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日本におけるM&A増加の原因〜買い手の視点〜

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July 09, 2020
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 日本におけるM&A増加の原因〜買い手の視点〜

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  1. 日本におけるM&A増加の原因~買い手の視点~ ! 買い手側から見たM&A増加の背景には、成長志向の強い企業による、経営資源獲得手 段としてのM&A利用の増加、及び法制度や専門家による支援環境の充実が考えられる。 M&A 増 加 # 原 因

    動 機 環 境 法制度の整備 FAなど、専門家による サポートの充実 市場の拡大 新事業の開発 成長志向 経営資源の獲得 ヒト モノ 情報 技術 FAとは? FA(ファイナンシャ ルアドバイザー)と は、財務・金融全般 のアドバイスを行う 者を指す。FAは価 格・条件交渉の助 言を行う投資銀行 やコンサルティング 会社を指す事が多 い。 0
  2. 日本におけるM&A増加の原因~売り手の視点~ ! 売り手側から見たM&A増加の背景には、業績改善・事業成長といった事業構造の変化を 狙ったもの、及び事業承継といった事業の継続を狙ったものが主な理由として考えられる。 M&A 増 加 # 原 因

    動 機 環 境 業績改善 事業成長 事業承継 法制度の整備 FA(ファイナンシャルアドバイザー) など、専門家による 価格・条件交渉の助言などのサポートの充実 選択と集中のため 事業立て直しのため 大企業の経営資源の利用のため 他企業のブランドの利用のため 事業継続(雇用維持)のため 経営者自身のイグジットのため 経営者不足や事業承継対策の遅れ 1
  3. M&Aを実施するメリット~買い手側の視点~ 余剰経営資源の有効活用 余剰となっていた資源を、M&Aを実 施することで新たな価値を生み出す ことができる。 シナジー効果 単独での事業の価値が、M&Aを実 施することにより単純な和よりも大 きくなる。 技術獲得にかかるコストの削減

    オーガニックの開発でかかる時間的・資金 的コストの大幅な削減が可能となる。 M&A ! M&Aを実施するメリットは、主にコストの削減・イノベーションの促進・余剰経営資源の有効 活用がある。 2
  4. M&Aを実施するリスク~買い手側の視点~ 統合作業がうまくいかない M&A案件の契約の達成が目的と なった結果、統合作業をおろそかに してしまい見込んでいた成果が出な い可能性がある。 ⇒ビジネスDD、財務DD、法務DD等 で事前に統合作業を見越しておき、 PMIを計画的に実施する必要あり 想定するシナジー効果が生まれない

    M&Aでは多くの場合、買収後のシナジーを見込ん だ買収価格で買収を行うが、当初想定したシナ ジーが生じず、減損を計上する可能性がある。 ⇒ビジネスDD時にリスクを洗い出す必要あり 優秀な人材の流出 M&A後、企業環境が大幅に変化し てしまう可能性がある。それにより、 売上に大きく寄与する人材が他社 に流出してしまう可能性がある。 ⇒売り手の経営者とのコミュニケー ション、M&A後の保証・キーマン条 項等で調整を図るべき ! M&Aを実施するリスクは、主に想定するシナジー効果が生まれない・優秀な人材の流出・ 統合作業がうまくいかないなどがある。 3
  5. M&Aの位置づけ ! M&Aは、それ自体が目的となるわけではなく、数多ある成長戦略を達成する手段の一つ として位置づけられる。 手段 目的 " 会社が今持っているサービスや商品、 人材及び情報を駆使して、独力で戦略 を実施する。

