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モンテカルロDCF法による事業価値の算出(モンテカルロ法とベイズモデリング​) / Busin...

Ikuma_w
January 09, 2025

モンテカルロDCF法による事業価値の算出(モンテカルロ法とベイズモデリング​) / Business Valuation Using Monte Carlo DCF Method (Monte Carlo Simulation and Bayesian Modeling)

Ikuma_w

January 09, 2025
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  1. 目次 1. 事業価値とは 2. 事業価値の要素と不確実性の考慮 3. DCF法とは 4. モンテカルロ法とは 5.

    モンテカルロDCF法の概要 6. モンテカルロDCF法の各要素の説明 7. フリーキャッシュフローについて 8. 資本コストについて 9. 株主資本コストとCAPM理論 10. β値の計算
  2. 事業価値とは? 企業が行う事業の価値であり、将来のフリーキャッシュフローの現在価値の合計 事 業 価 値 非 事 業 資

    産 価 値 企 業 価 値 債 権 者 価 値 株 主 価 値 株 式 時 価 総 額 何でできているか? 誰のものか? ▪ 企業価値の正体とは?
  3. 事業価値の要素と不確実性の考慮 事業成長と市場からの期待に対して、不確実性を考慮する 事業価値 運転資本 減価償却費 税引後営業利益 設備投資 株主資本コスト 負債コスト 永久成長率

    成長率 フリーキャッシュフロー ( FCF ) 資本コスト (割引率、WACC※) 営業利益 税金 売上債権 在庫 支払債務 正規分布からのサンプリング ベイズモデリングで分布を推定 ※ Weighted Average Cost of Capitalの略
  4. DCF※法とは 将来のFCFを現在価値に割り引き、事業価値を求める評価方法 ・・・ FCF 事 業 価 値 FCF FCF

    FCF FCF FCF 0 年 目 1 年 目 2 年 目 3 年 目 8 年 目 9 年 目 10 年 目 WACCで割り引く ※ Discount Cash Flowの略
  5. モンテカルロ法とは 仮定した確率分布に基づき、乱数を生成し、求めた値を計算し評価する手法 計算例1:飲食店の売上を予測する ▪ シチュエーション 来客グループでのチャージ代:500円 客単価(経験的に):3,000円 来客数:a人 とすると、売上は 500

    + 3,000 × a (円) となる。 来客数が以下のような正規分布に基づくとすると、、、 100 来客数 115 85 90人とすると、270,500円 100人とすると、300,500円 115人とすると、345,500円 ・ ・ ・ 求めた売上で分布を描けば、予測売上の確率の分 布(=幅)が得られる 計算例2:円周率を求める ランダムにプロットされた各図形内の個数から、円 周率が近似できる ①以下の正方形と扇形の面積と円周率の関係は、 扇形の面積 正方形の面積 = π 4 ②以下のような座標として考えたとき、 扇形内の点の数 正方形内の点の数 =扇形内に点が入る確率 = 扇形の面積 正方形の面積 x: 0〜1の一様分布 y: 0〜1の一様分布 に基づいて 点を打つと、 1 1 ①、②より π = 4 × 扇形内の点の数 正方形内の点の数 1 1 0 x y
  6. モンテカルロDCF法の概要 不確実性を考慮しながら、事業価値を評価する 𝐹𝐶𝐹 ( 1 + 𝑊𝐴𝐶𝐶)𝑛 n年後の現在価値 予測期間(今回は5年で設定) 残存期間

    1111 1 継続 価値 ・・・ FCF1 Initial FCF FCF2 FCF3 FCF4 FCF5 成長率 永久成長率: g キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー の 変 化 事 業 価 値 の 算 出 事業 価値 1/(1+wacc)2 1/(1+wacc ) 1/(1+wacc)3 1/(1+wacc)4 1/(1+wacc)5 1 2 3 4 6 5 FCF6 FCFn 正規分布からのサンプリング ベイズモデリングで分布を推定
  7. モンテカルロDCF法の各要素の説明 予測期間 FCFが安定せず、将来予測が必要な期間 永久 成長率 • 予測期間以後も一定の成長率でキャッシュフロー が永続するという考えを基にした成長率 • 経済成長率やインフレ率を考慮して決定する

    (2 – 3 %が多い) 成長率 過去の業績や業界の成長、経済指標を考慮して決 定する 事業価値 企業が将来生み出すFCFの現在価値の合計 残存期間 一定の成長率でFCFが成長する期間 継続価値 予測期間の翌年以降のFCFの現在価値の合計 1 2 4 3 6 5 予測期間最終年の翌年の𝐹𝐶𝐹 𝑊𝐴𝐶𝐶 − 𝑔 (計算式)
  8. フリーキャッシュフローについて 事業のキャッシュ創出力の指標となり、2つの定義がある 債権者 株主 FCF 1 利息、元本 2 FCFから債権者に 元利金を支払い、

