Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

ターミナル温故知新 ~ホスト機の端末を尋ねて~

Avatar for てらうちたかし てらうちたかし
October 15, 2026
260

ターミナル温故知新 ~ホスト機の端末を尋ねて~

Avatar for てらうちたかし

てらうちたかし

October 15, 2026

Transcript

  1. 我々のターミナルは、だいたいVT100の子孫 ターミナルは本来「画面とキーボードだけ」の装置。計算機の本体は向こう 側にいる キーを1つ押す → その1文字が本体へ飛ぶ → 本体が「これを表示しろ」と 送り返す →

    やっと画面に出る ssh 先が重いと、打った文字が遅れて出てくる。あれがまさにこの往復 エスケープシーケンスも RS-232 も、ぜんぶこの「文字単位」の世界の話 xterm も iTerm2 も Windows Terminal も、今もこの形を引きずっている 画像:DEC VT100(Jason Scott / CC BY 2.0) でも昔は、そうじゃなかった
  2. IBM 3270 Information Display System(1971年〜) メインフレームにぶら下がる「画面表示シス テム」 端末単体で完結しない。端末 + コントロー

    ラ + ホストで1つの装置 「ターミナル」というより「ホストの画面出張 所」 画像:IBM 3278(Marcin Wichary / Wikimedia Commons / CC BY 2.0)
  3. 1打鍵ごとには、送らない 一般的な端末:キーを押すたびにホストへ送信、ホストが応答して初めて画面 に出る 3270:キーを押してもホストには何も飛ばない ホストに飛ぶのは Enter / PFキー / PAキー

    / Clear / SysReq を押した瞬間だ け 同時期のミッドレンジ機は、ぶら下がった全端末の1打鍵ごとに応答していた 端末が数百台あったら? という話
  4. 配線からして別世界 一般的な端末 IBM 3270 配線 RS-232 93Ω同軸 距離 最長 約15m

    最大 約3km 速度 9,600bps 2.3587Mb/s LANが普及するずっと前に、ターミナル専用の高速配 線が建物中に敷かれていた 画像:BNCコネクタ付き同軸のイメージ(3270はRG-62+BNC)(Jonas Bergsten / Public domain)
  5. 構成:端末 → コントローラ → ホスト 束ねるのが 3274 / 3174 Establishment

    Controller 3174は1台で8台程度の表示装置を直結、SNA/TCP/IP、ASCIIホストへのゲートウェイ機能も CUT(コントロールユニット端末):データストリームはコントローラが処理 DFT(分散機能端末):端末側で処理。ファイル転送や複数セッションができる TCP/IP以前は IBMのSNA、DECのDECnet …… ネットワーク標準が競合していた時代 → → 左から 端末 IBM 3278(Marcin Wichary / CC BY 2.0)、コントローラ IBM 3174-61R(Jmaynard / CC BY-SA 4.0)、ホスト IBM 4381 (Tycho / CC0)
  6. 端末の系譜 年 機種 特徴 1971 3275 / 3277 最初の3270端末 〜

    3276 / 3278 / 3279 3279でカラー化 1983 3178 低価格版 1984 3179 / 3180 3179は14インチCRTで7色、3180はモノクロ PC時代 エミュレーションカード ISA / MCA / PCI / PCMCIA CRTの箱が、だんだん小さく安くなっていく歴史
  7. そもそも、なぜ「キーボード+画面」なのか 最初はパンチカード:キーパンチ(IBM 029 など)でカードに穴を開け、束ごと 読ませる 次にタイプライタ型の端末:Teletype Model 33 や IBM

    2741(Selectric ベー ス)。打つと紙に印字される その紙を CRT に置き換えたのが表示端末。IBM では 2260(1964年)、その後 継が 3270 キーボードは「タイプライタ」の、画面は「紙」の置き換えとして生まれた では、そのキーボードは誰が作った?
  8. 最初のキーボードは、 自社製ではなかった Type A:Micro Switch の SWシリーズ (ホール効果)を採用 66キー版と78キー版 IBMがIBMのキーボードを作っていな

    い、ごく短い時期がある 上:Micro Switch SW-10591(3277用・ドイツ語配列)(seebart / Public domain) 下:中身のホール効果スイッチ(Icarium / Public domain)
  9. Type B = ビームスプリング (Model B) 登場から2年以内に Type A を置き換えた

    ダイキャスト+板金でとにかく重い。そして背 が高い キーキャップも背が高く、しっかり凹型 3278用はくさび形の筐体 そして打鍵音は――ソレノイドで鳴らしていた (気持ちいい音がするのではなく、気持ちいい音を 出す部品が入っている)
  10. そして Model F(座屈ばね)へ 3178用の 75キー/87キー(IBM Base Keyboardの配列を継承) 122キーの F122:PC 3270用・3179用が、取り外し可能な2ピースキーキャッ

    プを初採用 104キーの F104 は1983年に 3290 と共に先行登場 いま「バックリングスプリング=Model M」として有名なあの打鍵感は、 端末の世界ではもう少し前から始まっていた
  11. 3270は、 今も生きている 現場で使われているのはIBM純正のエミュレ ータ IBM Personal Communications(通称 PCOMM):Windows で動く3270 エミュレータ

    画面も、キーの意味も、最下行の OIA も3270そ のまま 画像:PCOMM の旧版(RobertKixmiller / CC0)
  12. 参考 DesignSpark「懐かしい クライアント端末『IBM 3270ファミリー』」 https://www.rs-online.com/designspark/a-fresh-look-at-ibm-3270-information-display-systemjp DesignSpark「IBM Beam Spring: the ultimate

    retro keyboard」 https://www.rs-online.com/designspark/ibm-beam-spring-the-ultimate-retro-keyboard sharktastica:IBMキーボード年表 / Model B / Model F https://sharktastica.co.uk/timeline?f=terminals Deskthority wiki:IBM Beam Spring Keyboards / IBM Model F 122-key https://deskthority.net/wiki/IBM_Beam_Spring_Keyboards Model F Labs https://modelfkeyboards.com/beam-spring/ oec https://github.com/lowobservable/oec / coax https://github.com/lowobservable/coax