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SXSW 2024 Report - “Psycho-Singularity”

SXSW 2024 Report - “Psycho-Singularity”

Kiruta Wataru | cul

March 29, 2024
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Transcript

  1. 2020年コロナ禍での中⽌や2021年のオンライン開催、また運営会社の変更などを経て、昨年は数年ぶりのリアル開催となり本来の盛り上がりを取り戻しつつあった。今年は更に規模を拡⼤しコロナ前同様の 賑やかさと共に、オースティンという街の更なる開発による景⾊の変貌を感じる年であった。そして昨年の特徴としては、新たに「Psychedelics(サイケデリックス)」がトラックに追加され、「FUD」や 「VUCA」と呼ばれ混沌していく世界からのトリップや、テクノロジーと共により精神及び⾝体的な側⾯から “HUMANITY”(⼈間性)について語られた。 そして今年の変化としては、ここ数年トラック化されていなかった「ARTIFICIAL INTELLIGENCE」が復活。新たに「CREATOR ECONOMY」「FASHION&BEAUTY」が追加された。 Psychedelics をテーマとしたものは昨年の盛り上がりに⽐べると、既に語り尽くされたかのようにその数は減り、今年は内容に関してもより具体的な社会実装や⼤⿇草の環境⾯での可能性などが語られていた。 逆に、Chat-GPT

    の台頭から1年が経った上での開催ということで、各領域で AI や 量⼦コンピューティング をテーマとしたカンファレンスやセッションが達観半分であった。 AI について考えるというよりは、AI が創造性を持ってすべてを知的⽣産を可能にする先で、⼈はどうあるべきかを考える議論が多かった。フィジカルな⾝体を持つからこそ⾐‧⾷‧住の観点で 昨年から引き続き “⼈間が感動できるものは何か” という問いや議論が増えている。それは、新たに「FASHION&BEAUTY」と「CREATOR ECONOMY」が追加されたことからも⾒受けられた。 その観点は変化しつつも、向かっていく先は継続して “HUMANITY”(⼈間性)という答えのない哲学的な問いである姿勢を感じた。 SXSW24 … SXSW24 Consideration Report
  2. [ No Algorithm for Culture: How Humans See What AI

    Can't ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP142957 世界的なクリエイティブエージェンシー TBWA によるセッション、彼らが “我々が⽣み出すのはクリエイティビティではなく、⽂化だ” と⾔い切っていたのが斬新だが納得。 TikTok やネットミームをはじめ、何がどう⾯⽩がられ、拡がり、定着するかにロジックはあるようで無い。⼈から⼈への連鎖反応。写真機を創った⼈は印象派の絵は描けなかった、 エレキギターを創った⼈はそこまで弾けなったように。発明する者と、それを習得したりその先の景⾊や感動を齎らす者は違う。⾯⽩がって感動して拡張させるのが⼈間の醍醐味だ。 ⽇本のアニメ『PLUTO』のワンシーンなども引⽤しながら述べていた。 [ K-POP AIDOL ] https://www.studiometak.com/ EXPOに出展していた韓国のスタートアップ STUDIO META-K の “AI のアイドル”その完成度は他より遥かに⾼く K-POP や 整形 というカルチャーが背景にある韓国だからこその、 クオリティやその可能性を感じる。ブースでは男性AIDOLと⼥性AIDOLそれぞれ複数⼈を紹介。率直に かっこいい / かわいい / 美しい と⾒惚れてしまうその対象が、 例え存在していないAIだったとしても “推す” ことはできてしまう感覚を覚えた。対象が実際に存在する⼈間ではなかったとしても、⼈は魅了されていくのかもしれない。 Perspective-01 Creation is AI, Culture is Human. 創造するのはAIでも、感動するのは人間だ。 
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  3. イノベーション‧アワード でファイナリストに選出されていた完全⾃律⾛⾏型のF1カー [ Autonomous Challenge ](https://www.indyautonomouschallenge.com/) 例え運転するレーサーが⼈間ではなくAIによる⾃動運転だったとしても、同じように⼈はそのレースに⽩熱するのだろうか。 街では歩道を⾛る配送ロボットが当たり前に共存しており、横断歩道では停⽌し、前を歩く⼈が遅ければ抜かす隙をうかがうその様⼦はまるで⼈のような気遣いであった。 2019年のSXSWで電動キックボードが試験的に導⼊され、今や⽇本でも当たり前の光景となっている事を考えると、数年後には⽇本でも不思議ではない景⾊になっているのだろう。 フランスのスタートアップ

