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Web3の世界にようこそ
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Takayuki Watanabe
May 12, 2024
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Web3の世界にようこそ
Web3とブロックチェーンの基礎知識とWeb3の可能性を紹介します.Web3の世界に参加するかどうかの判断材料にして下さい.
Takayuki Watanabe
May 12, 2024
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Transcript
Web3の世界にようこそ ー基礎知識と可能性ー 渡辺隆行 @nabe33 <nabe@lab.twcu.ac.jp> 2024年5月12日,東京国際フォーラム VYVO SOCIALFI : プレミア・ワークショップ2024
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行
免責事項 本講演で提供される情報は,暗号資産に関する一般的な情報提供を目的とし ています.ここで提供される情報は,具体的な投資勧誘を目的としたもので はありませんし,投資に関するアドバイスと解釈されるべきではありません. 暗号資産の投資は高リスクを伴い,投資元本を失う可能性があります.投資 決定は,自己の責任において,必要に応じて専門家の助言を求めた上で行う べきです.本講演や本講演が提供する情報を利用して行われた投資による損 失について,渡辺は一切の責任を負いません. また本講演は特定の組織やその活動を宣伝するものでもありません. 2
,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
質問はSlido Slidoには個人情報が含まれるので公開資料からは削除 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 3
この講演の目的 研究者として,Web3の現状を振り返って,社会を変える可能性を示したい. 1. Web3とその基盤をなすブロックチェーンの基礎知識を紹介 2. Web3の世界は投機的な動きも多いが,地に足が着いた活動も多く行われて いて普及フェーズに入っている. 3. 新しい経済や社会の変革につながりそうなWeb3の活動を紹介したり,渡辺 のビジョンを紹介する中で,Web3の持つ大きな可能性を紹介する
上記を元に,聴講者の方のWeb3への関わり方(オンボーディング)を判断して もらう. 4 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
目次 1. 自己紹介 2. Web3とブロックチェーン入門 3. Web3とブロックチェーンのキーワード 4. Web3で重要な概念 5.
地球環境の危機&資本主義の限界 ⇒ Web3の可能性 6. Web3のSocial Design(渡辺の研究テーマ) 5 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
渡辺隆行 https://researchmap.jp/nabe/ 1. 物理学の研究(~1998年):原子核・素粒子実験.理学博士.東大助手. 2. プログラミング:2001年度のIPA未踏ソフトウェア創造事業 3. Webアクセシビリティ(2003年後半~):JIS X 8341-3:2010
策定WG主査, 「ウェブアクセシビリティ基盤委員会」創設&初代委員長,「みんなの公共サ イト運用ガイドライン」委員,NPO活動法人「ウェブアクセシビリティ推進協 会」理事長など 4. デザインと人間中心設計の研究・教育・実践(2016年~):東京女子大学・心 理コミュニケーション学科・教授.人間中心設計専門家. 5. 技術・人・社会の3層に関心(2018年~):理工系&社会科学系,Art 6. 地球環境に負荷をかけないWeb3のSocial Design(2022年~) 6 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
Web3とブロックチェーン入門 7 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
Web3 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 8
Web3 • 2008年にブロックチェーン技術が発表された • Twitter社(現X社)やFacebook社(現Meta社)などの中央機関に頼ら ずにユーザー同士が直接コミュニケーションできる仕組みができた • 2014年になると、イーサリアムの共同創設者であるギャビン・ウッド 氏がこの技術をWeb3と提唱 9
,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
