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伝わったのは製品ではなく「自作」だった
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nassy
October 10, 2026
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伝わったのは製品ではなく「自作」だった
nassy
October 10, 2026
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Transcript
伝わったのは製品ではなく 「自作」だった SaaSエンジニアが見た、業務システム開発の民主化
自己紹介 Nassy について ソフトウェアエンジニア。 業務SaaSを作ってきました。 - AI・Agent Skills・自動化まわりに関心があります - 札幌民です。仲良くしてください。
2
1. 今日話すこと 工務店2社、電気屋1社に話を聞いてきた 業務SaaSを作ってきた人間として、かなり衝撃を受けました。 1. 何が起きていたか 2. イノベーター理論でどう読めるか 3. 市場はどうなりそうか
今日は分析まで。「自分たちはどうするか」は話しません。 3
2. 前提にしていたこと SaaSを契約して、業務改善をする層だと思っていた アーリーアダプター〜アーリーマジョリティは SaaSを契約して業務改善をする その前提が崩れた話です。 4
3. 工務店A社が作っていたもの 従業員5人の工務店A社が、受注から請求までを自作 - 現場の写真をアップロードし、相談内容は音声で記録 - LLMが優先度付け、見積書・請求書を作成 - 請求書をPDFで出力 優先度の判断基準は、もともと会社にあったものを組み込んだ。
業務の考え方をゼロから作ったわけではない。 5
4. 規模と運用 作って終わりではなく、構成を変えながら運用 約10万行 430件 40本 コード規模 自動テスト 運用ドキュメント -
社内ホスティングからCloudflareへ移行 - Tauriのデスクトップ版も、クラウド化に合わせて移行 - 改修を続けながら運用している 6
5. どうやって作っているか 元エンジニアではない人が、LLMと作っている - LLMの案内を愚直に実行する - B社は、ひたすら音声で話しかけて改修 「コードの中身を深く理解しているわけではない」 とも言っていました。元エンジニアではありません。 7
6. どうやって自作システムを社内に定着させたか 従業員に覚えさせたのは、3つだけ 1. 担当の工事を探す 2. そこに写真・音声をアップロードする 3. 出力された見積もりをチェックする 苦労したというより、工夫したところだそうです。
8
7. A社はSaaSを解約していた 覚えることが多く、現場で入力しづらかった 以前導入した、この分野で有名な会社のSaaSを解約。 - 覚えることが多い。使い方をCSに聞かなければいけない。 - 現場に出ているので、PCを開いて入力すること自体が難しい 動かなくなってもExcelに戻れる もともとExcelで回していた業務。
だから、そこまで高いリスクではないという捉え方でした。 9
8. 3社はどう広がったか 別々の会社に、AI活用が広がった 会社 立ち位置 経緯 A社 アーリー アダプター Midjourney期からAIを追い続けた。
Fable祭りにも参加。非エンジニア B社 アーリー マジョリティ A社の業務適用を見て、自社フローに適応。 2週間で社内利用開始 C社 アーリー マジョリティ A社に何度も「使え」と言われて課金。 内装の3Dイメージを作成。「早く触ればよかった」 10
9. ここからイノベーター理論で読みます A社を起点に、B社・C社へ別々に伝わった 業務適用を見せる → B社 アーリーマジョリティ A社 アーリーアダプター 何度も「使え」と勧める
→ C社 アーリーマジョリティ B社とC社の間にやり取りはない。A社が、それぞれに働きかけた。 ただ、1つだけ読み替えが要ります。 11
10. 採用されたのは「製品」ではない 伝わったのは「LLMで自分で作る」という手段 キャズム理論で、普通は「製品」が採用される。 従来 新しいSaaSを採用 アーリーアダプターからマジョリティへ 今回 「自作」を採用 アーリーアダプターからマジョリティへ
