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Advantages of Bayesian methods in psychology

Ken
September 26, 2018

Advantages of Bayesian methods in psychology

Ken

September 26, 2018
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  1.  心理学分野におけるベイズ統計的アプローチの(正確 には“Bayesian“の語を含む)論文は,絶対数・相対数 ともに増加(van de Schoot et al., 2017) 2

    van de Schoot, R., Winter, S. D., Ryan, O., Zondervan-Zwijnenburg, M., & Depaoli, S. (2017). A systematic review of Bayesian articles in psychology: The last 25 years. Psychological Methods, 22, 217-239.
  2. 心理学におけるベイズ統計への注目 4 心の普遍的な法則性を解明・ 理解したい(数理心理学) 帰無仮説検定の 本来の意味を超えた濫用誤用 階層・潜在変数モデリングの ツールとしてのベイズ (認知モデル・計算論モデル) オルタナティヴな分析,

    評価の枠組みとしてのベイズ (ベイズファクター) ベイズ統計的アプローチの受容・応用が進んでいる マルコフ連鎖モンテ カルロ(MCMC)法 JAGS・Stan等 のソフトウェア 清水裕士 (2018). 心理学におけるベイズ統計モデリング 心理学評論, 61, 22-41. に基づき改変 再現可能性 問題 心理学における 統計改革 学んでみる・やってみると ベイズ統計の考え方は自然で合理的だ
  3.  不確実性の測度は確率:知りたいことの確率を考える  データの情報から(条件付けて),確率を更新する () = () ベイズ統計学の考え方 5 ▪推定

    � = � Θ � 将来のデータ� ▪予測 統計モデル (”仮説”) ベイズの定理 知りたいこと パラメータ 手に入ったデータ 事後確率(分布) 事前確率(分布) 尤度 事後予測確率(分布) 事後確率(分布) 尤度  少数の原則を,さまざまな実際の場面に適用していく ことのできる体系  一回性の現象も統計学で扱うことができる
  4. 6 Pre-MCMC Post-MCMC  共役事前分布以 外の推論は困難  ベイズ統計は机 上の空論? 

    理論的に綺麗だ が、簡単な問題 以外では実際に 使えない  計算機を使って、ベ イズ推定が様々なモ デルで容易・自在に 行えるように https://sourceforge.net/ projects/mcmc-jags/ http://mc-stan.org/ (Plummer, 2003) (Carpenter et al., 2017; Stan Development Team, 2018
  5. ベイズモデルの限界は想像力だけ  As the diversity of the recent applied Bayesian

    references attests, the MCMC approach is so generally applicable and easy to use that the class of candidate models for a given data set now appears limited only by the user's imagination. (Carlin & Chib, 1995, JRSS-B, p.473)  最近のさまざまな応用ベイズ統計学の文献が示す ように、MCMCアプローチは高い汎用性を持ち、 容易に利用できる。いまやデータに対してどんな モデルを利用するか、ということの限界を決める のは、ユーザーの想像力だけのようだ 8
  6. 本発表でお話したいこと  心理学研究に活用できるベイズ統計の特長  確率で考える: 事後分布による解釈  事前情報の取り入れ: 先行研究の情報を事前分布に 

    個人差や集団差の表現: 階層ベイズモデル  柔軟なモデル構築: 心理学的なデータ生成メカニズ ムを表現する認知モデリング  0 に特別な地位を与えず支持・非支持できる  汎用MCMCソフトウェア (JAGS, Stan)の登場により,ベ イズ統計は高い応用可能性を持つようになった  ベイズ統計モデリングは,心理学理論を数理的に記述 される「強い理論」(Eysenck, 1985; 竹澤, 2018)にし, 反証可能性を高め,よりよいモデル・理論へと心理学 を進める上で役立つ 9 Eysenck, H. J. (1985). The place of theory in a world of facts. In K. B. Madsen & L. Mos (Eds.), Annals of Theoretical Psychology, Vol 3 (pp. 17–72). New York: Plenum Press. 竹澤正哲 (2018). 心理学におけるモデリングの必要性. 心理学評論, 61, 42-54.
  7. 多次元尺度構成法(multidimensional scaling, MDS)  「距離的データから地図を描く」方法(足立, 2006)  統計的データ分析法の1つだが,その大きなルーツは 心理学的尺度構成法(psychological scaling),つま

