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現場の暗黙知を継承するAIエージェント — 対話から生まれる長期記憶と Skills

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現場の暗黙知を継承するAIエージェント — 対話から生まれる長期記憶と Skills

2026年8月27日に開催「現場を動かすAIエージェント〜製造・リテール・モビリティ各業界の実践〜」の登壇資料です。

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Atsuki Shirasawa

August 27, 2026

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Transcript

  1. ABOUT US 私たちは、店舗を持つ開発チームです COMPANY SPEAKER 白澤 敦貴 R&D Office /

    Lead Engineer 株式会社トライアルテクノロジー R&D Office は3〜10年後の主流技術を検証する組織です。 自社で運営する店舗を持つ、 います。 AIエージェント基盤と、本日お話しする長期記憶を担当して トライアルグループの技術会社です。 店舗から物流、取引先までを自社のデータでつなぎ、 小売の現場そのものを作り変えています。 好きなトライアルの商品 限界までクリームつめちゃいました カスタード・ホイップシュー 税込105円 02
  2. C U R R E N T S TAT E

    日々の運営は、ベテランの「なんとなく」で回っています ベテランの担当者は、この商品を次に何個発注すべきか、 迷うことなく数を決めます。 「なぜその数か」と聞いても、返ってくるのは「なんとなく」 。 この「なんとなく」の正体が、暗黙知です。 「なぜこの数なんですか?」 「なんとなく」 ——でも、当たる。 例えば、こんなやりとりです 05
  3. PAIN 暗黙知の痛みは、業界を問わず同じ構造です 01 02 03 属人化 喪失 継承難 その人がいないと止まります。 異動・退職とともに消えます。

    教えられず、時間がかかります。 判断基準は、 判断の履歴は残りません。 本人が言葉にできず、 個人の頭の中だけです。 「あのシステム、あの人しか触れない」 研修にも落ちません。 熟練技能者の退職と技能伝承 「やって覚えろ」以外に手段がない状態 06
  4. W H Y I T FA I L S 「書かせる」も「配る」も、現場では機能しません

    マニュアル化が続かない3つの理由 書けない: 言語化できないから暗黙知です。 「じゃあ ChatGPT や Gemini を配ろう」の現実 「なぜ3倍発注したんですか」の答えは「勘だよ」 全社にアカウントを配っても、使い続けるのは 書く暇がない: 新しいツールを自分で試せる一部の人だけです。 今日のタスクで手一杯。文書化は常に後回しになります これらはプロンプトを工夫できる人向けのツールです。 読まれない・腐る: そこまで踏み込める人の話です。 書いても更新されず、半年で現実と乖離します コンテキストエンジニアリング、Skill化—— エンジニア組織ですらそうなら、小売の現場では—— 08
  5. OUR APPROACH 「書かせる」を、前提にしません。 働いているだけで知が残る仕組みにします。 BEFORE AFTER S O T H

    AT 仕事のあとに、文書を書く 仕事そのものが対話になる 知識管理の工数が消える 仕事 → 別途ドキュメント作成 エージェントと対話しながら 人がAIに合わせるのではなく、 → 更新されず形骸化。 働くと、対話ログに AIが現場を覚えます。 知識管理そのものが工数になり、 判断の痕跡が残ります。 知識を残すための 現場では続きません。 それを副産物として抽出します。 追加作業はゼロです。 成り立つ条件 エージェントが日々の業務の道具として使われていること。記憶は、その副産物です。 業務に組み込む流れそのものの設計は、現在別軸で検討を進めています 09
  6. W H AT R E M A I N S

    本人が語れなくても、「何を見たか」は残ります 暗黙知は、本人の言葉としてではなく手続きとして回収されます D I A L O G U E L O G / 例示のために作成した架空の対話です 発注担当 明日の豆腐、いつもの1.5倍でいい? エージェント 直近4週の同曜日実績と、明日の天気・気温を確認 します。今週の価格と現在の在庫も確認しました。 EXTRACTED / この対話から抽出された記憶 調べたこと 豆腐の発注量を決めるため、直近4週の同曜日実績、翌日の天気と 気温予報、今週の売価、現在の在庫を確認した 明日は晴れ、最高気温32℃。同条件だった週は 分かったこと 通常比1.4倍でした 同条件の週は通常比1.4倍だったが、担当は1.5倍を選んだ 発注担当 いや、1.5でいく 完了したこと エージェント 理由をうかがえますか 発注担当 なんとなく、そんな感じ 担当の判断どおり、豆腐カテゴリを通常比1.5倍で発注した 次の一手 金曜に実績を確認し、1.5倍が妥当だったかを検証する 10
  7. TA XO N O M Y 人の記憶の分類を、そのままエージェントに移します 分類 問い 小売での例

