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AI基礎講座 第5話 第2次AIブーム ルールベースとエキスパートシステム

AI基礎講座 第5話 第2次AIブーム ルールベースとエキスパートシステム

株式会社Ridge-i内の2019年度インターンシッププログラムで行った基礎講座。

第5話は人工知能第2次ブームの立役者であるエキスパートシステムについて。2011年に、人間のクイズチャンピオンを早押しで打倒したAIが話題になりましたが、第2次ブームの技術も活かされています。

対応する動画が https://youtu.be/cpS0eg33Onc にアップロードされておりますので、ご興味があればご覧ください。

Yoshitaka Ushiku
PRO

May 02, 2020
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Transcript

  1. Ridge-i インターンシッププログラム
    人工知能・機械学習(AI/ML)基礎講座
    第5話 第2次AIブーム
    ルールベースとエキスパートシステム
    Chief Research Officer
    牛久 祥孝

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  2. 1.2. 第2次AIブーム

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  3. Take Home Message
    • 第1次ブームの終焉
    – フレーム問題
    – 「知識」への注目
    • 第2次AIブーム(1980年代)
    – ルールベースとエキスパートシステム
    – オントロジー
    • 現在も続く知識ベースの人工知能への取り組み
    – ワトソン

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  4. 第1次AIブームの終焉
    • フレーム問題
    – ジョン・マッカーシー(人工知能という言葉をつくりだした、
    ダートマス会議の主催者)が1969年に指摘
    – あるタスクを実行する際に、
    • そのタスクに関係あること
    • そのタスクに関係ないこと
    を分離して動作を記述することが非常に難しい、という問題
    • 本講義ではダニエル・デネットの例[1984]をもとに作成した
    例を紹介

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  5. ネズミ型ロボットN1
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    チーズを発見!

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  6. ネズミ型ロボットN1
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み

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  7. ネズミ型ロボットN1
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    罠にかかってエネルギー切れ

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  8. ネズミ型ロボットN2
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    • 「自分の起こそうとする行動によって発生する別の現象」を
    考慮する機能を追加
    チーズを発見!

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  9. ネズミ型ロボットN2
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    • 「自分の起こそうとする行動によって発生する別の現象」を
    考慮する機能を追加
    チーズを発見!
    このチーズを取った
    時に左の木が倒れて
    くるだろうか
    このチーズを取った
    時に左の葉っぱが飛
    んでくるだろうか
    このチーズを取った
    時に下に穴が開くだ
    ろうか
    このチーズを取った時
    に土が周囲から降りか
    かってくるだろうか
    このチーズを取った時
    に奥の木が吹き飛んで
    くるだろうか
    このチーズを取った時
    に空から隕石が降って
    くるだろうか

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  10. ネズミ型ロボットN2
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    • 「自分の起こそうとする行動によって発生する別の現象」を
    考慮する機能を追加
    チーズを発見!
    このチーズを取った
    時に左の木が倒れて
    くるだろうか
    このチーズを取った
    時に左の葉っぱが飛
    んでくるだろうか
    このチーズを取った
    時に下に穴が開くだ
    ろうか
    このチーズを取った時
    に土が周囲から降りか
    かってくるだろうか
    このチーズを取った時
    に奥の木が吹き飛んで
    くるだろうか
    このチーズを取った時
    に空から隕石が降って
    くるだろうか
    考え続けてエネルギー切れ

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  11. ネズミ型ロボットN3
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    • 「自分の起こそうとする行動によって発生する別の現象」を
    考慮する機能を追加
    • 「自分の起こそうとする行動と関係ない現象は考慮しない」
    ようにする機能を追加
    チーズを発見!

