Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
地方公共団体基幹業務システムの標準化について
Search
高橋広和
September 06, 2025
0
70
地方公共団体基幹業務システムの標準化について
2025/09/06 第3回東海医療DX研究会 登壇資料
高橋広和
September 06, 2025
Tweet
Share
More Decks by 高橋広和
See All by 高橋広和
7月のガバクラ利用料が高かったので調べてみた
techniczna
3
840
GCASアップデート(202506-202508)
techniczna
0
280
20250627__今ガバ_ガバメントクラウドでの請求支払事務について_PDF用.pdf
techniczna
1
87
GCASアップデート(202501-202504)
techniczna
1
580
ガバメントクラウド概要
techniczna
3
1.6k
ガバメントクラウド単独利用方式におけるIaC活用
techniczna
4
640
Featured
See All Featured
ピンチをチャンスに:未来をつくるプロダクトロードマップ #pmconf2020
aki_iinuma
126
53k
Imperfection Machines: The Place of Print at Facebook
scottboms
268
13k
Build your cross-platform service in a week with App Engine
jlugia
231
18k
ReactJS: Keep Simple. Everything can be a component!
pedronauck
667
120k
Statistics for Hackers
jakevdp
799
220k
CSS Pre-Processors: Stylus, Less & Sass
bermonpainter
358
30k
Being A Developer After 40
akosma
90
590k
4 Signs Your Business is Dying
shpigford
184
22k
RailsConf 2023
tenderlove
30
1.2k
Rebuilding a faster, lazier Slack
samanthasiow
83
9.2k
Product Roadmaps are Hard
iamctodd
PRO
54
11k
CoffeeScript is Beautiful & I Never Want to Write Plain JavaScript Again
sstephenson
162
15k
Transcript
地方公共団体基幹業務システム の標準化について 2025/09/06 第3回東海医療DX研究会
Profile 1 名古屋市総務局デジタル改革推進課 課長補佐(システム標準化担当) 高橋 広和 ◆ 1998年 名古屋市入庁 区役所市民課
住基・戸籍・印鑑業務従事 ◆ 2002年 健康福祉局医療福祉課 ホスト分散化対応、後期高齢者医療システム開発 ◆ 2009年 健康福祉局総務課 福祉総合情報システム保守運用 ◆ 2012年 愛知県後期高齢者医療広域連合 マイナンバー制度導入対応 ◆ 2017年 健康福祉局保険年金課 保険年金システム保守運用 ◆ 2022年 現職(2024年より課長補佐) ◆ 2024年 デジタル改革共創PFアンバサダー就任 担当業務:基幹業務システムのシステム標準化/ガバメントクラウド移行 趣味:読書・ゲーム X :https://twitter.com/techniczna Note:https://note.com/techniczna/
本日話すこと 1. システム標準化概要 2. ガバメントクラウド概要 3. システム標準化の課題 4. 名古屋市の取り組みについて(時間に余裕があれば)
医療DX研究会で説明する意義 ◆国全体のDX動向の把握 ◆プロジェクトの類似性 ◆先行プロジェクトで発生した課題の把握
病院情報システム刷新とシステム標準化の類似性① 第6回「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム 【資料3】病院の情報システムの刷新に係る方向性について P2
