発表で詳細説明
  28. 63 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・高専生および、大学生・大学院生、そして若手社会人に向けた「教養」の磨き方 [1] 教養を磨くのに一番の方法は、テーマに沿って、教養ある人とディスカッションしたり、直接薫陶を受けること です(高専の一般科目の授業がまさに該当) [2] 次いで教養ある人とメシ食いに行って、最近どんなことをどんな風に考えているのか話を聞いてみることです

    [3] 次いで教養ある人と一緒に働くことです(ただしこの方法はその人から教養を学ぶには時間がかかります) [4] 次いで、最後の効果的でかつ、独りでもできる教養が身につく方法は、書籍を読むことです ・ただし、これも時間がかかります ・また書籍の選定が難しいので、最初は誰かが公開しているおすすめ教養本書籍リストから読むのが良いです ・一方で一般公開されている教養本リストは、起業家精神を養うレベルを超えていて、18世紀、19世紀の原本が紹 介されていることも多いです。これら、原本は理解するのが大変難しいです。。。 ・そのため私は、こうした教養本の原著・原本を、教養ある人が読んで解説してくれている書籍をおすすめします ・読書での教養の土台がないと、上記の[2]、[3]で教養ある人と話しをしても活かせないので、読書は重要です ・社会人になると学生と違って、書籍を読むのに充てられる時間が減ります。激減です。社会人若手は仕事のキャッ チアップや周辺領域の自己学習で多忙。結婚、さらに子供ができると、自分の自由時間はほぼなくなります。教養を 身につけるための読書は、学生時代に大量にこなすのが重要です。そして高専生活の5年間では書籍を読み切る時間 としては足りないので、修士卒までの9年間程度の時間をかけるのをおすすめします(500~1,000冊は読書推奨)
  29. 67 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・続いては、教養を活かし未来を想像したときに、 「このままではあかん!」と強く感じた際、想うだけでなく、 実際の行動に移すために必要な能力に重要な、「I型人材→ T型人材→π型人材→櫛(くし)型人材」、について 解説します I型人材

    「I型人材」とは、一つの専門性を習得した人材を意味します。 高専卒業後の学生(20歳)は基本的に、自身の学科内容と高専卒業研究を経験した 「I型人材」です。 私の場合は、電気情報工学科 電気電子工学コースで5年間学び、ロボコンに2年間 挑戦し、高専卒業研究では筋電義手について研究することで、「電気電子工学」に 専門性を持つ、「I型人材」に成長しました。
  30. 68 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・続いては、教養を活かし未来を想像したときに、 「このままではあかん!」と強く感じた際、想うだけでなく、 実際の行動に移すために必要な能力に重要な、「I型人材→ T型人材→π型人材→櫛(くし)型人材」、について 解説します T型人材

    「T型人材」とは、一つの専門性のI部分に加え、土台となる周辺領域の知識・スキル を浅く広く習得した人材です(Tを逆向きにして、横棒をIに足すイメージです)。 例えば、高専卒業後の大学編入し、「工学分野全般」を再学習して定着させた人材は 「T型人材」とも呼べます。 私の場合は、東大精密工学科で2年間学び、それまで不足していた機械系や情報系 の知識を学び、「メカトロニクス」を浅く広く押さえました(左図の )。 さらに、一般的にはT型人材を2段階に分けることはないのですが、私は横棒を2種類 に分けて考えており、ここまでに解説した「教養」についても、大学時代から伸ばし 始めました(左図の )。
  31. 69 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・続いては、教養を活かし未来を想像したときに、 「このままではあかん!」と強く感じた際、想うだけでなく、 実際の行動に移すために必要な能力に重要な、「I型人材→ T型人材→π型人材→櫛(くし)型人材」、について 解説します π型人材

    「π型人材」とは、一つの専門性のI部分に加え、土台となる周辺領域の知識・スキル を浅く広く習得した土台の横一文字、に加え、もう一つの専門性を習得してI部分が2 本になった人材です(πが逆を向いたイメージ)。 例えば、高専卒業後に大学編入し、学部卒業研究、そして修士へ進学して、国内学会 での発表まで経験し、もう一つの専門性を習得した人材です。 私の場合、東大精密工学科神保・小谷研で「工学分野から脳科学(神経科学)」に ついて、学部、修士、そして博士号取得までの経験を積みました(左図の )。 さらに、学部から博士までの時間で読書を積み重ねたり、インターンでいろいろな企 業で働いたりして、T型の横文字の「教養」をより伸ばしました(左図の )。
  32. 70 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・続いては、教養を活かし未来を想像したときに、 「このままではあかん!」と強く感じた際、想うだけでなく、 実際の行動に移すために必要な能力に重要な、「I型人材→ T型人材→π型人材→櫛(くし)型人材」、について 解説します 櫛(くし)型人材