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  12. ネズミ型ロボットN3
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    • 「自分の起こそうとする行動によって発生する別の現象」を
    考慮する機能を追加
    • 「自分の起こそうとする行動と関係ない現象は考慮しない」
    ようにする機能を追加
    チーズを発見!
    このチーズと左の木
    が倒れるのには関係
    があるだろうか
    このチーズと左の葉
    が飛来することは関
    係があるだろうか
    このチーズを取った
    と下に穴が開くこと
    は関係あるだろうか
    このチーズと土が周囲
    から降ってくることは
    関係あるだろうか
    このチーズと奥の木が
    吹き飛んでくることは
    関係あるだろうか
    このチーズと空の隕石
    には関係あるだろうか

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  13. ネズミ型ロボットN3
    • チーズを動力源として消費する
    • チーズを探して摂取する機能を実装済み
    • 「自分の起こそうとする行動によって発生する別の現象」を
    考慮する機能を追加
    • 「自分の起こそうとする行動と関係ない現象は考慮しない」
    ようにする機能を追加
    チーズを発見!
    このチーズと左の木
    が倒れるのには関係
    があるだろうか
    このチーズと左の葉
    が飛来することは関
    係があるだろうか
    このチーズを取った
    と下に穴が開くこと
    は関係あるだろうか
    このチーズと土が周囲
    から降ってくることは
    関係あるだろうか
    このチーズと奥の木が
    吹き飛んでくることは
    関係あるだろうか
    このチーズと空の隕石
    には関係あるだろうか
    考え続けてエネルギー切れ

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  14. 知識への注目
    • 第1次AIブームでの反省
    – 推論・探索のために限定されたルールの下であれば問題をとけた
    • 迷路の探索やパズルの解き方、定理の証明など
    – 現実の問題は解けるのか?
    • 病気の人をどう治せばいいか、など
    • お医者さんの代わりをしたいなら
    – お医者さん(エキスパート)の知識をコンピュータに入れよう!
    – ルールベースのエキスパートシステムが発展

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  15. ルールベースのエキスパートシステム
    • DENDRAL [Feigenbaum+, 1971]
    – 質量スペクトルから化学構造を推定するシステム
    • PROSPECTOR [Hart+, 1978]
    – 鉱床を発見するためのシステム
    • MYCIN [Shortliffe, 1976]
    – 医療診断のためのシステム
    – 例:ある細菌が緑膿菌と判定するルール
    • もし 細菌の培地は血液であり
    細菌のグラム染色による分類がネガティブであり
    細菌の形状が棒状であり
    患者の痛みがひどい
    • なら、この細菌は緑膿菌

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  16. エキスパートシステムでの知識表現の問題点
    • ルールが膨大になると、エキスパートシステムとしての拡張性やメ
    ンテナンス性が問題になる
    • 特に次の観点への無配慮が問題[武田, 2001]
    – 全体性:例えば農家におけるリンゴ選別機で必要なリンゴの情報(サイズや
    色)と、スーパーにおける商品選別機で必要なリンゴの情報(誰が
    育てたか、収穫日はいつだったか)は異なる。
    – 網羅性:さらに、農家におけるリンゴ選別機でも、違う国や地域の
    農家であれば違うルールが必要かもしれない。
    – 体系性:リンゴの概念が体系として与えられていないので、ある
    エキスパートシステムに与えた知識を別のシステムに共有したり
    再利用したりするのが難しい。
    – 変化可能性:今のリンゴであれば良いが、そのうち別の品種が登場
    した場合には、うまくいかないかもしれない。

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  17. オントロジー
    • 「概念化の仕様」 [Gruber, 1993]
    – 知識を共有し再利用するためのデータベース
    • Cyc Project
    – 「すべての木は植物だ」「東京は日本の首都だ」といった知識を
    すべて計算機に入力することが目的
    – ダグラス・レナートが1984年から現在に至るまで続けているプロ
    ジェクト
    • WordNet
    – ジョージ・ミラーが1980年代に構築開始
    – 単語の同義語、抽象的かどうかの親子関係などを記述した辞書
    (シソーラス)

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  18. ワトソン
    • 2006年からIBMが開発を開始したQA(Question Answering)
    システム
    • 2011年にジョパディ!というクイズ番組で人間を破る
    – 自然言語によるクイズからオントロジーを高速で検索する技術
    – 深層学習の流行と同時期だが、深層学習による成果ではない
    (当時より機械学習は活用されており、現在のQAでは深層学習も
    よく用いられている)
    • 2016年に東京医科学研究所でワトソンのおかげである患者
    の推定困難な病気が正しく診断され、治療に成功したと発表
    – 2000万件以上のがんに関する論文をデータとして保持

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