実証実験を通して描く、街で活躍する対話ロボットの未来予想図 - Bit Valley 2021「街とスタートアップ」

https://2021.bit-valley.jp/program/local-startup/
Bit Valley 2021 の発表資料です。
街中で（長く）活躍するロボットの課題やビジネス価値を整理しました。

Transcript

1. 実証実験を通して描く、 街で活躍する対話ロボットの 未来予想図 株式会社サイバーエージェント AI Lab 主任研究員 馬場 惇
2. 自己紹介 馬場 惇（Baba Jun） • 株式会社サイバーエージェント AI Lab 接客対話エージェントグループ 主任研究員 • 大阪大学 招聘研究員 2014年：京都大学修了、CAに入社 2014年~：広告部門初の研究組織を立ち上げ ~2017年：DSP事業のロジック開発責任者 2017年~：研究業務に従事、共同研究講座の運営 baba5246 Jun Baba
3. 研究開発組織「AI Lab」
 デジタルマーケティングに関わる幅広い領域の研究開発　　　　　　 産学連携 高度な技術を持ち、実用化に積極的な大学・学術機関との産学連携を積極的に行っています。 これまでにも各研究分野において、多数の大学・機関と提携しています。 実績（国際会議論文・論文誌）： • 2020年： 23本 • 2019年： 21本 • 2018年： 6本
4. 街中で活躍する対話ロボット
5. 「対話」を主業務とするサービスロボット 清掃・監視・運搬
6. 次世代メディアとしての対話ロボット PC の普及 スマートフォン の普及 広告事業の売上推移 次のマーケティング支援手段としての 対話エージェント 次のフェーズ
7. 大阪大学 石黒研究室との共同研究 石黒研究室
8. 大阪大学との共同研究講座 大阪大学内に研究室をつくる「共同研究講座」を2017年から開設 大阪大学 基礎工学研究科 石黒研究室 先端知能システム共同研究講座 中西先生 （特任助教） 小川先生 (招聘准教授) 倉本先生 （招聘教授） 羅先生 （特任助教） 石黒先生 （教授） 吉川先生 （准教授） AI Lab 研究員
9. これまで実施した対話ロボットの実証実験の一覧 2017年からの4年間の研究で、全 19 フィールドで 26 の実証実験を実施 遠隔対話ロボット@保育園 遠隔対話ロボット@ミュージアム 自律対話ロボット@商業施設 自律対話ロボット@ビジネスホテル
10. 街中のどこでなら対話ロボットは活躍できるのか ↓ 価値とコストが見合うか
11. 価値とコスト • 価値：増加できる売上、または、削減できるコスト ◦ 例：インフォメーションデスク = 人員の削減 ◦ 例：受付窓口 = 人員の削減 ◦ 例：ホテル接客 = 宿泊料金の向上 or 人員の削減 ◦ 例：教育サポート = 教育料金の向上 or 人員の削減 ◦ 例：商品の推薦販売 = 販売売上の向上 • コスト：ロボットの初期コスト・ランニングコスト・人件費 ◦ 例：ロボットの開発費・機材原価を含む初期コスト ◦ 例：ロボットの維持費・運用保守費用を含むランニングコスト
12. 絶対に満たさないといけない関係 　価値 ＞ コスト
13. 絶対に満たさないといけない関係 　価値 ＞ コスト ⇒ 満たすことが非常に難しい関係
14. 対話ロボットの２種類の制御方法 自律制御 遠隔制御
15. 自律対話ロボット • 周囲の状況を認識し、自律的に動作を決定し実行するロボット • 深層学習の進化により、可能な動作の幅が大きく広がっている 行動認識の精度（paperwithcode） 自律コミュニケーションロボットの構成 （ATR IRC知能ロボティクス研究所） 音声認識の誤り率（paperwithcode） 深層学習の登場
16. 実証実験から見えた、自律対話ロボットの課題 店舗や施設の環境によって、認識能力が著しく下がる • 原因１：システムへのインプットとアウトプットが劣悪 ◦ インプット：館内アナウンス・館内BGM・風・話しかけ位置と角度が影響する ▪ 音声認識だけでなく、発話終了判定も難しくなる → ロボットが行動できない ◦ アウトプット：出力した音声が聞き取れない環境 スーパーマーケットでの実証実験の様子 

