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社会(科)学におけるエージェントベースモデル

date_cocoa
September 24, 2021

 社会(科)学におけるエージェントベースモデル

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  1. 2 ⽬次 1. はじめに 2. Axelrodの⽂化伝播モデル 3. Axelrodの⽂化伝播モデルの後続研究 1. qc

    でのtransition phaseの発⾒ 2. マスメディアの影響 3. 隣⼈エージェントの張り替えの影響 4. 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 4. まとめ
  2. 3 ⽬次 1. はじめに 2. Axelrodの⽂化伝播モデル 3. Axelrodの⽂化伝播モデルの後続研究 1. qc

    でのtransition phaseの発⾒ 2. マスメディアの影響 3. 隣⼈エージェントの張り替えの影響 4. 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 4. まとめ
  3. 6 社会学におけるエージェントベースモデル はじめに Macy, M. W., & Willer, R. (2002).

    From factors to actors: Computational sociology and agent-based modeling. Annual review of sociology, 28(1), 143-166. n 社会構造の創発 Ø エージェント同⼠のローカルな相互作⽤によって、グローバルな何らかの構造が⽣まれる p 分居モデル(Residential Segregation) (代表例︓Schellingの⿊⼈と⽩⼈の分居モデル) p 組織のライフゲーム(Density-Dependent Organizational Survival) (代表例︓ Conwayのライフゲーム) p ⽂化伝播モデル(Cultural Differentiation) (代表︓Axelrodの⽂化伝播モデル) n 社会秩序の創発 Ø エゴイスティックな⾏動をとるエージェントが相互作⽤によって異なる⾏動をとるようになる p 囚⼈のジレンマの戦略の変化 (代表例︓Axelrodのしっぺ返し(Tit for Tat)戦略)
  4. 7 ⽬次 1. はじめに 2. Axelrodの⽂化伝播モデル 3. Axelrodの⽂化伝播モデルの後続研究 1. qc

    でのtransition phaseの発⾒ 2. マスメディアの影響 3. 隣⼈エージェントの張り替えの影響 4. 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 4. まとめ
  5. 8 Axerlodの⽂化伝播モデル Axerlodの⽂化伝播モデル Axelrod, R. (1997). The dissemination of culture:

    A model with local convergence and global polarization. Journal of conflict resolution, 41(2), 203-226. n なぜ⼈々の態度や考え⽅の違いは消失しないのか Ø ⼈は交流すると態度や考え⽅等が似通ってくる Ø ⼈の交流はますます盛ん n 概要 Ø 10×10のマスを考える Ø 合計100のマスに1⼈のエージェントが存在 Ø エージェントは0~9の特性(trait)をとり得る5つの 特徴量(feature)がランダムに選択 例 ︓[5, 6, 0, 2, 8] イメージ︓[英語, キリスト, ⿊⼈, 男性, ⼤卒] →⽂化と呼ぶ
  6. 9 Axerlodの⽂化伝播モデル n 以下の処理を交流する可能性が消失するまで、あるいは交流したとしても特性の変化がなくなるまで繰り返す Ø ランダムにエージェントを選択 Ø 選択されたエージェントの近隣エージェントをランダムに選択 Ø 類似度に応じた確率((共通する特徴量(feature))の数/

    (特徴量(feature)) の数)で両者が交流 ※似たもの同⼠は交流しやすいこと(ホモフィリー)をモデル化している p 交流では、両者が持つ特徴量のうち特性が異なる特徴量がランダムに選択され、 近隣エージェントのそれが選択されたエージェントのそれに置き換わる ※交流するとより似てくる Axerlodの⽂化伝播モデル [5, 6, 0, 2, 8] [5, 6, 0, 2, 8] [5, 6, 0, 2, 8] [5, 6, 0, 2, 8] [5, 6, 0, 2, 8] [0, 1, 3, 0, 9] [4, 2, 1, 3, 1] [5, 6, 0, 2, 8] [9, 9, 3, 1, 1] [2, 3, 1, 4, 5] 交流する可能性が消失 交流しても特性の変化がない [0, 1, 3, 0, 9] [4, 2, 1, 2, 8] [5, 6, 0, 2, 8] [9, 9, 0, 1, 1] [2, 3, 1, 4, 5] 2/5 の確率で交流 [0, 1, 3, 0, 9] [4, 2, 1, 2, 8] [5, 2, 0, 2, 8] [9, 9, 0, 1, 1] [2, 3, 1, 4, 5]
  7. 13 Axerlodの⽂化伝播モデル n その他のパラメータの変更 Ø 近隣 p 上下左右(ノイマン近傍) p 上下左右