    # 例えば、製品ラインアップ拡充を成長 戦略に定めた場合、社内で新たに製 品を開発するなどして、地道にライン アップを拡充させることとなる。 # 例えば、エリア拡大を成長戦略に定 めた場合、未進出エリアでの仕入経 路作成から販路開拓に至るまで、自 社の経営資源を活用して開拓する。 成長戦略 " 企業買収や資本提携を駆使して必要 なものを外部から調達することによって 実施する。 # 例えば、製品ラインアップ拡充を成長 戦略に定めた場合、取扱製品の異な る企業を買収してラインアップを一気 に拡充させることとなる。 # 例えば、エリア拡大を成長戦略に定 めた場合、既に他地域に展開してい る企業を買収して新たな地域に進出 することとなる。 オーガニック(M&Aなし) M&A ゴール 成長戦略達成 5
  6. 全体からみたM&Aのプロセス M&Aの 検討 初期交渉 デューデリ ジェンス クロージン グ 経営統合 3~9カ月

    3~6カ月 1~3カ月 1~3カ月 6カ月以上 ! M&Aは五つのプロセスに分けられており、M&Aの検討から経営統合まで合わせると最低 でも1年、長い場合数年程度要すると考えられている。 6
  7. FAの主な役割 ! FA(ファイナンシャルアドバイザー)とは、ターゲット企業の選定からクロージングまでM&A プロセス全体に関与して案件をリードする存在であり、M&Aの成否を担うとも考えられる。 FAの主な 役割 企業価値の算定と 買収金額に関する助言 企業価値の算定は少しのさじ加減で数十億円 単位で評価額は変わってしまうため、買収価額

    の妥当性を裏付けるためにもFAなどの専門家 による価値算定は必要不可欠なものである。 買収スキームに関する助言と 資金調達のアレンジ 買収スキームの検討では法的側面や会計・税務的 側面に限らない多面的な検討が必要となる。 また、スキームの策定に合わせて買収資金の調達に ついてもアレンジすることがFAの付加価値となる。 デューデリジェンスの調整・支援 案件の規模や性質に応じて適切なDDの専門家を招 聘することもFAの役割である。 また、DDでは複数のチームが並行して作業を進める ため、全体の調整、リード役として全体のDD作業を 調整することもFAの重要な役割である。 交渉支援 弁護士法の規制により、交渉を側面から 支援することがFAの役割となる。 具体的には買収金額の交渉レンジの決定 など、交渉が有利に働くための交渉戦略 の立案と実行支援、助言を行う。 ドキュメンテーション支援 基本合意書や最終契約書に盛り込まれる条項の内容につ いてもFAは助言を行う。 特に最終契約書は買収対象企業のリスクなどを踏まえて 作成されるため、案件全体をリードしてきたFAが買収後に 生じる可能性のあるトラブルを予見して助言を行うことが重 要である。 7
  8. デューデリジェンス ! デューデリジェンスは主に、買収企業の抱えるリスクの抽出、買収後の経営統合準備のた めに行われる手続きであり、主要なDDとして財務・法務・ビジネスDDがある。 財務DD (監査法人、会計事務所、税理士法人、 財務系コンサルティング会社など) ! 財務DDとは、財務、会計、税務面から過去の損益状況を 調査し、現在の財務状況及び将来の損益予測のベースを

    確認するための調査のこと。 法務DD (法律事務所、弁護士) ! 法務DDとは、法的なリスクを抽出し、買収スキームや買収 価格、最終契約等の交渉を効果的に進めるための情報収 集・調査のこと。 ビジネスDD (経営コンサルティング会社、買い手 企業自ら行う場合もある) ! ビジネスDDとは、買収対象企業の事業性及び統合による シナジー効果とリスクを評価するための調査のこと。 8
  9. デューデリジェンスを実施する目的 9 ! 買い手は「リスクの抽出」および「経営統合の準備」という内部目的と「株主への説明責任」 という外部目的からデューデリジェンスを実施する。 * + , * -