    「櫛(くし)型人材」とは、 「π型人材」がさらに専門性を習得してI部分が3本以上に なった人材です。 例えば、高専卒業後の大学編入し、修士卒業後に企業で働きだして5~6年間が経過し て、30歳程度となり、その企業で一つの仕事分野で専門性を習得した人材です。 私の場合は(株)電通国際情報サービスに入社後に「ITとAI」技術について、研修 を受け、仕事をし、業務時間外の書籍執筆がてら自己学習を積み重ね、新たな1本の 縦棒を伸ばしました(左図の )。 また企業で働くようになると、仕事経験やメンバーのマネジメント経験などから 「教養」部分も実経験として広がっています(左図の )。
  33. 71 03 起業する必要はないが、起業家精神は非常に重要。新たな価値を創れる、知の土台を構築して 社会に出て欲しい(π型人材、櫛(くし)型人材を目指す) ・続いては、教養を活かし未来を想像したときに、 「このままではあかん!」と強く感じた際、想うだけでなく、 実際の行動に移すために必要な能力に重要な、「I型人材→ T型人材→π型人材→櫛(くし)型人材」、について 解説します 櫛(くし)型人材

    「櫛(くし)型人材」や「π型人材」になると、「かけ算効果」が効いてきま す。藤原和博さん(東京都初の民間校長先生された方)がよく述べていま すが [link]、一つの専門分野で、同世代(約100万人)のTop 1人材にな るのは大変ですが、3本の専門性がそれぞれ同世代の1%、100人に1人レベ ルになれば(同世代全員での100人に1人なのでまずまず簡単であり)、 100×100×100で100万となり、同世代で同様の人材はほぼいないレベル になれます。 私の場合ですと「IT・AI」 ×「脳・神経科学」× 「電気・電子」の3つ のかけ算人材という切り口で考えると、とても稀有になります。そして 「メカトロニクス(ロボを中心とした科学技術全般の知識)」と「教養 (起業家精神、新規事業の実経験)」の土台があるため、他者とは異なる 形で、起業家精神の想いを実際の行動に移すことができます 小川の例 教養 メカトロニクス 電気・電子 脳・神経科学 IT・AI
  34. 75 04 私が悩んだ際に立ち返る、「5つの考え方・行動基準」 【1】選択肢が将来的に狭まらない方を優先する 例えば、大学の先生からビジネスの世界へは転職しづらいですが、ビジネスから大学の先生はまずまず多いパター ンです。そのためアカデミックとビジネスを迷った場合は、上記の基準に従い、まずビジネス側のキャリアを選び ます(※あくまで、私の場合はそうでした。私の具体的な選択方法が、常に人として絶対に正しい生き方というわ けではありません。あしからず。。。) 上記の考え方は、ジェフ・ベゾスの「ワンウェイドア、ツーウェイドア」による意思決定 [link]とも似た考え方で

    す。逆戻りできない選択肢(ワンウェイドア)と、失敗しても元に戻ることが可能な選択肢(ツーウェイドア)が あった場合、ワンウェイドアの意思決定は慎重に行いますが、ツーウェイドアに関する意思決定は迅速に下して、 失敗すればすぐに戻る、とも近い考え方となります。 極力、目の前の問題をワンウェイドアにならないようにして、ツーウェイドアになるように置き換えます(※ただ し、ワンウェイドアへ飛び込むのが大切な場合もあります。【2】へ)
  35. 78 04 私が悩んだ際に立ち返る、「5つの考え方・行動基準」 【4】成果(結果)を出すために、アウトプット(自身らの出力)に焦点を当てて、コントロール・最適化する 例えば弓道において、適切な弓の引き方(自身の行動、アウトプット)はコントロールできますが、その結果、撃 たれた矢が的の真ん中(図星)に当たるかはコントロールできません(成果はコントロールできない)。そのため、 コントロールできる対象に対して意識的に焦点を当てて集中し、そちらをしっかりと最適化を試みます。 「テストで100点を取る」という成果はコントロールできませんが、「テスト勉強に毎日3時間頑張る」という 自身の行動・アウトプットはコントロール可能なのと同じです。これは「研究」や「新規事業」のような不確実性 の高い仕事にも当てはまります。不確実性の高い仕事で成果(アウトカム)に焦点と評価を置くと、失敗への恐れ

