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エンジニアの楽しさはどこに行ってしまったのか?

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September 18, 2026
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 エンジニアの楽しさはどこに行ってしまったのか?

Product Engineer Session #10 (2026/09/17) の発表資料です。
https://pesess.connpass.com/event/400876/

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September 18, 2026

Transcript

  1. 1 モチベーションの見取り図 自己決定理論( SDT)の3つの欲求 Richard M. Ryan / Edward L.

    Deci 心理的欲求 仕事の中で得たい感覚 自律性 自分で意味を認めて、選び、取り組んでいる 有能性 工夫が効いた。理解できた。できることが増えた 関係性 仲間とつながり、互いの貢献を尊重している 仕事の条件が、動機づけの質に関わる。 Ryan & Deci (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being. American Psychologist, 55(1), 68–78. 05
  2. 1 モチベーションの見取り図 フロー理論 Jeanne Nakamura / Mihaly Csikszentmihalyi 気づいたら、 こんな時間になっていた。

    ZONEに入った感覚。 集中が続き、行為と意識が一体になる。 終わったあとに「またやりたい」が残る。 • 実は人生の大きな喜び • 仕事自体が自己目的的 になり「やりた い」を育てる • 熟達を支える ↑ 熟達 次は、もっと難しい ことに挑める 乗り越えて、 できることが増える ちょうど届く難しさに 没入する 「またやりたい」が、次の一巡を呼ぶ ※ フローがあれば、必ず熟達するわけではない(Pink 2009) Nakamura & Csikszentmihalyi (2002). The Concept of Flow. In Handbook of Positive Psychology. Pink (2009). Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us. Chapter 5, Mastery. 06
  3. AI以後の仕事では、構成要素の影響する3つの構造変化が 起きている 2 作業レベルの変化 フロー体験の減少 Supervised Work の拡大で没入し辛くなった 3 チームレベルの変化

    賞賛(社会報酬 )の偏り 組み込みタスクにより賞賛が集まり辛くなった 4 市場による変化 裁量の低下 競争の激化で、User Insight の比重が下がった 07
  4. 2 手元:フロー体験が減った 一見退屈なデバッグが、フローの条件を満たしていた 一見すると… 挑戦と技能 原因を絞る難しさが、 自分の知識でちょうど届く 明確な目標 解決したい課題が、 いつもはっきりしている

    すぐ返るフィードバック 試すたびに、ログやテストの 結果がすぐ返ってくる 地味で、 退屈な作業 実は → だから、気づいたら何時間も没頭していた。 10
  5. 2 手元:フロー体験が減った デバッグが回していた、二つのループ 技術の熟達ループ User insight の深化ループ = ドメインの蒸留に近い 実装が分かる

    デバッグ 自分で挙動を追う 仕様に書かれない 暗黙の構造を理解する 入口をAIが担う 周辺技術を 深掘りする 次の疑問や 改善案を思いつく 本質が残り、 ユーザー理解が深まる 機能のぎこちない 点に気づく → 第4章の User insight につながる AIが引き取り、二つのループの入り口が消える 11
  6. 3 チーム:賞賛が偏った プロダクト開発作業を、 3つの段階に分解 🔎 Framing 💡 Creation 🛠 Completion

    何を、なぜ作るか 案を形にして、試す 使い続けられる状態にする 顧客理解・問題設定 PoC・MVP実装・デモ 統合・権限・例外対応・運用 ⚔ 13
  7. 3 チーム:賞賛が偏った ※ 数値は比率のイメージ 実例:Atlassian Completion 非対称な工数圧縮 💡Creation AI以前 AI以後

    週末 で作ったプロトタイプ ※ 数値は比率のイメージ 使い続けられる状態にする 約5か月 かけて本番提供へ(5人) 🛠 Completion 20 0 -> 1 は ほぼ丸投げ 15 14 80 2 10x 統合・権限・例外対応・運用 Inside Atlassian, 2026-08-26 40 2x 複雑な部分はどうしても AIに丸投げしきれない 16
  8. 3 チーム:賞賛が偏った 賞賛の偏在化 負荷 賞賛 💡 Creation ➗ 5 デモのたびに「すごい!」

