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データをどう使うか?ーメルカリでの学び, デジタル庁の挑戦

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August 14, 2025
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データをどう使うか?ーメルカリでの学び, デジタル庁の挑戦

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  1. Current 日本政府 デジタル庁(2022- ) - CxO (Chief Analytics Officer )

    「政策ダッシュボード」プロジェクト. Past 株式会社メルカリ(2016-2020 ) - Head of Data Analyst 2018 年上場. サービス成長に関わる、ユーザの分析や事業戦略の策定など. 株式会社ブレインパッド(2014-2016 ) - Data Scientist いわゆるデータサイエンス. Python によるData Engineering. etc. 発表者について
  2. 2016 アプリ機能・UX の改善 LTV (生涯顧客価値)の数値化 2017 ( *promoted to Head

    of team ) CRM の最適化、各種キャンペーンの分析 データダッシュボードの設計・活用浸透 新規事業のKPI 設計 2018 ( * メルカリ上場 ) 既存事業の成長戦略:顧客セグメンテーション、Spending ROI ダッシュボードツールのリニューアルPJ 2019 新規事業の立ち上げのKPI 設計、包括的な分析、エコシステム内のポイント循環の可視化 決済サービスの加盟店開拓戦略、営業指標策定 筆者は4 年間の在籍期間で多様なテーマと分析タスクに従事
  3. データ規模 Monthly Active User 20M+ Unique Buyer で5M+ , #

    of Transaction 18M 利用するデータの例 User Data, Transactional Data (Buy,Sell ), Behavioral Log :4 年分 その他 Incentive (Point,Coupon ), Pre-Purchase (Bookmark, Comment etc. ), Item Data etc. Behavioral Log で数十億レコード 全ユーザの秒ごとのタップ、スクロール、検索等の行動の逐次レコード 分析環境 Google BigQuery :数千万行レベルの処理が数秒〜数十秒 → Fast Analytical Iteration 国内最高水準のデータエンジニア、データアナリストの採用 メルカリはデータの活用を行う上で類稀な恵まれた環境
  4. 1/ 組織に存在する「構造」の理解がデータ分析の成否を握る。 構造とは、 組織の意思決定のサイクル・タイミング, 組織内の力学 分析支援の体制・意思決定権限者との関係性 等 2/ ゼロスタートの場合、成功には特に「エントリーの順番」の巧拙の要素が支配的。 入りやすいポイントからエントリーし、そこでの価値提供を軸に徐々に領域を拡大する

    3/ 世間に溢れがちな偏見に満ちた言説は成功確率とは無関係 データ活用の代表例として挙げられがちな「企画立案・決定のためのデータ分析」は難易度が高い。解像度なく手を出すのは下策 データ人材が拘泥しがちな「精度や分析モデルの高度さ」等は、大局的な成功には寄与しづらい 4/ データの適用領域は一般的に思われているより遥かに多様 「意思決定の材料」という捉えられ方が一般的に思うが、 「課題の発見」 「課題に対する認識の統一」 「共通言語の創出」など、極めて 多様で豊かな広がりがある. しかし、それらの価値は事業運営に深くコミットした経験のある人間以外からは不可視 Key Learnings 以下資料では主に1,2 について解説(※ すみません, 全ては書ききれませんでした)
  5. 分析タスクジャンル データの目的 データで答えるべき問い(一例) 用いられる方法論 Feature Evaluation アプリ機能の改善評価 ・商品一覧のUI は2 列

    or 3 列でどちらが優れているか? ・どのような検索アルゴリズムが購買に好影響か? 機能のA/B テスト(RCT ) User Interface, 新機能, 検索アルゴリズム, etc. CRM Planning / Evaluation 新規顧客の獲得、 および顧客価値の最大化 ・5%/8% offのどちらのほうがビジネスに優位か? ・1000ptプレゼントはLTVベースでPay-Backしうるか? インセンティブ設計(推算) ・評価(RCT ) LTV Impact Estimate Business Planning/ Estimation 事業計画 ・どういった計画モデルが運営上で最適か? ・あるKPI の想定下でYoY 成長率はどうなるか? 事業計画のモデル化とKPI とのAlignment, KPI の感応度の分析・シナリオ分析 KPI Design 重要な事業計数(KPI )の 設計・浸透 ・事業の状況を理解するための最適なKPI の分解は? ・どういった事業数値を誰がいつ見るべきか? KPI モニタリング(ダッシュボード等) KPI 流通チャネルの設計 User Segmentation 最適なユーザ分類方法の 設計と事業適用 ・数百万いるユーザをどう分類するべきか? ・各セグメントごとにどういったCRM が最適か? ユーザセグメンテーション策定、運用 Strategic Insight 戦略・企画の方向性の材料と なる数値根拠の提供 ・利用の継続率 / 出品率を上げるために何が必要か? ・成長のための今後注力すべきカテゴリ/ 顧客区分は? 相関の分析、セグメントごとの数値評価 等 Investigation 一時的なトピックの分析 (多くはネガティブチェック) ・今週の売上が減少している理由はなにか? ・カテゴリAの優先度を下げた場合の売上毀損規模は? 単純な時系列分析、カテゴリ定量化 等 Exploration / Knowledge Base 施策の種となる自由な分析 / 過去の分析のメタ整理 ・迅速に購入が決定されるジャンルの特徴とは? ・売れやすい商品の特徴とは? イシューによって様々 1 5 3 7 2 6 4 8 メルカリでのデータ分析のタスクは8種類に大別 継続的な タスク 瞬間的な タスク
  6. 8 種類の分析タスクは3つの領域に分けられる 企画に事前的に 必要な情報の入力 事業の構造を分析するための軸(共通言語)を与える情報 事後的な情報の確認 アクション (介入) Strategic Insight