    Enchanted Tools が出展していたのは球体で⾃⽴するロボット [ Miroki ](https://enchanted.tools/) ⼈とコミュニケーションが図れる配達ロボットとのことだが、なぜそのビジュアルを⼈型ではなく動物のようなキャラクターでデザインにしたのかを問うと「動物のようだからこそ、 親近感を持てて、また⼈を助ける役割として(意識せず下等に扱える)認識しやすい」とのこと。⼈より賢いAIだったとしても動物型であれば、⼈は⼿懐ける存在として⾒るのだろうか。 Perspective-01 Creation is AI, Culture is Human. 創造するのはAIでも、感動するのは人間だ。 SXSW24 Consideration Report
  4. とあるセッションでは “Thinking by Making”(作ることによって考えられることがある)という⾔葉があった。⽣成AIによって誰でも画像や動画を創ることができるように なった、アイデアがあってもイメージとして描けない⼈にとっては、それを Chat GPT で⼀旦試しに絵や映像にしてみることもできる。撮影や編集技術はなくても、頭に浮かんだシーンを 映像にできる。⼝遊んだメロディーがすぐに楽曲として仕上がる。これまで、“つくる” ことができなかった⼈にとっては、AI

    の⼒を借りて “つくってみる” ことができる。 そのつくってみることによって、新たに考えられるようになることがあるというわけだ。その⼈が⼿で創ることもあれば、考えたものを AI が創ることもある、そして⼈はまた考え、 AI にまた具現化させる... アメコミヒーロー『アイアンマン』のトニー‧スタークとその相棒 AI ジャービスのやりとりが思い浮かぶ。 AI の進化によって創る過程(プロセス)が省略される、それによってより考えることも⽣まれれば、⼀⽅で何か失っているものもあるのだろうか。 AI ドリブンな世界における、⼈による⼿作りである価値や、ゼロから具現化するそのプロセスの価値について考えさせられる... ドイツのアーティストが AI による作品をフォトグラフィー‧アワードに応募した結果、クリエイティブ部⾨で最優秀作品に選ばれてしまうほど、 ⼈が AI と知らなければ評価してしまうレベルに達している。そして昨年末、EUでは世界に先駆け AI の包括的な規制が発表された。果たして⽣成AIによる著作権や⼈権は、 どう定義されていくのか。AI における何となく想定していたような課題が、急速度で現実味を帯び、具体的な問いとなった。許容と規制の波はつづく。 Perspective-01 Creation is AI, Culture is Human. 創造するのはAIでも、感動するのは人間だ。 
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  5. [ Food, Pleasure, and Emotional Well-Being ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP143128 ⾷事における 五感