    1 => 0.1 社会的報酬率 (賞賛 / 負荷) 50 25x 5x 🛠 Completion 「何も起きない」が成果 1 ➗ 1 => 0.5 2 Invisible Work Completion を主戦場とする Engの成果への賞賛は相対的に減少する 16
  9. 4 市場:裁量が減った 2つの創造性 User Insight の創造 Strategic Insight の創造 人の問題を解く

    競争のゲームで勝つ 問い 競争の激化 問い 「この人は、本当は何に困っている?」 「何を作れば、市場で勝てる?」 手応え 手応え 「使いやすくなった」と直接言われる 受注・成長・勝ち負け 返ってくる 返ってくる すぐに、直接 遅れて、間接的に Creationの圧縮により、競合が圧倒的に立ち上がりやすくなっている => まずは短期で勝つ戦略の比重が必然的に高くなる 26
  10. まとめ 三つの変化 AI以前 AI以後 手元 工数は縮んだ。 抜けたのは、没入できた部分。 → Supervised Work化

    技術的な仕事(没入できた) 監督・調整・確認 AI以前 AI以後 チーム 総負荷は増えた。 なのに、賞賛の取り分は減る。 → 賞賛の偏り 賞賛が向く部分 見えないまま積み上がる AI以前 AI以後 市場 → 事業への圧力 現場で深めた User insight 現場で深めた知見の重みが、 方針の中で小さくなる。 上から組み立てられた推測 ※ 量はイメージ SDTで「自立性・有能性・関係性」全てに影響しうる構造の変化 45
  11. 5 なぜ、やりがいの軸を移せないのか 2つの創造性 User insight の創造 Strategic insight の創造 人の問題を解く

    競争のゲームで勝つ 問い 問い 「この人は、本当は何に困っている?」 「何を作れば、市場で勝てる?」 手応え 手応え 「使いやすくなった」と直接言われる 受注・成長・勝ち負け 返ってくる 返ってくる すぐに、直接 遅れて、間接的に どちらも創造的で、意味がある。ただし、手応えの質がまったく違う。 26
  12. 5 なぜ、やりがいの軸を移せないのか やりがいの軸を移しにくい、 3つのハードル 1 2 3 成功体験がない フィードバックが遠い アイデンティティ

    原体験は、ユーザーの課題を 技術で解いた経験にある。 事業で勝った経験は乏しい。 受注や成長は遅れて、 多くの人の貢献の結果として 返ってくる。自分の工夫が 効いた実感を得にくい。 技術と向き合ってきた経験は、 その人らしさそのもの。 熟達した人ほど、 切り替えは喪失になる。 有能性 フローの条件 熟達した人ほど 27
  13. 5 なぜ、やりがいの軸を移せないのか 「気持ちの持ちよう」で解決できるのは半分 事業戦略 => 内在化した外的動機づけ エンジニアリング => 内的動機づけ 理性的な領域

    体験的な領域 • 事業の意義に共感している • 貢献したいと本気で思っている • 動機の源泉が、技術とUserInsightで育ってき た ✅ 🤔 「気持ちの持ちよう」で解決できるのは半分 27
  14. 5 なぜ、やりがいの軸を移せないのか 軸を移すのは、実際に難しい 内発的な動機を、異質な手応えへ移し替える。 それは気持ちの問題ではなく、時間と根気のいる過程 難しさは、構造から来る 自分を責めなくていい 認識して、根気強く取り組む 手応えの質も、返る距離も違う。 三つのハードルと、削られた土台が

    同時にある。 やる気や適応力の問題ではない。 うまく移せないのが自然な条件が そろっている。 難しいと知ったうえで、 時間をかけて取り組む。 すぐには切り替わらない前提で。 難しさを認めることが、根気強く取り組む出発点になる。 28