10 渡辺隆行:「ツギノジダイ: Web3とは?基礎知識・特徴・ 経営に活用できる可能性をわ かりやすく紹介」,Web3の概 要(デザイン:紀井佑輔) ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
Web3の特徴 • ベースはブロックチェーン技術 • ブロックチェーンの特徴が(原理的には)Web3の性質を支配 • トークンを発行できる → 独自の経済圏を生成 •
暗号資産,NFTなどのトークン → インセンティブを生み出せる • 自律分散 → 新たな社会形態(例:DAO)を生み出す可能性がある • 玉成混合のいろいろな実装が始まっている • 新しい技術・経済・社会を生み出す可能性がある&生み出している 11 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
ブロックチェーン ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 12
ブロックチェーン • サトシ・ナカモト(2008)のホワイトペーパー:“Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System”が発端(注:リーマンショック直後の提案) • ブロックチェーン:ネットワーク参加者全員で会計監査済みの,お金の入出金
の共有台帳(記録) • 暗号学的ハッシュ関数で計算したデータブロックをPoW(Proof of Work)やPoS (Proof of Stake)でチェーン化.このチェーンの改変は困難な仕組み. • Socio-technicalなインセンティブがあるので多くの人がPoW・PoSに参加. 13 山崎ら『ブロックチェーン技術概論 理論と実践』講談社 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
Peer-to-Peer ネットワーク ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 14 https://commons.wikimedia.org/wiki/File:P2P- network.svg#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82 %A4%E3%83%AB:P2P-network.svg クライアントーサーバ方式
と異なり,コンピュータ同 士が対等に通信を行う
ブロックチェーンの特徴 • トラストレスなトラスト(金融機関のような信頼できる第3者がいなくてもトラストが 保障される) • お札は二重使用できないが電子通貨は原理的にコピー可能.その電子通貨の二重使用問 題を解決(共有台帳に記録された入手金記録を会計監査) • デジタル署名による暗号資産の送金(トランザクション).公開鍵が送金者を識別. •
時系列的ハッシュチェーンによる共有台帳(ブロックチェーン) • 共有台帳への合意(コンセンサス)はDecentralized(分散的). • 構造のないP2Pネットワークシステム(単一障害点がない). • ブロックチェーンには、暗号資産の取引履歴が書き込まれる。書き込まれた内容は誰で も確認でき改ざんできない仕組み.中央管理者がいない分散型データベース. 15 山崎ら『ブロックチェーン技術概論 理論と実践』講談社を一部改変 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
ブロックチェーンの仕組み ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 16 「ブロックチェーンを図解入門!初心者こ そ知っておきたい基礎と仕組み」の図 https://www.sejuku.net/blog/80577 • 個々の取引記録が電子署名と供に
トランザクションに格納される • 前のブロックを改竄するとハッ シュ値が変わるので改竄を検知で きる • マイナーがトランザクションを承 認してブロックを追加する.その 作業の対価として暗号資産が支払 われる. • マイナーのコンセンサスによって ブロックチェーンは一意に保たれ る.
ビットコインとイーサリアム • ビットコイン(BTC):サトシ・ナカモトのホワイトペーパーを元に2009年に運用 開始.元祖ブロックチェーン.最大規模の暗号資産. • イーサリアム(ETH):ヴィタリック・ブテリンが2013年にリリースしたプラット フォーム.イーサリアム仮想マシン(EVM)がチューリング完全性を持っている のでアプリケーションを作成できる.これを用いたのがスマートコントラクト (特定の条件が満たされた場合に決められた処理が自動的に実行されるなどの契 約履行の自動化.第3者が仲介しない.処理の中身はブロックチェーン上に公開さ
れているので誰でも見れる.).DeFi(Decentralized Finance)もイーサリアム上 のチェーンで発展している. 17 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 18 BTCの価格チャート(円) https://coinmarketcap.com/ja/currencies/bitcoin/ 2022年6月 暗号資産の冬
