2023/1/20 Blockchain GIG#14 で喋った内容 エンタープライズ領域でもブロックチェーンのユースケースが拡大、深耕するにつれ、インターオペラビリティに注目が集まるように。今後の展望や、Hyperledger傘下のインターオペラビリティ関連のプロジェクトを紹介。
エンタープライズ領域でのブロックチェーン・インターオペラビリティの発展Blockchain GIG #14中村 岳クラウド事業統括/クラウド・エンジニアリング統括/ソリューション・アーキテクト本部2023/1/20
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Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates2中村 岳Twitter @gakumuraはてなブログ @gakumura…主にHyperledger Fabric関連• 現職:ソリューションエンジニア@日本オラクル• 担当:Oracle Blockchain Platform、Blockchain Table• 前職:金融決済系SIerでパッケージ開発• SWIFT、CLS、日銀ネット関連の銀行間決済システム
Hyperledger Fabricをベースにエンタープライズ利用向けPaaSとオンプレミスで提供• 数ステップで構築完了、GUIコンソールで管理・運用も容易• エンタープライズグレードの耐障害性、堅牢性• マルチクラウド、ハイブリッドクラウド、オープンなネットワーク構成が可能• Oracle独自の付加価値:• State DBとしてBerkeley DBを利用:パフォーマンスとクエリ利便性向上• 多機能なREST API:スマートコントラクトの利用を容易に• 台帳のデータをRDBに複製:大量照会、分析、データ統合• スマートコントラクトを容易に開発:付属の開発ツールでアセット仕様からコードを自動生成• 複数ChannelのアトミックトランザクションとXA対応:複数Channelでの更新のアトミックな実行や、ローカルのDB、MQなどとのグローバルトランザクションをサポートOracle Blockchain PlatformCopyright © 2023, Oracle and/or its affiliates東京DCからもサービス提供中3
このセッションでは…• エンタープライズ領域でのインターオペラビリティ関連技術の需要と受容• Hyperledger傘下のインターオペラビリティ関連のプロジェクト• 期待と展望……などをお話します4 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates
インターオペラビリティ(相互運用性)関連技術• ブロックチェーン関連の文脈で用いられる場合、複数ブロックチェーンネットワーク間(→クロスチェーン)でアセットやデータを互いの整合性を保ちながらやり取りするための技術を指す(ことが多い※)• またがるネットワークはプロトコルが同種(例:Hyperledger FabricのネットワークA⇔FabricのネットワークB)、別種(例:Fabric ⇔ Corda、Ethereum ⇔ Fabric)のパターンがある• 対象とするオペレーションのスコープがデジタルアセット交換(例:アトミックスワップ、PvPやDvPなど)に限られるものと任意のデータのやり取りをサポートするものがある※ビジネス、ガバナンスのオペレーション面やインフラ的な通信可能性など、より広いスコープを含むこともある5 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates
エンタープライズ領域におけるブロックチェーン/DLTとは複数の企業、組織が協力して課題を解く際に利用できる新たなパラダイム6 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates従来の企業間データ共有XXX YYYAAAZZZ特定組織にデータと責任、特権が集中XXX YYYZZZ AAA①②③④⑤⑥ ⑦⑧ ⑨⑩⑪⑫従来の企業間ワークフロー複雑で遅い、手間のかかるプロセスリアルタイムで水平に共有する確実で信頼できるデータにもとづいて業務を自動化、効率化、高度化ブロックチェーン/DLTによるデータとロジックの共有
Hyperledger Foundation• エンタープライズ向けのブロックチェーン技術の開発を推進するためのOSSコミュニティ• 団体/コミュニティとしての名前をHyperledgerからHyperledger Foundationへと変更(2021年10月)• ブロックチェーン/DLTプロトコルおよびその他のツール、ライブラリなどのプロジェクトがHyperledger 〇〇として進行• Hyperledger Labsの中に実験的/小規模プロジェクトも様々7 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates
Hyperledger傘下のインターオペラビリティ関連のプロジェクトCopyright © 2023, Oracle and/or its affiliates8(Hyperledger Labs)Weaver(Hyperledger Labs)YUIEoL(Fujitsu)Connection Chain(Accenture)Blockchain IntegrationFramework他にもあるかも…