病院情報システム刷新とシステム標準化の類似性② 病院の情報システムの刷新に関する方針 地方公共団体情報システム標準化基本方針 現在のオンプレ型のシステムを刷新し、電子カルテ/レセコン/部門 システムを一体的に、モダン技術を活用したクラウド型システムに 移行する。 標準準拠システムは原則ガバメントクラウドを利用し、モダンアプリ ケーションとして構築する 国がシステムの標準仕様を示し、その標準仕様に準拠した病院の 情報システムを民間事業者が開発し、小規模病院やグループ病院
等から段階的な普及を図る。 国が標準化対象20業務の標準仕様書を示し、その標準仕様書に準拠 した基幹業務システムを民間事業者が開発し、地方公共団体が利用す る。 標準仕様に準拠した病院の情報システムは、インフラからアプリ ケーションまでを共同利用することとし、医療機関ごとに生じてい た個別のカスタマイズを極力抑制する。これらにより、病院情報シ ステム費用の低減・上昇抑制や、病院ごとに生じていたシステム対 応負荷の軽減を図る。 ガバメントクラウド上の標準準拠システムは複数地方公共団体での共 同利用方式を推奨する(単独利用方式も可能) 標準準拠システムは原則カスタマイズ不可とする。 標準仕様に準拠したシステムへの円滑な移行のため、データ引継 ぎの互換性の確保等を図る。 また、医療DXサービス(電子カルテ情報共有サービス等)とのク ラウド間連携を進める。 標準仕様としてデータ要件・連携要件の標準化基準を定める。 この標準化基準に適合したデータを活用できるようにすることで、新 しい行政需要に対応するため、国又は地方公共団体がガバメントクラ ウド上に全国で共用可能なシステムを迅速に構築することを可能とす る。
1.システム標準化概要 6
1.1 システム標準化とは何か? 全国1,741地方公共団体の業務システムを標準化基準に適合 (標準化法第8条・法定義務) 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律 地方公共団体情報システム標準化基本方針(標準化法第5条) システム環境は原則ガバメントクラウドを利用 (標準化法第10条・努力義務) 原則2026年3月末が移行期限 (標準化基準を定める主務省令で定める予定)
7
1.2 なぜ標準化するのか? • 背景はいわゆる2040年問題 ➢急速な少子高齢化により官民ともに労働人口が半減する ➢今の半分の職員数で行政サービスを維持せねばならない 自治体ごとの個別開発や部分最適による重複投資をやめ、 標準化・共通化により行政運営を効率化することが必須 参考:総務省 自治体戦略2040構想研究会第二次報告、スマート自治体研究会報告書
今のシステムや業務プロセスを前提にした「改築方式」でなく、 今の仕事の仕方を抜本的に見直す「引っ越し方式」への転換 8
1.3 システム標準化のイメージ 「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化のために検討すべき点について」より引用 9
1.4 システム標準化による利便性の向上 • 国の情報基盤との連携 ➢ 標準化により、国の公共サービスメッシュ との連携が可能となり、各種サービスを提 供できるようになる • 先進事例の横展開
➢ 標準化により、住民サービスを向上させる 最適な取組を迅速に全国へ普及させるこ とが可能になる • 本来業務への注力 ➢ システム調達や制度改正対応等の人的負 担が軽減される ➢ 企画立案業務や住民への直接的なサービ ス提供など、職員でなければできない業務 に注力できる • 運用コストの削減 ➢ 標準化によりベンダロックインがなくなり 競争性が高まる ➢ 2018年度比で少なくとも3割減が目標 「トータルデザイン実現に向けた公共サービスメッシュ等の検討について」より引用 10
1.5 標準化対象事務(標準化法第2条①) • 対象は標準化法第2条第1項により政令で定める20事務 ➢住民基本台帳 ➢印鑑登録 ➢戸籍 ➢戸籍附票 ➢選挙人名簿管理 ➢固定資産税
➢個人住民税 ➢法人住民税 ➢軽自動車税 ➢就学 ➢健康管理 ➢児童扶養手当 ➢生活保護 ➢障害者福祉 ➢介護保険 ➢国民健康保険 ➢後期高齢者医療 ➢国民年金 ➢児童手当 ➢子ども・子育て支援 11 成人保健/母子保健/予防接種等 医療扶助 国民健康保険給付/特定健診 手帳/補装具/自立支援医療等 後期高齢者医療給付/特定健診
1.6 標準化基準の内容(標準化法第5条②Ⅳ) • 標準化対象20事務の標準仕様書(標準化法第6条①) ➢ 機能と帳票の要件 ➢ オンライン画面は競争領域として対象外、業務フローは参考資料 • データ要件連携要件標準仕様書(標準化法第7条①・第5条②Ⅲイ)
