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炎上プロジェクトに呼ばれたEMがPR数を10倍に増やしたときに得たものと失ったもの
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STORES Tech
November 26, 2025
Technology
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88
炎上プロジェクトに呼ばれたEMがPR数を10倍に増やしたときに得たものと失ったもの
2025/11/26 STORES Tech Conf 2025 での発表資料です
https://storesinc.tech/conf/2025
STORES Tech
November 26, 2025
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Transcript
炎上プロジェクトに呼ばれた EM がPR 数を 10 倍に増やしたときに 得たものと失ったもの 山下 隼人
自己紹介 山下 隼人 / ぴーやま / @phayacell • STORES に勤めて7年目
• 2024年7月からマネジャー任用 • そのうち6年くらい STORES ネットショップの開発 • 趣味は自作キーボード ⌨ リングフィットアドベンチャー 🏋 だいたい1,900日くらいやってる
今日のテーマ 炎上プロジェクトに呼ばれた EM がPR 数を 10 倍に増やしたときに 得たものと失ったもの
Pull Request のマージ数(2024年1月〜2025年11月)
Pull Request のマージ数(マネジャー任用以降 vs 炎上プロジェクト以降)
このセッションのゴール ひとりのエンジニアリングマネジャーが 炎上プロジェクトでの経験を通じて 自身のスタンス・信念・思想がどう変化したのか みなさんがご自身の環境や状況に照らし合わせて 考えるヒントを持ち帰っていただけること
このセッションで話さないこと こういうことは話しません • Pull Request 数を増やすテクニック • 開発生産性を上げるノウハウ • 炎上プロジェクトに対する一般論
• エンジニアリングマネジャーかくあるべし
Day 0: 招集直前
2025年3月以前 モバイルオーダー開発チームのマネジャー
モバイルオーダー開発チームのマネジャー マジですごいモバイルオーダーを作る • プロダクトマネジャー、ビジネスの責任者と モバイルオーダーのリリースに向けて仕様調整 • スクラムチームに対してはスクラムマスターの役割 • チームの「外側」から俯瞰して メンバー自身が改善サイクルを回せるようサポート
モバイルオーダー開発チームのマネジャー 自分で手を動かすことは少なかった • 自分が作ることよりも どうしたらチームの生産性が上がるのか考えていた • それ自体は悪くないはずだが 今になって思えば、そのために自分の手を動かさない選 択をしていた
Pull Request のマージ数は減少(1Q は手を動かそうと頑張っていたが)
Day 1: 危機発生
2025年4月1日の夕方 突然 CPO に呼ばれた
呼ばれた背景 2025年3月末に大きなリリースがあった • STORES プロダクトをつなぐ新プラン
STORES 新プランのリリース 「ひとつの STORES」を実現するために • 管理画面、オンボーディング、プランの統合 • STORES は会社合併してプロダクト数を増やしてきた歴史 があり、プロダクト間の壁も大きかった
• 2020年からずっと統合のために準備をしていた
STORES 新プランのリリース 「ひとつの STORES」を実現するために • ひとつのオンボーディングでサービスを 利用開始できるようになる • ひとつのプランでサービスを横断した 機能提供できるようになる
• STORES の歴史の中でも もっとも大きい影響のある悲願のリリース
STORES 新プランのリリース後 お客さまから多数のフィードバックがあった • 大きな変化に伴う反応 • つなげてはじめてわかったことが多かった • 新プランで利用開始するのに数十分も掛かる
ヤバい
ヤバい なんとか5分でオンボーディングできるように • サービスをはじめるための入力項目が多すぎる • 高い離脱率、ひとりでは完遂できないフォーム • これを解決するための緊急プロジェクト 通称「5min プロジェクト」に呼ばれたのです
4月1日17時、緊急参戦 • プロジェクト概要の説明を受け、開発環境の構築 • 当日(4月1日)18時の夕会に参加 • 翌日(4月2日)にリリースしたい マ? 話を戻して、呼ばれた当日
呼ばれたときの状況 見直し・作り直し真っ最中(3月27日〜) • 4つのプロダクトで別々だったオンボーディングを 丁寧につなぎ合わせている状態だった • ひとつめのオンボーディングが終わったら 次のオンボーディングをはじめる―― • 入力内容の重複も多数あり、累計で約
100 項目に
呼ばれたときの状況 見直し・作り直し真っ最中(3月27日〜) • 画面設計・データ構造の見直しから • 重複する項目は入力させない • すべてをひとつのシステムにのせ、まとめなければ
呼ばれたときのプロジェクトメンバー みんなが全速力で開発をしていた • デザインもない、フォームとバリデーションもない • API は疎通すらできていない • そんな状況からみんなすごい速度で開発をしていた
