モニタリングでパフォーマンス改善入門

DroidKaigi 2023発表内容です

Transcript

1. モニタリングで パフォーマンス改善⼊⾨ Shimizu Asami
2. 清⽔⿇美 −Shimizu Asami- 株式会社AppBrew所属 コスメアプリ”LIPS”のAndroid開発担当 本⽇はご聴講ありがとうございます！有益な情報をお 届けできるよう努めますのでよろしくお願いします！
3. 01. 02. 03. 04. パフォーマンスの検査 パフォーマンスの改善とは パフォーマンスのモニタリング まとめ
4. パフォーマンスの改善とは 01.
5. こんなお困りありませんか？ • アプリを作ったはいいが起動が重い • アプリを作ったはいいが動作が重 い、Viewがカクつく • バッテリー消費が激しすぎ どこをどうすればいいかわからない！
6. 公式ドキュメントを読もう https://developer.android.com/topic/per formance/overview?hl=ja アプリパフォーマンスガイドがあります。 今回の発表はここの紹介をしていきます！
7. 何からすればいい？ 問題がおこっていることはわかっている →ではその問題がなにか、の把握が必要。 検査→改善を回す！
8. 改善は⼀歩ずつ！ 検査をする際は⼀度につき⼀つの領域に集中したほうが いい • アプリ起動 • Viewレンダリング（ジャンク） • 画⾯遷移、ナビゲーション移動（Activity起動等） • ⻑時間実⾏、 • I/O、ネットワーキング等のバックグラウンド処理
9. ⽤語解説 ジャンク • Viewのレンダリングが遅すぎてフレームをス キップしてしまうこと(1秒60フレームが理想) • フリーズ,ANRもジャンクの⼀種
10. ⽤語解説 フリーズ • レンダリングに700ミリ秒以上かかるUIフ レーム。 • ⼊⼒に1秒反応しなくなってしまう。
11. ⽤語解説 ANR（Application Not Responding） • UIスレッドが⻑期間ブロックされて起こる ◦ ⼊⼒イベントに対する応答が5秒以上 • BroadcastReceiverの実⾏が10秒以上 • アプリケーション応答なしダイアログ表⽰
12. パフォーマンスの検査 02.
13. パフォーマンス検査の種類 パフォーマンスの検査は、3パターン • Passive（受け⾝検査） • Manual（⼿動検査） • Automated（⾃動テスト）
14. パフォーマンス検査の注意点 できる限り本番の環境に近づける • ✕ Emulator ◦ ホストPCの状態に左右される • ✕ debuggable=true(build.gradle) ◦ 便利ではあるが余分な機能が多く不安定
15. PassiveTest ‐ 受け⾝検査
16. PassiveTest - 受け⾝検査 アプリを動かしながらLogCatのログを確認するこ と
17. PassiveTest - 受け⾝検査 メリット • 何が起きているかわかる デメリット • どこで起こっているかの詳細はわからない
18. PassiveTestでわかるもの tag: Choreographer • FrameのSkip時(UIレンダリングが遅いとき)に表⽰ Choreographer com.example.performancesample I Skipped 42 frames! The application may be doing too much work on its main thread.
20. PassiveTestでわかるもの tag: ActivityManger • ANR ActivityManager system_server E ANR in com.example.performancesample (com.example.performancesample/.MainActivity) PID: 4729 Reason: Input dispatching timed out (53dcb44 com.example.performancesample/com.example.performancesample.MainActivity (server) is not responding. Waited 5002ms for MotionEvent) Parent: com.example.performancesample/.MainActivity ErrorId: ce233c9f-5740-4f23-b9db-3327368d60ca Frozen: false
21. PassiveTestでわかるもの tag: ActivityTaskManger • Activity起動時の所要時間 ActivityTaskManager system_server I Displayed com.example.performancesample/.MainActivity: +758ms
22. PassiveTestでわかるもの tag: OpenGLRenderer • mainThreadが700ms以上遅れる(=freeze 状態) OpenGLRenderer com.example.performancesample I Davey! duration=1258ms; Flags=0, FrameTimelineVsyncId=1661510, IntendedVsync=9642633836262, Vsync=9642885158517, InputEventId=0, HandleInputStart=9642892361353, AnimationStart=9642892364061, PerformTraversalsStart=9642944791618, DrawStart=9642944943493, FrameDeadline=9642920872578, FrameInterval=9642892343644, FrameStartTime=16754817, SyncQueued=9643651549605, SyncStart=9643651594657, IssueDrawCommandsStart=9643651644189, SwapBuffers=9643871400513, FrameCompleted=9643892793692, DequeueBufferDuration=11875, QueueBufferDuration=163177, GpuCompleted=9643892793692, SwapBuffersCompleted=9643871867127, DisplayPresentTime=0, CommandSubmissionCompleted=9643871400513,