    と 感情 の重要性や、栄養⾯と精神⾯の両側からの研究を⾏っている専⾨家によるセッション。⼈はこれまで農業⽣産もしくは狩猟によってのみ⾷物を得てきたが、 このままでは2050年までに全⼈類に必要な⾷料を⽣産しようとすると過去5,000年分と同等の⽣産が必要になる。そろそろ⼈類にとっての新たな⾷の在り⽅を考えてみても良いのでは? という問いを投げかける。スナック菓⼦やファストフードなど、⼈は添加物を⾷べる際とても幸福感を得ている、健康に対する影響などを考えなければ、最も⼈が幸福感を得れる⾷事の ひとつは添加物ともいえる。また海外で注⽬されている「GLP-1」というダイエット薬が取り上げられた。⼩腸から分泌されるホルモンで、⾎糖値を下げるインスリンを膵臓から分泌 させる働きがある。それを体内に投与することが⼀般化されつつあるのだが、例えば 添加物を毎⽇毎⾷好きなだけ⾷べ続けても、GLP-1を投与していれば太らずにいられる、それは ひとつの幸福な⾷の在り⽅なのでは?という考えもできるわけだ。腸内細菌(Biotech)を活⽤したヘルスケア領域の進化は特に⽬⽴った、これまで外的な要素(サプリやオーガニック) によって満たそうとしていた考えとはまた違った、腸内など⾝体の内部環境からアプローチすることで価値観や⾷の在り⽅を変えたり可能になることが増えているような印象。 [ Dream Incubation To Facilitate Creative Problem-Solving ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP134641 ハーバード⼤学精神医学部講師とドリーム‧サイエンティストとして起業した専⾨家による、明晰夢を習得してクリエイティブな問題解決に活かすという、SXSWらしいワークショップ。 明晰夢の研究による「ドリーム‧インキュベーション」= 夢からアドバイスやインスピレーションを受け、問題解決に活かす⽅法について。個⼈の⽣活や芸術活動、ビジネスリーダーが 明晰夢をどのように取り⼊れることができるのか、その実践⽅法などを共有しているとのこと。「夢」という誰もが経験しているが、誰も理解できていないもの。 様々なテクノロジーによって⼈の能⼒は拡張されているが、⼈が本来持っている未開拓の領域とその可能性が、この体と脳内には確かに存在する。 Perspective-02 More Dreams inside Human Body. そして人は、腸内細菌と出逢い、明晰夢を見る。 
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  6. ⽇本のチームによる筋⾁を動かす際に発⽣する微弱な電場の変化である「筋電」を読み取ることで、リアルタイムにデジタル空間上のアバターを操作できる世界初のプロジェクト [ Project Humanity ](https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP145589)こちらも今年のイノベーション‧アワード でファイナリストに選出。⼀般社団法⼈ WITH ALS と NTT,

    Dentsu が共に取り組んでおり、今回はセッションとEXPOへの出展に加え、東京のALSアーティストの武藤将胤さんをリモートで繋いだライブパフォーマンスも現地で実施。 2018年にSXSW会場へ登場したイーロン‧マスク⽒による医療ベンチャーが、1⽉に脳へのデバイスのインプラント(埋め込み)初の臨床試験を⾏ったという発表も話題となった。 彼らもALSをはじめ、脳に外傷を負った⼈が思考だけでコンピューターを操作できるようにすることを⽬指している。 ⼈間は⾃らの脳や神経について多くをまだ知らず、その未開の地は果てしなく広がっている。 毎年カテゴリーとして存在している「XR」だが、Apple Vision Pro による盛り上がりはおそらく来年に持ち越し。 出展の多くは Meta Quest や イマーシブ型の体験コンテンツ(ゲーム)だが、⼀際⽬⽴っていたのが、没⼊型芸術療法 [ SOULPAINT ](https://www.soulpaint.co/) 伝統的なアート‧セラピーである「ボディ‧マッピング」の技法とVRによる体験を融合し、⾃分の感情や感覚がどのように⾝体に巡っているか、どう捉えるかを仮装空間に描きやなら ⾝体的‧精神的に気づきを得るというもの。神経科学と精神療法の専⾨家や、ビジュアルとサウンドのアーティストも参画しているプロジェクト。 ヒューマン‧オーグメンテーションとも⾔われ様々な技術によって⼈間の⾝体的な拡張が施されているが、その拡張対象が今後はよりメンタルヘルスや精神⾯において意識されていく。 Perspective-02 More Dreams inside Human Body. そして人は、腸内細菌と出逢い、明晰夢を見る。 
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  7. [ Daniels: How We Pulled Off Everything Everywhere All at