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 19 ETHの価格チャート(円) https://coinmarketcap.com/ja/currencies/ethereum/ 2022年6月 暗号資産の冬
20 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> Web3/ブロックチェーンのキーワード
トークン(Token) • 暗号資産:ブロックチェーンで発行されるBTCやETHなどのトークン.通貨なので代替性 がある. • NFT(Nun-Fungible Token):通貨のような代替性を持たないトークン.デジタル世界で現 実世界の資産の所有権を示したり,デジタルアセット(画像,土地,靴など)の所有権 を示したりできる. •
ガバナンストークン:コミュニティ(DAO)での発言権や議決権を持つ • ユーティリティトークン:乗車券や入場券のような働きを持つ • セキュリティトークン:有価証券と同じ働きを持つ • SBT(Soul Bound Token):譲渡不可能なNFT.デジタル・アイデンティティを示せる. • RWA(Real World Asset)トークン:実世界の資産(不動産や債権など)をトークン化した もの. 21 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
大流行(2021年8月~2022年5月)したNFT • 誰でも簡単に作成可能.通貨ではないが価値がつけば売却も購入もできる. • 2021年3月11日にNFTアートが75億円で落札された.その後もシンプルなドット絵 などに高額な値段がついたことが報道された. • 2021年に,Play to EarnゲームのAxie
Infinity(AxieモンスターをNFTとして収集して 戦わせる対戦ゲーム.エコシステムに貢献すると暗号通貨を稼げる)で生活費を 稼ぐ人がフィリピンに現れた. • わかりやすいNFTの人気は根強く,色々な企業がNFTを作って商売を始めている. • 山古志村では,特産の錦鯉のデジタルアートをNFTにして,デジタル村民の参加権 にした.このNFTの販売で利益も上げている.地方創生の類似例は多数ある. 22 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 23 Bored Ape Yacht Club (https://www.coingecko.com/ja/nft/bor ed-ape-yacht-club)
2022年6月 暗号資産の冬 例:5476
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 24 https://nishikigoinft.com/
X2Earnはポンジースキーム? • ポンジースキーム:投資詐欺の一種.新規獲得した投資家からの資金を使って以 前に獲得した投資家への支払いを行う.会社としては利益を生み出しておらず, 新規投資家の獲得ができなくなると既存投資家への支払いもできなくなる. • X2Earn:STEPNはMove2Earnなゲーム.歩くだけで暗号通貨が貯まるので大流行. NFTスニーカーを購入し,それを使って活動すればGSTというSTEPNのネイティブ 通貨を獲得.GSTはSTEPN内で通貨として利用できる.またガバナンストークンの GMTもある.こうやってSTEPN内で稼ぐことができた.
• X2Earnはポンジースキームか?:新たな価値を生み出しているかどうかによる. また,新規参入者が減るとNFTの価格も下がり利益をあげることができなる. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 25
26 https://www.kraken.com/prices/stepn 2022年6月 暗号資産の冬 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
なぜトークンに価値がつくのか? • 参加者が価値があると信じているから.日本銀行を信用しているから円を商品といつでも 交換できるし,円を貯金する.暗号資産やNFTも価値があると信じているから購入する人 がいる. • デジタルならの利便性:取引コストの削減,効率的な24時間取引の実現,透明性の向上, 流動性の増加,少額決済,手数料安価,海外ともすぐに交換できるなど,既存の金融にな いデジタルならではの利便性がある. •
実用性.ガバナンストークンなど利用価値がある. • 需要と供給のバランス.稀少なトークンの需要が高くなると価格が上昇する. • 投機.AirDropなどで希少価値があるトークンを入手して,価格が高い間に売却してお金 儲けしようとする人がいる.(安く買って高く売り抜ける) • 流行.NFTがはやっているから,かっこいいから買ってみる. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 27
ブロックチェーンを使う必要があるのか? • 既存のポイントとトークンとどこが違うのか? • NFT会員証と既存の会員証とどこが違うのか? • オープンバッジとVC(Verifiable Credential)とどこが違うのか? • ブロックチェーンの特性が必要か?
