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知識社会マネジメント13_0708
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Hajime Sasaki
July 08, 2022
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知識社会マネジメント13_0708
Hajime Sasaki
July 08, 2022
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Transcript
TMI夏学期講義⾦曜2限 知識社会マネジメント Innovation management in the knowledge society 7⽉8⽇ 第13回
メンタルモデル 佐々木一 Hajime Sasaki Ph.D. 東京大学 特任准教授 未来ビジョン研究センター
前回のおさらい •システム原型 •システムに於いて繰り返し起こる、⼀般的、象徴的、典型的ストーリー。 •⾃⼰強化ループとバランスループの特定の組み合わせで表現される頻出 パターン。 • 「うまくいかない解決策」 • 「問題のすり替わり」 •
「成⻑の限界」 • 「強者はますます強く」 • 「共有地の悲劇」 • 「遅れのある調整」 • 「外部者への依存」 • 「ずり落ちる⽬標」 • 「エスカレート」 • 「卵かニワトリか」 etc
課題 •システム原型の組み合わせ(2つ以上)から構成される、 社会問題or⾝の回りの現象、を、ループ図で表現せよ •またその介⼊策(レバレッジポイント)を提案せよ。 •分量︓スライド(PPT or Google スライド) 1枚。 •提出締切︓2022年7⽉7⽇23:55
JST
Presentation time.
調,⿃⾕,⼩泉(2020), システム思考による新型コロナウイルス感染症対策の可視化 : 政府・専⾨家会議が検査を増やすことができなかった「理由」 強者はますます強く 「成⻑の限界」
システムの思考パターン 1. 今⽇の問題は昨⽇の解決から⽣まれる 2. 強く押すほどシステムが押し返す(補償的フィードバック) 3. 好転してから悪化する 4. 安易な出⼝は元の場所の⼊り⼝ 5.
治療策が病気そのものより問題なことがある 6. 急がば回れ 7. 原因と結果は時間的にも空間的にも近くにあるとは限らない 8. ⼩さな変化が⼤きな結果を⽣みだす 9. ケーキは持っていることも⾷べることもできる、が今すぐで はない 10. 1頭の象を半分に分けても2頭の⼩さな像にはならない 11. 誰も悪くない 最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か― Peter M. Senge(1990)
システムの理解だけでは不⼗分 •ベストアイディアなのにうまくいかない •素晴らしい考えなのに実⾏されない •⾒事な戦略なのに、⾏動につながらない。 •システム的な洞察が経営の⽅針に⽣かされない。 •誰もが満⾜しているはずなのに広く採⽤されない etc… メンタルモデル︓ それぞれの⼈が持つ、世の中の⼈やものごとに関する「前提・当 たり前・常識・思い込み」
意志の弱さ ためらい システム理解の不⼗分
メンタルモデル • 知らないうちに形成されている個⼈の「前提・当たり前・常識・思い込み」 • 現象の最下層に存在し、システムを規定する意識になっていることがある。 • 本⼈にとっては当たり前の世界観。故にそのことに気づかないので修正される機会が少 ない。 「メンタルモデルとは、われわれの⼼に固定化さ れたイメージや概念のことである。
それが世の中をどうとらえるか、どう⾏動するか に影響を及ぼす。」出典︓『最強組織の法則』 1.システム思考 2.⾃⼰マスタリー 3.メンタルモデル 4.共有ビジョン 5.チーム学習 学習する組織 「5つのディシプリン」 ピーター・センゲ
全ての原型において共通する介⼊原則 •因果関係の背後にあるメンタルモデルを疑う。 •なぜこの因果の発想が⽣まれたのだろうか。 •他の関係は思いつかなかったのだろうか。だとしたらその背後にあるメ ンタルモデルはなにか。 •そもそもこの関係は普遍的に成り⽴つのだろうか。 市⺠(渋滞を緩和させるには 政治に訴える以外に⽅法はな いはずだ) 政治家(市⺠の希望をそ
のまま無批判に実⾏すれ ば次の選挙も勝てるに違 いない)