    Once ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP1144048 2022年のSXSW映画祭でオープニングフィルムを飾った、映画スタジオ「A24」の『Everything Everywhere All at Once』オスカーやアカデミー賞などスタジオ史上最⼤のヒット作でも ある通称 “エブエブ” その監督である2⼈組ダニエルズによるセッションは超満員。映画製作がきっかけで⾃⾝がADHDと診断されたエピソードなどで、傍聴しているクリエイターたちを 和ませ、最後は会場がスタンディングオベーションとなった。 昨今、注意⽋如‧多動症である ADHD は検査の普及による顕在化だけではなく、ソーシャルメディアや睡眠不⾜による世界的な増加が問題となっている、ADHDをはじめPTSDや クリエイターにおける精神的な健康観についてなど、デジタルに囲まれた現代における創造性とメンタルヘルスに関する議論は特に、今年は各セッションや出展で多く⾒かけた。 AI と対峙した上での HUMANITY について議論がされている中で、我々 HUMAN ⾃⾝がまだその⾝体や精神の実態をどう理解すべきかという議論もまだまだなされるべきである。 外ではなく内への追求、体内に住む常在菌、夢や幻覚とは何か。「宇宙」よりもたどり着くのが難しいと⾔われる未知の領域が「深海」であるように、我々の脳や神経の奥深くにこそ すべてが眠っているのかもしれない。昨年から議論対象となった Psychedelic でもそうだが、HUMANITY という輪郭ではなく、その軸となる重⼼を探求する時代がはじまっている。 Perspective-02 More Dreams inside Human Body. そして人は、腸内細菌と出逢い、明晰夢を見る。 
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  8. Perspective-03 Nature Augmentation. 自然技術による環境拡張 
 [ Grow Soil or Die:

    How All Earth’s Farming Can Go Regenerative ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP137464 ⼤⿇農家による “地球の⼟壌改善には⼤⿇草が⽋かせない” というこれまた驚きなセッション。彼はアメリカ6つの州で再⽣可能な⼤⿇草(ヘンプ)⽣産に取り組み、 太陽光発電とヤギの飼育を掛け合わせた⼿法など、ポリカルチャーについて世界中のクライアントにアドバイスを⾏っている。⼤⿇草は害⾍に強く、農薬も化学肥料もいらない。 乾燥した⼟地でも驚くほど成⻑する植物で、Psychedelics カテゴリーでも語られているように、PTSDなど医療的にも必要なものでありながら、布などにもでき無駄なく使⽤できる。 そして “実は⼤⿇草の根は、微⽣物にとって良い環境であり、⼤気中の窒素を減少させている”とのこと。ニューメキシコ⼤学の研究では⼤⿇の種⼦が実際に⼟壌浄化に使⽤されており、 地球の⼟壌改善には⼤⿇よりも適している植物は他にないなどと語っていた。 イノベーション‧アワード のファイナリストにも「⼤⿇布」が。茎や根など農業廃棄物を素材として再⽣可能にしている [ The Hurd Co ](https://www.thehurdco.com/) 農業における廃棄物 “アグリウェイスト” は決してゴミではなく、フードロスと同様にもったいない、再⽣可能な素材 “アグリロス” であるという彼らのナラティブは印象に残った。 EXPOに出展していたインドネシアの企業 [ MAGALARVA ](https://magalarva.com/)は廃棄物の回収から幼⾍技術を使った廃棄物処理などを⾏う。 インドネシアのフードロス問題は深刻 → ペットフードの質が良くないという問題もある → 廃棄された⾷物にはハエが湧く → その幼⾍はペットにとってはプロテイン豊富な栄養 → 回収した廃棄物で栄養価の⾼い幼⾍を育ててペットフードとして販売しよう!という仕組み。廃棄物は⼈間の問題だが、後の循環を⾃然摂理を基に活かしている点がグッドデザイン。 SXSW24 Consideration Report
  9. イノベーション‧アワード のファイナリスト企業、ビニールハウスの「ビニール」部分を開発している [ UbiGro ](https://ubigro.com/) ノーベル賞も受賞している量⼦ドット技術を転⽤した発光温室⽤フィルムで、紫外線と⻘⾊光⼦を利⽤し、遠⾚外線に変換することで、植物がより健康になり作物の収量が30%向上。 ビニールハウスという世界中に既にある型に実装可能。シンプルで実⽤性も⾼くインパクトも⼤きい、とても推せる事業。 ⽇本からは住友⾦属鉱⼭株式会社が太陽光をコントロールする素材テクノロジー [ SOLAMENT