    . / 0 1 実 施 目 的 内 部 目 的 外 部 目 的 リスクの抽出 経営統合の準備 株主への説明責任 " 抽出されたリスクは、M&Aの実行に影響を及ぼす重要事項であるかどうかと いう観点から、M&A実施可否の意思決定材料として利用される。そのため、 M&A実行の意思決定に資する情報を入手することが目的の一つとされる。 " 買収価格を含めた買収条件は抽出されたリスクによって変わり得るため、買 収条件の交渉及び決定に資する情報を入手する上でもリスクの抽出は重要 である。 " DDに際して開示される詳細な経営情報は通常入手できる外部情報と異なり、 買収対象企業の経営実態を把握することに適している。 " DDにおいて入手した情報を買収後の統合計画策定に役立て、経営統合の 準備をすることはDD実施の大きな目的の一つである。 " M&AにおけるDDは法律上の義務では無いが、通常買い手にとって大きな経 営判断である。そのため、経営者はステークホルダーに対して当該M&Aが 適正なものであることを説明する責任を有する。特に外部株主が多い場合、 上場グループの場合等にはより厳しく問われることがある。 " M&A取引について、経営者として最善の努力を行ったことを株主等のステー クホルダーに対して示すための適切な証拠を残すことも、DDを行う大きな目 的の一つである。
  10. " 会社の外部情報に加えて内部 情報を有しており、また過去の 事業の経験から経営実態を十 分に把握している。 デューデリジェンスの必要性~情報の非対称性~ 10 ! M&Aにおいて売り手と買い手の間に通常存在する「情報の非対称性」を是正するために デューデリジェンスは重要である。

    情報の 非対称性 売り手 " 会社の外部情報のみしか有し ていないため、経営実態を十 分に把握することはできず、適 切な買収価格を設定すること もできない。 買い手 会社の外部情報 会社の内部情報 過去の経験等 会社の外部情報 会社の内部情報 過去の経験等
  11. デューデリジェンスの必要性~内部目的から見た必要性~ 11 ! デューデリジェンスを行うことで、対象会社選定及び買収対価設定の失敗及び統合マネジ メントの失敗を避けることができるためM&Aの成功を左右する重要なプロセスである。 リスクの 抽出 経営統合の 準備 買収対価設定の失敗

    会社選定の失敗 統合マネジメントの失敗 " 理論的には、M&A失敗の原因を対象会社 の選定に求めるべきではない。 " しかし、デューデリジェンスを怠ると対象会 社の有するリスク等を見逃してしまう可能性 がある。その結果、実施すべきでない会社 に対してM&Aを実施してしまい、M&Aの失 敗を招く原因となる。 " 過剰な買収対価の支払いはM&Aにおける失 敗要因の大きな一つである。 " 対象会社の有するリスクを十分に認識できず、 もしくは認識できたとしてもこれを適切に買収 対価に反映することができない場合、買収対 価の払い過ぎを引き起こす可能性がある。 " 通常、デューデリジェンスは買収契約締結の 手段としての位置付けが最優先される。 " その結果、買収後の統合マネジメントに対す る意識が欠落しやすくなるが、買収契約締結 目的という側面以外にも買収後の経営統合 に資するための情報収集という側面があるこ とも忘れてはならない。 DD 実 施 の 内 部 目 的
  12. PMI作業について~短期的な統合課題への対処~ ! ランディングプランとは、買収後3~6カ月以内に実行すべき優先課題を示したものであり 以下にあげられるようなDDでの検出結果をもとに策定する。 1.管理面 2.事業面 ! 組織・規定類の見直し – 組織・人員配置の変更、職務分掌、定款の変更、規定類・業務運用ルールの変更など

    ! コミュニケーションの推進 – 対外的な公表や挨拶、社内コミュニケーションなど ! 人事・労務面 – 被買収企業の役員人事、役員退職慰労金の支払い、労働条件の変更など ! 経営管理の見直し – 会議体の設定、業績管理方法、決算期・会計基準の変更など ! 経理・財務 – ファイナンス面での支援、遊休資産・事業街資産の売却、内部統制システムや連結決算システムの構築など ! 原価関連 – 共同購買による原材料費の削減、仕入れルートの見直し、重複する研究開発投資の削減など ! 販売費・管理費関連 – 広告業者・方法の見直し、営業拠点の統廃合、ITシステムの共同利用、備品の共同購入など ランディングプランでは、事業面での短期的に実現可能なシナジー効果の実行計画についても盛り込む必要がある。 12
  13. PMI作業について~中期的な経営課題の設定①~ ! クロージング後は、ランディングプランに従って短期的な課題を解決していく一方、中長期 的な経営効果実現に向けて、「100日プラン」を策定することが重要となる。 100日プランとは 100日プランの策定・実施におけるポイント ! クロージング後100日間で策定する被買収企業の中期経営計画のことをいう。 ! 5年後、10年後を見据えて、課題とアクションの洗い出しと優先順位をつけ、そこに注力した取り組みを行う。

