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救急外来でのめまい診療_中枢性めまいを見逃さない!

Yuki SASAKI
September 07, 2023

 救急外来でのめまい診療_中枢性めまいを見逃さない!

西埼玉中央病院耳鼻科選択研修で作成したスライドです。中枢性めまいのスクリーニングについてまとめています。

Yuki SASAKI

September 07, 2023
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Transcript

  1. 救急外来でのめまい診療
    ~中枢性めまいを見逃さない!~
    国立病院機構 西埼玉中央病院 耳鼻咽喉科研修
    初期研修医 佐々木 勇紀 / 指導医 瀬越 健太

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  2. めまい診療は難しい!?
     めまい症状が強すぎて問診・身体診察が行いにくい場合がある…
     眼振をはじめ、神経所見の評価が慣れるまで難しい
     患者の予後に大きく関わる中枢性めまいがまぎれている…
    今回の目標
    中枢性めまいを疑う所見を見逃さず
    帰宅/入院の判断ができるようになる!

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  3. めまいの種類、中枢性めまいの割合
    回転性めまい その他の「めまい」
    椎骨脳底動脈系の閉塞・循環不全(TIAなど)、
    小脳出血、多発性硬化症、脳腫瘍、脳膿瘍、
    頭部外傷…
    中枢性
    貧血、月経、妊娠、
    心因性めまい、過換気症候群、
    高・低血圧、起立性低血圧、自律神経失調症、
    Adam-Stokes 発作、頸動脈洞症候群、
    低血糖、甲状腺機能低下、副甲状腺機能低下、
    中毒(アルコール・ニコチン・睡眠剤etc.) …
    良性発作性頭位めまい(BPPV)、メニエール病、
    突発性難聴、耳硬化症、中耳炎、迷路炎、
    前庭神経炎、Ramsay-Hunt 症候群、
    聴神経鞘腫、薬物中毒、外傷性内耳障害…
    末梢性
    回転性めまいのうち、
    ほとんどが末梢性(最多はBPPV)
    中枢性はわずか1.7-3.0%1)2)
    1) 城倉 健, 日本医師会雑誌 134, 2005 2) Kerber KA et.al., Stroke 37, 2006

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  4. CTで中枢性めまいは除外できるか?
    1) Tarnutzer AA et.al., CMAJ. 2011 2) Chalela JA et.al., Lancet., 2007
     脳梗塞における頭部単純CTの感度は16%1)
    救急搬送されるめまい
    500例のうち1例程度2)
     小脳出血はまれ
    頭部CT所見が正常でも中枢性は除外できない!
    めまい患者全例に出血のスクリーニングを
    行う意義も乏しい!

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  5. MRIなら中枢性めまいは除外できるか?
    • めまいを起こす後方循環(椎骨脳底動脈領域)における脳梗塞は
    前方循環(内頚動脈領域)より見落とされがち (19% vs 2%)3)
    3) Oppenheim C et.al., AJNR Am J Neuroradial. 2000 4) Saber Tehrani AS et.al., Neurology., 2014
    • 発症6~48時間後の小脳梗塞に対するMRI(DWI)の感度は
    梗塞巣10mm以上:92%、10mm未満:47%4)
    小さい小脳梗塞は2日たっても半数は見逃す
    MRIでも絶対的な除外は出来ない
    CT・MRIはあくまでも
    中枢性めまいを疑ってから行う
    鑑別のポイントを押さえた問診・身体診察が重要!

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  6. 問診のポイント
    めまい・聴力低下以外に異常な神経所見はあるか?
    めまいの発症形式(頭位変換など)・持続時間・聴力低下も確認するが…
    → 自覚症状(複視・構音障害・四肢脱力・感覚障害…)を確認
    → 一過性に出現、受診時消失している場合も (e.g.椎骨脳底動脈灌流異常(VBI))
    脳卒中リスクとなる既往はあるか?
    → 心房細動、高血圧、脂質異常症、糖尿病…
    会話しながら
    顔の動き(顔面神経麻痺)・構音障害も確認!

