Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

AlibabaのAI戦略をコンサルがガチ分析してみた

Avatar for Yusuke Kishimoto Yusuke Kishimoto
August 08, 2026
310

 AlibabaのAI戦略をコンサルがガチ分析してみた

20260808のAlibabaMeetupSapporoの、岸本悠佑_AIサムライの登壇資料です。

Avatar for Yusuke Kishimoto

Yusuke Kishimoto

August 08, 2026

Transcript

  1. 前提|そもそもAlibabaって、何の会社? 02 「中国のAmazon」では説明が終わらない。 AI以前から、1社で「国のインフラ一式」をやっている 1999年、元英語教師のジャック・マーがアパートの一室で創業 → 今や年間売上約20兆円・従業員20万人超 ネット通販(Taobao / Tmall)

    スマホ決済・金融(Alipay) クラウド(Alibaba Cloud) 物流(Cainiao) フードデリバリー(Ele.me) 地図・ナビ 旅行予約(Fliggy) 動画・職場チャット(Youku / 日本でいう楽天市場+Amazon 日本でいう出前館・Uber Eats 日本でいうPayPay+銀行 (Amap / 高徳地図) 日本でいうGoogleマップ 日本でいうAWS的な存在(中国 最大) 日本でいうじゃらん・楽天トラベ ル ……ですでに手広すぎるのに、ここに約8兆円でAIが加わりました。 日本でいうヤマト運輸 DingTalk) 日本でいうYouTube+Slack そしてAIでも、案の定「全方位」なんです →
  2. 自己紹介 岸本悠佑(AIサムライ / AI Samurai) X: @ykishimotoy 1 EQUES 北海道支社長

    東大・松尾研発AIスタートアップ。札幌拠点の立ち上げ責任者 2 現役のAIコンサル 前職アクセンチュア、外資系で培ったコンサルノウハウ持ち 3 札幌すごいAI会 代表 AI駆動開発勉強会 札幌支部長。北海道のAIコミュニティ運営 ※私はAlibabaの専門家ではありません。だからこそ「コンサルの型」=仮説検証で外から分析します 03
  3. 観察 → 気づき → 仮説|AI製品にも「撒き方の法則」がある 04 AIでも案の定、全方位。 だが撒き方は1パターンで、「普及版は無料、最強版はクラウド課金」 STEP 1

    AIでも全方位にやってる 文字 画像 Qwen:DL10億で世界一 Qwen-Image:文字入れ が得意 STEP 2 でも無料なのは「普及版」だけ 無料公開=普及版 Qwen本体・Wanの旧版・FunASRなど 動画 Wan・Happy Horse:世 界1位 音声 FunASR:文字起こし/ Qwen-TTS:読み上げ・声 の複製 全部入り Qwen3-Omni:見る聞く 話す ▼ クラウド課金=最強版 最上位Qwen3.7系・最新Wan3.0・Happy Horse・声の複製など ▼ STEP 3|仮説 無料版は撒き餌。人を集めて囲い込み、クラウド契約という「出口」で回収するモデルでは? この仮説を、①布陣 ②歴史 ③直近の動き の3つで検証します
  4. 根拠①【布陣】|出口を自前で持ち、そこに全賭けしている 撒き餌モデルが成立するのは「出口=クラウド」を自社で持つ者だけ。 Alibabaはそれを持ち、約8兆円を賭けた 入口(アプリ・デバイス) エージェント基盤 モデル Qwenアプリ / AIグラス /

