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解析力学入門

Da467feb3ca0106d571915faedb714f2?s=47 Etsuji Nakai
November 26, 2019

 解析力学入門

ver1.0 2019/11/26 Initial version
ver1.1 2019/11/27 練成振動子の例を追加
ver1.2 2019/11/29 typo
ver1.3 2019/12/02 「勉強会の目的」を追加
ver1.4 2019/12/10 typo

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Etsuji Nakai

November 26, 2019
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  1. 解析力学入門 〜 量子コンピュータを勉強するための基礎知識勉強会 〜 Pre Nielsen - Chuang シリーズ ver1.4

    2019/12/10 中井 悦司 (Etsuji Nakai) 量子コンピューター仲間
  2. この資料の目的 2 • Nielsen - Chuang の量子コンピューターの教科 書を「しっかりと腹落ちして理解する」ために必 要な基礎知識を広く勉強するための資料の一つで す。

    • この資料では特に「解析力学」について、説明し ています。(全体像は次ページを参照)
  3. 量子回路計算の手順と 量子アルゴリズムを理解する 量子デバイスの 動作原理を理解する 線形代数 古典物理学(解析力学) 量子力学 量子回路計算 量子アルゴリズム 量子デバイスの実装

  4. この勉強会の目的について 4 https://twitter.com/enakai00/status/1201412246817009664

  5. 解析力学の歴史

  6. よくある誤解(?) 6

  7. 実際のニュートンの仕事 • 天体の運動を「幾何学的操作」 によって導出する方法を整備 • 「幾何学的操作」を解析学(微 積分)の言葉で表現し直して一 般化したものが「解析力学」 • 解析力学から得られる公式の一

    つが有名な 7 https://digital.library.sydney.edu.au/nodes/view/7166
  8. 解析力学の始祖「ラグランジュ」 • 力学の根本法則を「ラグランジュ方程式」として定式化 • 「幾何学的発想」に基づいた「最小作用の原理」からラ グランジュ方程式が導出されることを発見 • 大雑把にいうと「与えられた2点を移動する物体の軌跡 は、ある量(作用)を最小にする軌跡に一致する」とい う原理

    • 現在は「ラグランジュ形式」の解析力学と呼ばれる 8
  9. ハミルトン形式の解析力学 • 「ラグランジュ方程式」と数学的に同等な「ハミルトン方程式」を利用 • 「座標と運動量」を用いた相空間での運動の記述、「エネルギー(ハミルト ニアン)」を用いた物理系の定義など、解析力学の「物理的意味」がより明 らかになる • 統計力学や量子力学など、より現代的な物理学の基礎を与える •

    「多体系においても、単一のハミルトニアンで系全体の振る舞いが統合的に 制御される」という視点は、量子ビットのエンタングルメントを理解するポ イントになるかも? 9
  10. 力学系の記述方法

  11. 力学のゴール • 物体の「状態」が時間と共にどのように変化するかを数学的に予測する。 • 物体の「状態」を数学的に記述する方法が必要。 • 広がりのある物体の場合、物体の位置に加えて、配置方向や回転状態なども 考える必要がある。 • ここでは、広がりを無視して、物体の位置のみを記述することを考える。

    ◦ 広がりを考えない物体を「質点」と呼ぶ。 ◦ 広がりのある物体は、多数の質点が集まったものとみなすこともでき る。 11
  12. 質点の記述方法 • 質点の位置は、「座標値」で記述できる。 • 座標の取り方は色々あるが、すべて互いに相互変換できる。(なので、どれ か一つの座標で問題を解けば十分。) 12 デカルト座標 極座標

  13. 質点の運動法則に対する要請 • 時刻   における座標値      が分かれば、次の瞬間       の座標値は決定できるか? • できない。次の瞬間の位置は、その瞬間の速度      にも依存する。 (*) 一般に時刻 t