    ](https://crossmining.smm.co.jp/solament/)をEXPOに出展。 太陽光などに含まれる近⾚外線を吸収し熱に変える特許技術を活かし、アパレルや農業分野などへ転⽤。遮熱効果を⾒込めるハットや、⽻⽑を⼀切使⽤しない空洞なダウンを発表。 ⽣地⾃体が発熱し、⾒た⽬からは想像できない暖かさを⽣むとのこと。⾃然を基にした技術や摂理を⼈が新たに知ることよって、我々の⽣活や環境は更なる拡張が可能になっていく。 ⼟壌‧⽣産‧加⼯‧消費‧廃棄に⾄るまでのエコシステムにおけるアプローチや問いは各所で盛んだった。 B Corp など既にトレンドでもあるトピックだが、取り組んでいるという事実や姿勢だけではなく、その “質” や “在り⽅” を各者が再定義しようとしている。 ⾃然なかたちで、優しく、早く、そして結局は⼈間とってどれだけ効率化され利益になるのか。ビニールハウスのように、クリーンエネルギーという概念も以前から存在していたが 技術の進化と環境の悪化によって、ようやく議論の本題となり、社会のスタンダードになっていこうとしている。 EU では脱炭素政策と脱ロシアをいかに両⽴するかが課題となっている。⾷糧やエネルギーのもとである “⼟壌や⽔質”、それは世界の在り⽅を変えていく問題の根源でもある。 Perspective-03 Nature Augmentation. 自然技術による環境拡張 
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  10. 私たちが、やがて迎えようとしている
 “心理的特異点”
 We are on the verge of welcoming the

    Psycho-Singularity. AI との共存における様々な議論があったが、その中で重要な視点のひとつとして “AIに知性を感じるかどうか” がある。 あなたが、AI(= 彼ら)に知性を感じるか、そうでないかによって、⽣成AIの創造性や危険性に対する意⾒は異なってくるのではないか。 アニメ「PLUTO」にような世界がすぐそこに迫っている今、⼈が AI に知性を感じるようになることが通過点なのだとしたら、 そこには “植物に知性を感じるかどうか” という視点も存在し、植物(=彼ら)に対する感覚と同じかもしれないと考えた。 知性を持って街を動き回る配送ロボットはもはや動物や昆⾍のように、同じ⽣物として⾃然に存在する。 ⼈は植物や昆⾍を下等に扱うかもしれないが、彼らは私たちには⾒えない光や波を⾒ることができ、五感どころか⼆⼗感までをも持つと⾔われている。 ⼈智を超えた AI も 植物 も同じような存在であると捉えて⾒つめることができる。植物をはじめ⾃然の恩恵を受けながら、⼈類は彼らとずっと共存してきた。 ⼈間以外との共存は今にはじまったことではない、“⾃然と共⽣するように、AIとも共⽣する世界” が訪れる。 やがて迎えようとしている “シンギュラリティ” を 「技術的特異点」としてではなく『⼼理的特異点』として、捉え直して視ることで気づくことがあるかもしれない。 SXSW24 Consideration Report
  11. Perspective-Summary Psycho-Singularity “心理的特異点”
 SXSW24 Consideration Report ⻄洋占星術では、2021年から “⾵の時代” という新しい時代がはじまったと⾔われる。 2023年は準備の年となり、