23. PassiveTestまとめ • LogCatでジャンク発⽣やActivity起動 時間がわかる • どこで起こっているかはわからない
24. ManualTest ‐ ⼿動検査
25. ManualTest - ⼿動検査 問題のデバッグをすること • 問題がいつ、どこで起こっているかを確認 ◦ CPU、Memory、Network、Energy • アプリの操作をSystemTraceファイル化して 情報をグラフィカルに表⽰できる
26. ManualTest - ⼿動検査 • Android9以上:Perfetto • Android StudioのProfiler profilableまたはdebuggableなアプリ で実⾏可能
27. Profilableアプリを作る Android Qから登場 AndroidManifest構成のうちの⼀つ Application直下に記載
28. Profilable • debuggable=trueでもOK ◦ debug絡みの不要機能が多い • profilable ◦ profile記録機能のみ！ ※本番アプリに適⽤しないよう注意
29. Perfetto Perfetto • 上記WebSiteでSystemTraceファイル のレコーディング開始からViewerで 確認までできる！ ◦ （※Android13はrecording⾮対応）
30. Perfetto • Linux kernelのtraceが可能 • Androidの⾃分のアプリのみでなく、 端末全体のProcessの確認が可能
31. AndroidStudio Profiler • AndroidStudioのToolのひとつ • Android5.0以降と互換性
32. AndroidStudio Profiler • adbで接続している場合にオンタイム で確認が可能。 ◦ ただし対象のアプリのProcessしか⾒られ ない。 • ジャンク表⽰がわかりやすい
33. Perfetto vs AndroidStudio Profiler https://hackernoon.com/comparing-perfetto-with-android-profiler
34. SystemTraceファイル • Perfetto,AndroidStudio Profilerで検 査したい操作を記録したファイル • Android9以上の端末で記録可能
35. SystemTraceのやり⽅ • 開発者向けオプション → システムトレースでト レースの記録orトレース記録のクイックタイル 表⽰ • トレース記録したものは端末にデータとして保 存されるので、なんらかの⽅法でPCに移動し て、Viewerで表⽰する
37. Perfetto Viewer
38. PerfettoViewerを動かそう！
39. Perfetto Viewer 全体のCPU利⽤量、GPU Manager、Battery量等
40. Perfetto Viewer 下には動いているPackageが表⽰される Packageをタップすると詳細表⽰
41. Perfetto Viewer ピンチアウトで拡⼤ができます
42. Perfetto Viewer Eventを選択すると下のSliceに詳細が表⽰される
43. Perfetto Viewer Custom Logを⼊れることもできます(PhotoTestClick13) Text(text = index.toString(), modifier = Modifier.clickable { Trace.beginSection("PhotoTextClick $index") TimeUnit.SECONDS.sleep(5) Trace.endSection() } )
44. AndroidStudioProfiler Perfettoよりもジャンクフレームがわか りやすい（上部にまとまって表⽰され る）
45. 21msで表⽰されてほしいが79msかかっている
46. • SystemTraceを⾏い、処理内部でか かる時間を確認する • Profilableアプリで確認する • 基本はPerfetto、ジャンクの確認は AndroidStudioProfilerが便利 ManualTestまとめ
47. AutomatedTest - ⾃動テスト
48. AutomatedTest - ⾃動テス ト ⾃動テストでパフォーマンスのスピード を集計が可能 →パフォーマンスの回帰テスト
49. AutomatedTest - ⾃動テス ト Macrobenchmark • 起動、複雑な操作、⽐較的⼤きな領域に対応するユー スケースのテスト Microbenchmark : • ⼩さい領域、1関数のユースケースのテスト ◦ サンプルだとsort、bitmap作成等
51. Macrobenchmark • AGP 7.3.0以上、GradleVersion 7.4以 上 • InstrumentalTestのModuleとして追 加できる
52. Macrobenchmark • ⾃動で対象の処理のスピードを測る テスト • 最⼩時間、最⼤時間、平均時間がわ かる • SystemTraceファイル出⼒
53. AutomatedTestまとめ • ⾃動InstrumentalTestで処理スピー ドを測る • 繰り返し測っておくと悪化コードが 追加されたときにすぐに判明できる
54. パフォーマンス検査まとめ • 検査→改善を回すのは、⼀箇所ずつ！ • 受け⾝検査はざっくりと事象の確認ができる • ⼿動検査は具体的な問題の箇所が確認がしやす い • ⾃動テストは改善後に維持ができているかの チェック
55. パフォーマンスのモニタリング 02.
