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研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定

 研究データの公開・利用条件指定ガイドラインの策定

2021.3.1 2020年度第3回J-STAGEセミナー
「ジャーナルから見た研究データ:データ公開の実践」

y-minamiyama

March 04, 2021
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  1. Research Data Utilization Forum Research Data Utilization Forum 研究データの公開・利用 条件指定ガイドラインの

    策定 研究データ利活用協議会(RDUF) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 南山 泰之 [email protected] ORCiD ID:0000-0002-7280-3342 2021.3.1 2020年度第3回J-STAGEセミナー 「ジャーナルから見た研究データ:データ公開の実践」 1
  2. Research Data Utilization Forum 研究データ利活用協議会 (RDUF)とは 2 • 2016年6月設立 •

    研究データ利活用に関する国内外の事例の共有などにより、 我が国における研究データ利活用を推進することに寄与 https://japanlinkcenter.org/rduf/index.html
  3. Research Data Utilization Forum 最近の活動テーマ リサーチデータ・サイテーション(RDC) 研究データの引用について、実現を阻む課題を抽出し各種調査を行うこ とで、実現に向けた基礎的資料を作成する。 ジャパン・データリポジトリ・ネットワーク(JDARN) 研究データを安定的に公開する為には信頼できるデータリポジトリであ

    ることが重要である。我が国のリポジトリ関係者間で共通する問題と国 際標準等の先進事例を集め整理する。 研究データライセンス 研究データのライセンス検討プロジェクト小委員会で作成したガイドラ インにつき、バージョンアップに向けた論点出しを兼ねた、各分野(学 術、産業、官庁等)に対する普及活動を行う。また、取りまとめた活動 成果については、RDA/CODATA Legal Interoperability IG へのフィードバッ クを行うことで、国際貢献も視野に入れる。 https://japanlinkcenter.org/rduf/deliverable/index.html 5
  4. Research Data Utilization Forum 研究データの公開・利用条件指定 ガイドライン (2020) 8 本編 (32p.)

    用語集 (7p.) “研究データの公開・利用条件表示ガイドライン ver.1.0”. https://doi.org/10.11502/rduf_license_guideline
  5. Research Data Utilization Forum 活用イメージ: データ取扱いの手引き策定 9 Ref: AGU. “Data

    for publication”. https://www.agu.org/Publish-with-AGU/Publish/Author-Resources/Data-for-Authors 著者への案内が必要な項目 • 公開レベルの設定(フリー、著者へのリクエストなど) • 公開場所の判断基準(各種リポジトリ、電子付録など) • 設定可能なデータの利用条件(自由記述、CCライセンスなど) • その他、ポリシーが競合する場合の定め、DASの記述テンプレートの提供など 本ガイドラインを参考に策定が可能
  6. Research Data Utilization Forum 研究データの公開・利用条件指 定フロー 10 ※ポリシー制定機関による個別の定めがある場合は、定めがない部分のみを検討 詳しい 希望条件あり

    専門家に相談 (必要なら規約・契約書を作成) 公開データと 非公開データ を区別した か? 研究データ 公開 公開の制限は あるか? 情報解禁日時 の定めはある か? 公開先は決 まっている か? 利用条件は決 まっている か? 別の方法 ・ライセンスを検討 Q1.対象データ 特定 Q2. 制約条件 の確認 Q3.制約条件の 解除 Q4.公開先の 選択 Q5.利用条件の 指定 いいえ Action はい • 研究者の視点から、公開先や利用条件についてまとめたもの • 5つの質問に回答していくことで、適切な公開場所と利用条件を選択できる
  7. Research Data Utilization Forum 対象データの特定(Q1) ガイドラインの対象となるデータを特定する 「電磁的な方法により管理が可能なデータのうち、 研究成果として公開するデータ」を扱う • ジャーナルの根拠データも本ガイドラインの対象

    本ガイドラインの対象外となるもの • データの概要情報(※独立したファイルにならないも の) • サンプル(試料、標本)や記録媒体(紙、ディスクな ど) • 著作物等 • 使用環境(データベース、ソフトウェア等) • その他、助成機関等のポリシーによって公開が義務付け られているデータ 11
  8. Research Data Utilization Forum 外的な制約条件の確認(Q2)と 解除(Q3) カテゴリ 確認すべきポイント 制約の解除 分野・研究コミュニティ

    の慣習 関連する国際条約及び対応する国内法等 学会が署名する宣言の存在 その他、社会的な妥当性など 条約等に従うほか、公開猶予期 間の設定を検討 個人情報 個人情報保護法等(GDPRなどを含む) 匿名化や情報開示に関する分野ごとの方針 分野ごとの方針に沿い、匿名化、 公開猶予期間の設定などを検討 国家安全保障、国際関 係など 各学会や機関が定める行動規範 外為法、自衛隊法その他特別法による措置の有無 公文書管理法の適用対象かどうか 該当する行動規範や法令に沿っ て対応。公文書に含まれるデー タの場合は、公文書館での開示 も想定 共同研究契約や個別の 契約による公開制限 研究パートナー、委託元などとの共同研究契約の内容 契約書取り決めによる。契約の 解釈確定や見直しも選択肢に 所属機関(部署)、研究 助成機関などのデータ ポリシー ポリシーにより制限を受けるデータの範囲、帰属先 - 出願中の産業財産権に係るデータ - 研究成果の商業化が想定されるデータ ポリシーに沿って対応。具体的 な制限期間の定めがない場合は、 公知化のメリットも考慮して機 関内で議論 12
  9. Research Data Utilization Forum 公開先リポジトリの選択(Q4) 13 データの性質や用途に合った学術リポジトリに登録を 分野別リポジトリ その他のリポジトリ 機関リポジトリ