➢ 各標準準拠システムが保有すべきデータと連携の要件 • 非機能要件の標準(標準化法第7条①・第5条②Ⅲロ・ニ) ➢ セキュリティ、可用性、性能・拡張性、運用・保守性、移行性、環境・エコロジーにかかる各項目の要 求水準 • ガバメントクラウド利用関係(標準化法第7条①・第5条②Ⅲハ) ➢ 詳細未定 • 共通機能標準仕様書(標準化法第7条①・第5条②Ⅲニ) ➢ 申請管理、庁内データ連携、住登外宛名、団体内統合宛名、EUC、統合収滞納の各機能の要件 12 機能、帳票、保有データ、連携データ、非機能要件等への適合が必須
1.7 カスタマイズの禁止(標準化法第8条②) • システム標準化後はカスタマイズは原則禁止 ➢ 改築方式ではなく引っ越し方式への転換 ➢ 個別最適や重複投資を避け、均質化によるサービス向上を目指す標準化の趣旨に反する • 対象事務の自治体ごとの差異はパラメータや標準オプション機能で吸収
➢ 標準オプション機能が実装されているかは各ベンダのパッケージソフト次第 • 対象事務以外や独自施策は外付けの疎結合システムで対応 ➢ 自治体の条例等に基づく独自施策 対象外事務(高齢者福祉や医療費助成等)や対象事務における独自給付等 ➢ 対象事務の標準仕様にて明示的に標準化対象外とされているもの 介護保険の地域支援事業や事業者指定等 ➢ 標準化検証機能 新たな機能を試行的に実装させて機能改善の提案を行うもの。標準仕様書の作成・更新過程の 検討対象とすることが前提。 13
1.8 標準準拠システムの機能の分類 • 標準対象事務 • 標準対象外事務(外付け疎結合で実装可能) ➢標準対象事務と同一システムで実施していた市町村独自施策(高齢者福祉、福祉医療助成等) • 独自施策(外付け疎結合で実装可能) ➢
標準対象事務における地方公共団体の条例による独自給付・減免等 • 標準仕様書 • 標準仕様対象外(外付け疎結 合で実装可能) ➢ 標準仕様書にて明示的に対 象外とされているもの ➢ 介護保険の地域支援事業や 事業者指定等 実装必須機能 必ず実装しなければならない機能 実装不可機能 実装が禁止されている機能 標準オプション機能 実装してもしなくても良い機能 明記がない機能 ホワイトリスト形式であり原則実装不可 新機能の改善提案を行う場合 は「標準化検証機能」として外 付け疎結合で実装可能 14
1.9 移行期限と特定移行支援システム • システム標準化の移行期限 ➢システム標準化基本方針では「2025年度までに、ガバメントクラウドを活用した標準準 拠システムへの移行を目指す」とある。 ➢「標準準拠システムへの移行」とは「標準化基準への適合」のこと • 特定移行支援システム ➢例外的に移行難易度が極めて高いと認められるシステムおよび事業者のリソースひっ迫
などの事情により、2026年度以降の移行とならざるを得ないことが具体化したシステ ムは、別に所要の移行期限を定める • 移行後の経過措置 ➢実装必須機能のうち、例外的に制度所管課省庁と地方公共団体が認めたものにつき、 2026年度以降の実装を可能とする 15
2.ガバメントクラウド 16
2.1 ガバメントクラウドとは? デジタル庁が整備する、自治体や政府共通のクラウドサービスの利用環境(デジタ ル社会形成基本法第29条・デジタル行政推進法第23条) 国が自前で設備を用意するのではなく、要件を満たすクラウドサービスの事業者 とデジタル庁が契約を締結して利用する 単なるクラウド利用ではなく、クラウドのメリットを最大限活用する利用方法が推 奨される(クラウドスマート)
2.2 クラウドの特徴とメリット • サーバー機器の調達や保守管理の事務が不要になる ➢ 機器更新の際の長期間にわたる調達事務や、機器保守にかかる委託費用が負担となっていたが、クラウド移行 後はこの作業が不要になる ➢ 機器調達の準備期間が不要であるため、システムの開発導入や構成変更が迅速に行える •
スケーリングにより繫忙期対応が容易になる ➢ 一時的に仮想サーバーを高性能なものに置き換えたり、自動的に仮想サーバー台数を増やす機能の活用によ り、繫忙期や年次処理の対応が容易になる ➢ ピークにあわせた機器を調達する必要がなくなるため、CPUやメモリ使用率等の定期レポート作成が不要とな り、運用経費が低減できる • 運用上の工夫により費用を低減できる ➢ クラウド利用料は従量課金であり、常時稼働が不要なサービスの停止等で費用を低減できる • 災害対策が容易になる ➢ バックアップサイトの活用により、従来の災害対策手段である物理テープの遠隔地保管に比べ、RTO(目標復 旧時間)やRPO(目標復旧時点)を短縮することが可能 関係資料:地方公共団体情報システム標準化基本方針(以下「基本方針」) 第2 等 18
2.3 公共領域でのクラウド利用の歴史 2009 霞が関クラウド構想 2021 デジタル社会の実現に向けた重点 計画 政府方針 2013 第一期政府共通PF