    Exploration / KB CRM Planning Feature Evaluation CRM Evaluation Investigation Pre Post Overhead User Segmentation KPI Design / Monitoring Business Planning / Estimation 事後的な分析が次の企画のための 戦略的なインプットになることも 事業計画, KPI, ユーザセグメンテーションの 構造が諸所の分析の前提となる
  7. 8 種類の分析タスクは3つの領域に分けられる 企画に事前的に 必要な情報の入力 事業の構造を分析するための軸(共通言語)を与える情報 事後的な情報の確認 アクション (介入) Strategic Insight

    Exploration / KB CRM Planning Feature Evaluation CRM Evaluation Investigation Pre Post Overhead User Segmentation KPI Design / Monitoring Business Planning / Estimation 事後的な分析が次の企画のための 戦略的なインプットになることも 事業計画, KPI, ユーザセグメンテーションの 構造が諸所の分析の前提となる Post. 事後の関与 関与は比較的容易で分析の難易度も相対的 には低めだが、大局的に見るとデータを用 いることのインパクトが小さい場合も → エントリーポイントとしては最適
  8. 8 種類の分析タスクは3つの領域に分けられる 企画に事前的に 必要な情報の入力 事業の構造を分析するための軸(共通言語)を与える情報 事後的な情報の確認 アクション (介入) Strategic Insight

    Exploration / KB CRM Planning Feature Evaluation CRM Evaluation Investigation Pre Post Overhead User Segmentation KPI Design / Monitoring Business Planning / Estimation 事後的な分析が次の企画のための 戦略的なインプットになることも 事業計画, KPI, ユーザセグメンテーションの 構造が諸所の分析の前提となる Overhead. 共通言語の創発 分析の難易度自体は低いが、概念の浸透に 多大な労力がかかり、そのために現実的な 定義付けにするための難易度は高い → 導入に成功した場合の効果は大きい
  9. 8 種類の分析タスクは3つの領域に分けられる 企画に事前的に 必要な情報の入力 事業の構造を分析するための軸(共通言語)を与える情報 事後的な情報の確認 アクション (介入) Strategic Insight

    Exploration / KB CRM Planning Feature Evaluation CRM Evaluation Investigation Pre Post Overhead User Segmentation KPI Design / Monitoring Business Planning / Estimation 事後的な分析が次の企画のための 戦略的なインプットになることも 事業計画, KPI, ユーザセグメンテーションの 構造が諸所の分析の前提となる Pre. 事前の企画段階への関与 データ分析としては非常に面白いが、 その一方で実務的には極めて難易度が 高いのが事実 成功するための条件が多い データの関与の適時性 意思決定者との関係性が重要 関係者の職位レイヤー ドメイン知識の深い理解 可解性, 施策実施のコスト 経緯把握, その他の前提 → 中途半端にピントのズレた提言を することで距離が離れるリスクも
  10. データ分析がアクションに結びつくには構造的な4 つの壁が存在 以下4 つは事業における普遍的な前提条件として存在しているため、これらを無視してデータ活用の成功を考えることは実質不可能 タイミング(Timing )の壁 戦略や企画の立案の事前のインプットは、そもそも 分析の関与が適切な時期が限定的であることが多い 新しいこと(戦略・企画)の立案を行うためにイン プットに対して開かれているWindow

