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IT イノベーション史の類似点から AI 活用を推測する

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July 09, 2025
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IT イノベーション史の類似点から AI 活用を推測する

本資料は、現在のAIブームを、クラウドやコンテナ技術といった過去のITイノベーション史と比較分析し、これからのAI活用とあるべき組織の姿を考察するものです 。

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Transcript

  1. ⾃⼰紹介 Confidential | 
 2 ⾼校卒業後、クライミングにハマりインストラクター をしながら海外クライミングに明け暮れる。 その後、システムエンジニアとして様々な業務に従 事。 ここ

    7 年ほどは、SRE 領域を主戦場としている。 システムリアーキテクトや SRE ⽴ち上げ等、ハード(技 術)とソフト(組織)の両軸から戦略を考える事を得意 としている。 ⽊村 ⻯介 (@ryurock) 株式会社フーディソン 開発責任者
  2. 巨⼤産業である⾷品分野のEC化はこれから成⻑期に 6 ⾷品分野のEC化率は2023年で4.3%と他カテゴリーに⽐べ低く、EC化余地が⾼い EC市場規模 EC化率差 ⾷料、飲料、酒類 ⾼いポテンシャル ⽣活家電等 4.3% (兆円)

    42.0% ECの浸透 1.2兆円 2.9兆円 2.4x 30%超 (1) Eコマースの市場規模及びEコマース化率は経済産業省「令和5年度 電⼦商取引に関する市場調査」及び経済産業省「平成26年度我が国経済社会の情報化‧サービス化に係る基盤整備(電⼦商取引に関する市場調査)」を参照。グラフは当社作成 ⾷品ECの拡⼤ 高い市場ポテンシャル 2023年 2014年 事業環境
  3. BtoB BtoBコマース 飲食店向け食品Eコマース ⽇本中の産地をつなぎ、⾷材と料理⼈の最⾼の出会いを 「⿂ポチ」 飲食店向けの鮮魚を中心とした仕入れサービス。大田市場に自社の物流拠点を持つことで情報と物 流を繋げ、鮮魚をはじめとした食材のスムーズな仕入れを実現。 うお 数名で店舗運営しているので時間がない ユーザーの課題

    朝、市場に⾏かないと商品が決まらない ⾼品質⾷材‧珍しい⾷材も欲しい ⿂ポチの提供価値 ▪ スマホで簡単注⽂ ▪ 店先配送 ▪ 午前3時まで受付、最短翌⽇配送 ▪ 午後3時半から翌⽇分の発注可 ▪ プロのバイヤーによる透明性の⾼い情報 提供 ▪ 全国の産地から仕⼊れる鮮⿂多数 主なユーザー層 中小飲食店
  4. ⽣鮮流通DXの⾼い参⼊障壁 11 アナログかつ複雑な流通構造の参⼊障壁 規制産業の参⼊障壁 特化型ソフトウェアの独⾃開発と卸売市場参⼊の許認可を取得することで2つの参⼊障壁を乗り越え、強固な事業基盤を形 成 独⾃の特化型ソフトウェアを開発 販売インターフェイス ⾃社物流拠点での商品管理アプリ 配送管理アプリ

    産地側での商品情報⼊⼒アプリ 蓄積されるデータベース 卸売市場参⼊の許認可を取得 ▪ 仲卸業務許可 卸売市場内で仲卸業務を⾏う許可 ▪ 買参権 卸売市場内のセリ等に参加する権利 ▪ ⽔産製品製造業許可を受けた施設 ⽔産製品の製造を取り扱うための許可
  5. アジャイル開発でプロダクトに価値を届けています スプリントサイクル 13 主にやること ▪ 開発計画 特定した MVPの開発フェーズを作成する ユーザーストーリーの作成(機能要件) ⾮機能要件の作成

    MVP 検証に当たる KPI の決定等 ▪ 開発 実際の開発を進める ▪ プロダクトレビュー プロダクト開発チームとステークホルダーでレビュー を⾏い、価値が実現できているか?のレビューを⾏う ▪ 振り返り スプリント内で発⽣した課題等の改善点を洗い出す。 チームの進め⽅等を最適化する MVP特定 開発計画 開発 プロダクト レビュー 振り返り アジャイル 開発プロセス MVP 検証
  6. 少数精鋭で⽣鮮流通の新たな価値を IT で届けています 14 システム開発部 (7 名) プロダクト エンジニア (6

    名) エンジニアリング マネージャー (1 名) プロダクト群 フルフィルメントセンター 管理システム
  7. どこかで⾒た⾵景を思い出す Confidential | 
 20 2006 - 2010 頃
 クラウドの台頭