2018 クラウドバイディフォルト原則 2020 第二期政府共通PF プラットフォーム ガバメントクラウド 2021 AWS・GC 2022 Azure・OCI 2023 さくらのクラウ ド 2022 クラウドスマート 2024 デジタル行政推進法改正 政府情報システムの統合・集約化 クラウド活用を第一とし、 オンプレミスは例外的な手段 政府が調達する プライベートクラウド パブリッククラウド (AWS) 複数のパブリッククラ ウド環境に加え、政府 がテンプレートとIdP を提供 政府情報システムのクラウドは 原則ガバメントクラウドを利用 単なるIaaS利用ではなく スマートなクラウド利用を行う 全公共情報システムについてガバメ ントクラウドの利用検討努力義務 2022 システム標準化基本方針 地方公共団体標準準拠システムの ガバメントクラウド利用努力義務 政府機関以外も利用
【参考】ガバメントクラウドが目指すもの 【出典】GCASガイド:ガバメントクラウド概要解説 単なるクラウド移行ではなく、クラウドの利用メリットを十分に得られるような利用を目指す
2.4 ガバメントクラウドの選定・調達方法 • ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に登録されてい るクラウドサービス ➢ クラウドに関係する情報セキュリティ管理基準を全て満たす必要がある ➢ 政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準や米国政府にかかるセキュリティ及びプ ライバシー管理基準の内容も一部満たす必要がある
• かつ、ガバメントクラウドに要求される技術仕様等を満たす必要がある ガバメント クラウド クラウドサービス ISMAP
2.5 選定されているクラウドサービス • Amazon Web Services(AWS) • Google Cloud(GC) •
Microsoft Azure(Azure) • Oracle Cloud Infrastructure(OCI) • さくらのクラウド※ ※ 2025年度までに所要の条件を満たすことが前提 名古屋市は全てAWSを利用
【参考】実際のCSPごとの利用数 【出典】日経クロステック:運用コスト増にAWS寡占、ガバメントクラウド推進法案の陰で「こんなはずでは…」 ガバメントクラウドを利 用するシステムのうち、 国の88.6%、自治体の 97.5%がAWS
2.6 ガバメントクラウドの特徴 • 国とCSPとの直接契約 ➢ クラウド利用料はデジタル庁に支払い、デジタル庁がCSPに納付する(デジタル行政推進法第24条) ➢ ボリュームディスカウントと一部サービスの無償利用 ➢ 有事の際のクラウドサービス事業者との折衝は国が実施
• 国が独自のガバナンスを適用 ➢ 国がガバメントクラウドテンプレートにて最低限のセキュリティガードレールを設定する ➢ 情報セキュリティ対策上の手続きが簡略化される(基準への適合確認やデータ消去時の確認作業等) ➢ 専用のIDプロバイダが容易されており、デジタル庁管理サイトに登録された作業者のみがクラウド環 境を操作可能(登録にはマイナンバーカードが必要) ➢ 国外リージョンの利用や統制が難しい一部クラウドサービスは制限されている • 運用支援 ➢ モダンアプリケーション化支援、見積精査支援等 関係資料:基本方針第2、ガバメントクラウド利用に係る地方公共団体向け説明資料 P5、等 24
2.7 ガバメントクラウドを利用する団体とシステム • 原則ガバメントクラウドを利用 • 特定秘密を扱うシステム等一部例外あり 政府機関 • システム標準化対象システムは利用努力義務 •
それ以外のシステムは利用検討努力義務 地方公共団体 • 利用検討努力義務 独立行政法人等 公共情報システム 協会けんぽ、支払基金が該当
2.8 ガバメントクラウドの利用方式 単独利用方式 共同利用方式 運用主体 地方公共団体 事業者 導入方法 地方公共団体がCSPや運用ルールを決定し、 調達仕様に盛り込む
事業者がCSPや運用ルールを決定し、 地方公共団体に提案する 利用方法 地方公共団体が事業者用の環境を用意し、 事業者はその環境にシステムを構築する 事業者が共同利用環境を用意し、 地方公共団体はその環境に接続する メリット ガバナンスが効きやすい 運用状況やコストが可視化しやすい 地方公共団体の運用負担軽減 画一的な運用と共同利用によるコストダウン 関係資料:ガバメントクラウドの利用について(以下「利用について」) 3.1.2、3.1.3 26 名古屋市は全面単独利用方式 (全国的にも珍しい)
2.9 ガバメントクラウドの契約関係 27 デジタル庁 AWS等 地方公共団体 クラウド利用料納付 クラウドサービス提供 クラウド利用料納付 運用管理補助者