    2024年からは本格的に⾵の時代が展開していくそうだ。⽬に⾒えていた価値(知識‧資本‧名誉)は無くなり、 ⽬には⾒えないもの(精神‧関係‧納得)に価値が⽣まれていく。それもまた「⼼理的特異点」のひとつと⾔える。 右図のように⾃然回帰的な考えと進化した新⼈類的な考えの対極を意識しながら視てみる。 昨今、⾃然農法やオーガニックへの価値や需要が上がる中で、プラントベースフードや⼈⼯⾁なども普及していくだろう。 現状「回帰」していくか、技術による「共存」か、しか存在しないのは、まだ「⼼理的特異点」を超えていないからである。 特異点を超えた先の対極(進化した在り⽅)では、もはやプラントベースでも⼈⼯でも本来の⾷べ物に似せる必要はなく、 ただ幸福度が⾼いことが優先され添加物のみ⾷し、GLP-1 によって太らずに過ごしているかもしれない。⼈⼯⼦宮ポッドで誕⽣する⼦どもや、地球出⾝ではない世代が存在する。 “アースノイド” と “スペースノイド” という分類にもなるかもしれないが、今もアフリカやアマゾンの原住⺠族から⾒れば、先進国の都市で⽣きる私たちもまた “宇宙⼈” 的な存在 かもしれない。これまでが AI のような⼈⼯⽣命はおらず、住む場所も地球のみだっただけであり、未来では AI は 植物 と同じように⼈間と共⽣しながら、⼈が住むのも地球のみではない というだけの話。そのような在り⽅に対して、あなたは今どう思うか。SFのような話ではなく、現実として受容できるかどうか、その境⽬が『⼼理的特異点』である。 知的⽣産も政治も、すべて AI が⾏うようになったら、お⾦を稼がずとも誰もが AI によって⽀えられながら⽣きていけるようになったとしたら、私たちは何のために⽣きるのだろうか。 今はまだ様々な在り⽅が “倫理” で抑制されていくだけだが、AI の進化によって残されるのは究極の真理「⽣か死か」そうなれば⼈は “快楽” を求めて⽣きるのだろう。 メンタルヘルス領域においても苦しみからの “逃避” や “無” はなく、別の在り⽅として “幸福の新領域” を探しているような流れを感じた。 “⼈間はこうあるべき” は再解釈‧再定義され、“⼈間の快楽とは何か” が⾒直されていくだろう。功利主義か快楽主義か、すべての思想が宗教化し、多様な価値が共存していく。 その中であなたは、“何を信じたいのか、何に感動したいのか”。そこにある豊かさとは何かを、思考し続けることも私たちの “⼈間性” であり、 やがて『⼼理的特異点』を迎えた先の、あらゆる在り⽅、そのすべてが【 HUMANITY 】であると受け⼊れたい。 回帰 進化 共存 ⾃然農法 オーガニック プラントベースフード ⼈⼯⾁ ⼈⼯⼦宮ポッドで⽣まれる⼦ども ⽉⾯/⽕星での⽣活 AI の重労働や知的⽣産 AI の規制 AI による政治活動 “原住⺠族 / アースノイド” “スペースノイド” 添加物とGLP-1での⾷⽣活 AI の⼈権 ロボットとの結婚 ガソリン⾞の運転は ⾼級な嗜好体験に 夢や死後の世界の探究 ⾍や動物との対話 Psycho-Singularity
  12. Biography KIRUTA WATRAU Narrative Design / Creative Direction https://cul.design/ Founder

    / Art Collective Ochill https://ochill.jp/ [ナラティブデザイン] を提唱、その探求と共に、企業やブランドのナラティブやコンセプトの⾔語化、事業に紐づくPR戦略の設計、広報活動のコンサルティング、 ブランディングやクリエイティブディレクションなど、伴⾛するパートナーによって領域を横断。また、京都を拠点に嗜好品や祈りの再解釈を理念とした アートコレクティブ「Ochill」を創設し、⾃⾝の創作や瞑想を軸としたアート活動を展開。SXSW は2018年から視察をはじめ、今年で5度⽬の参加。 これまで国内イベント製作会社、外資系戦略PR会社、外資系広告代理店 を経る中で、TVCMのプランニングからSNSまでメディアを問わずブランド戦略の設計や 広告プロモーション、ブランドキャンペーンなどのクリエイティブに従事。Campaign Asia誌が選ぶ30歳以下の⽇韓クリエイターを対象としたYoung Achiever Of The Year 2018 受賞。2021年に独⽴、合同会社culを設⽴。McCANN Erickson の事業共創組織 McCANN Alpha 在籍。PRSJ認定 PRプランナー Born in 1993. He worked for an Event Production company and a Strategic PR firm before joining Momentum Japan at McCANN World Group. He worked on various creative projects such as brand storytelling, advertising promotion, and brand campaigns across media including TVCM and SNS. He became independent in 2021 and established the cul LLC in 2022. He is also a member of McCANN Erickson's business co-creation team, McCANN Alpha. He is involved in a wide range of areas such as corporate and brand narrative and concept design, PR strategy, consulting, branding, and creative direction. And he is the founder of the Art Collective “Ochill” based in Kyoto, which advocates for a future wellness culture called "well-down". Public Relations Planner Accredited by PRSJ [email protected] / https://twitter.com/kiruta_wataru / https://www.instagram.com/
  13. Appendix 
 [ The Future of Food & Fashion: How

