J-POPの歌詞から見る社会 計量テキスト分析入門

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November 26, 2019
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 J-POPの歌詞から見る社会 計量テキスト分析入門

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Yuichiro Kobayashi

November 26, 2019
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  1. J-POPの歌詞から見る社会 計量テキスト分析入門 小林 雄一郎 (社会学部 メディアコミュニケーション学科) 2016年3月29日(火) 東洋大学 白山キャンパス 1

  2. 突然ですが O あなたの好きな歌手は誰ですか? O できれば、歌手の見た目や音楽性ではなく、 「歌詞」が好きな人を挙げてください O 好きな「歌手」ではなく、好きな「歌」でも構 いません O

    また、その歌手や歌の歌詞が好きな理由は何で すか? 2
  3. 歌詞は、時代を映す鏡 O 流行歌は、その楽曲を生み出した時代や社会の 表象 O 個々の歌手や楽曲によって、音楽のテーマやスタイル は異なるが、ポピュラー作品の表現は、個別的な関心 によって一見異なる形式を取りながらも、その時代を 生きた人々の価値観を反映し、何らかの時代性を帯び ているもの(南田,

    2010) 3
  4. ポケベルって、知ってる? O 国武万里「ポケベルが鳴らなくて」(1993年) ポケベルが鳴らなくて 恋が待ちぼおけしてる ねえ あなたは 今 どこで 何をしているの?

    ポケベルが鳴らなくて 私の方から 電話できない 現実より 愛してる 4
  5. ポケベルと言えば、ヒロスエ 5 みなさんが心の中で「知ら ねえよ。。。」と言ってい るのが聞こえます(笑)

  6. 川本真琴なら、知っているよね?? O 川本真琴「愛の才能」(1997年) あの娘にばれずに 彼にもばれずに kissしようよ 明日の一限までには 何度も kissしようよ 愛の才能ないの

    今も勉強中よ“SOUL” 6
  7. それから、約20年 7

  8. 歌詞の重要性 O 書き手の内面を窺い知る手がかり O 聞き手が自分を映す鏡(見崎, 2002) ↓ O 歌詞を分析することは、その時代の背景や人々 の心理を理解する上で重要な意義を持つ

    8
  9. 先行研究 O 社会学的研究 O 歌謡曲や流行歌の歌詞を題材として、特定の時代にお ける文化や社会思想を議論 O 見田(1968) O 明治元年から昭和38年までの451曲を対象

    O 怒り 、 喜び 、 孤独、 あこがれなどのモチーフ因子を分 析 O 戦前から戦後にかけての日本人の心情の変化を調査 O 久保(1995) O 1965年から1989年までの間に発表された302曲 O 1960年代に見られた「若者モノ」が1975年以降に減少し、 「恋愛モノ」が台頭していく過程を明らかに 9
  10. O 情報学的研究 O 歌謡曲や流行歌の歌詞を題材として、新たな分析手法 の模索・確立 O 水谷(1982) O 昭和初期の歌謡曲における語彙使用の類似度を調査 O

    数量化III類など O 細谷・鈴木(2010)、小林・狩野・鈴木(2013) O 女性歌手の歌詞 O 主成分分析、ランダムフォレストなど 10
  11. 今日紹介する研究の目的 O コンピュータを用いて、年代ごとに流行歌を分 析し、歌詞で使われる言葉の変化を明らかにす ること 11

  12. 分析データ O 歌詞データベース(コーパス) O 1977年から2012年までの36年間 O オリコン年間チャートのシングルトップ20位以内 O 両A面シングルは、2曲とも分析対象 O

    複数年にわたってランクインした曲は、最初にランク インした年のデータ O 2013年10月の時点で、「歌ネット」および「うたまっ ぷ」で歌詞が入手できなかった14曲は対象外 ↓ O 合計773曲 O 総文字数: 564922 O 総語数: 306033 12
  13. どんな言葉に注目するか? O 従来研究 O 単語の表層形 O 全ての出現語彙(小林・狩野・鈴木, 2013) O 高頻度語(金城,

    2013; 細谷・鈴木, 2010) O 名詞(茅根, 2002) O 動詞(茅根, 2002) O 人称代名詞(茅根, 2002; 藤掛・西村・菅沼・田賀・澤柳, 1994; 藤川, 1999) O 文末表現(鈴木・山口, 2000) O 単語の組み合わせ(塚本, 2014) O 漢字とルビの組み合わせ(鈴木・山口, 2000) O 英語表現(藤掛・西村・菅沼・田賀・澤柳, 1994) 13
  14. O 本研究 O 26種類の語彙指標 O 品詞、語種、文字種、語彙レベルから構成 O 日本語文章難易度判別システムjReadabilityによって算出 O 計量テキスト分析において、品詞構成率や語種の有効性