• ブロックチェーンに記録する必要があるか? ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 28
29 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> Web3で重要な概念
自己主権(SSI) • Self Sovereign Identity:自分に関する情報を自分で所有して自分がコントロールす ること.どの情報を共有するのかも自分で管理できるのでプライバシー保護が強 化される.(Web2では個人情報は企業が所有しているが,Web3では個人情報を 自分で所有・管理できる.) • 自分に関する情報を共有する方法が共通化されるので異なるサービスでの相互運
用性がよくなる.(例:Web2ではSNSやGoogleアカウントで認証) • ブロックチェーンに記録すれば改善不可能でセキュリティも増す. • SSI実現に必要なVC(Verifiable Credential)とDID(Decentralized Identifier)はW3C で規格化されている. 30 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
VCとDID • VC(Verifiable Credential):デジタル証明書.卒業証明書,単位の履修証 明書など自分の情報を示す仕組み.その情報が正しいことを発行者が認 証する仕組みも持っている.(例:千葉工大の授業の履修証明) W3C: Verifiable Credentials Data
Model v1.1 • DID(DeCentralized Identifier):自分のアイデンティティをデジタル世界 で示す仕組み(モデル) W3C: Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 31
分散型(DeCentralized) • トップダウンな中央集権型と異なり,ボトムアップな自律的(autonomous)な活動. • ブロックチェーンはP2Pの分散型デジタル台帳なので,Web3も自律分散型で構成しよ うとする意識がある. • データや資産が各自の所有に分散している. • ティール組織との類似性があるので,中央集権型組織に対する問題意識を共有してい
る. • 組織のガバナンスも分散(DAO)しているので中央管理者の独断で運営できない. • アプリケーションも分散(dApps)しているので中央管理者の独断で管理できない. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 32
デジタル・アイデンティティ • サイバー世界でのアイデンティティ.SSIなので自分で管理. • (暗号技術で守られているので)セキュリティが強固. • サイバー世界で活動している主体が人間であることを示す必要もある. • ブロックチェーンは匿名性があるので匿名性を備えた自分の証明が可能. •
リアル世界の人間と結びつけたい場合もある. • 一人の人間が複数のデジタル・アイデンティティを使い分けることも可能. • サイバー世界でも,個人の信用やどういう人かを示す必要がある.証明書や活動 歴などが個人の(特性や能力など)証明になる.(例:Digital Identity Wallet) ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 33
分散型SNS • Web2のSNSは問題山積!:データを書き込んだ本人がデータを所有していない. 個人データを元に広告を打たれて企業が利益を上げている,匿名の誹謗,偽アカ ウント,SNS会社がなくなったらデータもなくなる. • Web3のSNSはこの問題を解決できる可能性がある:自己主権,デジタル・アイデ ンティティ • Farcaster:Ethereum上に構築された分散型ソーシャルネットワーク.ユーザのつ
ながり(ソーシャル・グラフ)はオンチェーンで管理される.ソーシャル・グラ フを可視化するクライアントアプリはユーザが選択できる.(匿名による誹謗中 傷などアイデンティティの問題は扱っていない.) 34 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
トークンエコノミー • ブロックチェーンが基盤になっているので,非中央集権的で自律的な経済圏に なる.←ここが魅力! • 暗号資産の性質を持つトークンを誰でも発行できる.つまり,誰もが日銀に なって通貨を発行できる.誰もが財務省となって市場でのお金の流通を制御で きる(インフレをコントロール). • トークンはデジタルな利点がある.
• トークンがインセンティブになる. • トークン発行や焼却,ユーティリティトークンやガバナンストークンの発行を 上手に設計すれば組織の活動が発展する. 35 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
トークンがもたらす経済活動 • トークンを適切に制御すれば独自経済圏が発展する. • 既存のブロックチェーンや独自の(プライベート)ブロックチェーンを用いた NFTやトークンを使った経済活動が活発に行われている. • 法定通貨と交換できないトークンもあれば,法定通貨と交換できるトークンもあ る. •
RWA(Real Word Asset)など実世界の資産をトークン化した経済活動も始まって いる. • 仮想世界(メタバース)で経済成長が可能. 36 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
DAO (分散型自律組織) (Decentralized Autonomous Organization) • 多くはパブリック・ブロックチェーン(特定の管理者が存在せず誰でも参加できる)上で構 築され,人の意志ではなく,スマートコントラクトによって組織運営が実行される. • 中央集権的な管理者がいない.DAOコミュニティの参加者全員が(平等な)権利を持ってい
る.誰でも自由に参加できる. • ガバナンストークンを発行して管理運営することが多い. • 管理運営の記録はブロックチェーンに記録されるので,誰でも確認できるし改ざん不可能. • ガバナンストークンを発行して資金調達できる可能性.(コミュニティの経済が成長) • DAOと称していながら,(トークンを発行しているだけで)上記の特徴を持たない活動が多 いので注意. 37 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
分散型技術と分散型組織 • ブロックチェーンという技術層が分散型だからと言って,その上に構築された人 間社会(組織)が分散型になるわけはない. • 『ティール組織』でいうと,我々は「順応型の規律階層組織」のトップダウンな 組織構造に慣れ親しみすぎている.『テール組織』を受けてブロックチェーンと は別に「多元型組織」を構築している組織もあるが少数に過ぎない. • 自律分散型のボトムアップなコミュニティ活動から始める組織運営を我々はもっ
と学ぶ必要がある. • 現在存在するDAOは,まずは中央集権型組織から初めて,組織活動が軌道に乗っ たときに分散型組織に移行するプランが多いように見える. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 38
DAOの例:MakerDAO • Ethereumを使った,DeFi(分散型金融)のDAO.(ドルにソフトペッグされた)Dai を発行している.「Daiの原動力となるスマートコントラクトであるMaker プロトコ ルは、MKRトークンを保有する人々の分散型コミュニティが管理しています。」 「ウォレット、DeFiプラットフォーム、ゲームなど、400以上のアプリやサービスが Daiを統合しています。」 • 今後,完全な分散型組織として運営していく予定.