    は短い 企画に対し、実行の期間のほうが遥かに長い 適時以外の新しいインプットは逆に忌避感 企画の出口(Exit Option )の壁 戦略や企画と言っても、ある程度現実的な「出口」 を見据えている必要性がある 施策の実現可能性・予算・工数感, 社内の経緯、過去からの既定路線 故にかなりのレベルでドメインの理解が必須 上記を著しく逸脱した、ゼロベースで新規の洞察を 伝えられても企画に落とし切るのが難しい 担当者(Counterpart )の壁 担当者の職位によって扱える企画の大きさに制限が あるため、洞察の内容と担当者の権限の範囲が一致 している必要がある(レベルの壁) 分析内容に対する適切な権限者との関与が困難 上位権限者ほど企画サイクルが長い(=Timing ) データを理解するかは属人的(リテラシの壁) 意思決定への貢献の(Contribution )の壁 上位レイヤーの戦略・企画ほど、単純なデータ以外 の数多くの要素を勘案する必要がある 組織の状況、競合、顧客の声、MVV 、規制 等 データ分析によるインプットは、判断のいち材料に すぎず、そのため価値が認識されづらい 「Data Informed 」の思想としては健全 企画 実施 前提理解 データ把握 分析 新しいインプットを 欲しているTiming 分析からの洞察が でてくるTiming MVV データ 組織 定性 情報 規制 市場・ 顧客の声 判断 戦略・企画 ✖ ◦
  11. データ分析を成功させるための方法論 ー 戦略・戦術・作戦 再掲:領域1. 事前の企画段階への入力 | 領域2. 事後的な情報の確認 | 領域3.

    共通言語の創発 エントリーの順番に気を払う Pre の関与は初手としては「悪手」であると考える タイミング・相手・ドメイン知識など、必要に なる条件が多い(4つの壁問題) 意思決定者と話せるか 企画決定の狭いWindow への関与 Post → Overhead →Pre の順番が実践しやすい 無理なく順を追って拡大するための方法論 データ文化のエントリー戦略のひとつのベスト プラクティスと考える Pre にはマクロ・ミクロがある ミクロ:Pre →Post のPDCA のループが速い領域 は相対的には関与が容易 e.g. ポイント額の最適化 マクロ:企画の検討と実施が重い領域 チーム体制と関与方法を整える 一定のフェーズまでは、企画部門ととにかく距離を 詰める必要がある 業務フロー・ドメイン知識・コスト等の包括的 な情報の把握 意思決定サイクル、会議設計 Pool 型ではなくEmbed 型を意識する データ人材の集約よりも、意思決定機能(組織) との距離の近さを重視した人材配置 フェーズによる データ情報への接触チャネル/媒体の設計に注力 ダッシュボード Slack 等のフロー情報 会議への参加、会議で利用する数値 分析しました、で情報を投げても無価値 構造と力学に着目する 事業とデータの交点の源流まで遡及して考える   → データの需要はいつ、どこに生まれるか? 大まかには次の3 つの構造に着眼できる A Principle=Agent Model 説明責任とコミュニケーション データを用いた客観情報の要求 B インセンティブとエビデンスの目的一致 根拠を用いた効率的な改善の希求 C フィードバックの渇望 力学が不明瞭なケースも存在 A B C は誰のアカウンタビリティもしくはイン センティブと結びついているか? Overhead は構造と力学を再生産する機能 故に積極的に投資して良い領域だが、組織浸透 のための技量が求められる 戦略 レベル 戦術 レベル 作戦 レベル
  12. データ分析を成功させるための方法論 ー 戦略・戦術・作戦 エントリーの順番に気を払う Pre の関与は初手としては「悪手」であると考える タイミング・相手・ドメイン知識など、必要に なる条件が多い(4つの壁問題) 意思決定者と話せるか 企画決定の狭いWindow

    への関与 Post → Overhead →Pre の順番が実践しやすい 無理なく順を追って拡大するための方法論 データ文化のエントリー戦略のひとつのベスト プラクティスと考える Pre にはマクロ・ミクロがある ミクロ:Pre →Post のPDCA のループが速い領域 は相対的には関与が容易 e.g. ポイント額の最適化 マクロ:企画の検討と実施が重い領域 チーム体制と関与方法を整える 一定のフェーズまでは、企画部門ととにかく距離を 詰める必要がある 業務フロー・ドメイン知識・コスト等の包括的 な情報の把握 意思決定サイクル、会議設計 Pool 型ではなくEmbed 型を意識する データ人材の集約よりも、意思決定機能(組織) との距離の近さを重視した人材配置 フェーズによる データ情報への接触チャネル/媒体の設計に注力 ダッシュボード Slack 等のフロー情報 会議への参加、会議で利用する数値 分析しました、で情報を投げても無価値 構造と力学に着目する 事業とデータの交点の源流まで遡及して考える   → データの需要はいつ、どこに生まれるか? 大まかには次の3 つの構造に着眼できる A Principle=Agent Model 説明責任とコミュニケーション データを用いた客観情報の要求 B インセンティブとエビデンスの目的一致 根拠を用いた効率的な改善の希求 C フィードバックの渇望 力学が不明瞭なケースも存在 A B C は誰のアカウンタビリティもしくはイン センティブと結びついているか? Overhead は構造と力学を再生産する機能 故に積極的に投資して良い領域だが、組織浸透 のための技量が求められる 戦略 レベル 戦術 レベル 作戦 レベル 1 2 3
  13. 構造1. Principle=Agent Model と 情報非対称性 構造2. インセンティブと「エビデンス活用」の目的一致 経営者 責任者 担当者