(運用事業者) 委託料支払い 共同利用の按分情報 提供 • デジタル庁とAWS等のCSPとでクラウド利用基本契約を締結 • デジタル庁と地方公共団体とでガバメントクラウド利用権付与兼債務引受契約を締結 • 地方公共団体と事業者とでクラウド運用管理補助委託契約を締結
2.10 ガバメントクラウド個別領域 • デジタル庁への申請により標準準拠システム用の個別領域(AWSの場合はメンバーアカウン ト)が払い出される • 個別領域は主に本番環境、検証環境、運用環境の3つ • 開発用途で個別領域を利用する事はできない(CI/CDを採用する場合は許可される) 関係資料:利用について
4.1、ガバメントクラウド概要解説 3.3.1 等 AWSメンバー アカウント Control Tower (デジタル庁) 28
2.11 ガバメントクラウドにおけるセキュリティ対策 関係資料:利用について 4.1、ガバメントクラウド概要解説 3.5.1 ガバメントクラウドのCSPはISMAP登録済みで あるため、一定のセキュリティ基準を満たしてい る 国はガバメントクラウドテンプレートによる独自 のセキュリティ対策を実施し、例えば設定誤りに
より住民の個人情報がインターネットに公開され ることが無いように制御を行う 各団体は、自団体の個別領域において、アクセス 権限管理、修正プログラムの適用、データの暗号 化及びバックアップといった、必要となる情報セ キュリティ対策を適切に実施する必要がある。 29
2.12 ガバメントクラウド接続回線 • 標準準拠システムは特定個人情報を取り扱うため、専用線経由での利用が必須となる • 接続の方法は複数あるが、本市はデジ課が専用回線を独自調達している 30
AシステムVPC 大阪リージョン 東京リージョン 2.13 障害対策と大規模災害対策 AシステムASP事業者用本番環境 バックアップ AZ-1a AZ-1c Primary
Stand-By • ガバメントクラウドの個別領域は複数のデー タセンター群(アベイラビリティゾーン、AZ)で 構成することができる • 明示的に別々のAZにシステム環境を構築し て冗長化することにより、単一のAZで障害が 発生しても業務が継続できるように、稼働率 を高める対策を行うことができる • ガバメントクラウドの東京と大阪の両方の リージョンを利用し、バックアップデータを日 次で別リージョンに保存する等の対策を行う 事で、実効性のある大規模災害対策が可能 • 更に厳しいRTO/RPOが求められる場合、別 リージョンにもDBを配置して同期を取り、ス タンバイ構成を取る 一方のAZで障害が発生して も、もう一方のAZで業務継続 可能 定期的な別リージョンへの バックアップで大規模災害 に備える 関係資料:ガバメントクラウド概要解説 6.3、6.4 31
3.システム標準化の課題 32
3.1 システム標準化の課題の全体像 33 主な原因 無理な期限設定 標準仕様策定の課題 ガバメントクラウド と共同利用の課題 結果 事業者の撤退
イニシャル/ランニング コストの高騰 職員負担の増加 【参考】日経クロステック:全住民情報扱うシステム移行、迫る2025年
3.2 【原因】無理な期限設定 • 1741団体で全業務同時に移行 ➢ 期限的にスモールスタートや段階的移行の手法が取れなかった ➢ 全国的にエンジニアが足りず、人件費が高騰、品質も低下 • 無理に間に合わせようとしたため随所で手戻りが発生
➢ 時間がないため、共通のコア仕様(例えば文字コードやデータ連携)を確定させないまま同時並行で 各論的な仕様を策定したため、不整合が発生したり手戻りが生じた ➢ とりわけデータ連携部分については、仕様策定が大幅に遅れ、事業者が想定で構築してしまっており、 詳細仕様を確定させると手戻りにより期限に間に合わなくなるため、詳細を確定させず現場に丸投 げとなった(いわゆる事業者間調整問題) • 性急に進めたため考慮漏れが多数発生 ➢ ネットワーク全体設計やネットワークアカウントの運用管理について、当初考慮されていなかった ➢ クラウド利用料納付のスキームが会計法違反であり、法律改正が必要なことに直前まで気づけなかっ た。そのため2024年度のクラウド利用料は国が負担することになった • 期限ありきで先行事業で提起された課題がほぼ活かされなかった 34 【参考】日経クロステック:残り1年半も混迷の自治体システム標準化、データ連携で新たに「レファレンス」作成へ
3.3 【原因】標準仕様策定の課題 • 精査が不十分 ➢ BPRを考慮せず現行システムの最小公倍数的手法で仕様を作成したため機能が膨張 • 規模の考慮が無い ➢ 人口数千人の村と数百万人の政令市を同じ仕様とするのは無理がある