    残ったキャッシュフ ローを株主が自由 に使える FCF = 営業利益 – みなし税金 + 減価償却費 – 設備投資額 – 運転資本の増加額 FCF = 営業活動によるキャッシュフロー + 投資活動によるキャッシュフロー キャッシュフロー計算書ベースであり、簡便に求められる ▪ 実績値(日経新聞でも用いられる) ▪ 投資判断や企業価値判断に使われる フリーキャッシュフロー(FCF) 2つの定義 投資活動を詳細に考慮し、事業から得られるキャッ シュフローに焦点を当てている 企業が事業活動を行った後に、資金提供者である株 主と債権者が自由に使えるキャッシュフロー
  9. 資本コストについて WACCとも呼ばれ、債権者と株主にとっての機会コストを表す 有利子 負債 株主 資本 ウェイト コスト WACC (

    加重平均資本コスト ) WACC WACCの計算イメージ 𝑊𝐴𝐶𝐶 = 𝐷 𝐷 + 𝐸 × 1 − 𝑇𝑐 × 負債コスト + 𝐸 𝐷 + 𝐸 × 株主資本コスト D : 負債コスト、E : 株主資本、Tc : 実効税率※ 資金提供者(投資家)の要求に応えるために企業が 資産を活用して生み出すべき最低限の収益率 ※ 実務では法定実効税率がよく用いられる × = 税引後 負債コスト ( 5% ) 株主資本 コスト ( 10% ) × × 40 % 60 % 0.4×5% + 0.6×10% = 8%
  10. 株主資本コストとCAPM理論 株主資本コストの算出にはCAPM※理論がよく使われている E(r i ) r f β i E(r

    m ) - r f = + × • 株主が要求するリターン • 株主によってリスク認識が異なることを考慮して、求める必要がある ▪ CAPMの式 • 投資家が国債投資に要求する収益率 • 10年国債利回りを使うのが一般的 • 株式市場全体の変動に対して、その会社の株式がどれだけ連動するかを表す • ロイターなどが提供している • 株式市場全体の収益率とリスクフリーレートとの差 • 前者は日本であればTOPIX、アメリカであればS&P500を代用する E(r i ) : 株主資本コスト r f : リスクフリーレート β i : β値 マーケット リスクプレミアム E(r m ) – r f : ※ 資本資産評価モデル(Capital Asset Pricing Model)
  11. β値の計算 リターンを用いた回帰分析でも求められる 1. マーケットポートフォリオの特定 2. 回帰分析によるβの算出※ 対象となる株式が属するマーケットを特定する TOPIX? S&P500? 日経225?

    対象株式と市場ポートフォリオのリターンで 回帰分析し、その回帰係数をβとする 市場ポートフォリオの リターン 対象株式の リターン 回帰直線: ※ ベイズモデリングを用いることでβを分布で推定でき、 不確実性を考慮できる 𝑦 = β 𝑥 + α
  12. データの詳細 企業 市場 対象リターン フリーキャッシュフロー 有利子負債 株式時価総額 協和キリン株式会社 日経225 2021年3月〜2024年2月を月次で使用

    以下を参照して計算。 • 営業利益、みなし税金:連結PL計算書を参照 • 減価償却費:連結CF計算書を参照 • 設備投資額:連結CF計算書の有形/無形固定資産の取得と支出の合計とした • 運転資本の増加額:連結BSの前年と差 連結BSのその他の金融負債、その他の非流動負債、その他の流動負債の合計とした 2024年2月末時点の株価およびデータから計算 支払利息 単体PL計算書の金額と持分法で会計されている投資、リース負債に係る支払利息、 金融収益及び金融費用の合計とした 実効税率 実効税率の調整表に記載の法定実効税率とした ※ 2023年12月期有価証券報告書を参照 リスクフリーレート 日本国債10年を使用
  13. 【参考】 • 石野雄一(著). 「知識ゼロ」の人のための超ざっくりわかるファイナンス. 光文社. • 石野雄一(著). 道具としてのファイナンス. 日本実業出版社. •

    大野薫・井川孝之(著). モンテカルロ法入門. 一般社団法人金融財政事情研究会. • 協和キリン株式会社. 2023年12月期有価証券報告書. • https://github.com/aldodec/Capital-Asset-Pricing-Model-CAPM-with- Python/blob/master/CAPM%20with%20Python.ipynb