    実施者 あるべき姿 取るべき手段 普遍的で強い構造 状況依存的で相対的には弱い構造 データが機能する適切な構造と力学を見出す Principle (委任側)の意図通りにAgent (受託側)が機能しない状況 理由として「情報非対称性」が課題のひとつ Agent の行動やパフォーマンスが見えづらい Principle の意図が正確に伝わらない(* 元来の本旨には含まれない) 「エビデンスを活用する」ことが、施策を行う担当者の目的と適合 している状況 より大きな成果を出すことや、施策を効率化することが、担当者の成果と インセンティブとして(整合)している 担当者の熱意が「物事の正当な改善」に向かっている(内発的動機) データを用いたコミュニケーションで情報 非対称性を減らすアプローチが有効となる Principle=Agent モデルの下では普遍の構造 Principle が真剣に仕事をすることが条件 Top to Down 方向への数値を使った指示 KPI ベースでの権限の移譲 数値によるストーリーテリング Down to Top 方向への数値の取集 KPI によるモニタリング エビデンスを担保した企画の説明 企画の効果の客観的な振り返り Principle Principle Agent Agent 取るべき手段としての最適解への意思決定をデータ で補助 実施者がデータへの期待値を持つことが条件 ゆえにデータリテラシが求められる 手段に選択肢が十分存在することが必要 担当者があるべき姿の希求を真剣に行う動機 付け(インセンティブ)の存在が必要 あるべき姿は定量的に示される方が好ましい (→ 明確な目的関数への最適化の表現が可能) 戦略 レベル
  14. 企画に事前的に必要な情報の入力 事業の構造を分析するための軸を与える情報 事後的な情報の確認 → 「領域」と「組織の構造と力学」は紐づいている データ分析=Pre という狭義の視野しか持たない担当者が数多くいることがデータ活用の不発を招くのではないか(難易度が高い) Principle=Agent の間の情報非対称性 を減らすことで、組織運営の円滑化に

    資することが多い(前頁の“ 構造1” ) 例) 予算のパフォーマンスの評価 施策の効果の監視 → 組織に普遍的な強い構造・力学 (エントリーの難易度:低) より効果的な企画を立案することに興味 関心を持っている担当者に正しい情報を 提供し、事業の成功率を上げる 例) 注力領域の取捨選別、優先度付 新しい機能や企画の立案 → 状況依存的で構造としては脆弱 (エントリーの難易度:高) 事業の精緻な分解能の提供により、 領域1,2 の分析精度向上、及び議論のため の共通言語を形成 例) 顧客セグメント別の指標監視 KPI を軸にした施策の議論 → 能動的働きかけが必須だが需要は常在 (エントリーの難易度:中) Pre Post Overhead Post →Pre →Overhead の手順でのエントリーがひとつの有力な戦術 戦略 レベル 戦術 レベル User Segmentation KPI Design / Monitoring Business Planning / Estimation Strategic Insight Exploration / KB CRM Planning Feature Evaluation CRM Evaluation Investigation (エントリーの難易度:低) (エントリーの難易度:高) (エントリーの難易度:中) この難易度の高さの背景には 前述の4 の壁の問題が存在
  15.  エントリーしやすい領域から入り拡大していくことが肝要 領域2. 事後的な情報の確認 → 領域3. 共通言語の創発 → 領域1. 事前の企画段階への入力 |

    戦術 レベル 企画 企画 企画 実施 実施 実施 Step1 第N+1 サイクル 第N+2 サイクル Post 事後的な情報の確認 実施施策の分析、検証 起きている事象の分析、把握 Overhead 事業の構造の軸を与える情報 KPI 、セグメント、事業計画 可能であれば目標設定等も Pre 企画に事前的に必要な情報 分析による客観的な企画立案を補助  事業での保有データの内容についての理解  事業の前提情報(関係者・意思決定、施策の工数、xxx )等の把握  事業の数的な構造化  数的な共通言語の発明・浸透(計画や目標等ふくむ) これらの要素が揃うことで Pre の領域に適切にエントリーが可能になる 第N サイクル Step2 Step3
  16. Pool Model Embed Model 部門A 部門A データ分析チーム データ分析チーム 部門C 部門C

