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宮城県北部沿岸のリアス式海岸における防潮堤の意義
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November 19, 2013
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宮城県北部沿岸のリアス式海岸における防潮堤の意義
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November 19, 2013
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Transcript
宮城県北部沿岸のリアス式海岸 宮城県北部沿岸のリアス式海岸 における防潮堤の意義 における防潮堤の意義 首都大学東京 首都大学東京 横山勝英 横山勝英
【豊かな漁場】 世界には数多く漁場が存在しているが、 その中でも三陸沖は特に漁獲量の多い 優良な漁場である。 【養殖業を牽引】 リアス式海岸は養殖業の好適地でもあ る。三陸沿岸のあちこちの入江で、養殖 いかだが水面に整然と並ぶ美しい風景 が見られた。国内の養殖銀ザケの99% が宮城県産,ホタテ、カキ、アワビ、ワカ
メも三陸産の代表的なブランド品。 平成21年漁業・養殖業生産統計 0% 20% 40% 60% 80% 100% 養 殖 ほ た て 養 殖 か き 養 殖 わ か め 養 殖 ぎ ん ざ け 定 置 網 ・さ け 内 水 面 さ け さ ん ま 宮城・岩手のシェア 海面養殖業の収穫量は宮城・ 海面養殖業の収穫量は宮城・ 岩手が全国の 岩手が全国の17% 17%を占める. を占める. 農水省HPより引用,一部改変
0 5 10 15 20 25 農業 林業 漁業 食品製造
建設 旅館業 構成比(%) 0 2 4 6 8 10 12 農業 林業 漁業 食品製造 建設 旅館業 特化係数 海と共に生きる三陸リアスの沿岸地域 【気仙沼市の産業構成:平成17年】 生産額の構成比は, 食品製造(水産加工), 建設,漁業が大きい. 特化度としては, 1位,漁業 2位,食品(水産加工) 3位,林業 4位,観光 特化係数とは、「当該市のA産業の生産額構成比」を「県全体のA産業 の生産額構成比」で除したもの.特化係数が[1]の時に県平均値,[1]よ り大きいと、当該市町村のA産業への特化度が大きいことを表す. 引用:七十七銀行ニューズレター平成23年7月 気仙沼市GDPの半分 が津波で失われた 住宅再建に加え,漁業・ 水産加工・観光を早期に 復興させることが重要
・自然の恵みを活用する 東北ならではの観光スタイルの創 造を目指し、自然と共に生き、自然 の恵みを活用するくらしや文化を大 切にします。 ・自然の脅威を学ぶ 今後も繰り返されるであろう 地震・津波に備えるため、今 回の地震・津波について正し く理解し、自然の脅威を学び
伝えます。 ・森・里・川・海のつながりを強める 復興後の持続的な地域の発展のため、 地域のくらしを支える基盤である自然や 生態系を保全・再生し、森・里・川・海の つながりを強めます。 環境省HPより引用
【ゆっくり滞在、伊達な時間ときを過ごす旅】 本観光圏は、東北を代表し都市観光が展開される仙台を 基点に、(中略)日本三景で名高い松島、三陸の海の幸や 陸中海岸公園等の海洋資源、(中略)、多様で魅力的な観 光資源を有している。 このような特長を活かした観光の取組みを中心として、農 林漁業等の基幹産業を活用した体験プログラム等の取組 みをさらに魅力的なものへと進化させながら、観光客の滞 在を受け入れる力のある観光基盤を整備することにより、 (中略)地域としてのブランドを確立する。
観光庁HPより引用
津波防災:海沿いの安全性の確保 水産:海から恵みを受ける生活 環境:リアスは森と海が近く,水際が重要 観光:入り組んだ地形と海のコントラストが美し い風景を作っている →これら全体を合理的に満たす設計論が必要 →現実問題として高齢化・人口流出は深刻,費 用対効果・維持管理なども含めた冷静な検討 が必要
防潮堤勉強会の解説資料 防潮堤勉強会の解説資料 【 【2012/04/20 2012/04/20 燦さん館 燦さん館】 】 「T.P.」 とは東京湾中等潮位(Tokyo
Peilの略)であり,全 国の標高の基準となる海水面のこと.海岸施設や河川施設 の高さは基準海面からの高さ(T.P.)で表される. 注1 平均海面 T.P. 0m 地盤嵩上げ T.P. 1.8m 防潮堤 T.P. 9.9m 新地盤からの見 かけ高さ 8.1m 沈下した現状の地盤 舞根2区の嵩上げ計画
注2 「L1」とは 国交省・農水省により設定された津波想定レベルのこと. ・レベル2(L2)・・・数百年から千年 に1回生ずる,最大規模の津波. 津波が堤防を越えることは許容す るが,堤防の決壊を防止し浸水被 害を最小限にとどめることを目指 す.また,堤防以外の対策(避難 行動)も含めて減災を目指す.