    個人管理(不推奨) ※関連機関のポリシーや、国際指針の準拠や第三者認証の取得を行っているかも判断の目安
  10. Research Data Utilization Forum 利用条件の指定(Q5) 14 • 表示 • 出所の表示を行う

    • どのように改変したかも明記する • 非営利 • 商業目的の利用を禁じる • 継承 • 再配布するときは、同じライセンスを 引き継いで表示する • 改変禁止 • 改変されたデータの開示を禁じる • 利用時の改変そのものは禁止されない (例:分析、加工、編集…etc.) 利用 検索 表示 取 得 保 存 改 変 開 示 改変 禁止 表示 二次利用・再利用 非営利 継承 ※初版ではCCライセンスの条件に準拠する方針とした
  11. Research Data Utilization Forum 問題意識 16 利用条件を課したいが 管理にコストが… 利用条件や 契約内容が

    よくわからない 法改正 リポジトリ 国による 法規の違い 公開者 再利用者 研究データの公開・利活用を妨げる要因 池内有為. 「研究データの公開・利用条件指定ガイドライン」 と制限公開を一部改変 https://www.nii.ac.jp/sparc/event/2020/pdf/20201002_2.pdf
  12. Research Data Utilization Forum 研究データライセンス小委員会 の活動概要 期間: 2017年10月~2020年12月 これまでの活動: (1)

    基礎文献の収集・翻訳 (2) インタビュー調査 (3) アンケート調査 (4) Japan Open Science Summit 2018, 2019にてセッション開催 (5) 「研究データの公開・利用条件指定ガイドライン」 ver.1.0作成 (6) ガイドラインの普及・周知 Related reports: https://japanlinkcenter.org/rduf/doc/190218_rduf_license.pdf https://japanlinkcenter.org/rduf/about/index.html#s004_0 18
  13. Research Data Utilization Forum 文献調査/インタビュー調査による 整理 19  データの利用条件を以下の2カテゴリに整理 -

    外的な制約(慣習/社会/国/法律/制度) - データ保持者が設定する条件 複数分野のデータ管理実践者/研究者へインタビュー
  14. Research Data Utilization Forum 考察のまとめ 21 Minamiyama, Y., et al.

    Investigation and Development of the Workflow to Clarify Conditions of Use for Research Data Publishing in Japan. Data Science Journal, 19(1), p.53. DOI: http://doi.org/10.5334/dsj-2020-053 データ共有・公開の観点から、外的制約及び データ保持者が設定する利用条件を分析
  15. Research Data Utilization Forum Data Availability Statement対応 23 Ref: J-STAGE

    Data Availability Statement設定例 2.0版 https://www.jstage.jst.go.jp/static/files/ja/pub_data_availability_statement_SettingManual.pdf J-STAGE上での表示項目: ① タイトル ② DAS記述 ③ データの説明 ④ 外部リンク ⑤ 公開日 ⑥ データタイトル ⑦ 著者名
  16. Research Data Utilization Forum J-STAGE Dataデータポリシー (発行機関向け)での扱い 3. 適用 本ポリシーは、JSTによってJ-STAGE

    Data利用申請を承認された J-STAGE利用機関(以下、利用機関という)によって、J-STAGE Dataに登載および公開される研究データに適用します。 また、本ポリシーは、以下の資料(以下、ガイドラインとい う)を参考にしています。 “研究データの公開・利用条件表示ガイドライン ver.1.0”. 研究 データ利活用協議会(RDUF)研究データライセンス小委員会, 2019, 32p. https://doi.org/10.11502/rduf_license_guideline, (参照 2020-11- 09) なお、本ポリシーとJ-STAGE Dataシステム利用規約の間に矛盾 がある場合は、J-STAGE Dataシステム利用規約が優先します。 24
  17. Research Data Utilization Forum 利用上の注意点 汎用的な記述の限界 • 分野ごとの指針や、各学会におけるポリシーは フォローしていない •

    扱うデータの種類によっては、不必要な考慮も 含まれていることが想定される 実際の記述に落とし込む際には、各学会用に カスタマイズが必要 チェックリストとして活用も可能 25
  18. Research Data Utilization Forum その他の言及事例 • 国立大学図書館協会. 「研究データのオープン 化とそのメリット」 https://www.janul.jp/ja/news/20200615

    • 三上 絢子ほか. 学術機関での研究データの公開 プロセスに関するワークフローの考案と問題の 分析. 研究報告インターネットと運用技術 (IOT). 2020, 2020-IOT-48, no.26, p.1-8. 26