    り物理・観測量と心理量との対応関係(scale)の構築 → 認知モデルとしてのMDSの発展につながる 10 足立浩平 (2006) 多変量データ解析法 ナカニシヤ出版
  8. 認知モデルとしてのMDS 例:色覚  各波長の色の類似度評定 11 Shepard, R. B. (1980). Multidimensional

    scaling, tree-fitting, and clustering. Science, 210, 390-398.  MDSによる「色の 認知地図」の推定値
  9. 認知モデルとしてのMDS Minkowski距離  距離の一般化: 12 Shepard, R. B. (1987). Toward

    a universal law of generalization for psychological science. Science, 237, 1317-1323. = � =1 𝑖𝑖 − 𝑗𝑗𝑗𝑗 1/ = 2 :Euclid距離 統合的(integral)な次元 = 1 :City-block距離 可分的(separable)な次元
  10. 認知モデルとしてのMDS  3層データからMinkowski指数を直接ベイズ推定する MDSモデルの提案 (Okada & Shigemasu, 2010) 13 Okada,K.

    & Shigemasu, K. (2010). Bayesian multidimensional scaling for the estimation of a Minkowski exponent. Behavior Research Methods, 42, 899-905.  色の類似度評定 データから求めた Minkowski指数 の事後分布は,統 合的次元の性質を 支持した
  11. 階層ベイズによる隠匿情報検査のモデリング 15 Shibuya, Y., Okada, K., Ogawa, T., Matsuda, I.,&

    Tsuneoka, M. (2018) Hierarchical Bayesian models for the autonomic-based concealed information test. Biological Psychology, 132, 81-90. 盗まれうる対象物 生理指標値(心拍数,皮膚コンダク タンス反応,脈波容積,呼吸数) 実験条件(盗んだ, コントロール) 繰り返し(5回/物) 実験参加者 P=167 人
  12. 認知の集団差・個人差を表現するベイズMDS  Bayesian K-INDSCAL (Okada & Lee, 2016) 16 Okada,

    K. & Lee, M. D. (2016). A Bayesian approach to modeling group and individual differences in multidimensional scaling. Journal of Mathematical Psychology, 70, 35-44. 子猫 黒猫 大人猫 茶猫 黒猫 茶猫 静 動 クラスター1 クラスター2
  13. 認知の集団差・個人差を表現するベイズMDS  Bayesian K-INDSCAL (Okada & Lee, 2016) 17 Okada,

    K. & Lee, M. D. (2016). A Bayesian approach to modeling group and individual differences in multidimensional scaling. Journal of Mathematical Psychology, 70, 35-44. 子猫 黒猫 大人猫 茶猫 参加者Bさん(クラスター1) 参加者Lさん(クラスター1) 子猫 黒猫 大人猫 茶猫
  14. SAPA(Synthetic Aperture Personality Assessment ) データ (Revelle et al., 2012)

     大規模なオンラインパーソナリティ調査  92のパーソナリティ質問紙の全696項目から、ランダ ムに項目が提示される 18 Revelle,W., Wilt, J., & Rosenthal, A. (2012). Individual differences in cognition: New methods for examining the personality-cognition link. In A. Gruszka, G. Matthews & B. Szymura (Eds.) Handbook of individual differences cognition (pp. 27–49). Springer.
  15. Okada, K., Vandekerckhove, J., & Lee, M.D. (2018). Modeling when

    people quit: Bayesian censored geometric models with hierarchical and latent-mixture extensions. Behavior Research Methods, 50, 406-415. 回答項目数のベイズモデル(グラフィカルモデル表現) 19 4 14 0 1 回答した 項目数 提示された 項目数 回答した ページ数 4頁の指示に 従う人か k頁読んだ人の回答確率 頁数の効果の切片と傾き 4頁の指示に 従う人である確率 無限に頁数があれ ば何頁まで答えたか 次の頁に進まず やめる確率 □:離散変数 ◦:連続変数 色つき:観測 色なし:非観測
  16. Okada, K., Vandekerckhove, J., & Lee, M.D. (2018). Modeling when

    people quit: Bayesian censored geometric models with hierarchical and latent-mixture extensions. Behavior Research Methods, 50, 406-415. 回答項目数のベイズモデル(数式表現) 20
  17. 事後予測チェック(データと事後予測分布) 21 モデルに基づく予測(赤線) は観測データ(黒のヒストグラ ム)とよく一致 Okada, K., Vandekerckhove, J., &

