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個から組織へ、そして自走へ ~QA組織立ち上げ 3年の軌跡~

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March 20, 2026
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個から組織へ、そして自走へ ~QA組織立ち上げ 3年の軌跡~

QA組織のなかった会社に1人目のQAとして入社して3年。
ツール導入、プロセス構築、ベンダー選定を経て、20名体制の組織へと成長しました。
2025年には育児休暇を取得し、5ヶ月間現場を離れましたが、組織は止まることなく動き続けていました。
本発表では、個から始まり組織となり自走に至るまでの軌跡と、その過程で得た学びを実体験をもとにお伝えします。

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March 20, 2026
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Transcript

  1. ©2026 Coincheck Inc. 自己紹介 • 板山 豪(いたやま ごう) ◦ X:gzer0_dev

    • 2023年5月 コインチェック入社 ◦ QA組織のなかった会社に「1人目のQAエンジニア」として参画 • 2025年8月〜12月 育児休暇(5ヶ月間) • 2026年1月〜 SETとして別部署で活動中 ◦ QAEの活動は完全に後任へ委譲 2
  2. ©2026 Coincheck Inc. 本セッションで話すこと • QA組織が3年間で4名 → 23名の組織に成長するまでの軌跡をお話しします • 3つのフェーズ

    ◦ "個"  ― 1人で何から始めたか ◦ "組織" ― 仲間を増やし、仕組みを作る ◦ "自走" ― 育休5ヶ月間で組織が止まらなかった理由 • 持ち帰っていただきたいこと ◦ 組織が立ち上げフェーズから自走するまでに至った実践知 • 質問はDiscordにて事後回答します • SNS等での感想歓迎 3
  3. ©2026 Coincheck Inc. 入社時の状況(2023年5月) • コインチェック = 国内最大級 ※ の暗号資産取引サービスを運営

    • QA組織は存在しなかった ◦ テストプロセス:未標準化(各チームが各自のやり方で実施) ◦ テスト管理:スプレッドシート ◦ テスト自動化:なし(形骸化) • クリプト冬の時代 ◦ 業界全体が冷え込み、組織拡大のための予算獲得は厳しい状況 ◦ QAエンジニア採用も1人(板山)でストップ • 体制 ◦ 正社員 1名(板山)+ 業務委託 3名 = 4名 ※2022年5月金融庁暗号資産交換業者登録対象、自社調べ 5
  4. ©2026 Coincheck Inc. 入社直後でやったこと • 上長との会話で方向性を確認 ◦ 「QAプロセスの青写真が求められている」 ◦ 「ツールの選定は自分で判断してOK」

    ◦ 「一人でボールを抱え続けないこと」 • 既存のSlack・Confluenceを読み込み、現状把握 • 開発部署・PMにヒアリング ◦ QAの課題一覧をConfluenceに作成 • まず「現状を知る」ことに全力を注いだ 7
  5. ©2026 Coincheck Inc. 数字で語る ― 人員追加提案 • 取引所の速度改善プロジェクトのQAが必要だが、人員が足りなかった • 余剰リソースが

    15% であることを算出して3ヶ月間のスポット人員追加を提案 • 「足りない」ではなく数字で「15%しか余裕がない」と伝えて予算を得る 8
  6. ©2026 Coincheck Inc. ツール導入 ― MagicPod • 2023年7月:E2Eテスト自動化ツール「MagicPod」導入 • 選定理由

    ◦ 既存ツールに比べコストダウン ◦ クラウド端末での実行 ◦ 実行回数の制限なし ◦ CI/CD連携 • Confluenceにセットアップ手順を整備 ◦ → メンバーが自走できるようにドキュメントを先に作る • ツール導入は「使ってもらう仕組み」まで作って完了 MagicPodユーザーインタビュー: https://magicpod.com/customer-stories/coincheck 10
  7. ©2026 Coincheck Inc. OKRで方向を示す • 2023年8月:試用期間が終わり、正式にQAEグループリーダーに ◦ 最初の仕事はOKR策定 ▪ OKR:Googleなども採用している目標管理フレームワーク

    • Objective(目標) ◦ QAプロセスの標準化と適切なテスト環境の確立 • Key Results(主要な成果) ◦ 標準化QAプロセスが1プロジェクト以上で運用開始 ◦ テスト環境の整備 ◦ モバイルリグレッションテストの自動化 ◦ Webリグレッションテストの実装 11
  8. ©2026 Coincheck Inc. "個"フェーズのまとめ • やったこと ◦ 現状把握 → 課題の可視化

    → ロードマップ → ツール導入 → OKR策定 • この時期の意識 ◦ 完璧を待たず、まず動く ◦ 数字で語る ◦ 仕組みとして残す • この時期に整えた「基盤」が、次のフェーズで活きてくる 13
  9. ©2026 Coincheck Inc. ベンダー戦略の拡大 • 入社時:ベンダー1社のみ • 2024年11月:ベンダー2社目との契約開始 ◦ テスト実施だけでなく、プロセス改善の役割が追加

