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知識社会マネジメント1_0405share.pdf

Hajime Sasaki
June 21, 2024
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 知識社会マネジメント1_0405share.pdf

Hajime Sasaki

June 21, 2024
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  1. 知識社会マネジメント 4月5日 第1回:ガイダンス 「After-AI: 知識創造社会の創造」 佐々木一 Hajime Sasaki Ph.D. 東京大学

    特任准教授 未来ビジョン研究センター Innovation management in knowledge society 2024夏学期講義金曜2限(10:25〜12:10)
  2. 知識の種別と意味づけの重要性 専門知識 それぞれの分野(ディシプリン)の論理に従う知識 (知識1.0) 学際知識 課題解決にむけて複数のレイヤー、主体で知識を生成する (知識2.0) メタ知識 知識を社会的に位置づけて活用する知識 (知識3.0)

    連携を阻害する壁(あるいはチャンス) • 知識間の⾕、専⾨家間の⾕。 • ⽂系、理系、各種専⾨分野、研究者や現場作業者、企業の所 属、地域、国境などに存在する様々な壁。 • 集団に特有の知識や慣習を「つなぐ」⼈間の活動や組織を強 化する。 • 知識、規範、課題の共有は、つながりの基盤(エピステミッ ク・コミュニティ)として重要。 • DXの本質は既存の業種/部署からの開放。縦割りから横割りへ。 専⾨化された知識は、社会や組織で位置づけ他の知識と連携させることで 役⽴つ(川⼭, 2019)
  3. 知識社会の概念の誕生 ・『知識産業』(フリッツ・マハルプ, 1962) •5分野(教育、研究開発、コミュニケーションメディア、情 報機器、情報サービス) ・『脱工業化社会の到来』(ダニエル・ベル, 1973) •「理論的な知識が活用され社会の中心となる。」 •「財の生産からサービスの生産に比重が変わることで知 識生産に経済活動が意向する」

    ・『断絶の時代』(P.F.ドラッカー, 1968) •「知識の生産性が経済の生産性、競争力、経済発展の 鍵」となる知識経済が知識社会の前提となる。 •生産資源となるだけでなく、知識が社会の中心となる •同時に知識社会は熾烈な競争社会になる
  4. 知恵 (Wisdom) 知識 (Knowledge) 情報(Information) データ(Data) 処理分析 Processed & Analyzed

    Internalized Understanding universal truth Sound Judgement Appropriate Execution 観測 Observation Externalized 対話 Dialogue Implicit Explicit 移転・獲得困難 移転・獲得⽐較的容易 Knowledge Management Data Science 8 データ 情報 知識 知恵(DIKWモデル) 表出化 内⾯化 それだけで 意味をなさない Know nothing それだけで 意味を持つ Know what Descript 教えられる Now-how to Instruction 判断する 論じる What Why (Ackoff., 1989; Davenport et al., 1998; Awad & Ghaziri, 2004; Bierly et al., 2000)
  5. イノベーションプロセスのパラダイム ▪第1フェイズ(1950-1980):科学技術イノベーション • リニアモデル、基礎研究への投資拡大にもとづくイノベーション • 大学への政策的投資の拡大 • 基礎研究への投資と経済成長の拡大 ▪第2フェイズ(1980-2010):ナショナルイノベーションシステム •

    リニアモデルへの疑問 • 大学を核としたイノベーションシステム • バイドール法による大学研究の特許か • TLO法による大学から産業界への技術移転 • 大学発ベンチャーの促進 • イノベーションの主体を企業、大学、政府等。主体間の相互作用関係を強化していく。 ▪第3フェイズ(2010-Now):トランスフォーマティブイノベーション←New • 世界規模の課題に取り組むイノベーション。 • 人間の行動様式を含む社会システムレベルの変革。 • 政府が政策的に直接コントロールできる領域が制約される。 • 一般の市民が重要な主体 • 自然科学の成果のみならず人文社会学の厚み。 上⼭, 第6期科学技術基本計画へ䛾提⾔: , 科学技術基本法䛾課題 NISTEPフォーサイトシンポジウム
  6. 第6期科学技術・イノベーション基本計画における ELSI/RRIに係る記述 • (1) 「新たな社会を設計し、その社会で新たな価値創造を進めていくためには、多様な「知」 が必要である。特に Society5.0への移⾏において、新たな技術を社会で活⽤するにあたり 生じるELSIに対応するためには、俯瞰的な視野で物事を捉える必要があり、⾃然科学のみな らず、⼈⽂・社会科学も含めた「総合知」を活⽤できる仕組みの構築が求められている。」 (p.

