を用いた。転職市場での競合状況として、埋め込み空間での企業間の距離の逆数を用いることで、競合の数や程度を考慮し割 り引いた。競合状況を考慮することによって、クラウド・フィンテック業界の企業が多くの他業界と競合しながらも突出して 高いアドバンテージを持つことを特定できた。このような、アドバンテージ上位業界に着目することで、雇用慣行の変化や日 本の労働状況をより詳細に把握できると考えられる。例えば、クラウド・フィンテック業界に着目し、どのようなスキルを持 つ人材にとって魅力的な環境があるのかを調査することなどがあるだろう。 本分析で使用した転職データはEightにおける所属企業の遷移を基に作成しており、推定は100回以上の転職が観測された 企業に対してのみ行った。このように抽出したデータは必ずしも日本の労働市場の良い代表になっているとは限らず、分析結 果にも影響を及ぼしている可能性には注意が必要である。また、今後の方針としては、上記のバイアスを補正するようにモデ ルを改良すること、今回推定した転職市場におけるアドバンテージをさまざまな経済的指標と照らし合わせて解釈性を高めて いくこと、レーティングを時系列拡張して中長期的な業界の動向を示すことなどが挙げられる。 6 Reference [1] 厚生労働省, 「雇用動向調査」, https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/9-23-1.html(参照 2020/10/28) [2] 濱秋純哉, 堀雅博, 前田佐恵子ほか, 「低成長と日本的雇用慣行—年功賃金と終身雇用の補完性を巡って」, 『日本労働研究 雑誌』, 独立行政法人労働政策研究・研修機構, 2011, no. 611, pp. 26-37 [3] 神林龍, 「日本的雇用慣行の趨勢:サーベイ」, 『組織科学』, 組織学会, 2016, vol. 50, no. 2, pp. 4-16 [4] Kenneth Massey, “Statistical Models Applied to the Rating of Sports Teams”, Massey Ratings - Sports Computer Ratings, Scores, and Analysis, 1997, https://masseyratings.com/theory/massey97.pdf (accessed 2020/10/28) [5] Enrico Bozzo, and Massimo Franceschet, “The Massey's method for sport rating: a network science perspective”, arXiv, 2017/1/13, arXiv:1701.03363 (accessed 2020/10/28) [6] Timothy P. Chartier, Erich Kreutzer, Amy N. Langville and Kathryn E. Pedings, “Sensitivity and Stability of Ranking Vectors”, SIAM Journal on Scientific Computing, Society for Industrial and Applied Mathematics, 2011, vol. 33, no. 3, pp. 1077-1102 [7] Massimo Franceschet, Enrico Bozzo and Paolo Vidoni, “The temporalized Masseyʼs method”, Journal of Quantitative Analysis in Sports, De Gruyter, 2017, vol. 17, no. 2, pp. 37-48 [8] Adam Lerer, Ledell Wu, Jiajun Shen, Timothee Lacroix, Luca Wehrstedt, Abhijit Bose and Alex Peysakhovich, “PyTorch- BigGraph: A Large-scale Graph Embedding System”, arXiv, 2019/4/9, arXiv:1903.12287 (accessed 2020/10/28) [9] HongYun Cai, Vincent W. Zheng and Kevin Chen-Chuan Chang, “A Comprehensive Survey of Graph Embedding: Problems, Techniques, and Applications”, IEEE Transactions on Knowledge and Data Engineering, Institute of Electrical and Electronics Engineers, 2018, vol. 30, no. 9, pp. 1616-1637 [10] 総務省統計局, 「労働力調査」, https://www.stat.go.jp/data/roudou/index.html(参照 2020/10/28)