そして呼ばれた
そして作りはじめた
そして作りはじめた
そして作りはじめた
こんな感じで Pull Request を出し続ける日々がはじまります
Day N: 集中
たくさん Pull Request を出した
そのときの気持ち 時間が足りない、やりたいことまでの距離が遠い • STORES プロダクトをつなぐ新プラン • これまで個別プロダクトだったものをつなぐ • あらゆる歴史的背景を飲み込んで潰さないといけない課 題が噴出
そのときの気持ち プレッシャーもあり、焦っていた • 緊急事態に瀕してバイネームで呼ばれて 何も成果を挙げられないのは許されないと思った • チームを俯瞰して、では成果は出せない • 求められる役割が180度変わった気がした
ミーティングに出るのをやめた 参加予定だったミーティングの大半を欠席 • 状況は全社レベルで伝わっていた • どうしても必要なコミュニケーションは 他のマネジャーやメンバーに支えてもらった • その調整すら、その人たちにフォローしてもらった
STORES 全社集会(4月10日)でも開発 社員全員参加の会場でみんな揃って開発 • 開場前は近くのレンタルスペースでコーディング • 開場後は後方の席でコーディング
RubyKaigi(4月16日~18日)でも開発 愛媛でプロジェクトメンバーみんな揃って開発 • 昼は愛媛県県民文化会館でコーディング • 夜はコメダ珈琲店に集まって23時までコーディング • 深夜はホテルに帰ってからコーディング • 朝はドトールに集まって開場までコーディング
そんな無茶を支えてもらったおかげで、たくさん Pull Request を出せた
得たもの 失ったもの
ほとんどのミーティングを欠席して、得たもの 時間と環境 • まとまった開発時間 • 稼働日のほとんどをコーディング時間に充てられた • 成果を出せない言い訳ができる環境を排除 • 成果を出さないといけない環境に追い込めた
チームで没頭し続ける開発で、得たもの 強制的な能力の拡張 • 成果を出すことへの強烈な刷り込み • 自分で全速力のコーディングをしながら チームの成果量を最大化するように動かないと無理 • プロジェクト進行における 二兎を追う方法を強制インストールした感覚
チームで没頭し続ける開発で、得たもの 強制的な能力の拡張 • 目の前にはやりたいことだらけの Issues • これまでの開発経験を総動員して いかに早く実現まで辿り着けるかの勝負を毎時毎分 • 経験のないこともすぐにやれないと間に合わない
はじめて React を書いたし RDBMS は6年ぶり
ほとんどのミーティングを欠席して、失ったもの 信頼と信用 • 昨日までいたマネジャーが別プロジェクトに異動 • 定期 1 on 1 さえも2ヶ月ほどなくなり
ピープルマネジメントの放棄 • 義理もなにもかなぐり捨ててしまった
チームで没頭し続ける開発で、失ったもの 中長期・広範囲の目線の欠如 • 短期成果に集中するあまり俯瞰した目線がなくなる • プロジェクトメンバー以外の様子は見られなくなる • 年単位のロードマップはほぼ白紙まで戻り 改めて大規模な組織変更、開発体制へ
プロジェクトを終えて
たのしかった 最も開発に熱狂した期間だった • STORES のミッション「Just for Fun」を感じた • そもそもお客さまにご迷惑をおかけしていたし メンバーや周囲の人にもたくさんの迷惑をかけたので
端的に「たのしかった」なんて言っていいか迷うけど • それでも、振り返ると「たのしかった」が出てくる
なぜ、たのしかった? 疲弊よりも満足が勝っていた • タイトでドラマチックな開発 • 高速に課題を解き続けていく開発体験は エンジニアとしての報酬系をすごく刺激してくれた • ひたすら開発に集中できたし 開発生産量は明らかに異常な上昇をしていた
本当にごめんなさい メンバーにご迷惑ばかりおかけしました • たのしかったと開き直ってしまったけど ご迷惑をおかけして申し訳ないと思う気持ちも本当 • マネジャー不在になって大変な思いをさせてしまった • わたしたちが集中している間に起きた「しわ寄せ」に対応し てくれて、ありがとうございました
また、やりたい 今度はもっとうまく熱狂したい • 速度と量を出して開発ができたのはよかったこと • 集中しすぎて周囲にご迷惑をかけてしまったのは 反省しなければならないこと • 反省を活かして、よかったことを再現していきたい •
熱を上げて開発する体験を、もっとうまく、意思を持って再 現したいなと思っています
まとめ
再掲:このセッションのゴール ひとりのエンジニアリングマネジャーが 炎上プロジェクトでの経験を通じて 自身のスタンス・信念・思想がどう変化したのか みなさんがご自身の環境や状況に照らし合わせて 考えるヒントを持ち帰っていただけること
2025年にあった人生の転機です 仕事のスタイルが大きく変わりました before • マネジャーとして一歩身を引いて チームに活躍してもらうようサポートをする after • マネジャーも最前線で一緒に動いて チーム全員で活躍できるよう全速力で走る
どうやって熱狂を再現するか みんなで模索中です • 決して短期の成果にしたくない • 炎上プロジェクトをしたいわけじゃない 熱狂する開発プロジェクトをやりたい • 強弱はあるにせよ いつも「今日の開発もたのしかったなあ」と
熱狂的に課題を解き続ける開発組織でありたい
どうやって熱狂を再現するか みなさんは、どうしますか? ご清聴ありがとうございました