    状況 意味記憶 What 何を知っているか 「『定番』は棚割上の定位置商品。特売の山積みは含まない」 実装済み 「年越しそばを天ぷらの隣に並べたら、前年比 150% になった」 実装済み 「特売前日:チラシ掲載品を抽出→前回実績を確認→天気で補正」 構想 SEMANTIC エピソード記憶 EPISODIC 手続き記憶 PROCEDURAL 用語・事実・好み How 過去にどう対処したか 経験の記録 Behavior どう振る舞うべきか 実行可能な手順 人の記憶分類(作業記憶/意味・エピソード・手続きの長期記憶)を AI エージェントの設計に転用した整理。 出典:CoALA: Cognitive Architectures for Language Agents(Sumers, Yao, Narasimhan, Griffiths, 2023)arxiv.org/abs/2309.02427 12
  8. ARCHITECTURE エージェント実行基盤と、長期記憶サービスを分けます 記憶を独立したサービスに切り出し、REST API と MCP で公開。 記憶を特定のエージェントの持ち物にしません。エージェントやモデルが入れ替わっても、記憶は残ります。 LONG-TERM MEMORY

    長期記憶サービス 会話時:記憶を検索・想起 MCP / REST 質問・依頼 根拠つきの回答 現場ユーザー エージェント実行基盤 LangGraph / FastAPI Multi-LLM FastAPI / MCP REST API MCP 保存・類似検索 PostgreSQL pgvector 夜間:記憶の固定化 会話ログ → エピソード・意味記憶 S TAT U S この基盤は現在、社内メンバーでの試験運用段階です。店舗現場への展開はこれからです。 13
  9. C O N S O L I D AT I

    O N 一日の対話を、夜にまとめて記憶へ固定します Dreaming — エージェントは夜、夢を見る HUMAN AGENT 人は睡眠中に記憶を固定化する エージェントは夜間バッチで固定化する その日の経験を海馬から新皮質へ転送し、 日中は現場で対話し、夜にその日の会話スレッドを 重要な記憶を強化して不要な記憶を整理します。 俯瞰して記憶を抽出・統合します。 記憶の固定化の多くは、睡眠中に進みます。 スレッド全体を俯瞰したほうが抽出の質が高く、 日中の応答にコストとレイテンシを載せずに済みます。 日中の経験 → 睡眠中のリプレイ → 長期記憶 会話スレッド → 夜間バッチ → 長期記憶ストア 強化・整理・忘却 強化・整理・忘却 14
  10. PIPELINE 対話ログから、構造化された記憶を取り出します 1 夜間 スレッドを取得 その日更新のあったスレッドを 取得 2 LLM 抽出

    記憶を抽出 意味/エピソード記憶を同時に抽出 エピソードは I-L-C-N 形式で構造化 3 統合と忘却 記憶は増やさず育てる 似た記憶が既にあれば、 新規に追加せず上書き更新 長い会話は分割して処理し、 Investigated:調べたこと 知識が断片化せず、 文脈を切らずに渡す Learned:分かったこと 対話を重ねるほど記憶が育つ Completed:完了したこと Next:次の一手 個人/組織のスコープも LLM が判定 エピソードは参照されないと 失効し、参照のたびに延長。 意味記憶と組織スコープの記憶は 無期限 15
  11. SCOPE 個人の記憶が、組織の記憶になります USER SCOPE SHARED SCOPE 個人の記憶 組織の記憶 「粗利より先に欠品率を見る」 「在庫数は22時のバッチ後に反映」

    「先週から近隣店の改装の影響を調査中」 「盆と正月は前年同イベント日で比較」 その人の担当・好み・作業の経緯にひもづく事実。 誰も文書にしないが、全員が知っている必要がある事実。 本人との会話にしか注入されません。 スコープは抽出時に LLM が判定します。 統合 同じ題材の経験は、類似判定で1つの共有知に統合されます。 16
  12. RECALL ユーザーは操作しません。想起は基盤側で起きます 01 02 03 会話開始時の自動注入 会話中の能動的想起 想起の質と効率 ユーザーコンテキストと直近 エージェントは記憶検索を

    ベクトル検索と全文検索を エピソードの要約を自動で注入。 MCP ツールとして持ち、 並列実行し RRF で統合します。 担当や直近の仕事を前提に話せ、 必要なときに自分で まず軽量サマリを返し、選ばれた 会話がふりだしに戻りません。 過去の記憶を引きます。 ID だけ詳細を取得します。 GET /context/prompt MCP:記憶検索/詳細取得 ハイブリッド検索/段階的取得 現場に要求しないこと プロンプトの工夫もコンテキストの用意も、基盤側が肩代わりします。 17
  13. VISION / PROCEDURAL MEMORY 経験の束を、Skill に昇格させます 先に経験、あとから手順。エピソード記憶の束から手続き記憶=Skill を作ります 1 エピソード記憶

    経験が束になる 台風前日・特売前日・連休前の発注 同種の作業エピソードが日々溜まる 個別の経験としてはバラバラのまま 2 昇格(構想) 横断して型を取り出す 束になったエピソードを LLM が 横断 3 手続き記憶 Skill として装備する 成果物は SKILL.md + scripts/ エージェントが Skill として 共通する確認事項と手順を抽出 装備できる 個別の経験から型を取り出す 本人が去っても、新人が同じ手順を たどれる 前提 判断そのものは人のまま。Skill は判断を支える道具です。 19