    は古くから認識(樺島・寿岳, 1965; 安本, 1958; 安本, 1965) ↓ O 総語数の極めて少ない「歌詞」というテキストにおい ても安定した頻度情報 O 文章の内容による影響を軽減し、文体の違いを明らか に(Tabata, 2002) 14
  15. 日本語文章難易度判別システム jReadability 15 http://jreadability.net/

  16. 分析手法 O 回帰分析 O 年代による変化の大きい語彙指標を特定 O Tsukamoto(2004) O 回帰分析を用いて、16世紀から20世紀までの英語の散文 の執筆年とwh限定詞、been、形容詞の頻度の関係を明ら

    かに O 金(2009) O 回帰分析を用いて、芥川龍之介の作品の執筆年と格助詞 や接続助詞などの頻度の関連を明らかに 16
  17. ここで問題です O 1970年代、1980年代、1990年代、2000年代、 2010年代と時代が進むにつれて、歌詞における 出現頻度が著しく変化した言語項目は何?? O 文字種(ひらがな、カタカナ、漢字など) O 語種(和語、漢語、外来語など) O

    品詞(名詞、動詞、形容詞など) O 語彙レベル(簡単な語彙、難しい語彙など) O その他? 17
  18. 分析結果 O 統計処理の結果は、基本的に数字 ('A`)ヴァー 18 Estimate Standard Error t value

    p (>|t|) Significance (Intercept) 1073.83 208.6 5.15 0.00 *** 形状詞 -10.01 3.18 -3.14 0.00 ** 助動詞 3.83 0.92 4.15 0.00 *** 接続詞 -40.83 14.42 -2.83 0.01 ** 代名詞 -2.77 1.5 -1.84 0.08 動詞 -3.05 0.89 -3.43 0.00 ** 固有名詞 10.82 5.32 2.04 0.05 連体詞 21.81 4.37 4.99 0.00 *** 初級前半語 -1.71 0.55 -3.09 0.01 ** 初級後半語 1.84 0.62 2.98 0.01 ** 中級後半語 1.02 0.79 1.29 0.21 カタカナ -1.68 0.63 -2.66 0.01 * 和語 8.77 2.1 4.19 0.00 *** 漢語 14.27 2.39 5.98 0.00 *** 外来語 13.12 2.65 4.95 0.00 *** (註)AICによる変数選択を行った重回帰分析の結果
  19. 主な分析結果をまとめると O 和語、漢語、外来語といった語種の出現頻度に 大きな変化が見られる O 助動詞(「られる」「らしい」「ます」のよう に文末などで使われる語)や連体詞(「この」 「そんな」「とある」など、名詞を修飾する 語)にも変化が見られる O

    それ以外の変化については、またあとで 19
  20. またしても、問題です O 時代が進むと、漢語は増えるでしょうか? そ れとも、減るでしょうか? O 漢語とは、日本固有の語である和語と違い、中国など から輸入された語 O 基本的に漢語は音読み(春風=しゅんぷう)、和語は

    訓読み(春風=はるかぜ) O 時代が進むと、外来語は増えるでしょうか? それとも、減るでしょうか? O 外来語とは、主に西洋から輸入された語(オレンジ、 ワイン、など) 20
  21. O 漢語と漢字 O 年代が進むごとに増加傾向 O J-POP日本語回帰説?(伊藤, 2014) 21 漢語 漢字

  22. O 椎名林檎「歌舞伎町の女王」(1998年) 蝉の声を聞く度に 目に浮かぶ九十九里浜 皴々の祖母の手を離れ 独りで訪れた歓楽街 ママは此処の女王様 生き写しの様なあたし 誰しもが手を伸べて 子供ながらに魅せられた歓楽街

    十五に成ったあたしを 置いて女王は消えた 毎週金曜日に来ていた男と暮らすのだろう “一度栄えし者でも必ずや衰えゆく” その意味を知る時を迎え足を踏み入れたは歓楽街 22
  23. O 外来語とカタカナ O 年代が進むごとに減少傾向 23 外来語 カタカナ

  24. O チェッカーズ「ジュリアに傷心」(1985年) キャンドル・ライトが ガラスのピアスに反射けて滲む お前彼の腕の中踊る 傷心(ハートブレイク) Saturday Night 悲しいキャロルがショーウインドウで 銀の雪に変わったよ

    24
  25. O 石井明美「CHA-CHA-CHA」(1986年) 街で噂の 辛くち セクシー・ギャル 甘い誘い はねつける スパイシー・ギャル 花の金曜日(ウィークエンド) 匂いもファンキー・ナイト