    14) • (2) 「広範で複雑な社会課題を解決するためには、知のフロンティアを開拓する多様で卓越し た研究成果を社会実装し、 イノベーションに結び付け、様々な社会制度の改善や、研究開発の 初期段階からの ELSI 対応を促進する必要があ る。」(pp. 42–43) • (3) 「我が国や世界が抱える社会問題の解決や科学技術・イノベーションによる新たな価値を 創造するために、研究開発 の初期段階からのELSI対応における市⺠参画など、⼈⽂・社会科 学と⾃然科学との融合による「総合知」を⽤いた 対応が必須となる課題をターゲットにした研 究開発について、2021 年度より、関連のファンディングを強化する。」 (p. 45) • (4) 「社会課題を解決するためには、従来の延⻑線上の取組のみならず、新たな価値観を示 し、制度的なアプローチをと ることが求められる。新たな技術を社会で活⽤するにあたり生 じる制度⾯や倫理⾯、社会における受容などの課題に 対応するため、⼈⽂・社会科学も含め た「総合知」を活⽤できる仕組みを構築する。」(p. 82)
  7. 「予測」をめぐる二つの立場 •自然科学的 •予測の中立性、客観性 •社会科学的 • 「予測」は、人ひとの行為と連動し社会を変える 「科学的な予測による社会への影響」と「社会による予測科学への影響」が存在する。 科学的な予測 → 人びとの行為

    → 社会が変化 = 「行為遂行性(Performative)」(言語行為論) 「予測が事実を記述」 から「予測が社会を動かす」へ Austin, J. L. (1962) How to Do Things with Words ⼭⼝, 2020 予測の社会での使われ⽅, 未来ビジョン研究会
  8. 経営手法(マネジメント)の3要素 $SBGU 4DJFODF "SU H. ミンツバーグ「MBAが会社を滅ぼす 正しいマネージャーの育て⽅」 (⽇経BP), 「エッセンシャル版 ミンツバーグ

    マネージャー論」(⽇経BP) (主観・ビジョン) 内省とビジョンを通じた包括的な統合 (分析・体系的知識) 情報の取得と評価を通じた体系的な分析 (経験・実務) ⾏動と実験を通じたダイナミックな学習
  9. トランス・サイエンスの時代 (Trans-Science Age) •科学技術の“光と影” •生成系AI、原子力発電、遺伝子組み替え作物、再生医療など •トランス・サイエンスの領域に属する問題(AlvinM.Weinberg) •科学によって問うことはできるが、科学によって答えることので きない問題群からなる領域 •科学的な合理性を持って説明可能な知識生産の領域と、価値や 権力に基づいて意思決定が行われる政治的な領域とが重なり合

    う領域 例)原⼦⼒発電所の事故再発の確率が計算上低いとしても、 ⼈々がその発電所を受け⼊れるかどうかは、社会・経済・ 暮らし、さらには歴史や⽂化などの様々観点からの判断を 要し、科学だけでは決められならない。 科学的正当化(justification)には限界があるなか、 社会的に正統な(legitimate) 意志決定が必要。
  10. 必要なのは超学際(トランスディシプリン)の視点 (第12回予定) Gunther Tress, Bärbel Tress, and Gary Fry. (2004).