今回,国から方針が示され,県・市が整備を目指している防 潮堤はレベル1対応である. レベル2に対しては,そもそも最大級の津波を推定するのが困難なので,津波が 防潮堤を乗り越える前提としている.11mの津波が来たとき,10mの堤防があれ ば1mの越流で済むので被害を最小化できるという考え方. ・レベル1(L1)・・・数十年から数百 年に1回生ずる,頻度の高い津波. 堤防により津波から背後地を完全 に防御することを目指す. <守るべき資産> 漁港施設(倉庫等), 農地,道路など
「防護ライン」 とは津波から守るべき場所に設定される線引きのこと.防護ラインよりも海 側の場所は津波の被害を許容し,内陸側の場所は堤防により守る.防護 ラインの上に防潮堤を建設することになる. 注3 防護ライン 守る場所 集落だけ の場合 被害を許容する場所
防護ライン 守る場所 漁港集落 の場合 漁港では利便性確保のために防護 ラインを内陸側に設定し,漁港施設 が津波被害を受けることを許容する 海岸沿いに人家があれば,防護ラ インは海岸線とほぼ同一になる.
注4 「堤防の標準断面」とは,高さ:底辺が1:2の片側勾配 を持つ形状のこと.頂上に3~4mの通路を設けるので,例 えば高さが10mの堤防では底辺の幅は44mになる. 10m 4m 20m 20m 後背地が狭い場合は,堤防の底辺を狭くするため に,直立型もしくは胸壁型を設置する場合もある
(注)地盤を標高1.8mまで嵩上げす ると,堤防標高が9.9mに対して実質 的な高さは8.1mになる.底辺の幅は 8.1m×4+4m=36.4mになる. 直 立 型 胸 壁 型
「4つの部局」とは ・農地海岸:農水省 農村振興局 ・漁港海岸:水産庁 ・建設海岸:国交省 水管理・国土保全局(旧:河川局) ・港湾海岸:国交省 港湾局 海岸は国が所管し,県が実際の管理を行うこととなって いる.市町村が管理
する区域もある. 注5 県・土木 市・水産 県・水産 宿舞根漁港,神止浜漁港,津本漁港 <漁港海岸> ・・・気仙沼市産業部水産課 鮪立漁港,小鯖漁港<漁港海岸> ・・・宮城県気仙沼地方振興事務所 水産漁港部 貝浜<建設海岸> ・・・宮城県気仙沼土木事務所
浸水 区域 「一部地域が孤立しない ための道路」とは 注6 道路が津波で破壊されると 道路が津波で破壊されると 地域が孤立する→道路を守 地域が孤立する→道路を守 るための防潮堤が必要
るための防潮堤が必要 安全な避難路が確保される 安全な避難路が確保される 場合は,防潮堤を建設しない 場合は,防潮堤を建設しない 可能性もある 可能性もある 移転と防潮堤 移転と避難路
・縦割り問題 ・沿岸全域を一律の基 準で整備する ・災害復旧であり復興事 業ではない ・三陸リアス式海岸の地 形特性への配慮に欠け ている ・命を守る? 防潮堤(海岸堤防,河川堤防)の課題
岩手県唐丹地区 の約10m堤防
縦割り問題 ・津波の想定高さは国の中央防災会議(専門家)が提 案した ・国がそれを受けて防御すべき津波の高さを決定した ・県はそれを受けて防潮堤の高さを決定した ・海岸管理者(県・市)はそれに基づいて防潮堤を整備 する. →被災者は誰を訪問しても,「うちの部署には防潮堤 計画を変更できる権限はない」とたらい回しにされ,解 決の糸口をつかめない
沿岸全域を一律の基準で整備する 宮城県沿岸における海岸堤防高さの設定について(案) 平成23年9月9日 宮城県沿岸域現地連絡調整会議資料 唐桑半島西部1(宿舞根,鮪立) 0m 5m 10m 15m 20m
25m 1800年 1900年 2000年 2100年 津波の高さ(標高) L1:9.9m 今時津波 想定宮城沖地震 三陸南海岸 志津川湾 0m 5m 10m 15m 20m 25m 1800年 1900年 2000年 2100年 津波の高さ(標高) L1:8.7m 今時津波 想定宮城沖地震 この図で堤防の高さが決めら れている.実測データは4つ (地域による). 「L1高さは変更を一切認めない」 と言うが,一般の方にはその強 硬姿勢の理由が分かりにくい.