    Lee, M.D. (2018). Modeling when people quit: Bayesian censored geometric models with hierarchical and latent-mixture extensions. Behavior Research Methods, 50, 406-415. (N=23,680)
  18. 先行研究の情報を利用した事前分布の構築  Peterson (1994, J Consumer Research): 報告されて いるクロンバックのαの値を網羅的に調べた研究 

    この論文中で報告されている分位点にもっともよ く当てはまるベータ分布は(8.73,2.52) 24 Okada, K., (2015). Bayesian meta-analysis of Cronbach's coefficient alpha to evaluate informative hypotheses. Research Synthesis Methods, 6, 333-346.
  19. 結果 (1,1) この分析では 事前分布の設定 は結果に大きな 影響を及ぼさない (8.73,2.52) 25 Okada, K.,

    (2015). Bayesian meta-analysis of Cronbach's coefficient alpha to evaluate informative hypotheses. Research Synthesis Methods, 6, 333-346.
  20. 反応スタイル(response style) 26 反応スタイルタイプ 典型的選択 典型的結果 黙従反応スタイル(ARS) 〇〇〇•• 平均+ 非黙従反応スタイル(DRS)

    ••〇〇〇 平均ー 極端反応スタイル(ERS) •〇〇〇• 分散+ 中間反応スタイル(MRS) 〇〇•〇〇 分散ー 温和反応スタイル(MLRS) 〇•••〇 分散ー (Behr & Shishido, 2016) (Van Vaerenbergh & Thomas, 2013)
  21. パーソナリティ測定への反応時間情報の活用 27 Figure: Donkin et al. (2009) (Ratcliff, 1978) (Brown

    & Heathcote, 2008)  反応時間情報の認知モデル  パーソナリティ測定のための項目反応モデル 開発・提案 D-diffusion IRT (Tuerlinckx & De Boeck, 2005) Bunji, K. & Okada, K. (in revision). (Bunji & Okada, in revision) 提案モデル
  22.  各提案モデルによる,推定や予測の結果を示してきた  (心理学的理論を反映した)統計モデルに基づく推論 なので,前提は考えているモデルが妥当であること  事後予測チェックやモデル比較などで評価可能  さらなる改善→理論の発展に繋げる余地がある 注意:すべてモデルに基づく推論である

    () = () ▪推定 � = � Θ � 将来のデータ� ▪予測 統計モデル (”仮説”) ベイズの定理 知りたいこと パラメータ 手に入ったデータ 事後確率(分布) 事前確率(分布) 尤度 事後予測確率(分布) 事後確率(分布) 尤度
  23. まとめ(再掲)  心理学研究に活用できるベイズ統計の特長  確率で考える: 事後分布による解釈  事前情報の取り入れ: 先行研究の情報を事前分布に 

    個人差や集団差の表現: 階層ベイズモデル  柔軟なモデル構築: 心理学的なデータ生成メカニズ ムを表現する認知モデリング  0 に特別な地位を与えず支持・非支持できる  汎用MCMCソフトウェア (JAGS, Stan)の登場により,ベ イズ統計は高い応用可能性を持つようになった  ベイズ統計モデリングは,心理学理論を数理的に記述 される「強い理論」(Eysenck, 1985; 竹澤, 2018)にし, 反証可能性を高め,よりよいモデル・理論へと心理学 を進める上で役立つ 29 Eysenck, H. J. (1985). The place of theory in a world of facts. In K. B. Madsen & L. Mos (Eds.), Annals of Theoretical Psychology, Vol 3 (pp. 17–72). New York: Plenum Press. 竹澤正哲 (2018). 心理学におけるモデリングの必要性. 心理学評論, 61, 42-54.