    Clarifying integrative research concepts in landscape ecology. Landscape Ecology, 20, 479-493.) • マルチディシプリン ︓研究拠点などのように1つの傘の下で同じテーマを持つが、各ディシ プリンはそれぞれ独⽴している状態。 • インターディシプリン︓各ディシプリンが、共通する1つの⽬標に向かって活動している。 • トランスディシプリン︓⽬指す⽬標が、企業や⾃治体、地域のコミュニティなど、社会と交差 するところに設定されており、様々なディシプリンと多様なステークホルダーとの協働が⾏わ れている。
  11. 講義フィードバック (4.8/5.0) ・自分のしている研究活動が社会との関係の中でどのような立ち位置にあるのかを知ることが でき、ためになる講義だった。 ・元々、非常に関心のあったテーマ(ナレッジマネジメント等)だったのですが、それがここまで体 系化されている講義があることに驚き、かつ、広い視野で自分の興味関心の領域を広げること ができた。 ・総じて非常に学びの多い講義であり、社会人学生として仕事をしていた中で、最も有用で実践 的な講義だと感じた。このような講義を用意してくださった佐々木先生と大学側には心より感 謝申し上げます。

    ・予備知識のない中で様々な講義を受けてきましたが、この講義が一番わかりやすく(スライドも 説明も)、それでいて一番考えを深めることができました。1つ1つ丁寧に楽しみながら取り組め ました。 ・私は来年から人間科学寄りの研究者として企業に就職する予定ですが、引き続きただ研究す るだけでなく、それをどのように社会課題の解決や持続的な社会の形成と融合できるのか考え、 行動に移していければいいなと思います。
  12. 補助資料 •必須ではありませんが、補助資料として[科学技術イノ ベーション政策の科学のコアコンテンツ] を一部活用して います。 • [0.1 変容する社会の中で、科学とは?技術とは?イノベーションとは?](https://scirex- core.grips.ac.jp/0/0.1/main.pdf) •

    [1.0.1 イノベーションとは](https://scirex-core.grips.ac.jp/1/1.0.1/main.pdf) • [1.0.2 イノベーション・プロセスのモデル](https://scirex- core.grips.ac.jp/1/1.0.2/main.pdf) • [1.2.3 なぜ既存企業はイノベーションへの対応が難しいのか](https://scirex- core.grips.ac.jp/1/1.2.3/main.pdf) • [2.2.1 STIガバナンスにおける意思決定のツール](https://scirex- core.grips.ac.jp/2/2.2.1/main.pdf) • [3.1.1 研究者の責任と倫理的・法的・社会的課題(ELSI)](https://scirex- core.grips.ac.jp/3/3.1.1/main.pdf) • [3.1.2 ビッグサイエンスと社会](https://scirex-core.grips.ac.jp/3/3.1.2/main.pdf) • [3.2.2 研究者コミュニティと市民が交わる場づくり](https://scirex- core.grips.ac.jp/3/3.2.2/main.pdf)
  13. 担当教員: 佐々木一 Hajime SASAKI, Ph.D. 興味の範囲: • イノベーションマネジメント • 技術経営

    • 知識工学 • 意思決定学 • 予測と社会 • 技術の社会実装 重⼯業(航空機)にてエンジニア(制御、電気、ソフトウェア関連)。 東京⼯業⼤学⼤学院にて修⼠(技術経営)。東京⼤学⼤学院TMIにて博⼠ 号(⼯学)。 専⾨はイノベーションマネジメントやインテリジェンス(意思決定)。 社会と技術の接点にある課題や、科学技術の実装のありかたについて関 ⼼を持つ。2018年より東京⼤学政策ビジョン研究センター准教授。東京 ⼤学未来ビジョン研究センター准教授を経て、現在同特任准教授。 拠点︓中野→柏→名古屋→江東→川⼝→神楽坂→⾚⽻→葉⼭ 最近好きな⽇本酒︓あべ(阿部酒造, 新潟) 近年の対象技術領域: • 情報技術(AI含) • 航空機(UAV含) • 次世代エネルギー • ナノ技術 • 生体計測技術 ほか なにかあればこちらまで sasaki[at]ifi.u-tokyo.ac.jp https://www.sasakihaji.me/
  14. この講義で整理すべき3つの問題。 •従順な問題 Tame problem :科学や工学で扱う問題のように、難易度はさてお き、その問題の定式に沿って解を探索することで問題を解決できることを期 待できる。(講義では殆ど触れません) •厄介な問題 Wicked problem