➢ 小規模自治体には過大、大規模政令市は機能が足りず外付けで独自開発が必要 • 標準仕様範囲外は外付け独自開発不可避 ➢ 例えば、名古屋市の保険年金システムは標準対象の国保、年金、後期高齢者医療と標準対象外の福祉 医療で分離開発しなければならない • 標準仕様に関する制度改正のルールが守られない ➢ 定額減税や異次元の少子化対策等、標準仕様書改版にかかるルールや期限が守られなかった ➢ 移行前の制度改正連発により、事業者は新旧両方のシステムの改修対応が必要となる • 非機能要件の水準が高すぎる ➢ 可用性やセキュリティは下げる意見を出しづらい ➢ 仕様書を策定するメンバーがコストを払うわけではない 35
3.4 【原因】ガバメントクラウド共同利用の課題 • パブリッククラウドに対する誤解 ➢ もともとパブリッククラウドはCSPがグローバル規模でハードを調達し、割り勘効果を効かせた上で 必要な分だけのサービスを提供するもの ➢ パブクラでは「共同利用すれば割り勘効果でコスト削減」とはならない •
マルチベンダ環境や統合運用管理に関する考慮漏れ ➢ オンプレミス環境からクラウド環境までの全体設計や各種調整が必要になる • 運用やコストの不明瞭化、ガバナンスの欠如 ➢ 共同利用の場合、運用は事業者が画一的に実施し、地方公共団体の要望が反映されづらい ➢ 本来その団体に必要な分だけのリソースとコストをわざわざ共同化で混ぜて不明瞭にしている ➢ クラウド利用料は地方公共団体がデジタル庁に支払うため、事業者に削減/最適化のインセンティブ が無い • リスキリングが必要 ➢ 事業者のみならず、地方公共団体職員にも一定のクラウド知識が求められる 36
3.5 【結果】公共分野からの事業者の撤退 • 基幹業務システムを開発、運用していた事業者が経営判断で次々と撤退 ➢ 高リスク、不採算、人手不足 ➢ 従来のデータセンター運営がガバメントクラウド移行で立ち行かなくなる ➢ 全面撤退ではなくとも不採算の業務を整理するケースもある(住民記録はやるけど福祉は撤退)
• 残存事業者は既存顧客で手一杯であり競争性が担保されない ➢ 既存事業者に撤退された地方公共団体に対し、手を上げる新規事業者がいない ➢ 新規事業者が対応したとしても既存顧客優先で後回しにされ、2025年度の期限まで間に合わない • 行政サービス存続の危機 ➢ 撤退した事業者が、後継事業者が見つかるまでサポートを続けてくれる保証がない(とりわけ制度改 正対応等) ➢ 現行システム機器のリース期限到来により、余分な経費が発生する 37 「ベンダロックインの解消」「ベンダが提供する標準準拠システムから自由に選んで利用」 といった目標からは程遠い状況
3.6 【結果】職員負担の増加 • システムが刷新されるため学習コストがかかる • システム標準化に際し、BPRが求められる ➢ 結局、標準化対象から外れた業務や機能をEUCツール等で代替するケースが多い • 国からの多数の照会や補助金申請事務が業務負担となる
➢ 国からの照会は意見照会、実態調査、KPI指標把握等 ➢ 補助金交付要綱がクラウド利用を想定していないため、無駄な業務が発生 • 事業者間調整問題 ➢ 標準仕様書の詳細が確定せず現場任せとなり、事業者間の調整業務が発生した • クラウドスキル習得 ➢ 事業者からの見積もりや説明内容を適切に判断するためにはクラウドスキルが必須 38 「システム関連の業務負担が軽減され、本来業務に注力できる」 といった目標からは程遠い状況
3.7 【結果】一時費用と運用経費の高騰 • クラウド接続回線や統合運用管理にかかる経常費用が純増 • 人材確保難によるエンジニア人件費の高騰 ➢ 全国同時期一斉移行による人手不足 ➢ 地方公共団体の基幹業務のドメイン知識が重要になるため、既存要員のリスキリングが必須になる
• 開発費用の回収 ➢ 開発費用は国の補助対象ではなく、地方公共団体からイニシャルコストとして回収することができないため、システム利用料等の 名目でランニングコストに上乗せ ➢ 従来機器リースと併せて5年間等の長期契約だったものが短期契約となり、短期間での開発費用回収が発生 • 高すぎる非機能要件水準と過大な安全マージン ➢ 非機能要件水準は満たさないと法律違反となるため、達成するためのコストが嵩む ➢ 性能要件等にかかるリソース選定についても経験蓄積が不足し事業者が安全マージンを取る傾向にある。また地方公共団体の職 員の多くはその妥当性を判断できない • パブリッククラウドにマッチしたアプリ改修が実施されず単純移行 39 【参考】日経経済新聞:自治体システムの運用経費、最大5.7倍に急増 異例の政府直接補助へ 「2018年度比で少なくとも運用経費3割減が目標」 であったが、実際は大多数の地方公共団体が運用経費が増加している
