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中国オープンソース 2022/5/12 講演:尾原 和啓 ITビジネスの原理実践編

中国オープンソース 2022/5/12 講演:尾原 和啓 ITビジネスの原理実践編

TAKASU Masakazu

May 12, 2022
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Transcript

  1. 高須正和 事業&研究&Community 深圳ほか世界各地のpartnerを開拓し、 IoT開発ツールを輸出入・共同開発、投資,企業間提携などを行う。 深圳大公坊国家级創客基地(iMakerBase),深圳MakerNet 国際事業開発 事業:日本Switch Science, Global Business

    Development 研究:早稲田大学Research Innovation Centre招聘研究員 ニコ技深圳コミュニティ 共同創業者 中国最大のOpen Source Alliance「開源社」 唯一の国際(非中国語ネイティブ)メンバー 美国MIT Media Lab Shenzhen 2019 Menter ガレージスミダ研究所 主任研究員 著書5冊「プロトタイプシティ」「ハードウェアハッカー」(翻訳)など Community:开源社、Nico-Tech Shenzhen #中国オープンソース
  2. 2020年以降中国ビジネスへのオープンソースの浸透 OSSの浸透と言うよりも、世界のクラウドネイティブの流れに中国の大企業は乗ってきている また、ハードウェア含めた規格標準化/透明化とオープンソースソフトウェア/ハードウェアは歩調 を合わせている 企業 とても多くの中国企業が、スタートアップ・大企業といった規模を問わず、 製造・サービス・金融といった分野を問わず、企業戦略としてオープンソースに注力 アリババ等は社内に「オープンソース推進室」を設置 オープンソース技術を核にしたユニコーンも 政府/公的機関

    オープンソースのライセンスを中国の法的機関で使えるようにする 中国発のOSSライセンスが米OSIの承認を取得、世界的なライセンスに オープンソース運動を支援する公的な財団を設立 コミュニティ もともと活発だったコミュニティが、オープンソースが商売になったことで進化 フルタイムでOSSのコードを書くプロが増加 学生のうちからOSSの文化に触れる若者が増えている
  3. なぜ企業からの活動が盛り上がったのか? この数年でコピーの中国からイノベーションの中国へ (詳しい話は早稲田ビジネススクール講義「深圳の産業集積とマスイノベーション」を。 講義のほとんどはwebで録画公開しています) 中国企業が世界的なクラウド、AI、ブロックチェーンなどの開発前線へ -OpenStack等、世界的なOSSプロジェクトには中国企業の名前が並ぶ -RISC-V、ブロックチェーンなどでも中国の存在感が大きくなってきている -組み込み用(Harmony OS, AliOS

    Things, Tencent OSの3大OS)はすべてオープンソース 開発能力が企業でとても重要になっている -エンジニアの取り合い -お金はサブスクリプションで儲けるので、とにかく世界中を巻き込んで プロダクトを進化させたい カントリーリスクを減らす -オープンソース技術は輸出規制とか関係ない -GitHubがイランからのアクセス禁止があってすぐ、中国ではGiteeが立ち上がった -日本の製造業的な系列を目指していたHuaweiは2020年以降全力でオープンソースへ傾倒
  4. 今はオープンソース4.0というべき時代 (OSS=オープンソースソフトウェア) 代表的なプロジェクト ユーザの要求 ビジネスモデル 解説 OSS4.0 2015-Now MongoDB ,Datablicks等

    のPaaS クラウドネイティ ブ,OSS前提 スケーラブルで コストパフォー マンス スケーラブルでクラウドネイティブのシ ステムは、OSSベースのもの以外を見 つけるのが難しくなる OSS3.0 2005-2015 Cloudera ,Confluent ,Kaf ka 等のSaaS ソフトウェアから開 発エコシステムに OSSが直接ソ リューションを 提供する OSSのほうが巨大な開発チームとして 優れたSaaSが適用できるケースが増 えはじめる OSS2.0 1995-2005 RedHat , MySQL Enterpriseなエンジ ニア(大規模なソ フトウェア) 技術情報をサ ポートとして有 償提供 LAMP(Linux ,Apache ,MySQL , PHP)に よるwebシステム時代 OSSだけでシステムが構築できる(棲 み分け) OSS1.0 ~1995 GNU/Linux パーソナルなエン ジニア なし オープンソース黎明期 プロプラエタリソフトウェアへの対抗と してのOSS 開発者が増加し始める ※COSCON21での陈昱(云启资本)などの資料をもとに筆者作成
  5. 資金調達が大きいOSS企業/ソフトウェア Company Project Founder Round Date Amount クラウドDB LinuxカーネルのOS 組み込みOS

    クラウドDB Chrome OSフォークのOS K8Sフォークなどを活用して いるクラウド企業 Apache Kylin OLAPエンジン (データ可視化) Apache APISIX APIゲート ウェイ AI用クラウドネイティブDB
  6. オープンソースファウンデーションの役割: Open Source Initiative Free Software Foundation Apache Software Foundation

    Linux Foundation などなど オープンソースソフトウェアライセンスの認証、イベントの開催、普及活動 「こうしたドキュメントを整理すべきだ」などのガバナンスの整備 権威あるFoundationは、予算や理事の選挙、議事録などもオープンになって いる必要がある 近年はCNCF(Cloud Native Foundation)など、新しいFoundationが多く誕生して いる。ソフトウェアが「それぞれクラウドネイティブのシンプルなサービスの集 合体」になるにつれて、複数のソフトウェアをまたいで企業と開発者を繋ぎ、 エコシステムを大きくしていくのがFoundationの役割
  7. Open Atom Foundation 中国政府工信部が設立 Linux FoundationやApache Software Foundationなどと同様の機能 -ちゃんとしたオープンソースを褒める(ニセモノをとりしまる) -プロジェクトの進め方、ドキュメントの品質などを指導、インキュベート