    + 対⾓線4つ(ムーア近傍) p 上下左右 + 対⾓線4つ + 上下左右+1 ▶ 近隣が広がるほど単⼀の⽂化圏に収束しやすい (Table2の9つのパターンの平均がそれぞれ、3.4、2.5、1.5) Ø マスのサイズ p 5×5 p 10×10 p 15×15 ▶ ⼀⾒、Substantialな影響はないが… (Table2の9つのパターン×近隣の3パターンの平均がそれぞれ、2.4、2.5、2.2) Axerlodの⽂化伝播モデル ★
  8. 14 Axerlodの⽂化伝播モデル Axerlodの⽂化伝播モデル n 最も複数の⽂化圏が⽣じるパターンで固定 Ø 特性(Trait)︓15 Ø 特徴量(Feature)︓5 Ø

    近隣︓上下左右 ▶ マスが⼩さすぎると単⼀の⽂化圏に 収束しやすい ▶ マスが⼤きすぎると単⼀の⽂化圏に 収束しやすい ▶ マスが中程度だと複数の⽂化圏に 収束しやすい (反直感的︖)
  9. 15 Axerlodの⽂化伝播モデル Axerlodの⽂化伝播モデル n まとめ シンプルなシミュレーションにも関わらず、直感的な結果だけではなく、反直感的な結果が得られた (直感的) Ø 特性(trait)が少ないと単⼀の⽂化圏に収束しやすい Ø

    近隣の範囲が広がると単⼀の⽂化圏に収束しやすい (反直感的) Ø 特徴量(feature)が少ないと複数の⽂化圏に収束しやすい Ø マスの⼤きさが⼩さいマスだと単⼀の⽂化圏に、中程度のマスだと複数の⽂化圏に、⼤きいマスだと単⼀の ⽂化圏に収束しやすい n ⽰唆 Ø ⽂化の実態を考えるときは、⽂化の特徴量(feature)の数と特性(trait)の数は分けて考える必要がある Ø 似た者はより交流し、交流するとより似てくるという仮定のみで数少ない複数の⽂化圏に収束した。ここに は⽂化の優劣は仮定していない。よって、現在ある⽂化圏が廃れていった⽂化圏よりも勝っているという機 能主義的考えだけでは、⽂化圏の現在のあり⽅を説明できない可能性がある
  10. 16 ⽬次 1. はじめに 2. Axelrodの⽂化伝播モデル 3. Axelrodの⽂化伝播モデルの後続研究 1. qc

    でのtransition phaseの発⾒ 2. マスメディアの影響 3. 隣⼈エージェントの張り替えの影響 4. 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 4. まとめ
  11. 17 後続研究①︓qc でのtransition phaseの発⾒ n 設定 Ø 特徴量(feature)の数(F)︓2〜10 Ø マスのサイズ(L)︓50〜150

    Ø 特性(trait)の数qを変化させて !"!"## $$ の変化をみる p !"!"## $$ が1だと単⼀の⽂化圏が独占している状態 p !"!"## $$ が0に近いと全く異なる⽂化圏が散乱している状態 n 結果 Ø F > 2の時… p 急激に !"!"## $$ が落ちる Ø F = 2の時… p ⽐較的滑らかに !"!"## $$ が落ちる qc でのTransition phaseの発⾒ Castellano, C., Marsili, M., & Vespignani, A. (2000). Nonequilibrium phase transition in a model for social influence. Physical Review Letters, 85(16), 3536.
  12. 18 後続研究②︓マスメディアの影響 n 設定 p q種類の特性(trait)を取り得るF個の特徴量(feature)がランダムにエージェントにアサイン p エージェントは50×50のマスにアサイン Ø 追加された点