    部門B 部門B 部門D 部門D 管理部門 ・責任者 経営 1 2 3   データ分析の関与範囲を増やすためにはEmbed モデルが有効 Principle Layer Agent Layer データ分析の人材がチーム内にプールとして 貯蓄されており、必要に応じて部門のニーズを 受けて分析を提供 必要ベースで都度関与 データ分析人材は、施策を行う部門に埋め込まれる(Embed )形で、部門と密に行動を共にする (器としては分析チームは存在するが、各メンバーは各部門との時間接触と会話を優先的に行う) 各部門に埋め込まれる(Embed )形で配置 ドメイン知識、必要な分析のサーチ 会議等の意思決定のフロー、タイミング 垂直の情報ブローカー Principle とAgent の 両方の立場を扱う 必要な情報の非対 称性の打破 Agent サイドの実態 をPrincIple 向けのイ ンプットに活用 高いPrinciple のレイヤ に入り込むのがMGR * 可能なら経営レイヤも関与 水平の情報ブローカー 作戦 レベル 分析チーム(マネージャクラス) 分析チームメンバー
  17. 情報のチャネルと会議体 Daily Weekly Monthly Quarterly 日々のモニタリングと 施策オペレーション 週次のチェックインと 意思決定 実施中の施策の振り返り

    施策の強化/ 廃棄、追加投資等 の検討、意思決定 次月の作戦立案、注力領域選定 経営への状況報告、追加予算等 の方策検討(場合によって) 施策チーム定例:火曜 事業部長定例:水曜 最終意思決定 決まった場はなし Slack へのKPI のポストなどから 起点で会話が始まるケース Daily レベルので判断、は基本 なし 下記の週次定例を月次で拡大し て開催(1.5h ) 売上進捗管理シート(自動) 各種KPI ダッシュボード(自動) 施策結果一覧(手動更新) SlackPost RealTime ダッシュボード 分単位での日次GMV 予測 月次KPI ダッシュボード(自動) 施策結果一覧(手動更新) 向こう2Q の事業計画 計画の修正(Revise ) 分析チーム × 事業部長で都度 最終承認は経営会議 事業計画モデル 前Q の施策のROI 等の詳細を分 析、レビュー 月ごとの目標達成と 振り返り 予算計画、 大きな作戦の立案 Principle : 事業部長 Agent : 施策チーム Principle : 経営陣 Agent : 事業部長 Data (判断材料) Channel (判断の場) Action (決定と実施) 作戦 レベル
  18. デジタル庁での活動への影響 ここまでで述べた民間企業時代の経験からの洞察が、政策ダッシュボードの構想の設計に大きく関わっている。 1 つめに、政策の「決定段階」への関与という選択肢を、初期のエントリーとしては意図的に排除している。 これはより詳細には後述する「4 つの壁」という構造的課題が関わっている。 政策のモニタリングという“ 後工程” からの着手は, この点を踏まえた意図的な選択である。

    2 つめに、 「データの量と質」 「分析の面白さ・先進性」など、データの界隈でありがちな論点は劣後させ、 政府や行政の環境の構造, 政策過程のプロセス, 政策関係者の理解 などに優先的に着眼をしている。 最後に、データの持つ幅広いファンクションの可能性へのBet を志向している。 それは、 狭い範囲では認識されている課題の広い範囲への周知の徹底 数値を用いた共通言語の創出, 情報の非対称性の打破 など、一般的な認識にある「データ(情報) → 決定」という短絡的な回路とは敢えて距離をおいた、 地味ながら実践的に重要であると思われる領域へのコミットメントである。
  19. 3 年弱で順調にプロジェクトは拡大、政府内に浸透しはじめている プロジェクトとしては3 年弱程度の活動で一定以上の成功を収めていると評価できる Year 事例数 Main Achievements in the

