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September 25, 2018
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Key Ideas in Bayesian Statistics for Psychological Science

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September 25, 2018
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  1.  心理学分野におけるベイズ統計的アプローチの(正確 には“Bayesian“の語を含む)論文は,絶対数・相対数 ともに増加(van de Schoot et al., 2017) 2

    van de Schoot, R., Winter, S. D., Ryan, O., Zondervan-Zwijnenburg, M., & Depaoli, S. (2017). A systematic review of Bayesian articles in psychology: The last 25 years. Psychological Methods, 22, 217-239.
  2. 近年の心理学におけるベイズ統計 4 心の普遍的な法則性を解明・ 理解したい(数理心理学) 帰無仮説検定の 本来の意味を超えた濫用誤用 階層・潜在変数モデリングの ツールとしてのベイズ (認知モデル・計算論モデル) オルタナティヴな分析,

    評価の枠組みとしてのベイズ (ベイズファクター) ベイズ統計的アプローチの受容・応用が進んでいる マルコフ連鎖モンテ カルロ(MCMC)法 JAGS・Stan等 のソフトウェア 再現可能性 問題 心理学における 統計改革 学んでみる・やってみると ベイズ統計の考え方は自然で合理的だ 清水裕士 (2018). 心理学におけるベイズ統計モデリング 心理学評論, 61, 22-41. に基づき改変
  3. ベイズ統計の「教え方」  心理学に関心のある学生にベイズ統計の教育をする上 で,重要かなと思っているポイントについて  ベイズ統計の流行の背景  「モデリングの考え方」と「統計改革」  ベイズ統計の考え方

     確率で考える…各種確率分布  MCMC推定の原理と方法  (各種モデリング例;他セッションで…)  (モデルチェック・比較)  実践へ 5 と,思っていたのですが…
  4. 言いたいこと  ベイズ統計的アプローチによる研究が増えている現在, 心理学でもベイズ統計教育を行う価値はある  以下のことが伝わり,MCMCを用いた実践ができるよ うになるとよいと思う  不確実性を確率で表現する・データで条件付ける 

    シンプルな原則を幅広い問題設定に適用していく  統計モデリングの導入により,量的な予測や反証 が可能な「強い理論」が作れる  「ベイズで◦◦できますか?」 → (なんらかの前提や仮定のもとで)できる,ただし 実のところ頻度論でもできる,ということは多い  「ベイズでしかできない」ではなく「ベイズなら自然 な形で・容易にできる」 6
  5. ベイズ統計学の考え方  不確実性の測度は確率である  したがって,知りたいこと(通常,統計モデルの パラメータ)についての確率を求める  確率を求めるのにデータの情報を利用する  パラメータについての,データで条件付けた確率

    (|)は,ベイズの定理によって与えられる  パラメータやデータといった変数間の関係はベ イズ統計モデル(尤度×事前分布)として表現される 8  少数の原則を,さまざまな実際の場面に適用していく ことのできる体系  一回性の現象にも確率を考えることができる
  6.  知りたいこと・不確かなことを確率で表現する  データの情報から,その確率を更新する () = () ベイズ統計学の考え方(1):推定と予測 9 ▪推定

    � = � Θ � 将来のデータ� ▪予測 ▪モデル比較 → ()の比(ベイズファクター) 統計モデル (”仮説”) ベイズの定理 知りたいこと パラメータ 手に入ったデータ 事後確率(分布) 事前確率(分布) 尤度 事後予測確率(分布) 事後確率(分布) 尤度 周辺尤度
  7.  モデル1 , 2 があるとき、データが得られたとき の1 の事後確率は 1 = 1

    (1 ) () = 1 (1 ) 1 1 + 2 (2 )  同様に2 の事後確率は 2 = 2 (2 ) 1 1 + 2 (2 )  そこで2つのモデルの事後確率の比 2 / 1 をとると ベイズ統計学の考え方(2):モデル比較 岡田謙介(2018)ベイズファクターによる心理学的仮説・モデルの評価 心理学評論,61, 101-115.
  8. 事前 オッズ 事後 オッズ (2 |) (1 |) = 2