    ※⼀定の情報を流すマスメディアにある確率で影響を受ける p マスメディアエージェントをマス外に配置 l マスメディアエージェントも他のエージェントと同様に、q種類の特性(trait)を取り得るF個の 特徴量(feature)がランダムにアサイン p 各エージェントはマスメディアエージェントと確率Bで隣⼈エージェントの代わりに相互作⽤ l 各ステップで確率Bでマスメディアエージェントと相互作⽤する機会を得て、確率1ーBで隣⼈ エージェントと相互作⽤する機会を得る マスメディアの影響 González-Avella, J. C., Cosenza, M. G., & Tucci, K. (2005). Nonequilibrium transition induced by mass media in a model for social influence. Physical Review E, 72(6), 065102.
  13. 19 後続研究②︓マスメディアの影響 n 結果 Ø Bがある閾値を超えると、Bの増加につれて(マスメデ ィアと相互作⽤する確率が⾼いほど)、より多くの ⽂化圏が⽣じる Ø Bの効果はqによって異なる

    p q > qc ︓Bに依らず常に複数の⽂化圏が⽣じる p q < qc ︓Bによって異なる結果 l B < Bc︓単⼀の⽂化圏 l B > Bc︓複数の⽂化圏 マスメディアの影響
  14. 20 後続研究③︓隣⼈エージェントの張り替えの影響 n 設定 ※⽂化が全く異なる者とは関係を絶って、他の者と関係を結ぶ Ø マスではなく動的なネットワーク(グラフ)を考える Ø 初期はAxelrodと同様のマスだが、エージェントiと 隣⼈エージェントjと相互作⽤時に類似度が0の場合

    下記を実施 p エージェントiと隣⼈エージェントjとのエッジを消去 p ランダムにエージェントk(k≠i≠j)を選択 p エージェントiとエージェントkとのエッジを作成 以降エージェントiとエージェントkは隣⼈エージェント n 結果 Ø qc が増加 p 条件が同等ならば「隣⼈エージェントの張り替え」 は単⼀の⽂化圏に収束しやすい 隣⼈エージェントの張り替えの影響 Centola, D., Gonzalez-Avella, J. C., Eguiluz, V. M., & San Miguel, M. (2007). Homophily, cultural drift, and the co-evolution of cultural groups. Journal of Conflict Resolution, 51(6), 905-929.
  15. 22 後続研究④︓隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 Morris, R., Turner, L., Whitaker, R., &

    Giammanco, C. (2019, July). The Impact of Peer Pressure: Extending Axelrod's Model on Cultural Polarisation. In 2019 IEEE International Conference on Cognitive Computing (ICCC) (pp. 114-121). IEEE. n 設定 ※関係を直接持たない⼈からも間接的に影響を受ける Ø 相互作⽤を以下のように変更 p 隣⼈エージェントだけではなく隣⼈エージェントの 隣⼈エージェント、そのまた隣⼈エージェント…の ように最⼤L⼈の隣⼈エージェントから影響を考慮 p 影響⼒はエージェント間の類似度で重み付け p 影響⼒が最も⾼い特性(trait)に変更 右の例 𝛼! が選択され特徴量(feature)1が選択された時 𝛼! の特性(trait)5をとる1番⽬の特徴量(feature)に 対してはそれぞれ以下の影響⼒が存在(L = 2) p 5を1にする影響⼒︓1.96 l 𝛼" → 𝛼# → 𝛼! : 0.8 l 𝛼$ → 𝛼% → 𝛼!: 0.36 l 𝛼$ → 𝛼# → 𝛼!: 0.8 p 5を3にする影響⼒︓1.08 p 5を5にする影響⼒︓1 ▶ 𝛼! の特徴量(feature)1の特性(trait)5は1に変更
  16. 24 ⽬次 1. はじめに 2. Axelrodの⽂化伝播モデル 3. Axelrodの⽂化伝播モデルの後続研究 1. qc

    でのtransition phaseの発⾒ 2. マスメディアの影響 3. 隣⼈エージェントの張り替えの影響 4. 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 4. まとめ
  17. 25 まとめ n エージェントベースモデルは様々な分野で応⽤ n 社会学での代表例としてAxerlodの⽂化伝播モデル n 後続研究も多数存在 1. qc

    でのtransition phaseの発⾒ 2. マスメディアの影響 3. 隣⼈エージェントの張り替えの影響 4. 隣⼈の隣⼈からの間接的な影響 まとめ