    Year Focus 2022 1 樫田入庁(4 月) ひとつめの政策ダッシュボード(マイナンバーカードの普及等)を公表 取組内容(ポジショニング)の模索 事例の創出 2023 5 デジタル庁内の専門部隊の発足(Fact & Data Unit ) デジタル庁の発足2周年に合わせて3つのダッシュボードを同時公開 ケーパビリティの確立 2024 10 他省庁との共同での取組事例の創出 総務省(自治体のDX 等) 、厚生労働省(介護・医療) 、文部科学省(学校のDX 等) 行政文書への取組記載 デジタル社会実現に向けた重点計画への記載, デジタル行財政改革会議とりまとめ 政府内への拡大 正当性(Legitimacy )の確保 2025 15 以上 ユースケースの拡大 ユースケースの拡張の模索 水平展開の戦略(TBD ) *1) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/committee/20250403/agenda.html *2) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi10/kaigi10_siryou11.pdf *3) https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/prefecture_local_government_system_joint_prefecture *4) https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/torimatome/govdashboard *5) https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001884695.pdf 政策ダッシュボードPJ の進捗(現状) A start now
  20. 政策ダッシュボードPJ の進捗(現状) A 1. 学校の校務のデジタル化の進捗 2. TBD 1. 自治体のDX 2.

    自治体のフロントヤード改革 3. 自治体システムの標準化の進捗 4. システムの共同調達 1. マイナンバーカード等の普及 2. マイナンバーカードの利活用 3. 自治体の主要手続きデジタル化 4. デジタル化に向けた規制見直し 1. ジャパンダッシュボード (経済・財政・暮らし等) 1. 保育の提供体制 and more... 1. 水道の経営指標 1. 介護の生産性向上 2. 電子処方箋の普及 3. リフィル処方の認知と普及 3 年弱で順調にプロジェクトは拡大、複数の省庁で活用実績 2022 年にスタートし、2025 年6 月時点で多様な政策分野で15 以上のダッシュボードを公表 * ダッシュボードおよび政策の表記は、資料上では記載の都合上簡略化したもの。 ** 正式な名称においては、 下記を参照のこと https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard (デジタル庁) https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/chiho/jichitaijoho_system/dashboard.html (総務省)
  21. 直近1-2 年で所々の重要な政府文書においても政策ダッシュボードに言及 主たる期待としては「政策の状況可視化とモニタリングによって、政策の状況の共有と改善を促す」という趣旨 政策ダッシュボードPJ の進捗(現状) デジタル社会の実現に向けた重点計画 (2024 年6 月閣議決定)*1 4

    重点課題への対応の方向性 > (3)デジタルを活用した 課題解決により、結果として「デジタル化」が「当たり前」 となる取組の強化 “ 政策データの可視化 (政策ダッシュ ボード等)の取組を強化し、
 目指す 社会に向けた進捗をモニタリングし、 政府の取組の際に参照するととも に、
 公表し、継続的改善を実施する。 ” 内閣官房デジタル行財政改革会議 とりまとめ(2024 年6 月会議決定)*2
 4 EBPM ・予算 ID ・基金等 > EBPM 「見える化」の取組の 進展 “ 政策の効果や実施状況の「見える化」 の取り組み ... (中略)...
 進捗状況に 関するデータ等を効果的・効率的に可 視化・共有することに資する
 「政策 に関する進捗等の情報を可視化し、一 元的に表示・閲覧できるツール
 (政 策ダッシュボード) 」を活用した進捗 モニタリングを行うこととしている。 ” デジタルニッポン2025 (自民党 デジタル社会推進本部)*3 2.8 (2 )デジタル庁の体制強化 > ③DX の目標設定と継 続的な評価・見直し 各分野のDX を適時適切に見直すサイクルを 確立するため適切な目標及びその達成状況 を測定するための指標を設定し、各分野に おける取組の進捗状況を見える化した上 で、活動(Activities) に対して、立案時に意 図 した結果(Output) が実現しているか等の 進捗を継続的にモニタリング・改善を行う ことが重要である。 デジタル庁は、政策に関わるデータを 「政策ダッシュボード」として公開する取 組を行っているが、この取組が効果を十二 分に発揮するためには..... (略) 骨太の方針2025 (2025 年6 月 閣議決定)*4 2.8 (2 )デジタル庁の体制強化 > ③DX の目標設定と継 続的な評価・見直し データに基づく政策立案を推進するため、 我が国の経済・財政と暮らしを見える化 する「ジャパンダッシュボード」を整備す る。 *1) https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program (デジタル庁, デジタル社会推進会議) *2) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/pdf/torimatome_honbun.pdf (内閣官房デジタル行財政改革会議) *3) https://www.jimin.jp/news/policy/210615.html (自民党デジタル社会推進本部) *4) https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/decision0613.html (内閣府, 経済財政諮問会議) A
  22. 内閣官房デジタル行財政改革会議の政府アジェンダでダッシュボードを有効活用 デジタル行財政改革会議の取りまとめ(2025 )*1 では文書中で8 つの政策分野での「ダッシュボード」活用について、合計21 回も言及されている 政策ダッシュボードPJ の進捗(現状) A 文部科学省関連