    We Know What's Coming ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP134221 ⼈の嗜好や願望のトレンドは常に【 ⾐ = ⾷ = 住 】服もインテリアも⾷⽂化も、要素がいかに⼀致しているか、その相互性と包含してる時代の感情を読み解くことで少し先も予測できる というセッション。エアインチョコやポテチなどのスナックの袋には Air(空気)が多く⼊っており、私たちはその空気にかなりの⾦を払ってる。そしてその時代のファッションや インテリアもふわふわしていたり、スニーカーのエアーが流⾏した。今後数年のトレンドとして「fragility」「nostalgia」「+planet」「unbound」を挙げ、暗めに撮る写真を好む⼈が 増えていたり、キノコや年輪など植物や⽯の表⾯の模様に触れることで神秘を感じる⼈が増えてきているなどと語っていた。 [ The Rural-Urban Divide and How Brands Can Make a Difference ] https://schedule.sxsw.com/2024/events/PP141810 アメリカ国⺠の 1% しか農業に携わっていなくて、⾷料の 87% を養っている現状。このままだと世界は 2050 年までに、過去 5,000 年分の⾷料よりも多くを⽣産する必要がある。 そのために⽥舎にこそ才能と解決策とインスピレーションの源があるという⼤衆への認識を、クールに醸成していくための取り組みとして発表していた『Modern Rural Collective』 = 現代的イケてる⽥舎集団 というその取り組みやネーミングセンスが推せる。 視覚障がい者の触覚コミュニケーション⽤の点字ディスプレイ[ Dot Pad ](https://pad.dotincorp.com/) 2400本の可動ピンが上下することで点字⽂字やテキスト‧図形‧絵柄を凹凸で形成、ユーザーはそれを指でなぞることで情報を受け取ることができる。 どんな⾃転⾞でも取り付けるだけで電動になる [ CLIP ](https://clip.bike/)
  14. Appendix 
 ミツバチが観ている花の世界 [ What the Bees See ] 花はそもそも⼈間に向けて咲いていない、彼らにとって重要なのは受粉することである。その媒介者である蜂が観ている紫外線込みの世界ではどう⾒えるのか。

    ビューティー&ウェルネスブランドのマヌカヘルスが主催し、ナショナルジオグラフィックの写真家による、UVIVF写真によって蜂⽬線での花を再現した展⽰。 ミツバチの視点から世界を再考してみると花や植物への理解も変わる...? イノベーション‧アワード でファイナリストに選出されていた、ほぼ痛みなしで⾃動で彫れるタトゥー技術 [ blackdot ](https://blackdot.tattoo/) ⼈には不可能な精密なデザインもプリンターのように⾃動で彫ることができ、特殊なニードルで極限まで痛み抑えている。 このような確かに進化の余地はあるけれど、⼀⾒無駄に思えるニッチな発展こそ、“豊かさ” について考えるきっかけになり得る。 ただ個⼈的な意⾒として、⾝体に彫るものだからこそ誰にいつどこで彫ってもらうかという儀式的な、どこか祈り的な何かが失われてるようにも感じる。