システムにおける氷⼭モデル2 出来事 (創られる現実) 系時パターン (過去の傾向性) システム構造 (因果関係) 何が起きたのか︖ これまで何が起こって きたのか︖
なぜそれが起きたの か︖ 問い 焦点 ⾏動/反応 • 反応 • ⽕消し • 予期する • 予測する 仕組みを • 変える • 創造する レバレッジの 強さ 認識を • 変える メンタルモデル 何がその構造を⽣み出 した︖
メンタルモデルの例 それを⽣んだかもしれない過去の経験 •⼀⼈で頑張るのがすばらしい(⼈に頼るのは弱いこ とだ) •どんな時でも弱⾳を吐かず⼀⼈で乗り越える⽗ 親の姿を⾒て育った •どんな時でも、もっともっとと頑張ることが正しい •⺟親から「価値ある⼈になるためには常に努⼒ することが⼤切」と⾔われていた •⾔いたいことを⾔うのはよくない、我慢するのが正
しい。 •弟、妹の⼿前、⾔いたいことを⾔えず、我慢す ることが多かった •⾃分のやりたいことよりも、周囲の期待に応えるこ とがすばらしい •両親の期待が⾼く、期待に応えられない時に ガッカリされた •他⼈からの評価が⼤事 •駄々をこねて泣いていると⺟親に「ほら、みん なが、おかしいって笑ってるよ」と諭された •感情表現は恥ずかしいことだ •あまり感情を表現しない両親だった ・事実というよりは価値観 ・そのように世界を⾒ている独⾃のレンズ。 ・にもかかわらずいつのまにか普遍的事実のように認識してしまっている。 『「世界について知っている」と考えていること』は全てモデルである。
デトロイトの⾃動⾞メーカ(GM/フォード/クライスラ) の重役とピーター・センゲの会話(1980年代) ピーター・センゲ「学習する組織」より編集
その他︓当時のGMの常識的原則 •「GMのビジネスは⾦もうけであり、⾞ではない。」 •「⾞は何よりも地位の象徴。品質よりもスタイルが重要だ。」 •「⽶国市場は、世界の市場とは違う。」 •「労働者が⽣産性や品質に影響を及ぼすことはない。」 •「関係者⼀⼈ひとりは、事業についての断⽚的で区分された理 解があればよい。」 これらのメンタルモデルが、⻑い間に渡って 良い結果をもたらしてきたことは事実。 •
⽶国の⾃動⾞産業はこれらを、どんなとき でも成功できる魔法の公式と考えていた。 が、実際は限定されたときだけに有効な⼀ 定の諸条件。 ピーター・センゲ「学習する組織」より編集
メンタルモデル⾃体に良し悪しはない 暗黙の存在になったとき、気づきのレベルよりも深いところに存在してし まう。 例)「⾞にはスタイルが重要だ」とは⾔われていたが 「”スタイルが重要だ”いうメンタルモデルがある」と は認識していなかった → ⾃分たちが持っているメンタルモデルが検証されない(存在に気づいていない) → 改変しない(できない)
→ 世界の変化とともに、モデルと現実の乖離が⼤きくなる。 逆効果の⾏動を取る。 ピーター・センゲ「学習する組織」より編集 メンタルモデルは私達が世界をどう理解するかのみならず、 どう⾏動するかを決定する。
意⾒の相違の背後にあるメンタルモデル
洞窟の⽐喩︓プラトン(紀元前427年 - 紀元前347年) プラトン「国家」第七巻
•深刻な問題を解決するためには、新し いより深いレベルの考え、視点、次元、 パラダイムの変化。 •⾃分⾃⾝の内⾯(inside)を変えること から始める。⾃分⾃⾝の根本的パラダ イム、⼈格、動機を変えること。(イ ンサイドアウト) 「我々の直⾯する重要な問題は、それを つくりだした時と同じレベルの思考では 解決できない。」
“The problems of today will never be solved at the same level of thinking that created them.“
べき論による正義 •⾃⼰否定、他者否定、外部否定する裏に潜む「〜すべきだ」という「べき論」 •「べき」は正しい、正しくないをつくり出す •「べき」が⾏き過ぎると正義のための戦いはじめる(正論の押し付け) •「べき」を⾃分に押し付けると、苦しくなって、できない時に⾃⼰否定を⽣む •「べき」を相⼿に押し付けると、正しさを主張し、他者否定を⽣む •「べき」は本質的な解決を⽣まない
個⼈の意識と社会システム 1. 誰もが価値観や認知のフレームワークを持っている。 2. フレームで社会システムが作られている 3. 社会システムによってフレームが作られることもある。 4. フレームは変わり続ける。 社会システム
(仕組み、制度、慣習) 個⼈の意識 (価値観、当たり前、信念)