    :問題をどのように設定するか自体が不確定な問 題(フレーミング) 。原因を取り上げること自体に一種の価値評価を含む。 • 貧困問題(経済システムの問題、個人の能力の問題、民族性別などのアイデンティティの 問題?) • 子どもをどういう人間に育てればいいか(性格?健康?教育水準?) • 観光地のゴミのポイ捨て(清掃の頻度の問題、観光客のモラルの問題、商品を売る商店の 問題?) •適応課題 Adaptive challenge:自分自身のものの見方や、周囲との関係性が変 わらないと解決できない問題。自分も当事者であり、問題の一部である。 (Rittele and Webber, 1973) Heifetz, R., & Linsky, M. (2017).
  15. 現実・ 課題 問題に対する姿勢 状態1:傍観者(批評家) 自分には関係ないことにしている 状態2:課題解決型 状態3:主体者(私も起点) 問題を分析し、解決する ただし、外側から対処する 問題を作り出している

    可能性があるところに立つ 問題をシステムと捉え全体を俯瞰し、 自分もその問題に加担している(一部 を担っている)という所に立ち、自分の あり方(Being)からその問題自体に変 化を与えるセルフリーダーシップ。 問題を分析し解決する。ただし、問題 は絡み合って益々高度化し、次から 次へと新たな課題が発生する 飲み屋で会社の悪口を言ったり 、うちもトップが変わってたらいい のだけどね、と言う状態 ▪旨み: 責任を取らなくていい、安心、居心地が いい、傷つかなくていい ▪代償: ・現状は何も変わらない ・今の環境を生き続ける ・成長しない ▪旨み: 達成感、成長・能力が上がる、頼られる、 承認される、自己効力感、自己価値の証 明 ▪代償: ・分断が起こる可能性がある ・どこかむなしさを感じる ・孤軍奮闘、自分だけが頑張る ・責任ばかり上がる 現実・ 課題 現実・ 課題 これらを促す事のできる⼈材 システムリーダーシップ さらに
  16. 履修される方向け: 初回練習ワーク この講義で整理すべき下記の問題について 、ご自身の研究テーマに関連した事例をそれぞれ挙げてください。 講義用チャットボットを用いてみてください。 • 従順な問題 Tame problem •

    厄介な問題 Wicked problem • 参考:Rittel, H. W., & Webber, M. M. (1973). Dilemmas in a general theory of planning. Policy sciences, 4(2), 155-169. • 適応課題 Adaptive challenge • 参考: Heifetz, R., & Linsky, M. (2017). Leadership on the line, with a new preface: Staying alive through the dangers of change. Harvard Business Press. 提出先: [email protected] メールタイトル: 知識社会マネジメント初回ワーク提出 本文中に学籍番号を記載のこと。 締め切り: 本日 12:30
  17. 講義用チャットボット(第一回) https://qr.paps.jp/T9JS RAG情報 Rittel, H. W., & Webber, M. M.

    (1973). Dilemmas in a general theory of planning. Policy sciences, 4(2), 155-169. Heifetz, R., & Linsky, M. (2017). Leadership on the line, with a new preface: Staying alive through the dangers of change. Harvard Business Press.
  18. スケジュール(2024.4.5現在の予定) 回(日時) 主題と位置付け 第1回︓4⽉5⽇(⾦) ガイダンス︓知識創造社会の創造と未来【オンライン】 第2回︓4⽉19⽇(⾦) 科学技術の兆しと未来洞察 第3回︓4⽉26⽇(⾦) QFTによる「問い」の構築 第4回︓5⽉10⽇(⾦)

    予測と社会︓リスクと知識の関係 第5回︓5⽉15⽇(⽔) ビジネスにおける⽣成系AIとクリエイティブの未来 第6回︓5⽉17or24⽇(⾦) 科学技術と⼈間中⼼な社会 第7回︓5⽉30⽇(⽊) スペキュラティブデザインによる科学の未来 第8回︓6⽉7⽇(⾦) ビールゲームとシステム思考、システム原型、メンタルモデル 第9回︓6⽉14⽇(⾦) システムの理解とネクサスアプローチ 第10回︓6⽉21⽇(⾦) 持続可能な社会・環境課題解決型資⾦としてのインパクト投資 第11回︓6⽉28⽇(⾦) テクノロジーによる課題解決の⺠主化 第12回︓7⽉5⽇(⾦) マルチステークホルダープロセスによるオープンな知識創出活動 第13回︓7⽉12⽇(⾦) 最終課題 厄介な問題 Wicked prob. 適応課題 Adaptive prob. 主な焦点