    25
  26. O 1990年前後に何があった?? O 多少の変動はあるものの、1980年代以前と1990年以降 では、語種の使用傾向が決定的に異なる O 昭和から平成へ(1989年)? O 湾岸戦争(1991年)? O

    バブル崩壊(1991~1993年頃)? 26
  27. もう少し詳しく歌詞を見ると O 歌手の「イメージ」と実際の歌詞の違い O 浜崎あゆみ O 1999年から2005年までの間に年間チャートのトップ20位 以内にランクインさせた17曲 のタイトルは全て英語表記 O

    歌詞における外来語や外国語の比率は意外と小さい O 「コギャル」風の外見とは対照的に、古風な作風(見崎, 2002) 27
  28. タイトルが英語なのに O 浜崎あゆみ「A Song for XX」(1999年) どうして泣いているの どうして迷ってるの どうして立ち止まるの ねえ教えて

    (中略) 居場所がなかった 見つからなかった 未来には期待出来るのか分からずに O タイトルが英語だが、歌詞中に英語は「La La La」のみ O カタカナも「解らないフリ」の「フリ」だけ 28
  29. 最近年間1位になった曲も O 嵐「Believe」(2009年) O AKB48「Beginner」(2010年) O ともに、歌詞中の英語はごく少数の表現のみ O 曲の最初、最後、あるいはサビなどで使用 29

  30. どうして日本語回帰しているの? O いくつかの可能性 O 1970~80年代ほど、海外の文化や言葉が「クール」な ものではなくなってきた O 1970~80年代には、年間オリコンチャート10位以内に洋 楽がランクインすることもしばしば O

    日本独自の文化の発達 O J-POP、ヴィジュアル系、日本語ラップなど(あるいは、 アニメなどの音楽以外のサブカルチャー) O 日本のガラパゴス化 O カラオケ文化の普及 O 英語の曲は、歌いにくいという事実! 30
  31. 文字種・語種以外の変化 O 品詞 O 連体詞や副詞が増加 O 固有名詞や普通名詞が減少 ↓ O 文章の情報量が減少

    O 語彙レベル O 初級後半語が増加 O 上級後半語が減少 ↓ O 簡単な表現が増加 31
  32. おわりに O 結果のまとめ O 1977年から2012年までの36年間に発表された773曲の 歌詞における26種類の語彙指標の使用傾向の推移を分 析 ↓ O 1990年頃を境に、語種と文字種の頻度が大きく変化

    O 特に、外来語とカタカナの頻度の減少と、漢語と漢字 の頻度の増加 O 本研究の知見は体系的な歌詞データと計量文献学の技 法に基づくものであり、日本の現代文化を対象とする 社会学研究に客観的な資料を与え得るもの 32
  33. さらなる分析に向けて O 2013年以降のデータを継続的に収集 O 楽曲のジャンルや歌手のジェンダーによる歌詞 の違い(北川, 1999)を考慮し、各年代におけ るジャンルやジェンダーの割合を調査すること O 個々の楽曲の歌詞に関する質的分析

    O 楽曲が作られた背景の仔細な検討 33
  34. 2015年度メディコミ卒業論文より O カラオケランキングの歌詞のテキスト分析 O 所属アーティストの歌詞からみる国内レーベル の特徴分析 O 日本のロックバンドの歌詞のテキスト分析 O 日本レコード大賞からみる流行歌の特徴と変化

    O ボーカロイド人気曲の歌詞のテキスト分析 O ミュージカルWicked歌詞のテキスト分析—ブ ロードウェイ版と劇団四季版の比較 O メディアと流行—流行歌から見るメディアと ヒットの相関性及び変容 etc. 34
  35. 2015年度小林ゼミ論集より O 畑亜貴のアニメソング歌詞に見る「愛」 「LOVE」のあり方 O おニャン子クラブ・モーニング娘。・AKB48の 歌詞比較 O DREAMS COME

    TRUEの歌詞に対する文体的分析 etc. 35
  36. 主な参考文献 O 小林雄一郎 ・天笠美咲 ・鈴木崇史 (2015). 「語彙指標を 用いた流行歌の歌詞の通時的分析」 『人文科学とコン ピュータシンポジウム論文集―じんもんこんの新たな役

    割』(pp. 23-30). 東京: 情報処理学会. O 見崎鉄 (2002). 『Jポップの日本語―歌詞論』 東京: 彩流社. O 山田敏弘 (2014). 『あの歌詞は、なぜ心に残るのか―J ポップの日本語力』 祥伝社新書. 36
  37. 37

  38. 小林 雄一郎(こばやし ゆういちろう) 社会学部 メディアコミュニケーション学科 kobayashi077@toyo.jp http://ris2.toyo.ac.jp/profile/ja.aGfa4YwPWYdVHilinxA2pg==.html 38