Hyperledger Quilt• Interledger Protocol(ILP)のJava実装• ILP…複数Ledger(DLT/非DLT)をまたいだPaymentを安全に実行するためのプロトコル• 2019年11月にv1.0リリース→2021年8月にDeprecated/EoLのステータスに9 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates画像出典:https://interledger.org/developer-tools/get-started/overview/
Hyperledger Cactus• 複数ブロックチェーン上のサービスの「統合(Integration)」のためのツール• Cactus Node Serverがリクエストの受け付けと、各ブロックチェーンでのトランザクションの実行をオーケストレーションする• Business Logic Pluginモジュールとしてビジネスロジックを実装• Validator Serverが各ブロックチェーンでのトランザクション発行、結果監視などを行う• Node ServerのVerifierモジュールがValidatorとやり取りして状態を確認しつつ各トランザクションをリクエスト• ふたつのプロジェクトがベース、マージされCactusに• 富士通のConnection Chain• AccentureのBlockchain Integration Framework10 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates画像出典:https://github.com/hyperledger/cactus/blob/main/whitepaper/whitepaper.md
Hyperledger Cacti• 2022年11月にCactusからCactiへの名称変更が発表• Hyperledger CactusからNode Serverを、Hyperledger LabsのWeaverからRelay方式をそれぞれ引き継いでプロジェクトが合流• Node Serverによるオーケストレーション方式とRelay方式をユーザー側で選べる(2023年1月現在、ちょっとまだドキュメントなどの情報が整備されておらずよくわからない…)11 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates画像出典:https://www.hyperledger.org/blog/2022/11/07/introducing-hyperledger-cacti-a-multi-faceted-pluggable-interoperability-framework
ブロックチェーンの利用形態(ネットワーク)の分類Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesパブリック公開制のネットワークを不特定多数で運用コンソーシアム許可制のネットワークを複数組織で運用プライベート許可制のネットワークを単一組織で運用パーミッションレス← →パーミッションド1212ここまでのところエンタープライズ領域ではコンソーシアム型ネットワークの利用が主流
パーミッションドブロックチェーン間のインターオペラビリティ13 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesそれぞれのネットワークに単体でなんらかの価値(=課題解決)が存在テーマ、地域などの違いで同一/隣接領域に複数ネットワークが成立ネットワーク間でデータや価値をやり取り、情報連携することでより多くの/より大きな課題をより効率的に解決複数ネットワークに参加するメンバーも
例:貿易分野での複数コンソーシアム連携14 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesコンソーシアムAメンバー:東アジア地域中心テーマ:ロジスティクス改善コンソーシアムCメンバー:西ヨーロッパ地域中心テーマ:ロジスティクス改善コンソーシアムBメンバー:グローバルテーマ:貿易金融• コンソーシアムA、Cで集めたB/L証書データをBに共有することで安全、効率的に貿易金融サービスを利用• A⇔Cで地域をまたいだロジスティクスも改善
パーミッションド×パブリックブロックチェーン• パーミッションドブロックチェーンから、パブリックブロックチェーン側の一部の機能を利用するために連携する例も• 例:サービス、アプリの主要部分はパーミッションドに構築しつつ、暗号資産による決済部分だけパブリックを利用、DID関連部分だけパブリックを利用• パブリックブロックチェーン側ですでに成立しているエコシステムに乗っかるかたち• (「パーミッションド間のデータ、アセットのやり取りをパブリックを中継に使うことで実装」できるのでは…?と思いつくが、そういうユースケースはほとんど/全くなさそう…ホップとトランザクション手数料が増えるだけで無駄になるパターン?)15 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates
ユーザーAのアカウント onX Chain例:NFTのパーミッションド→パブリックへの移送、複写の構想• NFTのベースはパーミッションドブロックチェーンで実装(…暗号資産/パブリックブロックチェーンへの規制などの関係)• このままだとユーティリティが限られる、PFP(Profile Picture)として使えない• パーミッションドブロックチェーンの運営体がブリッジ的なサービスも併せて運営し、ユーザーの求めに応じてパブリックブロックチェーンにNFTを移送、複写できるようにするといった構想16 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesユーザーAのウォレット onY ChainブリッジパーミッションドブロックチェーンX ChainパブリックブロックチェーンY Chain
クロスチェーン・インターオペラビリティの方式• パーミッションドブロックチェーンで用いられるものはTTP(Trusted Third Party)方式、HTLC(Hashed Time Lock Contract)方式、Relay方式に大別• クロスチェーンの整合性担保をTTPはオフチェーンでトラストフルに構成、RelayとHTLCはオンチェーンのロジックとそれ以外の要素を用いながらトラストレスに構成• HTLCはデジタルアセット交換のみがスコープで任意データ交換はサポートしない17 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates信頼された第三者自身の資産の受け取りが相手側の受け取りを可能にするSecret開示とセットとなるような時限付きコントラクトTTP方式 HTLC方式 Relay方式Relayerを通じた相互検証
TTPの使いどころ?• TTP方式はオペレーションの当事者が信頼できる第三者が必要となり、仲介コストも発生する• 一方、オンチェーンロジックの制約が少なく実装が容易、トランザクションの手数が少ないなどの実践上のメリットも• パーミッションドブロックチェーンのユースケースでは、信頼できる第三者の成立自体はそれほど稀ではないと思われる• そもそもパーミッションドブロックチェーンはアカウンタビリティ(責任追及可能性)による相互牽制を前提とした一定程度トラストフルな構造• 「必要とされるプライバシー(秘匿性)との折り合いがつかないため第三者を入れられない」、「扱うアセットの価値が非常に高い、あるいは法的な要件などからいずれの第三者にも任せられない」といったケースでは排除される18 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates信頼された第三者が仲介
悪意や破綻リスクと無縁のところでも• アセット交換など他者が当事者として関わるオペレーションでクロスチェーンの操作が必要になるケースに限らず、自身のみで完結するオペレーションがクロスチェーンになるケースもしばしば• 例:FabricだとChannelごとに別の台帳なのでChannelまたぎはクロスチェーン• 一般化:あるオペレーションを表現するトランザクション(のセット)がブロックチェーンがプロトコルとして整合性を担保してくれる範囲内に収まらない• このようなケースでは相手先の悪意や破綻によるリスクは考慮不要で、自分が複数のトランザクションを整合性を保てるように実行すればいい「だけ」……これが実際には容易ではない• ブロックチェーンを使うユースケースでは、ブロックチェーン上のデータの整合性を絶対に守られる(べき)ものと前提することが多く、クロスチェーンも例外ではない• 複雑さへの対処のためだけでもインターオペラビリティツールを使うのも選択肢に19 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesアプリアトミックに実行したい
ローカルのデータとも……• パブリックブロックチェーンのユースケースでは多くの場合、ブロックチェーンを触るアプリは:• ERPやSCM、基幹システムなどとも連携• データベースも触るので、そうしたローカルな要素とブロックチェーンとの整合性もケアすることに20 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesアプリRDB社内の別システムPeerPeer他参加者アプリPeerChannel XChannel YChannel Z他参加者アプリ
【PR】Oracle Blockchain Platformのアトミックトランザクション系の機能21 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliatesREST Proxyによる複数ChannelでのTxのアトミックな実行←にEthereumでのTxも加えてアトミックな実行XAを用いたグローバル分散Txのサポート
展望:ネットワークはより当たり前に交わる様になっていく• エンタープライズ領域でのブロックチェーンは「〇〇の間」(→インター○○)をつなぐことで成立するソリューションの基盤• であれば、「ブロックチェーンの間」(→インター・インター〇〇)をつないでいくインターオペラビリティ技術が重要になるのは当然• インターオペラビリティ技術により、パーミッションドとパブリックブロックチェーンの垣根も低くなっていく22 Copyright © 2023, Oracle and/or its affiliates
Thank youCopyright © 2023, Oracle and/or its affiliates23