    【主なビジネスの変化】 AWS の出現により、企業は⾼額な初 期投資無しに、インフラが調達でき るようになり、スタートアップでイ ンターネットビジネスがよりしやす い環境になった。 SaaS 等の新たなビジネスモデルが爆 発的に増える基盤となった 【エンジニアリングにおける変化】 アプリケーションレイヤーとインフ ラレイヤーの境界線が曖昧に (DevOps の普及) 2012 頃
 ディープラーニング 【主なビジネスの変化】 現在の AI ブーム前のもの 様々なもの(画像、⾳声等)で⼤規模 なデータ分析が精度⾼くできるよう になる。 これに伴いデータ基盤の重要性がビ ジネスでも⼀般的になり、データビ ジネスがよりしやすくない環境に。 【エンジニアリングにおける変化】 クラウド x ディープラーニングで専 ⾨的だったデータ領域の境界線が曖 昧に 2015 頃
 Docker によるコンテナ技術 【主なビジネスの変化】 クラウドのインフラを更にポータビ リティを持たせ、基盤管理がより柔 軟になり、IT ビジネスインフラを 構成する - Infrastructure Layer - Application Layer の境界線がますますなくなり、より 早くビジネスが始められるになった 【エンジニアリングにおける変化】 インフラの知識がなくてもインフラ を管理できるようになり、⼩さな規 模では、境界線がほぼなくなった状 態でインフラもアプリケーションも プロダクトエンジニアとしては、必 須の条件に
  8. どこかで⾒た⾵景を思い出す Confidential | 
 21 2006 - 2010 頃
 クラウドの台頭

    【エンジニア職種の変化】 インフラエンジニアから SRE へ のピボット 【感情的なイベント】 インフラ領域以外やりたくない⼈ と変化に対応しようとする⼈の対 ⽴ (DevOps) 2012 頃
 ディープラーニング 【エンジニア職種の変化】 中⼩企業でのデータサイエンティ ストの裾野が広がる 【感情的なイベント】 ビジネス部⾨と開発部⾨のデータ の取り扱い⽅による対⽴ (BizOps) 2015 頃
 Docker によるコンテナ技術 【エンジニア職種の変化】 フルスタックエンジニア、プロダク トエンジニアという、領域で分けな い職種が主流になる 【感情的なイベント】 フロントエンドもインフラもバック エンドも全部求められるので、中間 層が発狂
  9. ITイノベーションは、短期的に特定の既存業務の⾃動化や効率化による「破壊」をもたらす⼀⽅で、⻑期的には それを上回る新たな需要と、「創造」的な雇⽤を⽣み出すというサイクルを繰り返しているはず Confidential | 
 23 年 情報処理‧通信技術者 有効求⼈倍率 (年間平均)

    全職種平均 有効求⼈倍率 (年間平均) 主なITイノベーションと社会情勢 2006 1.05 0.98 AWS S3/EC2登場、クラウドの萌芽期 2008 0.89 0.86 リーマンショック 2010 0.77 0.53 経済回復期、クラウドサービス拡⼤ 2013 1.48 0.93 アベノミクス、景気回復基調 2017 2.76 1.54 デジタルトランスフォーメーション (DX) 加速 2021 2.22 1.13 コロナ禍でデジタル化加速、DX推進再燃 2022 2.50 1.28 DX需要⾼⽌まり、⽣成AIの萌芽 2023 2.80 (速報値) 1.31 (速報値) ⽣成AI(ChatGPTなど)⼀般公開、需要が急増 2024 2.90以上 (予測) 1.30前後 (予測) ⽣成AIの本格活⽤、新たなAIエンジニア需要 ※ Google AI Studio による「厚⽣労働省の統計」のまとめを要約しているので、数字の真偽は、 https://www.mhlw.go.jp/index.html を確認して下さい。
  10. ITイノベーションによる変化は「守‧破‧離」 Confidential | 
 24 AI による確変スイッチが⼊っている現状で、組織が前提として考えていかなくてはいけない事 守 破 IT

    イノベーショ ンによる破壊 ビジネスの破壊 プロセスの破壊 X 離 破壊による⼩さ なプレーヤーの 出現 集約 AI の活⽤で重要な事 新たな「破」を求める企業であれば 「破」を⽣む AI ⼒が求められ、 既存領域リーディングプレーヤーは 「変化」に対応する AI ⼒が 求められる。 「破」を求める企業と「変化」を対 応する企業の共通点は、「⽣産性」 に⼤きな変化が出る。 「⽣産性」の変化によって我々の仕 事の変化は領域の境界線がなくなる こと。 AI 以外の領域でも「学ぶ事を恐れ ない⼈材」が、破のフェーズでは重 要と考えている。 ビジネス レイヤー 領域 Aの ⼤きな プレーヤー 新たな⼤きな プレーヤー 破壊による⼩さ なプロセス プロセス レイヤー 既存のメジャー なプロセス 新たな⼤きな プロセス AI エンジニアリング AI ビジネス 新たなツールや サービスの出現
  11. 領域 A 領域 B 領域 C 「AI」が「⼈」に変化を求めること Confidential | 