    の関数を t で微分したものをドット記号で表す: • (デカルト座標とは限らない)質点の座標を       として、質点の 運動を決定する根本法則は、             を用いて表される はずである。(厳密には、これに加えて、質点に加わる力も含まれる) 13
  14. 最小作用の原理と ラグランジュ方程式

  15. 最小作用の原理 • 唐突ですが。信じてください。 • 時刻  に座標   にあった質点が、時刻  に   に到達したとする場合、 ある関数      があり、この質点は、次で計算される値

    S が最小にな る経路を通って運動する。 (*) ここでは複数の座標      をまとめて  と表記しています。) 15 ラグランジアン 作用
  16. ラグランジュ方程式 • 最小作用の原理は、微分方程式の形に書き直す事ができる。 • 作用を最小にする経路を  として、途中の経路をわずかに変化させる。 • この時、作用の微小変化は次で計算される。 (具体的な計算は後ほど) 16

  17. ラグランジュ方程式 • もしも        だとすると、   となる変化   が作れるので、 最小作用の原理に反する。 • したがって、すべての時刻において、次が成り立つ必要がある。 17 :ラグランジュ方程式

  18. 作用変分の計算 18

  19. • 外部からの力を受けずに   平面上を運動する質点のラグランジアンは、 次で与えられる。 • ラグランジュ方程式は、次の2つになる。 自由粒子のラグランジアン 19 等速直線運動 質点の運動エネルギーに一致

  20. • y 軸方向に重力 mg を受ける質点のラグランジ アンは、次で与えられる。 • ラグランジュ方程式は、次の2つになる。 放物運動 20

    「運動エネルギー」-「位置エネルギー」 ニュートンの運動方程式
  21. 運動量保存則の一般化

  22. • y 軸方向に重力 mg を受ける質点のラグランジアン • x に対するラグランジュ方程式 • 一般にラグランジアンに変数

    q が含まれない時、    は保存量になるこ とがわかる。 一般化運動量 22 x 方向の運動量保存則 一般化運動量
  23. • 原点からの距離 r のみに依存する位置エネルギー   を持つ平面上の質点 • 上式は、デカルト座標と極座標が混在しているので、極座標に統一すると次 が得られる。(計算は次ページ) • これは

    θ を含まないので、次の保存則が成り立つ。 中心力を受ける質点 23 角運動量保存則
  24. 運動量の極座標表示 24

  25. • ラグランジュ方程式は、最小作用の原理(「幾何学的」な原理)から得られ るもので、座標の取り方に関係なく同じ形が使える。 • ラグランジアンが与えられると、その系の振る舞いは、原理的にすべて決定 される。(たとえば、運動量保存則が成り立つかどうかは、ラグランジアン を見ればわかってしまう。) ラグランジュ形式のポイント(まとめ) 25

  26. ハミルトン形式への移行

  27. • ラグランジアン   は、 と を独立変数とみなした関数 • 新しい変数(一般化運動量)を次で導入して・・・ • これを について解いて、   という形に変形すると、 を   で書き 直す事ができる。 独立変数の取り替え 27

  28. •   を変数とする新しい関数(ハミルトニアン)を次式で定義する。 • この時、ラグランジュ方程式と等価な次の方程式が得られる。 (証明は次ページ参照。数学的にはルジャンドル変換に相当。) 独立変数の取り替え 28 :ハミルトン方程式

  29. ハミルトン方程式の導出 29

  30. 放物運動 30 運動エネルギー 位置エネルギー ハミルトニアンは、 系全体のエネルギーに一致する

  31. 放物運動 31 • x 方向のハミルトン方程式 • y 方向のハミルトン方程式 通常の意味での運動量の定義 x

    方向の運動量保存 通常の意味での運動量の定義 y 方向のニュートン方程式
  32. 中心力を受ける質点 32

  33. 中心力を受ける質点 33 • θ 方向のハミルトン方程式 • r 方向のハミルトン方程式 通常の意味での角運動量の定義 角運動量保存

    遠心力! 一定半径を保って 運動する条件は・・・ 遠心力=向心力
  34. エネルギー保存則と 相空間による運動の記述

  35. エネルギー保存則 35 • ハミルトニアンの値は変数   のみを通じてのみ変化するとする。(たと えば、位置エネルギーが時間に陽に依存する場合は除く。) • この時、ハミルトン方程式より次が成り立つ。 • ・・・ハミルトニアンは、必ずエネルギーに一致するの??? エネルギー保存則!