• スマートコントラクトが機能しており,完全な分散型組織になる予定なので,DAO の見本といえると思う. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 39
DAOの例:合同会社型DAO • 日本でDAOで運営しようとすると,法令や税制が問題になる.(Web3という新し いやり方に国内外の法令が追いついていない) • 自民党のweb3プロジェクトチームは,日本がWeb3を先導する国家となるために 精力的に取り組んでいて,つい最近も「web3ホワイトペーパー2024」を公開し, Web3を国内で推進していくために必要な法令や税の整備を提言した. • その中で関連法令を整備して合同会社型DAOを設立する活動が進んでおり,DAO
の業界団体である日本DAO 協会が設立された. • 日本DAO協会は活発に活動しており,ガイドラインを策定して,日本国内法及び ガイドラインへの準拠が認められたDAOの認証活動を実施している. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 40
41 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> 地球環境の危機 と 資本主義の限界? ⇓ Web3の可能性
地球環境の破壊と脱成長?? • 人類の経済成長が地球環境を破壊.格差も拡大. • 化石燃料の使用による地球温暖化 • 農地や木材伐採により地球の森林資源が大規模に伐採されている • 先進国の廃棄物が開発途上国の環境(土地,水,空気)を汚染している •
先進国の産業は開発途上国の劣悪環境な労働力を使っている • 持続可能な経済活動が求められている(SDGs) • 経済成長を止める(脱成長)べき? • 資本主義や新自由主義の終焉? • 成長なしに人類は存続できるのか? ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 42
コモンズ,コミュニティ • コモンズ(公共財):水,空気,森など,誰かが所有しているのではなく,共有 して使用される財産.地球もコモンズ. • コミュニティ:同じ目標を共有する小規模な集団.ボトムアップ型組織の単位. • 新自由主義(リベラリズム)な資本主義経済が行き詰まりを見せているので,コ ミュニタリズムが注目されているが,そこではコミュニティやコモンズがキー ワードになる.(斉藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書)
• コミュニタリズムは共産主義や社会主義になるので危険. 43 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
サステイナブルな地球:Web3の可能性 • Web3の世界では,ブロックチェーンを利用した暗号資産を活用した経済活動 (crypto economy.DeFi)が行われる. • DAOのようなコミュニティベースの組織が活動する. • Web3の世界はコモンズ,コミュニティ,分散的,自律的な特徴をもつはず. •
Web3の世界で既存の社会課題を解決できる可能性がある(実際に可能かどうかは まだわからない.幾多の試行錯誤や失敗&改良の積み重ねが必要だと思う.) ⇑ 渡辺の研究テーマ:Web3のSocial Design 44 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
45 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> Web3のSocial Design
Web3のSocial Design • 斎藤幸平の『人新世の「資本論」』は,資本主義が発展して地球環境に負荷をか け破壊しつつある現状を指摘している.斎藤は資本主義から脱成長コミュニズム への転換を提案しているが,歴史を振り返るとコミュニズムはひどい社会を実現 させているし,人類は成長し続けなければ維持できないと思う. • ならばサイバーワールド(仮想世界)で経済成長すれば,リアルな世界の地球環 境に負荷をかけずにすむのではないか.←渡辺の気づき
• その可能性を探るために「Web3のSocial Design」を検討したい. 46 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
メタバース • (Web3とは別に存在していた)オンライン上の仮想世界.古くはSecond Life.仮 想世界で様々な活動(社会活動,経済活動...)が行われている. • Web3は,仮想通貨やNFTでオンライン上の経済圏が成立し,DAOでオンライン上 のコミュニティ活動が行われているので,メタバースとの親和性が高い. • 今の世の中でメタバースと称しているものは,単にオンライン上に仮想世界を構
築しただけのものが多いことに注意が必要.そこで経済活動や社会活動が行われ て人々が暮らしていくことがキーだと思う. 47 ,渡辺隆行 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp>
メタバースで経済活動 • メタバースはコンピュータ,それを動かす電力が基本なので,地球環境 に負荷をかけない電力供給が不可欠.戦争がない安定した生活も必要. • 人間は,リアルワールドで自然に囲まれた豊かな生活を送りたい. • リアルな地球環境を保護しながら,メタバースで経済成長するためには 何が必要? そこをデザインしたい.