    (2 ) 1 (1 )  ベイズファクターは、データによって与えられ た、モデル1 に比してモデル2 を支持する程度 (オッズ)の変化率を表す  「自動的なオッカムの剃刀」を内在する(Kass & Raftery, 1995)  もう1つの解釈:そのベイズモデルが行うデータ についてのすべての予測を考慮した当てはまり のよさを表す周辺尤度(証拠の大きさ evidence)の比 岡田謙介(2018)ベイズファクターによる心理学的仮説・モデルの評価 心理学評論,61, 101-115. ベイズ統計学の考え方(2):モデル比較
  9. 感度分析(sensitivity analysis)  事前分布に自信がないときには,妥当なほかの設定で も試して,結果がどの程度変わるかを調べること(感 度分析)が役に立つ  結果があまり変わらなければ,事前分布の設定にそう 心配しなくともよいことになる 

    逆に結果が大きく変わるようであれば,この事前分布 のもとでの分析でよいかについて再度検討すること, やはり自信がなければ対策を講じる(追加のデータを とるなど)ことが必要になる 13
  10. 先行研究の情報を利用した事前分布の構築  Peterson (1994, J Consumer Research): 報告されて いるクロンバックのαの値を網羅的に調べた研究 

    この論文中で報告されている分位点にもっともよ く当てはまるベータ分布は(8.73,2.52) 15 Okada, K., (2015). Bayesian meta-analysis of Cronbach's coefficient alpha to evaluate informative hypotheses. Research Synthesis Methods, 6, 333-346.
  11. 結果 (1,1) この分析では 事前分布の設定 は結果に大きな 影響を及ぼさない (8.73,2.52) 16 Okada, K.,

    (2015). Bayesian meta-analysis of Cronbach's coefficient alpha to evaluate informative hypotheses. Research Synthesis Methods, 6, 333-346.
  12. 「モデリング」という考え方 17  自然言語によるモデル(弱い理論)  わかったような気になれるが,反証しにくい  複数のモデルが乱立しがちであり比較しにくい  統計モデリングにおける量的なモデル(強い理論)

     量的な説明や予測を行うため,反証やモデル比較を可 能にし,モデルの改善=理論の改善につながっていく 役に立つ モデル 複雑な 現実 捨象・理論化 数量化 関係の明確化 Eysenck, H. J. (1985). The place of theory in a world of facts. In K. B. Madsen & L. Mos (Eds.), Annals of Theoretical Psychology, Vol 3 (pp. 17–72). New York: Plenum Press. 池田功毅・平石界 (2016). 心理学における再現可能性危機:問題の構造と解決策 心理学評論, 59, 3-14. 竹澤正哲 (2018). 心理学におけるモデリングの必要性 心理学評論, 61, 42-54.
  13. (系列位置効果のSIMPLEモデルの例 Lee & Wagenmakers, 2013) モデルで考えることによる一般化 18 Lee, M. D.

    & Wagenmakers, E.-J. (2013) 井関龍太訳 (2017) ベイズ統計で実践モデリング 北大路書房
  14. むすびに(再)  ベイズ統計的アプローチによる研究が増えている現在, 心理学でもベイズ統計教育を行う価値はある  以下のことが伝わり,MCMCを用いた実践ができるよ うになるとよいと思う  不確実性を確率で表現する・データで条件付ける 

    シンプルな原則を幅広い問題設定に適用していく  統計モデリングの導入により,量的な予測や反証 が可能な「強い理論」が作れる  「ベイズで◦◦できますか?」 → (なんらかの前提や仮定のもとで)できる,ただし 実のところ頻度論でもできる,ということは多い  「ベイズでしかできない」ではなく「ベイズなら自然 な形で・容易にできる」 21