    ◦ テスト自動化エンジニアの確保 ◦ ニアショア拠点の活用によりコストを抑えつつ人員追加 • 単価交渉・契約管理もQAマネージャーの重要な仕事 • ベンダーは「外注先」ではなく「組織の一部」として設計する 19
  10. ©2026 Coincheck Inc. テスト自動化基盤の進化 • E2Eテスト自動化ツール + データ分析基盤 + GitHub

    Actionsの連携基盤を構築 • テスト結果をデータとして蓄積・分析可能に ◦ メトリクス収集体制の構築 → ダッシュボード化 • APIテストの自動化も開始 25
  11. ©2026 Coincheck Inc. 大規模増員 ― 20名体制へ • 2025年4月:ベンダー2社から7名が一気に参画 • 2025年7月:さらに3名が参画

    ◦ 20名体制に到達 • テスト実施だけではなく、プロセス改善や不具合分析、テスト自動化など、メ ンバーが各自の専門性を生かして活動する”組織”へと成長 • これまでQAの必要性を説き続け、活動内容の可視化を地道に続けていたから こそ予算獲得が可能だった 27
  12. ©2026 Coincheck Inc. 育休前の引き継ぎ ―「いなくても回る」準備 • 2025年7月:引き継ぎ完了 → 8/1から育休取得 •

    引き継ぎで意識した4つのこと 1. ゴールの明文化 OKR + JIRAチケットで「何を達成すべきか」を明確にする 2. ナレッジの集約 Confluenceに判断基準・手順・テンプレートを集約 3. 権限の委譲 ベンダー管理、採用プロセス、予算管理を後任に移管 4. 評価の仕組み化 メンバーの行動評価をConfluence DBに集約 28
  13. ©2026 Coincheck Inc. "組織"フェーズのまとめ 5名 → 22名に成長 • やったこと ◦

    ツール導入 → 採用活動 → ロール設計 → ベンダー拡大 → プロセス体系化 → 引き継ぎ • 意識の変化 ◦ "個" では「自分がやる」 ◦ "組織" では「仕組みで回す」 • 個人の力に依存しない組織の土台ができた 29
  14. ©2026 Coincheck Inc. 育休中に組織で起きたこと • 2025年8月〜12月:育児休暇(5ヶ月間) • 一方、組織では ◦ テスト業務は遅滞なく継続

    ◦ 採用活動・ベンダー管理・発注業務が引き継ぎ先で運用 ▪ メンバーの退職 → 代替メンバー対応も現場で完結 • 新たなロール「QAM」が誕生 ◦ 大型案件で複数のQAメンバーをまとめる立場 • 板山が実際に手を動かすことは一度もなかった ◦ 連絡が来なかったことが、成功の証 31
  15. ©2026 Coincheck Inc. 育休復帰 →"卒業" • 2026年1月:復帰 • 復帰して見た風景 ◦

    組織は23名に成長 ◦ 自分がいなくても回っている • 復帰後 ◦ QAEグループから離れ、SETとして別部署に異動 ◦ QAEの活動は完全に後任に委譲 • 組織の立ち上げとは、最終的に「いなくても回る」状態を作ること 32
  16. ©2026 Coincheck Inc. なぜ自走できたのか • 3つの要因 1. プロセスの言語化 a. テストプロセス・テンプレート・手順が文書化されていた

    2. 目標の明確化 a. OKR + JIRAで「何をすべきか」が共有されていた 3. 権限の委譲 a. 判断権限がメンバーに移っていた 33
  17. ©2026 Coincheck Inc. 組織のビフォーアフター 入社時(2023/05) 現在(2026/03) 体制 4名 23名 ベンダー

    1社 2社 テストプロセス 未標準化 標準化・運用中 テスト自動化 なし E2E,APIテストを自動化 + データ分析基盤 テスト管理 スプレッドシート テスト管理ツール メトリクス なし 定期運用中 QA以外のロール ― QAM,SETが誕生 39
  18. ©2026 Coincheck Inc. 3年間の学び • "個" ― まず動く ◦ 完璧を待たない。数字で語る。仕組みとして残す。

    • "組織" ― 仕組みで回す ◦ フレームワークを活用する。プロセスを整え、仲間を集める。 • "自走" ― 引き継ぎは日頃から ◦ 組織が自ら進化する余白を残しつつ、権限を委譲していく。 40
  19. ©2026 Coincheck Inc. QA組織を立ち上げる/立ち上げ中の人へ • 1. 現状把握から始める ◦ 課題を可視化し、ロードマップを描く •

    2. 小さく始めて成功体験を積む ◦ ツール導入もプロセス改善も段階的に • 3. 数字と仕組みで語る ◦ 感覚ではなくデータで意思決定を得る • 4. 最終ゴールは「自分がいなくても回る」こと ◦ それが組織立ち上げの"卒業" 41