レポート課題 •任意のシステムを変⾰する構想を提案してください。 •要件︓全13回の講義で扱った視点(複数)による⼯夫 や考察が含まれていること。 •提出済の課題内容をベースにしても構いません。 •提出︓2022年7⽉14⽇ 23:55 JST ITC-LMSにて •なお匿名を前提に来年度の講義で活⽤させて頂く場合が
あります。
2. 予測と社会・イノベーション・コンセプト 3. 知識創造/イノベーションの場(Ba) 1.ガイダンス -価値観変化とNext society - 4.パラグラフライティング基礎(+意思決定のための学術論⽂) 10.マルチステークホルダープロセスによるオープンな知識創出活動
13. メンタルモデル 11.社会・環境課題解決型資⾦の流れインパクト投資 12. システム思考とシステム原型 9.シビックテックと地域課題解決の⺠主化 8.科学技術のカイギと会議 7.スペキュラティブデザイン 6. Society5.0は⼈間中⼼な社会となれるか 5. Artificial Intelligence in Business
講義「知識社会マネジメント」 •本講義の概要/ねらい •技術の進歩と社会の変⾰によって、これまでの資本主義 だけでは⼗分に扱うことのできなかった領域にまで価値 の範囲が拡⼤しつつある。答えを導き出すスキルから、 問いのセンスが求められつつある社会。 •知識(3.0)の社会において領域をまたぐリーダーシップに 必要な視点を育成する。 •システムリーダー︓問題に関わる⼈を⽀援しつつ”⾃分 も変わるべきシステムの⼀部である”と気づかせそれぞ
れが変化を起こせるように導く⼈材。集合的なリーダー シップを⽣み出すリーダー。
第2回 予測と社会・イノベーション・コンセプト •バックキャスティング •Forecasting, Scenario and Back casting •Prediction and
Forecast. •未来予測と未来創造 •⼈類の欲求 •予測の⾏為遂⾏性 •イノベーションとコンセプト設計 •コンセプト︓視点を提供する思考形 式。進むべき⽅向を与える指針。 •サーチライトのようなもの。 •イノベーションが起きるとき、経験 世界における既存の認識範囲の外が 照らされる。
第3回 知識創造/イノベーションの場(Ba) •暗黙知と形式知 •SECIモデル︓個の暗黙知から組織の知を⽣み出すプロ セス • 共同化︓刺激し合う。表出化︓アイディアを表に出す。連結 化︓まとめる。内⾯化︓⾃分のものにする。 •イノベーションは事後的にしか定義できない。 •→イノベーションの成功確率を上げる
• =異質なものがつながる場(機会)を増やす。ネットワーク。 •ネットワーク •セレンディピティ •書誌情報に基づく発⾒ (Literature based discovery) •集合知が有効な問題 •集団浅慮の症状と対策 •従順な問題Tame problem と厄介な問題 Wicked problem •技術的課題technical problemと適応課題adaptive challenge •問題に対する姿勢
第4回 パラグラフライティング基礎 •説明とは︓ •頭の中の論理の鎖の脳間コピーの⼿段 •良い説明とは︓ •活⽤できるほどに正しくコピーされること •良い説明の流れとは •①話題の提⽰→②情報提供→③補⾜の繰り返し •パラグラフとアウトライン •パラグラフライティングの必須条件
•①視覚的に明確なブロック •②話題とメッセージが⼀つずつ •③先頭⽂を抜き出せばあらすじがつかめる •④先頭⽂以降を読むことで理解が深まる •⑤パラグラフ間の関係性を明確にする接続詞
第5回 Artificial Intelligence in Business
第6回 Society5.0は⼈間中⼼な社会となれるか •Society5.0 •サイバー空間とフィジカル空間の融合。 •Society5.0で実現する⼈格なき統治 •⼈間というデバイスの両義性 •Society 5.0 が⾒せる夢に対する我々の態度 •執⾏過程に⼈間が介在しないからこそ、
設計過程において⼈間的な価値を意図的 に留意しなければならない。 望ましい未来は 誰にとって望ましいのか 誰が決めるのか •⼈類はどこまで未来を想像できるか •今までのあたりまえを疑う「態度」 •アートとデザインの可能性
第7回 スペキュラティブデザイン 社会に、⾃分に、独⾃の「問い」を投げかける。