沿岸全域を一律の基準で整備する 河川の治水対策(想定する洪水の生起確率) ・首都圏,大阪は1/200 ・主要大都市は1/50~1/100 ・地方都市は1/10~1/50 日本最高の安全度が要求される荒川の河川堤防 は,高さ10m,流域人口は340万人,人口密度は 12,900人/km2 気仙沼市沿岸では高さ10m前後,防御区域の人口 が0人~数十人というところも多い.
災害復旧であり復興事業ではない ・もともとあったモノを元の場所に「復旧する」 ・原則として3年以内,今回は特例的に5年以内に復旧 →住民合意は必要ない,環境影響評価は必要ない →高さ数mだった堤防が10m前後に巨大化
高齢者には分かりにくい 復興のスピードに配慮して 反対しにくい 説明会は2012年7月頃から始められ, 1回目は計画説明,2回目は意思確認 と決定,という場合が多い 0% 20% 40% 60%
80% 100% 舞 根 大 島 鮪 立 気 仙 沼 市 街 大 谷 小 泉 伊 里 前 賛成 分からない やむなし 見直し希望 反対 舞根・大島以外は正確 な統計データではなく, 活動を通じて得た印象 当初は反対であっても,徐々に「やむな し」層が増えてゆく.復興の遅れや地域 内対立を気にして反対しづらい 漁業・観光など海から利益を受け ている人は反対・見直しが多い 海から離れている人(距離・職 業)は分からない・賛成が多い 防潮堤への住民意識
災害復旧であり復興事業ではない ・基幹産業である漁業への配慮が必要 ・もともとあった規模の高潮堤防を再整備して欲しい, というニーズは高い ・どうしても作りたいなら,きちんと話し合って欲しい ・高齢者には理解できない内容も多く,復興のスピード に配慮して反対意見が出にくい. ・被災住民にしてみれば,不要不急の防潮堤工事(復 旧)よりも高台移転や避難道整備(復興)を望んでいる. 業者不足で入札不調が続く中で,工事を増やすのは
得策ではない.
三陸リアス式海岸の地形特性への配慮不足 仙台平野 気仙沼市南部 砂浜,防風・防潮林,農 地,市街地,平野勾配 の規模・構成が全く異 なるが,堤防整備の考 え方は同じ.
0 100 200 300 0 10 20 30 標高 (T.P.m)
海からの距離 (m) 震災前 L1堤防計画 3.11津波 2m浸水した場合 L1堤防を作っても,L2津 波で浸水する区域には人 は住めない. →ほぼ高台移転する 沿岸全域を一律の基準で整備する 浸水深2 m L1津波 L2津波 事業所のみ 浸水対策の ある住宅 一般住宅 リアスの浜は背後地が狭く, L2津波で完全に水没する 場所も多い. 堤防を整備しても居住区 域をあまり増やすことが出 来ない.
