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AI Ops Community Vol.3 AIの前に、やることがある 〜医療データ企業の4...

AI Ops Community Vol.3 AIの前に、やることがある 〜医療データ企業の4フェーズ〜

医療ビッグデータ企業JMDCにおける、データ活用・AI推進の2年間の軌跡を4つのフェーズで紹介します。

「AIを入れれば解決する」という期待の前に、まずデータ基盤そのものを整える必要がありました。1人からのDWH構築に始まり、メタデータ整備によるデータ民主化、生成AIを使ったSlackbotの全社展開、そしてClaudeMCPを活用したAIエージェントへの適用拡大まで、地道な土台づくりがいかにAI活用を加速させたかをお伝えします。

Phase 01 データ基盤一元化(散在するデータの統合・自動化)
Phase 02 データ民主化・AI対応整備(メタデータ付与・LLMによるSQL自動生成)
Phase 03 全社展開 Slackbot(ゼロセットアップで誰でもAI分析)
Phase 04 AIエージェント適用拡大(Claude MCPによる分析の自律化)

「土台なきAI導入は砂上の楼閣」——データと組織の両面から変革を進めた実践知をシェアします。

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Daisuke Taniwaki

March 05, 2026
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Transcript

  1. © JMDC Inc. 2 谷脇 大輔 (Daisuke Taniwaki) Executive Innovator

    経歴 日米台でのSREやフルスタック開発の経験を武器に、徹底した自動化で複雑なシステムの 運用効率化を牽引。現在はJMDCにてデータエンジニアリングと生成 AI導入をリードし、デー タとAIを起点としたプラットフォームの近代化に注力。 技術領域 @dtaniwaki 自己紹介
  2. © JMDC Inc. 3 株式会社JMDCとは 「健康で豊かな人生をすべての人に」 — データとICTの力で、持続可能なヘルスケアシステムを実現する 医療ビッグデータの リーディングカンパニー

    ヘルスビッグデータ • インダストリー向け(製薬・保険会社等) • 保険者・生活者向け(健保・自治体) • 医療提供者向け(病院・クリニック) 遠隔医療 • 遠隔画像診断サービスの提供 2,000 万人+ 健保・共済データベース規模 420+ 契約保険者数 770万人+ Pep Up ユーザーID数 健康診断結果、日々の歩数、体重な どを管理・分析し、健康維持や改善 を促進するPHRサービス
  3. © JMDC Inc. 5 2年前のJMDCの状況 サービスや事業の成長にデータ利活用が不可欠 — しかし当時はその環境が整っていなかった 1 事業部・システムごとに

    データが分散 各事業部で独自にデータを管理。 横断活用には人力作業が必須で コストと待ち時間が多く発生。 2 活用以前のデータ整備状態 分析するデータが整理されておらず、 AI以前に人間もデータを最大限に扱える 環境が整っていなかった。 3 効果がわかりづらく 予算を取りづらい データ活用の恩恵を実感できない。 AI導入の投資判断が難しい状態。
  4. © JMDC Inc. 6 取り組み① まずは一人から、データ基盤の構築 遊撃隊として1人でスタート。組織変革のシード。 Phase 01 データ基盤 一元化

    データの一元集約 散在していた社内データを統合 徹底的な自動化・仕組み化 BIツール・dbt等を駆使し、データパイプラインを自動化 いつでも使える環境を構築 自由にデータを探索・分析できるセルフサービス基盤を実現
  5. © JMDC Inc. 7 取り組み② 理解者を巻き込み、データの民主化へ 少数の思想理解者との協働。草の根のデータ文化育成 Phase 02 データ民主化 AI対応整備

    布教活動 × データ基盤整備の並走 活用意欲の高い社員を巻き込みなが ら、データ基盤をひたすら整備・拡充 ダッシュボードでデータ利活用が加 速 理解者もデータの民主化に動き始め、 可視化・分析のサイクルが回り出す メタデータの徹底付与 テーブル・カラム説明を網羅的に付与 し、人間が理解できるデータ環境を構築 生成AIで複雑な分析 SQLを自動構 築 メタデータが充実したことで、 LLMが高 品質なSQLを生成できるレベルに到達
  6. © JMDC Inc. 8 取り組み③ 全社展開 — 生成AI Slackbot の誕生 ゼロセットアップで即体感。全社員が使える

    AI分析 Phase 03 全社展開 Slackbot 気軽にデータ分析 ビジネス職も含め、誰でもSlackに話しかけるだけ。セットアップ不要で生成AIによる分析をす ぐ体験できる 1チャンネルで組織の壁を壊す 専用チャンネルを1つに絞ることで、サイロ化していた部署が自然に交流・連携。 部署横断の興味・関心が可視化され、自然発生的なコラボレーションが生まれる 効果実感 → 全社的に予算・推進が加速 誰もが使える=誰もが効果を感じる。本格的なAI投資・導入フェーズへ移行
  7. © JMDC Inc. 10 取り組み④  AIエージェントへの適用拡大 データ活用の次のステージへ Phase 04 AIエージェント

    適用拡大 Slackbot で培ったデータ基盤をそのまま活用 整備済みのDWHメタデータ・ナレッジベースがAIエージェントのコンテキストとして機能する Claude MCP によるデータ分析の自律化 チャットで指示するだけで、Claude自身がSQL生成・実行・解釈まで完結 複雑な分析・レポート生成の自動化へ 定型レポートや多段階の分析処理をエージェントが担い、人間はより高度な意思決定に集中 できる環境を目指す
  8. © JMDC Inc. 11 変化のサマリー:データ組織の進化 2年前から現在まで、4つのフェーズで変革を推進 2年前 データ散在 手作業 ✓

    事業部ごとにデータ孤立 ✓ データ活用以前の問題 ✓ 予算・推進が停滞 2年前 Phase 1 データ基盤 一元化 ✓ DWH構築 ✓ 自動化パイプライン ✓ セルフサービス化 Phase 1 Phase 2 データ民主化 AI対応整備 ✓ 理解者との協働 ✓ ダッシュボード普及 ✓ メタデータ付与 Phase 2 Phase 3 全社展開 Slackbot ✓ チャットで即分析 ✓ 部署横断シナジー ✓ 予算・推進が加速 Phase 3 Phase 4 AIエージェント 適用拡大 ✓ Claude MCP連携 ✓ 分析の自律化 ✓ 高度な意思決定支援 Phase 4
  9. © JMDC Inc. 12 学び:AI推進を前進させた 3つの原則 01 「ツール」より先に「土台」 AIを入れる前に、人間がデータを使いこなせる環境を整えることが最大の近道だった。 土台なきAI導入は砂上の楼閣である。

    02 小さなコミュニティから始める 全社一斉展開ではなく、まず理解者を見つけて深く巻き込む。 その火種が組織全体に広がる。「思想」を共有することが鍵。 03 「使える」ことが最強の説得 プレゼンや報告書より、実際に触れて効果を感じてもらうことが組織を動かす。 Slackbotはその最良の媒体だった。