    1) 教職員と児童生徒・保護者間の連絡のデジタル化などの項目につい て、全国の取組状況を可視化し、一元的に表示・閲覧できる政策ダッ シュボードを2024 年3月に公開したところであり、進捗状況を随時 更新していく。 2) 学校の働き方改革のための進捗状況について、政策ダッシュボー ドを活用した可視化に取り組む 国土交通省関連 水道事業における経営改善の効果を定量的かつ容易に計測するための 環境を整備するため、経営状況等に係る指標を地方自治体間で比較可 能な形で提供する政策ダッシュボードを策定し、2025 年6月中に公 表する。その後、政策ダッシュボードが、水道事業の経営改善に向け た取組への住民理解の醸成に向けた効果的なツールとして... (略) 内閣府関連 内閣府及びデジタル庁が協力し、経済・財政と暮らしに関する各種デ ータの「見える化」を推進する『 「見える化」データベース』を発展 させる形で、2025 年夏に「ジャパンダッシュボード」を公開 総務省関連 地方公共団体における調達業務の効率化等に向け、現在、都道府県 が共同調達を行っているシステムについて、その取組状況やノウハウ を可視化・共有する「共同調達ダッシュボード」が公開 厚生労働省関連 1) ダッシュボードを活用し、導入が低調にとどまる都道府県につい ては... (中略)... 積極的な働きかけを行うといった取組を行い、電子 処方箋の面的な普及を促進 2) 介護現場の生産性向上に係る KPI (重要業績評価指標)16 の進捗 状況を「見える化」し... (中略).... 「介護現場の生産性向上に関す るダッシュボード」を公開 3) リフィル処方箋の認知率や利用状況に関するダッシュボードを公表 *1 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi11/kaigi11_siryou9.pdf (2025, デジタル行財政改革会議事務局)
  23. 行政の構造は典型的なPrinciple−Agent モデル 政府とエージェンシー理論の適合性 エージェンシー理論 情報非対称性等の要因で、Agent はPrinciple の意図通りに動 かない。また、Principle が適切な判断を下せない 政策の執行段階はこの理論がよく当てはまる。

    政策自体はよく練られているが、意図通りに実行されてい ないケースが多い(近年のDX 分野などは特に顕著) 省庁ごとで具体のアクター(Agent )は違えど、構造は全 く同じで普遍性がある このユースケースにはダッシュボードにアドバンテージ ダッシュボードが情報の非対称性を打ち破る役割 課題の箇所の明確化、実行状況の失敗を認めアクションの 必要性を喚起 → ミクロなPolicy Making へ 住民・従業員 自治体・公営企業・ 医療機関・事業者・ 教育委員会・保育園.. 各省庁 政府 多くの省庁=LAYER2 は、 LAYER3 の団体にエンドへの サービスの提供を委託 つまりPrinciple−Agent 関係 多くの情報非対称性が存在 縦の非対称性 進捗把握の不足 横の非対称性 e.g. 自治体同士 LAYER1 Principle Agent LAYER3 LAYER4 LAYER2 Positioning (着眼点) B 政府内に存在するエージェンシー理論の課題にアプローチ 政府は典型的な「Principle-Agent 」構造であり、Principle/Agent 間の目線を適切にアライン(整合)させることが政策効果上、肝要
  24. Positioning (着眼点) B 政策のロジックモデル的観点でデータの見える化を行う 政策の効果発現のチェーン(ロジックモデル)を適切に機能させる上で、データによる各ノードの状況の可視化が重要 活動 Activities TYPE1 :政策の進捗のモニタリング →

    「ダッシュボード」 TYPE3 :費用対効果の分析 成果 Outcome 結果 Output 影響 Impact TYPE2 :因果関係の把握・立証 ? ? ? ? ? 政策の実現・効果発現には、まずそのための環境の整備に時間がかかる。また、実際の進捗はセグメント(地域や主体の種類など)によってかなりグラデーションがある。 そのため、ロジックモデルを明らかにした上で、各ノードの「状況」を都度見える化しておくことが(政治的・実務的に)重要。 関係者への説明責任 インスタントな効果の要求 への防波堤 また、近年のデジタル政策等は「ネットワーク外部性」を意識する必要がある(e.g. 電話の普及。Metcalfe’s Law - 利用者が2 倍になれば効果は4 倍) 上記図は第2 回 デジタル行財政改革会議での提出資料 * より、筆者編集 | * https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi2/kaigi2_siryou1.pdf ) (2023, デジタル行財政改革会議事務局提出) 補足:本資料およびにてデジタル行財政改革会議はTYPE1 の徹底を提唱 ※ セグメント等によって進捗はバラバラ
  25. Positioning (着眼点) B 政策ダッシュボードはTYPE1 の着実な進展を指向 政策の効果発現のチェーン(ロジックモデル)を適切に機能させる上で、データによる各ノードの状況の可視化が重要 デジタル行財政改革 とりまとめ2025 *1 Ⅳ.データ利活用・EBPM