    26 業務遂⾏能⼒の補完を AI を使う事によって「⼈」の⽣産性と流動性に⼤きな変化を⽣むはず アシスタント AI とオートメーション AI わからない領域の低レイヤーは「AI と壁打ち」する ことで「⼈」は「何もわからない」から「なんとな くわかる」がデフォルトになる。(アシスタント AI) 領域の深さは、なんとなくわかったコトに対して 「読み解く⼒」と「⼈」の変数のような 数字では測れないものが多数あるので 「⼈」が判断しないといけない。 「領域の深さ」があるエキスパートは、⾃分の担当 領域をオートメーション AI を使って、ジェネラリス トに移譲、またはオートメーションが加速的に進む はず。 広さはアシスタント AI が補助し、 深さはオートメーション AI が補助する関係になると 思われる。 低 ⾼ 業務領域の広さ ⾼ 低 業務領域の深さ アシスタント AI がサポートする領域 オートメーション AI がサポート する領域 ⼈が判断する 領域
  12. ジェネラリストの⼈材とエキスパートの⼈材で組織が AI 活⽤で重要なコト Confidential | 
 27 ジェネラリストは「学習⽀援」のアシスタント AI の活⽤で隣の領域に⾶び込む⽀援を

    エキスパートは「暗黙知のナレッジ(AI ルールベース)化による形式知」のナレッジ化が求められる ⼈ x 領域 x ビジネス ジェネラリストタイプの⼈材は、 AI に全てをやってもらうのではなく、 copilot のようなアシスタント AI で 学習⽀援をベースにして深さを獲得する。 エキスパートタイプの⼈材は、オートメー ション AI を活⽤して、ナレッジベースの汎 化を⾏う。 ルールを⾔語化できない⼈が、オートメー ション AI を活⽤しようと思うと、「⼈」が 「ハルシネーション」を引き起こすリスク がある。 領域 A 領域 B 領域 C 低 ⾼ 組織内の⼈の「リテラシー」の浸透度 ⾼ 低 暗黙知から形式知の変換度 エキスパートが オートメーション AI を利⽤する領域 ⼈が判断する 領域 仕事の領域 A 仕事の領域 B 仕事の領域 C アシスタント AI で学習⽀援を⾏う 汎化 (ルール化) 専⾨性
  13. AI によって1 ⼈あたりの業務領域の幅と深さが増える悪影響 Confidential | 
 28 AI の精度がよくなればなるほど、⼈は AI

    の情報や操作に信憑性を疑いにくくなり 組織が「ハルシネーション」を引き起こしやすくなる AI 情報の氾濫 急激な成⻑ 信憑性を 疑わなくなる ⼈ 領域が 増える 流動性が 多くなる ⼈に与える 影響 組織 謎の⾃動化が 増える 無駄なプロセス が増える
  14. リテラシーとナレッジ Confidential | 
 29 ジェネラリストは「やったことがない領域を恐れない」踏み込む⼒ エキスパートは「暗黙知のナレッジ(AI ルールベース)化による形式値」のナレッジ化が求められる 組織内の⼈の領域に広さ ⾼

    低 暗黙知から形式知の変換度 ⾼ 低 AI を利⽤して ビジネスが成⻑する状態 AI を利⽤して ビジネスが停滞する状態 エンジニア アシスタント AI ビジネス エキスパート エンジニア エキスパート ビジネス オートメーション AI オートメーション AI アシスタント AI 広く深い エンジニア 広く深い ビジネス
  15. 組織が AI を活⽤するとは? Confidential | 
 30 ビジネスもできてエンジニアリングもできる中間層が AI によって⽣まれてビジネスとエンジニアリング

    の境界線がより⼀層なくなる循環を作るのが組織としての 「AI 活⽤」の本当に重要な所 領域 A 領域 B 領域 C ビジネス エキスパート エンジニア エキスパート ビジネス ジェネラリスト エンジニア ジェネラリスト 汎化 ⽣産性 組織としての 良い循環 ジェネラリスト エキスパート 境界線を断ち切る ナイスミドル