4.名古屋市の取り組みについて 40
大型電子計算機 4.1 名古屋市の基幹業務システムの現状 2000年 2006年 2022年 税務総合情報システム 税務総合情報システム 税務総合情報システム 住民記録システム
住民記録システム 住民記録システム パッケージ 独自開発 再構築 分散移行 分散移行 保険年金システム 独自開発 保険年金システム 分散移行 保険年金システム 福祉総合情報システム(1次) 再構築 生活保護システム パッケージ 固定資産税・個人住民税・ 法人住民税・軽自動車税 住民記録・印鑑・選挙人 名簿・就学(学齢簿) 国保・年金・後期高齢 生活保護 介護保険システム 介護保険システム 介護保険システム パッケージ 介護保険 福祉総合情報システム(2次) 福祉総合情報システム パッケージ 障害者福祉・健康管理・ 子ども子育て支援 児童福祉システム 児童福祉システム 児童手当・ 児童扶養手当 独自開発 戸籍電算システム 新規開発 パッケージ 戸籍・戸籍附票 新規開発 就学援助システム パッケージ 就学(就学援助) 新規開発 情報連携基盤システム パッケージ 共通機能 新規開発 新規開発 新規開発 41
4.2 名古屋市の基幹業務システムの課題 全般的にシステムの稼働年数が長く、技術的負債が大きい システム標準化・ガバメントクラウド移行を好機と捉える マルチベンダであり、全体的な仕組みを変えるのに時間がかかる 自営データセンターが老朽化で継続利用が困難 42
4.3 名古屋市における取組スタンス • 単独事業ではなく市全体のDX推進方針の一環として取り組む ➢ 幹部と関係所属の巻き込み • 推進体制を確保して全体方針を定める ➢ 月1回関係課によるWGを開催し、進捗管理、情報共有、課題管理を徹底
• 国からの指示待ちにならず、主体的に方針を決めていく ➢ 「名古屋市ガバメントクラウド利用方針」等、各種方針の策定 • 便乗して改善できる部分を改善する ➢ ガバナンスの確保、システム利用端末やファイルサーバ等の統合を目指す • 積極的にクラウド人材を育成する ➢ 調査意思決定に要する期間の短期化とベンダとの意思疎通の円滑化 ➢ デジタル改革推進課のみならず各業務所管課の職員もクラウド資格の取得を推奨 43
【参考】名古屋市役所DXの基本方針 44 名古屋市役所DX推進方針概要版 https://www.city.nagoya.jp/somu/page/0000173172.html • 名古屋市役所DXの目指す姿を実現するため、8つの基本方針を定める • 市役所DXの基本方針にもとづき、4つの領域で、13の施策と紐づく事業を展開している • システム標準化・ガバメントクラウド移行はこれらの一環と位置付けている
4.4 ガバメントクラウド利用検討状況 2022 年度 事前準備 • ガバメントクラウドの利用にかかる要件検討 • AWSにかかる知識の習得 2023
年度 環境の整備 • ガバメントクラウドの利用開始(税務総合情報システムの移行開始) • 接続回線と統合運用管理補助者の調達 2024 年度 基幹業務システムの移行 • 住民記録システム、情報連携基盤システム、保険年金システム、福祉総合情報システム、児童福祉シス テム、就学事務等システム、選挙人名簿等システム、戸籍電算システムの移行開始 システム標準化対象20業務のうち9業務が2025年度までに移行完了予定
4.5 システムの最適化 As-Is To-Be ➢ システムごとにファイルサーバやコミュニケー ションツールを調達 ➢ 各システムで認証基盤を保有 ➢
各システムでセキュリティ対策を実施 ➢ システムごとの専用端末 ➢ 共通機能としてファイルサーバやコミュニケー ションツールを一括調達 ➢ 統合認証基盤により各システムにシングルサイ ンオンで利用 ➢ 統合的なセキュリティ対策 ➢ 全システム共通端末を利用 Aシステム Bシステム Cシステム 共通機能 Aシステム Bシステム Cシステム
4.6 可用性の確保と大規模災害対策 As-Is To-Be 遠隔地 ➢ オンプレミスで複雑なクラスター構成を構築 ➢ 全区役所に縮退サーバを設置 ➢
月次でバックアップデータを遠隔地に輸送 ➢ RTO1週間以上、RPO1か月以上 ➢ クラウド機能で容易に可用性を確保 ➢ 回線は複数経路かつ冗長化し、障害や災害時に はバックアップリージョンを活用 ➢ 必要に応じDBをリアルタイム同期 ➢ 最短でRTO数時間、RPO数分間 東京リージョン 大阪リージョン Multi-AZ