    や上手くいかないことへのストレスで潰れてしまいます。不確実性の高い挑戦だからこそ、コントロール可能な自 身らの行動(アウトプット)に焦点を当て、アウトプット(自身らの行動)の最適化を大切にします。すると、弓 を美しく正しく引ければ、自然と矢が的の図星に当たるのと同様に、成果(アウトカム)もついてきます(※成果 を出すべく頑張らなくて良いというわけではないです。アウトプット最適化で、成果に向けて全力を尽くします) この考え方は、書籍「日本の弓術」、「弓と禅」の内容、精神に近い考え方です。両書籍はどちらもオリゲン・ ヘイゲルというドイツの哲学者が、日本に留学中に東洋哲学・禅の思想を弓術から学び、 それを西洋に紹介した書籍です。書籍「日本の弓術」はドイツ語の原著第1版を 日本語化したもので、読みやすいです。書籍「弓と禅」はドイツ語の原著第3版を 日本語化したものでかなり哲学色が強いです。「日本の弓術」から読むのがおすすめ。
  36. 82 05 今しかできないこと、高専生の今だからこそできるバカ騒ぎをして欲しい ・先ほどの私が悩んだ際に立ち返る、「5つの考え方・行動基準」の【5】時間とお金は、「今」しかできないこと に最優先して使用する、に関連しますが、 現役高専生のみなさま、そして高専卒業生で大学生・院生の方や社会人の若い方には、30代以降でもできることよ りも、「今」しかできないことを最優先し、青春を謳歌して欲しいです ・15歳から20歳という人生を重要な時期を共に過ごす高専の友人たちと、一生の朋(とも)になって欲しいな~ と思います ・18歳の成人までは、変に大人びる必要はないと思います。18歳以降からは徐々に社会で働き、活躍することに

    向けて準備をしていくと良いですが、若いうち、とくに高専時代は馬鹿やりましょう♪それが後々の人生の財産に なります(ただし、他人にひどく迷惑をかけて、警察にはつかまらない程度に)。私もオープンにはスライドに書 けないことだらけをやってきました・・・ ・毎晩のように寮では同期や後輩と集まって、酒やジュース片手にワイワイたくさん語り合い、遊び、いろいろな アイデアを試したりしました。高専ロボコンの全国大会に出場したのも、私はロボコン部所属ではなく、寮生の同 期を中心にチームを組んで、取り組んだ挑戦でした。高専時代にしかできないこと、「今」を楽しんでください♪
  37. 83 05 今しかできないこと、高専生の今だからこそできるバカ騒ぎをして欲しい ・遊べ、と言っておいて何ですが、読書だけは早くから始めてください。高専生にとって最も足りない部分だと私 は感じています。本スライドで紹介したリスト [書籍リストへのlink] や、本スライドの最後に紹介する書籍など を読んでみてください ・高専という場所で、「即戦力性」に加えて、「即適応性」も持ち合わせるように、じっくりと将来の人生で役立 つ土台、すなわち「教養」についても、意識的に構築して欲しいです(教養の定義や内容は本スライドの途中に掲

    載の通りです)。 ・すぐに身につく能力はすぐにコモディティ化して、他者との差別化の武器にはなりません。じっくり時間をかけ て磨いた知識・スキルこそが自分の人生において他人との差別化となり、自らの武器やオリジナリティ、アイデン ティティにつながります ・結局、古くから言われている通り、「よく学びよく遊べ」です。この格言を「高専生」という文脈においてうま く実行してください。本スライドがその一参考になれば幸いです。
  38. 87 ・高専生および、大学生・大学院生、そして若手社会人に向けたおススメの読書本リストを紹介します(その2) さいごに 技術者の起業物語系 「ルンバを作った男 コリン・アングル「共創力」」[link] 掃除機業界に革命をもたらしたルンバはいかにして作られたのか。iRobot社CEOのコリン・アングル の少年時代から、ルンバ以前のロボ開発事業の話、そしてルンバへの挑戦が丁寧に描かれた書籍です 「逆風野郎 ダイソン成功物語

    」[link] 2004年出版の書籍。ルンバとは違った形で掃除機業界に革命をもたらしたダイソン社。その創業者で あるジェームズ・ダイソンの少年時代から主に「DC01」の開発・販売までの詳細を丁寧に描かれた書 籍です。デザイン思考の文脈でダイソン社はよく例に挙がるので、彼の人生はぜひ押さえておきたい 「インベンション 僕は未来を創意する」[link] 2022年出版。ジェームズ・ダイソンの「DC01」の 開発以降、日本で私たちに馴染みのあるダイソンのCMや掃除機、そしてドライヤーや扇風機などが開 発されていく詳細を描いた最新書籍です。第1章から第5章までは上記の書籍「逆風野郎」の内容を圧 縮しており、逆に分かりづらいので、前書を読んだあと、本書の第6章から読むのをお勧めします
  39. 88 ・高専生および、大学生・大学院生、そして若手社会人に向けたおススメの読書本リストを紹介します(その2) さいごに 技術者の起業物語系(ウォルト・ディズニー系) 「ウォルト・ディズニーに学ぶ七転び八起き経営」[link] ウォルト・ディズニーはアニメーション映画、そしてディズニーランドと大きな2つの革命をもたら した技術者・デザイナーです。これらがいったいどのようにして生まれたのか、兄ロイ・ディズニー との二人三脚での少年時代から、ディズニーランド開業までの物語です 「ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法」[link]