    – 限りあるリソースの中で最大の成果を出すことにつながる。 ! 何を、誰が、いつまでにやるのかを明確にする。 – 課題、責任、期日を定めることで100日プランの成功確率は高まる。 ! 相当な確立で成功するメニューも潜ませる。 – 小さな成功を繰り返すことで従業員の自信を醸成することができ、モチベーションの向上につながる。 100日プランを策定する意義 ! 経営陣・従業員との間で戦略・ビジョンを共有し、具体的なアクションプランを練ることができる。 ! M&Aにより経営体制が変更されることにより、長年解決されなかった課題やタブー視されていた課題などに対し ても、抜本的な解決策を講じやすくなる。 13
  14. PMI作業について~中期的な経営課題の設定②~ ! 100日プランの策定については、必ずしも決まった方法があるわけではないが、ここでは 典型的な策定手順を紹介する。 1 月 目 典型的な100日プランスケジュール 現 状

    分 析 期 間 ビ ジ ョ ン 策 定 期 間 このタイミングで、集中検討 のために合宿を実施するこ ともある。 約100日 14 3 月 目 4 月 目 ・現状分析 (外部・内部環境分析) 1 月 目 2 月 目 ・現状の認識 ・問題点、課題の抽出 ・理念・目標の策定 ・課題解決策の立案 ・実行計画策定
  15. M&Aを実施する上での注意する点 " M&Aの実施が成長戦略の上に検討した事項であるか?明確な戦略は描けているか? " 買収先候補の選定は適切か?成長戦略を実行する上で相応しい買収先となり得るか?自社とのシナジーをはっ きり思い描けるか? " 買収スキームは最適か? ! M&Aを実施する上では、M&Aの検討を成長戦略に沿って適切に行えているかどうか、ま

    たM&Aが絵に描いた餅にならずにしっかり経営統合を行えるかどうかが鍵となる。 M&Aの検討 初期交渉 デューデリ ジェンス クロージング 経営統合 " 価格交渉の際に、価格感について売り手と大きくずれていないか? " 意向表明書について買収先の同意が得られているかどうか?後々論点にならないように網羅的に検討できてい るかどうか? " 企業価値評価の際に、シナジー効果も含めて売り手を適切に評価できているかどうか? " 売り手の重要なリスクを認識しているかどうか?リスク認識の漏れはないかどうか? " 契約書の中身に、買い手として不利な条項が含まれていないかどうか?売り手有利な条項だけになっていないか どうか? " M&A実施後の統合プランをしっかりと組み立てられているかどうか? " 売り手のキーパーソンを抑えられているかどうか?すぐに辞めたりしないかどうか? " シナジーを生み出すための戦略を検討できているかどうか? 15
  16. (参考)M&A買い手側に求められるスキル ! M&A買い手側には、経営スキルのみならず、会計・法律・税務といった専門的スキルも合 わせて幅広い知識及びスキルを身につける必要がある。 業界知識 ヒューマンスキル ! 買収対象会社の事業性の評価 ! 交渉力や行動力、コミュニケー

    ション能力 経営戦略 会計 コーポレート・ファイナンス 会社法 税務 その他 ! 独占禁止法、金商法に関する 知識など ! 法人税に関する基礎的な知識 全般 ! 会社法に関する基礎的な知識 全般 ! 簿記2級程度の基礎知識は必 須 ! 独占禁止法、金商法に関する 知識など ! 企業価値評価手法(DCF法、類 似会社比較法)など 16