4.7 クラウド構成と財務処理の最適化 As-Is To-Be ➢ 事業者から徴収した見積り内容の精査が困難 ➢ 機器構成や性能が適正かは5年後でないと分か らず、不備があった場合は別途調達が必要 ➢
5年間で機種や性能が大幅に変わるため結果を 次回に活かせない ➢ クラウドの積算機能で明快な見積もりが可能 ➢ 随時に構成や性能の見直しが可能 ➢ ダッシュボード機能でメトリクスやコストを可視 化できる ➢ データに基づく意思決定が可能 ? オンプレミス5年リース クラウドオンデマンド
4.8 クラウド人材の育成 • CSPが提供する無料のオンライントレーニングやセミナーを活用 https://aws.amazon.com/jp/training/digital/ https://aws.amazon.com/jp/government-education/worldwide/japan/LG-webinar/ • DX人材育成事業として、職員向けに動画学習サービス(Udemy)を提供しており、その中で クラウド関係の講座を受講可能 •
ガバメントクラウド担当者はAWSオンライン学習サービス(CloudTech)を利用し、中級資 格の取得を目指す 中級資格 Solutions Architect Associate 4名 入門資格 Cloud Practitioner 8名 (うち業務所管課3名) 49
【参考】事例記事/講演資料① • 単独利用方式/全体最適化 ➢ 政令市・中核市・特別区CIOフォーラム2024年5月21~22日会合 標準化を機にしがらみを断ち全体最適 化へ https://project.nikkeibp.co.jp/jpgciof/atcl/19/00002/00013/?P=8 ➢ 名古屋市が進めるAWSを活用したガバメントクラウドの現状とは
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20241023-3050317/ ➢ AWSがガバメントクラウドへの取り組みを説明、名古屋市の事例も https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/1633596.html ➢ AWSジャパン、自治体のガバメントクラウド移行をスキル育成や情報提供で支援 ガバクラを先行利用する名 古屋市が取り組みを説明 https://it.impress.co.jp/articles/-/26995 ➢ 移行期限迫るガバクラ、自治体・支援事業者の現状は? 300の自治体で利用されるAWSの場合 早期移行の 名古屋市が「単独利用方式」を選択した理由 https://ascii.jp/elem/000/004/230/4230115/ ➢ 「道なき道を行く」名古屋市のガバメントクラウド移行--システムの最適化が業務の効率化に https://japan.zdnet.com/article/35225546/ ➢ 名古屋市が爆速で推進「ガバクラ移行」大作戦 https://www.sbbit.jp/article/sp/158956 50
【参考】事例記事/講演資料② • 接続回線/DR ➢ 【導入事例】ガバメントクラウドに接続する冗長ネットワークを短期間で構築 コストを抑えながら稼働率 99.99%を実現 https://www.cloudsolution.tokai-com.co.jp/case/nagoyacity.html ➢ 【導入事例】自治体DXを推進する名古屋市のガバメントクラウドの活用を支援したPlatform
Equinix https://www.equinix.com/jp/ja/resources/case-studies/nagoya-city • IaC ➢ ガバメントクラウド単独利用方式におけるIaC活用(JAWS-UG名古屋 2024年10月会登壇資料) https://speakerdeck.com/techniczna/gabamentokuraudodan-du-li-yong-fang-shi-niokeruiachuo-yong • FinOps ➢ 【導入事例】名古屋市、ガバメントクラウド環境におけるFinOpsを全国に先駆け実践、「srest(スレスト)」を正 式導入へ https://srest.io/news/20250610 ➢ ガバメントクラウドにおける請求支払事務について(今こそ聞きたい!ガバメントクラウド~実課題編~登壇資 料) https://speakerdeck.com/techniczna/20250627-jin-gaba-gabamentokuraudodenoqing-qiu-zhi-fu-shi-wu-nituite-pdfyong 51
ご清聴ありがとうございました 52