56. モニタリング 継続的にパフォーマンスを監視すること で潜在的問題を早めに発⾒し、多くの ユーザーに問題を与える前に修正しよ う！
57. モニタリングの種類 • Android Vitals • Firebase Performance Monitoring • JankStats • Benchmarkの継続的インテグレー ションでの実⾏
58. Android Vitals
59. Android Vitals • Google Play Consoleで確認可能 • 品質情報のログがGooglePlayに より⾃動で収集される ◦ 安定性 ◦ パフォーマンス指標 ◦ バッテリー使⽤量 ◦ 権限拒否
60. Android Vitals 様々な指標の中でも、以下の主な指標2つ を重視。 • ユーザーが認識したクラッシュ発⽣率 • ユーザーが認識したANR発⽣率
61. Android Vitals ２つの指標がしきい値を超えて悪化すると…？ • GooglePlay上でユーザーから⾒えづらくな る（アプリ表⽰が間引かれる？） • 適切に機能しない可能性がある警告が表⽰ される
62. れっつ実例！ special thanks 夫（夫個⼈Project寄り拝借）
63. 主な指標。⾃分のアプリのクラッシュ率としきい値も表⽰される
64. 安定性、スタートアップ時間。類似アプリの中央値との⽐較もしやすい。
65. UIの他、権限拒否率まで⾒られます。
66. 主な指標のANR発⽣詳細。折れ線グラフで確認可能。
67. ANR発⽣のAndroidVersion等
68. ANRの詳細。
69. バージョン等の情報も⾒られます
70. ANRのStackTraceも⾒られます
71. Android Vitalsは • CrashlyticsのSDKでは取得できないイベ ントをキャプチャできる ◦ SDK初期化よりも前に発⽣した起動時のCrash ◦ Android12以前のANR Android Vitals vs Crashlytics
72. Android Vitalsは • GooglePlayからInstallされたアプリ のみ • Google認定デバイス上のもののみ Android Vitals vs Crashlytics
73. Android Vitalsは • 使⽤状況および診断情報の共有をオプトインし たユーザーの情報のみ • ユーザープライバシー保護のため、匿名化され たレポートの作成に⼗分なデータを収集できた 場合にのみ Android Vitals vs Crashlytics
74. Android VitalsとCrashlyticsで問題発⽣率の計算⽅法が異なる場 合がある ex)あるユーザーが1⽇3回アプリを利⽤し、1回クラッシュ • Android Vitals 1⽇のアクティブユーザーごとなので100％ • Crashlyticsはセッションごとなので33％ Android Vitals vs Crashlytics
75. Android Vitals ゲーム系だと、Android Performance Tunerという pluginを⼊れると、フレームレート、読込み時間、 設定等の詳細パフォーマンスの情報も取れるらしい （対象がNativeGame（CおよびC++）またはUnity で利⽤可能
76. Android Vitals まとめ • GooglePlayStoreでリリースしたアプ リのCrash等の情報が取得可能 • 数値が悪すぎるとPlayStoreでの扱い が悪くなるので注意
77. Firebase Performance Monitoring
78. Firebase Performance Monitoring • Firebaseのサービスの⼀部。 • SDKをいれると⾃動計測してくれる ◦ HTTPネットワーク ◦ アプリ起動 ◦ Activity/Fragmentのフリーズ情報
79. 実際の画⾯
80. カスタムで⾒たい指標の推移グラフが⾒える
81. ネットワークのResponseの時間
82. 処理にどれだけの時間がかかったか
83. 画⾯レンダリング情報
84. ネットワークとトレースは詳細も
85. さらに匿名化されたピックアップ情報も
86. 下には処理の所要時間、ネットワーク時間も
87. • SDKを⼊れると⾃動で計測 • ネットワークやメソッドの所要時間 がわかるほか、サンプル抽出された セッション詳細も⾒られる FirebasePerfomanceMoni toringまとめ
88. JankStats
89. https://developer.android.com/topic/per formance/jankstats?hl=ja androix library(※α版) フレーム統計情報に関するレポートを⽤意 JankStats
90. JankStats Windowオブジェクトを監視し、 Listenerに情報を送る Frameの更新ごとに情報が送られる
91. JankStatsの内容 • フレームの開始時間 • 持続時間 • フレームをジャンクと⾒なすかどう か
92. ログ内容 FrameData( frameStartNanos=155698764771, frameDurationUiNanos=441821978, frameDurationCpuNanos=449129115, frameDurationTotalNanos=449769688, frameOverrunNanos=179341377, isJank=false, )
93. JankStats state 独⾃stateを追加可能。 if (listScrollState.isScrollInProgress){ performanceStateHolder.state?.putState(IS_SCROLLING, "true") } else { performanceStateHolder.state?.removeState(IS_SCROLLING) }
94. JankStats state stateは複数キー追加可能 同じキーだと上書きされる
95. JankStatsまとめ • frameのレンダリング時間測定 • stateを適宜追加しジャンクの起こっ ている状態を確認、ログ等を送るこ とが可能
96. Benchmarkの 継続的インテグレーション実⾏
97. Benchmarkのインテグレー ションテスト 先述のBenchmark TestをFirebase Test Lab等で継続的に実⾏  →時間測定値の差分を監視することで 悪化をキャッチする
98. Benchmarkのインテグレー ションテスト Firebase Test Lab x Github Actionsでの 実⾏は公式サンプルがある https://github.com/android/performa nce-samples/tree/main/Macrobench markSample/ftl
99. まとめ 04.
100. まとめ • パフォーマンス改善は⼀箇所ずつ • 本番に近いアプリで調査する • 調査→修正を繰り返す • モニタリングで悪化箇所をチェック