    車載 =集客装置 Wukong / Model Studio Qwen / Qwen-Image / Wan / Happy Horse / FunASR =撒き餌の製造元 クラウド(Alibaba Cloud) チップ・データセンター 約8兆円+ AIインフラに3年で投資。過去10年の合計超え。さらに上積 みをCEOが明言 ← ここが出口(回収装置) 自社チップ / 世界規模のDC投資 チップからアプリまで垂直統合(下が土台、上が入口) 目標はAGI CEO Eddie Wu「AGI(人間並みの汎用AI)が最優先目標」。 片手間ではなく本業化 Eddie Wu「世界をリードするフルスタックAIサービスプロバイダーになる」(Apsara 2025) 05
  5. 根拠②【歴史】|20年前、ECで同じ「型」で勝っている 06 「無料で人を集め、自前の場に囲い込み、後から出口を刺す」は Alibabaの創業以来の勝ち型 用語 Taobao=Slide 2で出てきた中国最大ECモール/Alipay=その決済サービス(日本でいうPayPay) Step 1|集める 2003

    ライバルeBayが出品有料の中、Taobao は出店・出品を完全無料に。店も客も一 気に集めた Step 2|囲い込む 2004 → 「払ったのに商品が届かないかも」とい う不安をAlipay(代金を一旦預かり、到 着後にお店へ渡す仕組み)で解決。生活 に欠かせない「場」として定着 Step 3|出口を刺す その後 → 人が集まりきってから、広告費・決済手 数料という課金点を刺して回収。eBay は中国撤退 ポイントは「先に集めて、出口は後から刺す」という順番。出口の中身は時代に合わせて変えられる
  6. 根拠②続き|型は同じ、出口だけがAI仕様に進化した EC時代とAI時代で「出口」の性質は違う。 だが「集めてから刺す」型は同一で、回収の算段も立つ 共通の型 集める 2003–2004 EC戦争 Taobao出品無料 2023–2026 AI戦争

    Qwen・Wan旧版・FunASRを無料公 開 囲い込む Alipayで生活の場に Qwenアプリ・AIグラス・開発者エコ システムで日常と業務の場に 出口を刺す 広告費・手数料 (お店から取る) クラウド契約・API従量課金(利用企 業から取る)。性質は違うが「集まっ た後で刺す」のは同じ 回収イメージの試算 大企業1社=社員1万人が1人月1,000円分AIを使うと、ク ラウドに月1億円(年12億円) これが1,000社なら年1.2兆円 → 約8兆円の投資も、およ そ7年で回収が視野に入る ※実際はAPI従量課金・スタートアップ・個人開発者も積み 上がるので、これはかなり保守的な試算 撒き餌のコストは、出口の規模から見れば投資として 十分合理的。 07
  7. 根拠③【直近の動き】|2026年、「出口を刺す」フェーズが始まった 組織も製品も「集める」から「刺す」へ。しかも出口はすでに効き始めている 2025/12 Qwen消費者事業部を新設:アプリ・AIグラスを束ね「スーパーアプリ化」 を最優先に(=囲い込みの強化) 2026/3 Alibaba Token Hub設立:AI部門をCEO直轄で統合。狙いは「AIの収益化」 と明言(=出口を刺す号令)

    2026/5 旗艦モデルをクラウド専用に:最上位Qwen3.7系は無料公開をやめてクロ ーズド化(=撒き餌と出口の分離) 2026/8 最新Wan3.0はクラウド提供でベータ開始:無料公開せず、秒単位のAPI課 金(=出口の徹底) 結果 AI関連収益は11四半期連続で前年比3 桁%成長 出口はすでに機能している 集める(無料公開) → 囲い込む(アプリ・デバイス) → 出口を刺す(クラウド課金)フェーズへ移行中 08
  8. 結論|仮説はほぼ確定。狙いは「AI時代の総合プラットフォーマー」 09 全方位に見えるのはバラバラだからではなく、 自前プラットフォームへの「入口」を多重に撒いているから ① 集める Qwen・Wan旧版・FunASRの無料公開 /アプリ/AIグラス(入口の多重化) ② 囲い込む

    ③ 出口を刺す ラットフォームへ API従量課金(使った分だけ課金) → 個人も企業も「AIといえばAlibaba」の自前プ → Alibaba Cloud:企業のクラウド契約・ 「Qwenをオープンソースにし続け、AI時代の「OS」に育てる」 Eddie Wu(Alibaba CEO)