A社から伝わったのは、SaaSでもツールでもない。 採用対象を手段に読み替えると、3社の事例が採用曲線に乗る。 12
11. キャズムは越え始めている。しかも会社をまたいで A社が「事例を見せる」「何度も勧める」を担った B社は、他社であるA社の事例を見て2週間で自社に適用した。 身近なリファレンスで動く。ムーアの処方箋が、そのまま起きている。 通常:ベンダーが作って届ける - 導入事例を公開する - 同業の成功例を紹介する
- 迷っている顧客に営業が何度も通う 今回は、ベンダーがいない B社には、事例を見せる C社には、何度も勧める A社の人が、ベンダーの役割を 無償でやっている。 13
12. ただし、マジョリティの中に濃淡がある 同じアーリーマジョリティでも、「作る」と「使う」 B社:作る 業務システムを 自社フローに合わせて改修 C社:使う 内装の3Dイメージ生成 業務システムの自作には至らず 「自作」まで到達したのは1〜2社。
身近な事例の濃さと、本人への働きかけの強さで分かれる。 14
13. 自作がSaaSに勝った条件 A社では、自作が勝つ5つの条件が揃っていた 条件 A社 小規模・固有で、汎用SaaSのフィットが悪い 5人、現場主体、入力は写真と音声 撤退先がある Excelに戻れる 判断基準がすでに言語化されている
優先度の観点が会社にあった 失敗が致命的でない 最後に人がチェックする 同業コミュニティにAIを追い続けた人がいる A社の人。社内でなくてよい 逆に、どれかが欠ける領域ではSaaSが残る。 15
14. 市場はどうなるか — 敗因はフィット不足 機能不足ではなく、フィットで負けた 汎用SaaS 80%合うものを 学習コストを払って使う 自作 5人の業務に100%合う
ものを、自分で作る 写真と音声が入力で、操作を覚える必要がなく、現場で完結する。 これが比較対象になりました。 16
15. 伝播経路がSaaSの営業経路を迂回する 同業者の口コミが、SaaSの営業経路を迂回する 従来:ベンダーの導入事例・営業・展示会を経由して採用 今回は、同業者の口コミで「自作」が伝わった。 工務店 → 電気屋 → 同業組合
ムーアの言う「ボウリングのピン」が、 ベンダー不在で倒れ始めている。 17
16. ただし「ホールプロダクト」が欠けている 周辺を含めた完成品が、まだ揃っていない 3社とも、同じところに不安があった。 - セキュリティ:脆弱性、攻撃を受けたらどうなるか - LLMにどこまで情報を入れてよいのか - 運用、移行、相談相手
ここが埋まらない限り、C社層は 「使う」から「作る」へは進まないと見ています。 18
17. 奪われる領域と、残る領域 SaaSは「接続点・記録・証明」へ押し戻される 自作に奪われる SaaSに残る ネットワーク外部性があるもの 会計・電子契約・発注先との共通基盤 自社固有の中間工程 受注〜請求のような 社内ワークフロー
コンプライアンス・証跡が要るもの 給与・インボイス・電帳法 データが資産そのもの 顧客基盤・市場データ 「Excelに戻れない」もの 多拠点・多テナント・リアルタイム連携 19
18. 予測 自作の広がりと、SaaSの役割の変化を予測する 1. 密な同業コミュニティから、固有業務の自作が会社をまたいで広がる 2. SaaSの契約数が減り、残るものが連携・記録・証明に偏る 3. アーリーマジョリティは、3つの経路に分かれる -
同業の自作者からテンプレートをもらう - 自作を支援する人(点検・運用・移行)に頼む - 写真・音声入力、覚えることゼロのLLMネイティブSaaSに乗る 4. SaaSは、自作アプリの撤退先・接続先へ。Excelが担っていた場所 20
19. まとめ 「製品を選ぶ」行動が、「自作する」に変わり始める 業務SaaSは「どの製品が選ばれるか」を競ってきた。 今は、その行動自体が 同業者の口コミで置き換わり始めている。 伝わったのは製品ではなく、「自作」だった。 SaaSという形が選ばれ続ける領域はどこか。問いを変える必要がある。 21
20. 断り 3社の観察に基づく、2026年10月時点の見解 - 3社のインタビューに基づく観察です - 一般化には検証が要ります - 予測は2026年10月時点の私の見解 AIの見解です
ありがとうございました。 22