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 48
地球環境に負荷をかけている過剰な消費 • どのような経済活動が地球環境に負荷をかけているのか? • それらをメタバースに移行できるか? • 化石燃料の使用 → 自然エネルギー,原子核エネルギーの使用 •
森林伐採(農地,牧草地) → 食料供給 → リアル地球でしかできない • 工業活動 → 工業製品 → 不可欠な製品もあれば広告で大量消費されている製 品もある → メタバースでの消費に代替できる製品があるはず • 農業 → 食料生産は不可欠 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 49
ドーナッツ経済+メタバース ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 50 図の出典:ケイト・ラワース(2021),『ドーナッツ経済』,河 出文庫. • ドーナッツ外側:メタバースで経済成長 •
ドーナッツ内部:リアルな地球で活動 • ドーナッツ内側:ドーナッツ内部に入る までリアルな地球で経済成長 気候変動,窒素及び燐酸肥料の投与,土地転 換,生物多様性の喪失の4分野で地球環境を 破壊している
リアルとメタバースの役割分担 • 過剰な広告が,不要なものまで購入(つまり生産と廃棄)する経済活動を生んで いる → 多様で大量で過剰な見かけ(ファッション,住居など)はメタバースで 実施すれば,生産と廃棄の問題が生じない. • メタバースの利点: •
コピーが簡単(資源を消費しない) • 廃棄したら消えるだけ(資源は100%回収可能) • 制約を受けずに自由に生産,想像できる • 距離を超えた教育,娯楽,経済などが可能になる ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 51
©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 52
Web3の可能性 • デジタルな新しい経済活動 • 経済活動のイノベーション • 現在のネット社会の問題解決:自己主権,アイデンティティ • 中央集権型組織から分散型コミュニティベースの活動 •
サスティナブルな地球環境の発展 • メタバースでの経済活動 ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 53
まとめ • Web3の技術基盤はブロックチェーン • ブロックチェーンは分散型の共有台帳 • ブロックチェーンの特徴:トラストレスなトラスト,分散型データベース,暗号 資産 • トークン:暗号資産,NFT,RWAなど
• NFTは広く使われている • 自己主権(SSI),デジタル・アイデンティティ,DAO • Web3は実社会で広く使われ始めている • Web3は資本主義の限界を超えて地球環境を保護できる可能性がある ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 54
参考文献 • 渡辺隆行(2023),Web3とは?基礎知識・特徴・経営に活用できる可能性をわかりやす く紹介,ツギノジダイ. • Satoshi Nakamoto (2008), Bitcoin: A
Peer-to-Peer Electronic Cash System, (Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3440802 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3440802). • 山崎,安土,金子,長田(2021),ブロックチェーン技術概論 理論と実践,講談社. • フレデリック・ラルー(2018),ティール組織,英治出版. • 自由民主党デジタル社会推進本部 web3プロジェクトチーム(2024),Web3ホワイト ペーパー2024~ 新たなテクノロジーが社会基盤となる時代へ~. • 斉藤幸平(2020),人新世の「資本論」,集英社新書. • 渡辺隆行(2023),Web3のSocial Design,日本デザイン学会第70回研究発表大会 梗概. ©2024 <nabe@lab.twcu.ac.jp> ,渡辺隆行 55