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  7. 身体診察のポイント : HINTS
    眼球の動きだけで中枢性めまいを除外するツール
    ・ Head Impulse test 陽性
    ・ Nystagmus (眼振) 方向固定
    ・ Test of Skew deviation 陰性
    感度 95.6-100%1) 2)で
    中枢性めまいを除外!
    めまい・聴力低下以外に異常な神経所見がないかチェック
    → 各脳神経所見・小脳失調・錐体路徴候・感覚異常…
    HINTS
    1) Kattah JC, et.al., Stroke. 2009 2) Newman-Toker DE, et.al., Acad Emerg Med., 2013

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  8. HINTS :Head Impulse test
    ①患者の正面に立ち、検者の鼻を注視させる
    ②視線を固定させたまま、顔を右or左に向ける
    ③視線はそのままで一気に顔を正面に向ける
    視線が一瞬外れる
    ずっと正中を向いている
    首を痛めていないか確認が必要…
    陰性では中枢性を除外できないことに注意!
    → 陰性:正常 or 中枢性 → 陽性:前庭障害(ほぼ末梢性)

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  9. HINTS : Nystagmus (注視時眼振)
    方向固定性水平性眼振:前庭障害
    患者に顔は動かさずに目だけで
    上下左右に動く検者の指先を追わせる
    極端に側方を向かせない
    (健常でも眼振様運動が出現)
    5秒は指を動かさず固定し
    眼振の持続を確認
    注視方向性眼振・垂直眼振が出現した場合は
    中枢性を強く疑う

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  10. HINTS : Test of Skew deviation
    ①患者の正面に立ち、検者の鼻を注視させる
    ②片目ずつ隠し、目隠しを外した瞬間に
    眼球が垂直方向に動くかをみる
    眼球の偏位はわずか・一瞬で戻る
    陽性所見を取るのが難しい
    垂直方向に動けば 陽性

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  11. HINTS だけでは不十分?
    HINTS は感度が非常に高いが…
    基本的にHINTS以外の神経所見のチェックも必要
    構音障害(評価がしやすい)
    パ行・カ行・タ行の発音を確認
    指鼻・膝踵試験・回内回外試験に
    加えて、起立・歩行を確認する
    3つ揃わないと
    中枢性を除外できない!
    所見の評価が難しい!
    めまいが強くて
    実施できないことも…

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  12. なぜ歩行の確認が必要か?
    歩行を確認する意義:小脳失調(特に体幹失調)の検出
    → 後下小脳動脈(PICA)梗塞による小脳下部の障害では
    構音障害・四肢失調が軽微でめまい以外の症状に一見乏しい
    → 体幹失調により起立・歩行不能となる点で末梢性と鑑別できる
    末梢性であれば
    視覚・深部覚で代償しなんとか起立・歩行可能

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  13. まとめ:中枢性めまい除外のためのポイント
    めまい以外の神経所見に乏しい場合(小脳下部の障害)もある
    中枢性では基本的にめまい・聴力低下以外の異常な神経所見も伴う
    → 問診・身体診察が重要、HINTS以外の神経所見もチェック
    → 画像検査はやみくもに行わない、中枢性が疑わしければ追加
    → 末梢性を疑っても、帰宅前に起立・歩行できるか確認
    中枢性(即入院!!)を除外しつつ、末梢性の鑑別に進む
    めまいが持続する・聴力低下があれば耳鼻科受診に繋げる
    めまい以外の神経所見に乏しい場合(小脳下部の障害)もある

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  14. 参考にしたテキスト
     「ベッドサイドの神経の診かた 改訂18版」田崎 義昭・斎藤 佳雄・
    坂井 文彦、南山堂、2016
     「医学生・研修医のための脳神経内科 第4版」神田 隆、中外医学社、
    2021
     「Dr.増井の神経救急セミナー 第2版」増井 伸高、日本医事新報社、
    2020
     「外来で目をまわさない めまい診療シンプルアプローチ」 城倉 健、
    医学書院、2013

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