17. 実証実験から見えた、自律対話ロボットの課題 店舗や施設の環境によって、認識能力が著しく下がる • 原因２：ネットワーク環境が整っていないと、処理速度のネックになる ◦ 人間の発話を認識 → 返答までの時間が大きくなると対話感が損なわれる 音声認識・音声合成は外部サーバーが担当することが多い （教えてカナコさん! これならわかるAI入門） 反応時間は1秒以上・2秒以内に反応しないと評価が下がる 志和敏之, 神田崇行, 今井倫太, et al (2009) 対話ロボットの反応時間と 反応遅延時における間投詞の効果. 日本ロボット学会誌
18. 実証実験から見えた、自律対話ロボットの課題 店舗や施設の環境によって、対話能力が著しく下がる • 各施設ごとに準備・学習すべき対話例が違う（ドメイン知識だけでなく、話し方・戦略が変わる） 保育園の発話例 やさしく楽しい話し方、わかりやすい 単語、すべてを褒める
 商業施設の発話例 明るく楽しい話し方、質問を誘う呼びかけ、 回答すべき知識が多い、ワードセンス
 ホテルでの発話例 丁寧で礼儀正しい話し方、様子を伺う 対話、気をきかせるための観察
 ・みんなー！げんきー？ ・おはようー！今日も会え 　て嬉しいよー！ ・元気なあいさつ！ ・今日はおねつないかな？ ・すごいね！そんなことも 　できるんだー！ ・いらっしゃいませ！ ・「アルバムはどこにある 　の？」って聞いて！ ・お手洗いは10Fにあるよ。 　右手のエスカレーターを 　上がってね。 ・困ったなあー、誰か話を 　聞いてくれないかなー ・いらっしゃいませ。 ・ごゆっくりお寛ぎください 　ませ。 ・（カバンを漁る様子から） 　お客様、何かお困りなこと 　はございませんか？ ・ご夕食がまだでしたら、 　ルームサービスは如何で 　しょうか？
19. 街中の自律対話ロボットは コストを低くできるが 　価値が出しにくい
20. 遠隔対話ロボット 遠隔にいるオペレータが、インターネットを経由してロボットを操作し、現地にいる相手と会話する • オペレータの認識能力と対話能力で対応できる ◦ 会話が成り立つ、スキル次第で対話継続力・説得力が上がる • オペレータの記憶力・学習能力を利用できる ◦ 施設ごとの知識・対話戦略をオペレータが学んでくれる ◦ まとめてデータベース化・スクリプト化でき、インタフェースが情報を提示できる オペレータ
 PC・タブレット スマートフォン ロボット・ディスプレイ ユーザ

21. 遠隔対話ロボットによる販売促進の例 ベーカリーでの販売促進（1週間）実験で、売上前年比128%を達成
22. 実証実験から見えた、遠隔対話ロボットの課題 1ロボット-1オペレータでは価値とコストが見合わない そもそも現地スタッフは優秀で「とても安い」 オペレータ 人件費 提供できた 価値 増加売上・ 削減コスト ロボット 導入コスト 遠隔対話ロボットは 人件費と同じ分の価値を提供できても コストが見合わない オペレータ 人件費 提供できた 価値 増加売上・ 削減コスト 現地スタッフの場合 ロボット 導入コスト 提供できた 価値 増加売上・ 削減コスト 自律ロボットの場合
23. 実証実験から見えた、遠隔対話ロボットの課題 複数のロボットで対応するときの課題：同時にきた複数のユーザ対応 [Glas, 2012] Glas DF, Kanda T, Ishiguro H, Hagita N (2012) Teleoperation of Multiple Social Robots. Ieee Transactions Syst Man Cybern Part Syst Humans 42:530–544. 

24. 街中の遠隔対話ロボットは 価値は提供できるが 　コストが大きい
25. 未来予想：自律と遠隔のハイブリッドが基本になる TELEOPERATION AUTONOMOUS
26. 新たにビジネス価値が出てくる４ポイント TELEOPERATION AUTONOMOUS ④ オペレータ・タレント 　 人材の事務所・派遣 ③ セキュリティを守れる 　 在宅環境構築 ① オフライン情報を会話で 　 オンライン情報に。 ② 接客スキルを高める 　 操作インタフェース
27. さいごに さらに詳細を知りたい方・実験したい方は、オンライン報告会へのご参加もお待ちしております。