行政の立場 ・何としてでも命を守る ・今そこに住んでいる人だけではなく,将来の住民に 対する安全確保も重要な任務 ・不作為に対する行政訴訟への備えとして必要 リアス住民の考え ・逃げた方が早い,海が見えなくてかえって危険 ・もともと限界集落化が進んでいて,復興の遅れにより それが加速し,防潮堤によりとどめを刺される ・地域が消滅したら誰が責任を取るのか
命を守る
牡鹿 女川 雄勝 河北 北上 0% 50% 100% 残存率 全
世 帯 被 災 0% 50% 100% 残存率 全 世 帯 被 災 出典:おがつ新聞H25.2 被災者のうち復帰希望者が 50%以下になる地区が多い 雄勝では被災者の20%しか 復帰しない.全世帯で見ても 人口が50%以下に減少する 見込みで,集落が消滅間近 雄勝で人口が激減したのは, 現地再建の見通しが立たな いためと言われている 高台移転は数年後になり, 行政・医療・商業システムが 不透明なため,利便性の良 い外部に出て行くしかない 命を守る 復帰希望率調査 0% 50% 100% 復帰率 全 世 帯 被 災 0% 50% 100% 復帰率 全 世 帯 被 災 0% 50% 100% 復帰率 全 世 帯 被 災
「自然豊かな町で特に海が好きでした」 「心のよりどころ,美しい風景,おいしい海の幸」 「海,地域のコミュニティー」 「海,新鮮な魚介類,人情,法印神楽」 「自宅の前に広がる海」 「住み慣れたところに戻りたい,海・山・人のつながり,全て好きです」 「雄勝在住36年,自分の生活の場であり海と山を失いたくない」 雄勝の好きなところ(回答433名) 海・山・自然を挙げた人は352名,81% 故郷と自然環境への愛情が溢れているが,現実には20%しか戻って
これない.住民はもはや海と共に生きることを諦めざるを得ない. 津波というよりも,その後の防災・まちづくりの問題により 地域社会が崩壊寸前にある. 命を守る
大谷海岸 標高8.7mの防潮堤を建設 予定.海水浴場が消滅 大谷地区振興会連絡協議会は,大谷海岸の 防潮堤に対する署名を市長に提出. 人口3500人のうち1324人が署名し,防潮堤 の計画の一時停止と,住民の意見が反映され た新たな計画を作りを要請した.
1970年代の大谷海岸 砂浜が50~80mほどあり,海岸林も含めると100m ほどのエリアがレクリエーション空間であった 50m 砂浜が30~50m後退した
約9m 約18m 約4m 約16m 約8m 50m 10m 20m 30m 40m
防潮堤を国道ギリギリまで引けば,砂浜 を50m程度確保できる(JRは要検討). ただし,砂浜からコンクリート堤防が高さ 8mほどまで立ち上がるので,震災前の風 景(砂浜+海岸林)とはかなり異なる. 震災前の風景に近づける「原形復旧」をし てくれればいいのだが. また,堤防の有無で,津波浸水区域がど の程度異なるのか,防災上の意義から議 論し直すことはできないものだろうか.
海岸堤防: 標高14.7m,底辺幅91m 河川堤防: 標高14.7m~7.1m 三陸道: 標高25m,底辺幅125m(予想) 0 250m •印から海の方向を見た予想風景 身長1.7m
小泉
0 100 南三陸町 歌津
None
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・堤防の高さは国が決めたことで,我々 (県・市)には変更できません ・仮に堤防計画を県・市が勝手に変更し た場合,次の津波で被災しても国の補 償が受けられません ・堤防が不要という選択肢はありません (人が住まなくても生活道路など守るべ き資産があるから) ・堤防を作らないと,背後の土地利用計 画を決めることが出来ません
・堤防の建設期限は平成27年度末なの で時間がありません ・堤防建設は災害「復旧」なので,新た に作るという概念ではありません.その ため,環境影響評価なども不要です. 被災者による自主的な活動 行政による説明の骨子 舞根では2012年5月に2回の防潮堤 勉強会を開催 気仙沼市では2012年8月から10月に かけて,13回の防潮堤勉強会を開催 勉強会の主要メンバーが他の地区へ の出前講義も実施中
防潮堤を完全否定する訳ではないが,何のために建設するのか,意義を大 局的に考えることが必要.人は防災のためだけに生きているのではない. 高さ,場所,形状について行政・住民・専門家がじっくり話し合うことが必要 今すぐ必要な施設ではないので,合意形成の時間をとれるはず(津波は周 期性がある).←予算上の制約により(結果的に)強引に進められている これは三陸だけの問題ではなく,南海トラフ沖地震の津波など全国津々 浦々で同様のことが言える. 地域の特性に応じた対策,浸水することを覚悟したまちづくり(資産の重要 度の選別),避難行動を主体とした安全対策などが必要. 自然に立ち向かう強靱な国土作りというよりも,自然と共に生きて自然の恵
みを享受する日本古来の柔軟さが必要ではないか.大都市圏の防災は別 としても,大半の地方集落では柔軟な生き方が可能.また,多くの国民が津 波を通じてそのことを学んだ. 三陸リアスの復興から見た日本の新たな方向性