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「現実世界」という究極のオープンワールドゲームを実現するには

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May 02, 2025
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 「現実世界」という究極のオープンワールドゲームを実現するには

クーガーが開発するバーチャルヒューマンエージェントの「レイチェル」は2025年5月現在、ファミリーマート7,000店舗で店長の業務支援を行っている。ゲームAIの技術が惜しみなく注ぎ込まれたレイチェルは「現実世界」という究極のオープンワールドで、コンビニ店長というプレイヤーを相手に高い能力を発揮し続けている。その礎となるゲームAIの基本的な仕組みを、6つのパートに分けて解説する。

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May 02, 2025
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  1. 4 1. ナビゲーションと経路探索(Navigation & Pathfinding) NPCや敵キャラクターがマップ内をスムーズに移動するための技術。 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI A*アルゴリズム ❑ 最短経路を計算し、NPCが最適なルートで目的地へ移動。

    例: プレイヤーに気づいた敵が最短ルートで追いかける。 街の住人が混雑を避けて移動する。 動物がプレイヤーを見つけたら最適な逃走経路で逃げる。 NavMesh(Navigation Mesh) ❑ 移動可能なエリアをポリゴンで定義し、NPCがスムーズに移動できるようにする。 例: 村の住人が道を歩いて市場に向かう。 敵キャラクターが戦場で障害物を避けながらプレイヤーを追う。 馬や車が道に沿って走るが、崖には落ちないようになっている。 動的経路探索(Dynamic Pathfinding) ❑ 道を塞ぐ岩や倒れた木など、変化する環境に適応して新しい経路を計算。 例: 崖が崩れたら、NPCは別のルートを探して目的地へ向かう。 戦闘中、爆発で道が塞がれたら敵が迂回して攻めてくる。 敵AIが戦略的にプレイヤーを囲むためにルートを変える。
  2. 5 2. NPCの行動決定(Behavior Systems) NPCが状況に応じた適切な行動を選択する技術。 GOAP(Goal-Oriented Action Planning) ❑ NPCが目標に向かって適切な行動を選択する。

    例: 村人が「お腹が空いた」→「レストランへ行く」→「食事する」。 兵士が「弾薬が切れた」→「弾薬を探す」→「補充する」→「戦闘を再開する」。 野生動物が「寒い」→「洞窟を探す」→「中で休む」。 Behavior Tree(ビヘイビアツリー) ❑ NPCの行動をツリー構造で管理し、条件に応じて適切な動作を選択。 例: 敵が「プレイヤーを発見」→「警戒」→「攻撃」→「撤退」の順で行動する。 店員が「客が来る」→「挨拶する」→「接客する」→「掃除する」。 動物が「プレイヤーが近づく」→「警戒」→「逃げる」。 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI
  3. 6 3. 群衆シミュレーション(Crowd Simulation) NPCが集団でリアルな動きをするための技術。 RVO(Reciprocal Velocity Obstacles) ❑ NPCが互いに衝突を避けながらスムーズに移動。

    例: 市場の人々が互いを避けながら歩く。 交差点で車がぶつからずに進行できる。 逃げる人々が混雑を避けながら建物の外へ出る。 Boidアルゴリズム ❑ 鳥や魚の群れのように、NPCが自然な集団行動を取る。 例: 羊の群れが一緒に動きながら草を食べる。 戦場で兵士が隊列を組んで前進する。 市場で群衆が流れるように移動する。 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI
  4. 7 4. 感知・認識システム(Perception Systems) NPCが周囲の状況をどのように理解するかを決める技術。 聴覚シミュレーション ❑ NPCが音を聞き取り、反応する。 例: 銃声を聞いた敵が警戒状態に入る。

    ドアが開く音を聞いたNPCが振り向く。 爆発音の方向に兵士が集まる。 視野(Field of View, FoV) ❑ NPCが見える範囲を設定し、視界外のものは認識しない。 例: 敵が背後のプレイヤーに気づかない。 街の住人が近づくプレイヤーに反応する。 店員がプレイヤーを目で追う。 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI
  5. 8 5. 環境適応型AI(Adaptive AI) NPCがプレイヤーの行動に適応して変化する技術。 状態遷移システム(Finite State Machine, FSM) ❑

    NPCが状況に応じて行動を変える。 例: 敵が「通常」→「警戒」→「戦闘」→「逃走」の順で行動する。 商人が「店を開く」→「客を迎える」→「閉店して帰宅する」。 野生動物が「休憩」→「移動」→「警戒」→「逃げる」。 ML(機械学習)を活用した行動予測 ❑ プレイヤーの戦闘パターンを学習し、敵が適応する。 例: プレイヤーが同じ攻撃を繰り返すと、敵が回避するようになる。 盗賊がプレイヤーの侵入方法を学び、対策を立てる。 NPCがプレイヤーの行動履歴を記憶し、より自然に反応する。 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI
  6. 9 6. プロシージャル生成(Procedural Generation) ランダムにゲームの世界を作る技術。 Procedural Content Generation(PCG) ❑ 手作業ではなく、自動生成でゲームマップや敵の配置を決定。

    例: 新しいゲームをプレイするたびに異なるマップが生成される。 敵の配置が毎回異なり、新鮮な体験が得られる。 NPCの顔や服装がランダムに生成される。 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI
  7. 10 1. ナビゲーションと経路探索(Navigation & Pathfinding) NPCや敵キャラクターがマップ内をスムーズに移動するための技術。 2. NPCの行動決定(Behavior Systems) NPCが状況に応じた適切な行動を選択する技術。

    3. 群衆シミュレーション(Crowd Simulation) NPCが集団でリアルな動きをするための技術。 4. 感知・認識システム(Perception Systems) NPCが周囲の状況をどのように理解するかを決める技術。 5. 環境適応型AI(Adaptive AI) NPCがプレイヤーの行動に適応して変化する技術。 6. プロシージャル生成(Procedural Generation) ランダムにゲームの世界を作る技術。 まとめ 自由度の高いオープンワールドを実現するゲームAI