    トイストーリー、アナと雪の女王をはじめとした、新たなアニメ映画の世界観を創り出したピクサー 社創業の物語です。自分で創業したApple社をクビになり、ピクサー社のCEOに就任したスティーブ・ ジョブズ、ピクサーの映画配給・共同制作から最終的には買収をしたディズニー社、そして最初の創 業者エド・キャットムル、今のピクサーを創り上げた名監督ジョン・ラセターの織り成す物語です
  40. 89 ・高専生および、大学生・大学院生、そして若手社会人に向けたおススメの読書本リストを紹介します(その2) さいごに 明治の起業家:渋沢栄一シリーズ 「現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)」[link] これからの1万円札になる渋沢栄一の代表作です。渋沢栄一は幕末から明治・大正までの実業家とし て、現代も続く多くの会社を起業した人物です。その彼が晩年、自身がずっと心の拠り所としていた 「論語」と自身の実務である「経営(算盤)」の両輪の大切さについて説いた書籍です

    「雄気堂々(上・下) (新潮文庫) 」[link] 渋沢栄一の伝記的物語。渋沢栄一の伝記は少なく、自伝もないので彼の生涯を知りたい場合はこの小 説がもっともおすすめです。渋沢栄一がいったいどのような人生を歩んだのか、少年時代から明治の 途中までを追体験できます 「渋沢栄一「論語」の読み方」[link] 論語から重要な節を抜き出して、その意味を渋沢栄一が解説 した書籍です。そして、単にその節の意味の解説だけでなく、彼の人生を振り返り、「この句と照ら して考えると、西郷隆盛はこうだった・・・」などと、幕末・明治の有名人たちと渋沢栄一の実際の 経験から論語の内容を落とし込んで各句を解説した、素晴らしい書籍です
  41. 90 ・高専生および、大学生・大学院生、そして若手社会人に向けたおススメの読書本リストを紹介します(その2) さいごに 高専生、高専出身の技術者・科学者におすすめの読み物 「「大発見」の思考法 iPS細胞 vs. 素粒子 」[link] 山中伸弥先生(京大、バイオ)と一昨年逝去された益川先生(東大、物理)のノーベル賞コンビの対

    話本。一流の研究者がどのように発見・創造について考えているのかを探るのに最適な素晴らしい書 籍です 「素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術」[link] カーネギーメロン大学でロボット工学の権威である金出(かなで)先生が、自身の考え方や問題解決、 研究やロボット開発の進め方について、いろいろと思うところを語っている書籍です。きっと心に来 る言葉やヒントが見つかるでしょう 「「非まじめ」のすすめ」[link] 世間の方に高専のイメージを尋ねるときっと多くの回答に「ロボコン」が挙がると思います。この 「ロボコン」を創り出したのが、本書の著者であり、当時、東工大の先生であった、森政弘先生です。 真面目でもなく、不真面目でもなく、非まじめという概念による創造的思考法が解説されています
  42. 92 私たちの子供世代は、ドラえもんの時代まで生きていきます それまでに日本と社会をより良くするために、一緒に何かやれる人はぜひいろいろ交流させてください いま10歳、2012年生まれの子供は現在の平均寿命(平均約85歳)よりも、もっと長生きします。 50%の確率で108歳(2119年)まで生きるそうです。ちなみに、ドラえもんの誕生日は2112年9月3日です。 つまり、いま10歳の子供はドラえもんの誕生に立ち会うことができます!! なお1986年生まれ、現在約35歳の人は50%の確率で99歳まで生きるそうです。2087年頃までです。 私はドラえもんまで生きるのは無理なようです。残念・・・ ですが、この高寿命化の時代、100年生きることを前提とした人生設計、生き方、そして地球、世界、日本、社会との付き合い方、 仕事の仕方、学び方が大切と言われています。

    私は自分の子供がドラえもんが誕生するような時代まで生きることを前提に、子供たちや後輩たちをこの先の未来の社会で、しっ かりと自分や家族、大切な人を守れる大人になれるように育てるとともに、後世に誇りを持って託せる地球、世界、日本、社会を 創っていくように頑張ろうと、自分にできる、小さなことから一つずつ挑戦している最中です。 同じような想いを抱く方と様々な交流ができることを楽しみにしています 小川 雄太郎 さいごに
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