第8回 科学技術のカイギと会議 •アルゴリズムによるバイアス •コリングリッジのジレンマ • 「技術の影響⼒を予測し完全に予防することは難 しい」という情報の問題」VS「既に普及した技術 は問題が起きても取り返しがつかないというチカ ラの問題」 •ELSIの反省点そしてRRI
•我々はどういう社会に住みたいのか。 から考える必要。 •トランス・サイエンスの時代 (Trans- Science Age) •科学によって問うことはできるが、 科学によって答えることのできない 問題群からなる領域
第9回 シビックテックと地域課題解決の⺠主化 • 社会課題は制度の狭間にあるロングテール • ⾃治体の既存ビジネスでのサービス「⾃動販売機モデ ル」で対応するには限界がある。 • ⾃販機モデルから市⺠政府へ •
テクノロジーで政府と地域社会をより良くする活動 • シビックテック(≒ガブテック) • Code for America • ”21世紀における市⺠による市⺠のための政府”の実践。 • Code for Japan • “「ともに考え、ともにつくる」をコンセプトに、技術活⽤ をしながら課題解決を⾏なっていくコミュニティ” • 市⺠参加のスペクトラム
第10回 マルチステークホルダープロセスによる オープンな知識創出活動 •現状のままでは考える⼈がいない問 題 •モード2の知識「課題解決型科学」 •個別の研究領域や研究⽅法論に依 存しない、領域越境型の科学。 •InterdisciplinaryとTransdisciplinary •マルチステークホルダープロセスに
おける注意点 •⽋如モデル •認識のズレ •隔たりを超える
第11回 社会・環境課題解決型資⾦の流れインパクト 投資 インパクト投資の4要素 1. 意図がある 2. 経済的リターンと社会的・環境 的インパクト 3.
広範なアセットクラスを含む 4. インパクト測定を⾏う ユニバース銘柄(600以上)選定のインパ クト基準 1. Materiality:売上か事業活動の⼤半 がSDGsの達成に貢献 2. Additionality:他社が対応できない 課題にサービスを提供 3. Measurability:インパクトの定量 的な測定可
第12回システム思考とシステム原型 • システム原型 • システムに於いて繰り返し起こる、⼀ 般的、象徴的、典型的ストーリー。 • ⾃⼰強化ループとバランスループの特 定の組み合わせで表現される頻出パ ターン。
• 「うまくいかない解決策」 • 「問題のすり替わり」 • 「成⻑の限界」 • 「強者はますます強く」 • 「共有地の悲劇」 • 「遅れのある調整」 • 「外部者への依存」 • 「ずり落ちる⽬標」 • 「エスカレート」 • 「卵かニワトリか」 etc システム思考(線形思考との対⽐) 複雑な世界における問題は、原因と結果があいまい。 要素還元的な思考では表⾯的な解決になりがち。循 環的な視点が不可⽋。 因果ループ図の設計 システム思考のツール。 ⾃⼰強化(R)ループとバランス(B)ループで構成
第13回メンタルモデル メンタルモデル 知らないうちに形成されている個⼈の「前 提・当たり前・常識・思い込み」 現象の最下層に存在し、システムを規定す る意識になっていることがある。 本⼈にとっては当たり前の世界観。故にそ のことに気づかないので修正される機会が 少ない。 1.
誰もが価値観や認知のフレームワークをもっている。 2. フレームで社会システムが作られている 3. 社会システムにってフレームが作られることもある。 4. フレームは変わり続ける。 新たなパラダイムを⽣むには システムを変えると同時に ⾃分のメンタルモデルに気づ く必要がある。 個⼈の意識と社会システム べき論に基づいてシステムだけ変えようとしてもワークしない
個⼈の意識と社会システム(再掲) 1. 誰もが価値観や認知のフレームワークを持っている。 2. フレームで社会システムが作られている 3. 社会システムによってフレームが作られることもある。 4. フレームは変わり続ける。 社会システム
(仕組み、制度、慣習) 個⼈の意識 (価値観、当たり前、信念)
•研究科より講義アンケートについてのお願い。 •後⽇ITC-LMSにて、アンケートのお願いをアップロードいた します。 •ご協⼒のほどどうぞよろしくおねがいします。
未来のシステム変⾰を担う皆様へ。 皆様にとって本講義のなにか⼀つでも、⾃⼰と社会シス テムの関係について考えるきっかけとなれば幸いです。 良い夏休みをJ 講義資料: https://bit.ly/37rqoPB Contact:
[email protected]
(感想・コメントをいただけますと嬉しいです)