  36. エネルギー保存則の考え方 36 • 「すべての物理系には、対応するハミルトニアンが存在して、その系はハミ ルトン方程式にしたがって運動する」と、まずは信じる。 • ある系の運動を観測して、その運動を正しく導くハミルトニアンを発見す る。 • 得られたハミルトニアンをその系の「エネルギー」と定義する。この定義に

    より、系のエネルギーは必ず保存する。
  37. (参考)時空間の対称性と保存則の関係 37 • ハミルトニアンがある座標に依存しない時、対応する一般化運動量は保存す る。 • 中心力を受ける質点の場合、ハミルトニアンは θ に依存しないので、それに 対応して、角運動量が保存した。

    • つまり、空間をある方向に動かしても、系の性質(ハミルトニアン)が変化 しなければ、対応する保存量が必ず存在する。 • 同様に、ハミルトニアンが時刻に依存しない、すなわち、時刻を変えても系 の性質が変わらないことに対応して、エネルギーが保存すると言える。
  38. 調和振動子 38 • バネ定数 k のバネに接続された質点には     の力が働くので、対応す る位置エネルギーは • ハミルトニアンとハミルトン方程式は x

    0
  39. 調和振動子 39 • 一般解は、A と δ を任意の定数として、 • この時、ハミルトニアン(エネルギー)の値は、 •

    これより、点    は、ある楕円上を回転運動 することがわかる。(楕円の大きさはエネルギー によって決まる。)
  40. 多体系(練成調和振動子) 40 結合項 (質点間の相互作用を記述)

  41. 相空間 41 • 一般に多数の質点が存在する「多体系」においても、すべての質点の一般化 座標・一般化運動量          で表される「単一のハミルトニア ン           によって、系全体の運動は決定される。 • さらに、系全体の運動は、         を座標とする「多次元空間上 の1点」の動きとして捉える事ができる。この空間を相空間と言う。 •

    エネルギー保存則により、この点は、相空間上の「等エネルギー曲面」上を 移動する。
  42. (参考)リウビルの定理 42 • 相空間の連結部分の各点が運動方程式に従って移動する時、連結部分の体積 は不変に保たれる。 • 一次元   の場合で証明する ◦ 密度    で相空間に分布する点の集合の運動は、連続方程式を満たす ◦

    これを用いると密度関数の時間発展は次式になる ◦ ハミルトン方程式を代入すると、上記は 0 になる。つまり、相空間に分布する点 は密度を一定に保って運動するので、体積が増減することはない
  43. • 多体系の振る舞いは、その系のハミルトニアンによって一意に決定される。 • 言い換えると、その系のハミルトニアンを決定することが、その系の運動を 決める根本原理を理解することにつながる。(ハミルトン方程式から決まる 運動が、実際に観測される運動に一致するようなハミルトニアンを探す。) • 多体系の運動は、相空間の等エネルギー曲面上の「点」の運動として理解で きる。 ハミルトン形式のポイント(まとめ)

    43
  44. • 量子力学においても、系の運動はハミルトニアンによって一意に決定される。 • 量子力学では、エネルギーの値は自由にとることができず、一定の条件を満た すエネルギー値のみが存在する。(エネルギーの量子化) • 量子力学では、座標と運動量の値を同時に決定することができない。つまり、 相空間上の点として、系の状態を記述することはできない。代わりに、ヒルベ ルト空間上の点、もしくは、波動関数を用いて、系の状態を記述する。 量子力学へのヒント

    44
  45. Thank You.