    -法律家を雇ってライセンスを整備し、普及させる(裁判所がGPLやApacheなどのライセ ンスをちゃんと使えるように -公的機関や学校でOSSの活用を促進する (ただし、実際のサイトはまだガタガタ。たぶんサービスよりも「声がけしたこと」に 意味がある)
  8. 中国発のオープンソースライセンス Mulan Permissive Software License v2 (MulanPSL - 2.0) Apache,

    MITなどに似たPermissiveと呼ばれるゆるい形のライセンス アメリカOpen Source Initiativeの認可済みの国際ライセンス 特徴 1.英語/中国語併記、同一の内容を持つ(国際取引で使える) 2.Apacheライセンスにある「特許取ろうとしたら無効」に加えて、行政手続きについて 記載がある(中国は三権分立が甘く、行政は裁判抜きで執行できる)
  9. 「開源社」各ワーキンググループ グループ⾧ マイクロソフトリサーチアジアでReactorのプロ ジェクトマネージャ グループ副⾧ SegmentFault(技術コミュニティ)COO グループ秘書 ポスドク システム運営 freeCodeCamp成都

    法務 VC(中国国営自動車会社の知財ファンド) アナリ スト メディア PRマネージャ イベント⾧ Huawei AI大会の運営&Evangelist イベント副⾧ Huawei AI大会のエコシステム管理 コミュニティ連 携 Datawhaleスタートアップ CEO コミュニティ連 携 副⾧ インフルエンサー 大学連携/OSS 教育 師範大学教授 メンバー開拓 webエンジニア 財務 大企業の財務部⾧ 顧問委員会開拓 マイクロソフトのAI製品マネージャ コミュニティ連携、顧問開拓、システム維持などのワーキンググループごとに知見のあるメンバーが プロボノ的に運営している 本業と開源社での活動がリンクしてる人が多い
  10. 「開源社」COSCONとは China Open Source CONference 中国6都市+オンラインで行われたカンファレンス 2020年数字 -1億5700万ビュー(オンライン) - 542

    職種1,173 組織 登壇: -北京大の教授で中国のOSSライセ ンスを起草してる -PingCAPのCTO -OSSファンドのパートナー -Huaweiで独自のディストロ OpenEulerを作ってる人 などなど、産業界/学会/政府などか らのキーノート+各テーマでの並列 セッション 高須はオープンソー スハードウェアトラックで登壇
  11. COSCONイベントでは優秀メンバーの表彰も 高須も「コミュニティ連携の星」 【やったこと】 -このOSCやシンガポールFOSSASIAなどで開源社/中国オープンソースの活動紹介 -中国開源年度報告等のレポート日本語翻訳 -中国のメイカーフェア、メイカースペースなどに開源社を紹介し、無錫ではCOSCONのサ テライト会場に (中国人がみんなOSSや開源社を知ってるわけでなくて、むしろ知らない人のほうが多い) -COSCONハードウェアトラックでの登壇、中国でのメイカーフェア等で開源社の話を紹介 -少しは中国語を勉強しています

    2021年、中国での発表は中国語に(それまでは英語で やってた) 【開源社の表彰コメント】 高須正和氏は、中国のオープンソースコミュニティに深く関わる国際的な友人であり、开 源社の最初の、そして現在でも唯一の外国人正会員となっています。 毎年開催される「オープンソース・ハードウェア・フォーラムCOSCON」に参加して以来、 オープンソース協会が発行する「中国オープンソース年度報告」の日本語版を翻訳する など、オープンソースコミュニティの普及に積極的に取り組んでいます。 様々な国際的なオープンソースイベントで、开源社をアピール。 また、オープンソースの コミュニティグループや毎年開催されるオープンソースカンファレンスでは、積極的に中国 語を学び、中国語でコミュニケーションをとっています。 开源社の国際協力大使とも言えるでしょう。
  12. 「オープンソースとはなにか」 「中国と他の国のオープンソースにどんな可能性があるか」を研究する 活動をしています Hardware Hacker 遠くへ行きたければなど オープンソース関係の 重要文書を翻訳出版 ⁠「⁠嫌儲」「⁠原理主義」のない OSS文化を読み解く

    (技術評論社での連載タイトル) 中国のオープンソースムーブメント: その現状と可能性 3月15日19時オンライン 山形浩生/八田真行/伊藤亜聖 牧兼充/梶谷懐/高須正和 主催:神戸大学現代中国研究拠点
  13. 今日の発表まとめと視点 (日本の)オープンソース愛好家として OSS/クラウドネイティブの戦略に、日本でも注目と投資があつまるきっかけになるかも。 日本人がアメリカで起業したTreasure Data/Fluentdなどの例はあり、 社会の目が向くことの効果は大きい 本業の事業開発や、イノベーションの研究の視点から ここ数年、深圳からでてきた開発者向けプロダクトで僕の給与の多くが賄われている 深圳は「世界のエンジニアのためのツール」を生み出す場所になっていて、 M5Stackのようなオープンハードウェアはその重要な一部分となっている。

    西欧ではけっこう微妙なオープンハードウェアが、サプライチェーンのある中国で 化ける可能性は高い 現代中国研究の視点から 2014年頃の中国メイカームーブメントと今の中国OSSは、僕のコミットの仕方ふくめて 「そっくり」で、向こう1-3年ぐらいで「大衆創業/万衆創新」みたいなことは起きそう 「メイカーズのエコシステム」のOSS版みたいなのをまとめる必要がある