    デジタル行財政改革では、EBPM について、その第1段階として「見える化」 、第 2段階として「因果推論」 、 第3段階として「費用対効果分析」の順番で進めると 同時に、EBPM を支える行政保有データを中心に、関係 行政機関が負担なく取得で きるような基盤整備の構築を目指してきた。こうした考えの下、デジタル庁の協力 を得ながら、教育・介護等の主要 DX プロジェクトの進捗状況を「政策ダッシュボ ード」による可視化など着 実に取組を進めてきた。 *1 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi11/kaigi11_siryou9.pdf (2025, デジタル行財政改革会議事務局)
  26. Positioning (着眼点) B ロジックモデルとダッシュボードを組み合わせた公表例も存在 介護生産性の向上に関するダッシュボード*1 の例では厚生労働省協力作成*2 のロジックモデルとダッシュボードを対応付けて掲載 ロジックモデルの前提をHP 上で明記 ロジックモデル上の数値をダッシュボード上に表現、都度更新

    *1 https://www.digital.go.jp/resources/govdashboard/nursing-care-productivity (デジタル庁) *2 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi3/kaigi3_siryou4.pdf 対応 全体31.6% という進捗度も 地域やサービス種別で見ること で解像度が高まる
  27. Positioning (着眼点) B ロジックモデルに限定せず、 「政策の数値の構造」を伝える 政策とデータの関係性説明の観点から、ロジックモデルでなくとも各種数値の「構造的な位置づけ」を伝える努力が重要と思料 例1 ) 保育の提供体制のダッシュボードにおける数値関係の図解 *1

    例2 ) 水道の経営指標における数値の構造の図解 *2 *1 https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/torimatome/govdashboard (2025, こども家庭庁)| デジタル庁と共同で公開 *2 https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sewerage/content/001893222.pdf (2025, 国土交通省 水道DX 検討会)| デジタル庁にて図の原案
  28. 政策の過程 *1 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi11/kaigi11_siryou3.pdf (2025, デジタル行財政改革会議 国土交通大臣提出資料) Positioning (着眼点) B 伝統的のEBPM

    の主なスコープ 政策ダッシュボード の主なスコープ 1 2 3 Evaluation 政策評価 Policy Implementation 政策実施 Policy Making 政策決定 Agenda Setting 課題設定 今時点で最もTypical なユースケース 複数の省庁に同じモデルで展開 総務省ー自治体 厚労省ー医療機関 文科省ー教育委員会 課題の発見や、問題喚起に資するような ダッシュボード Japan Dashboard (予定) 水道経営のダッシュボード(予定)*1 等 更新されるロジックモデル型の ダッシュボード(Living Logic Model ) 介護の生産性のロジックモデル 事業レビュー等 狭義のEBPM ? 政策の実施フェーズでの活用価値を確立 実施フェーズのPrinciple/Agent 問題の解決を主なValue Proposition としつつ、別領域への展開を模索
  29. Positioning (着眼点) B ダッシュボードという活動領域は多分に意図的・戦略的な選択 現在の行政のホワイトスペースを狙いつつ、下記1-4 の仮説(1-3 はProven )を前提に戦略的にダッシュボードという手段を選択 1/ 行政に広く受け入れられる要素がある

    ダッシュボードによる可視化という手法論は、普遍性・汎用性が あり、広範な政策で同様に展開が可能となりやすい 政府の既存の課題意識と整合(“ 見える化の徹底” 等) 2/ エントリーしやすい 何を提供するかが明確、アウトプットが見えやすい。 (比較論として)政策の細かなドメイン知識がなくとも成立。 データさえ入手できれば原課の負担は軽い ↔「EBPM を行う、政策の因果を分析をする」 (比較対象として) 成果物が想像しづらい 政策の詳細なドメイン知識が必要 3/ デジタル庁の民間専門人材の個性を活かしやすい 民間のデザイン水準を持ち込むことでアービトラージが大きく発揮 しやすい分野。行政の公開情報は分かりづらい、利用者起点ではな いという実存的な課題にアドレス *1 エンジニアリングによるデータ処理の自動化等も同様 デジタル庁の人材による内製の開発によって、低コスト・高スピー ドの実現(特に調達が不要など) 、内部人材の専門性に発揮による 高いクオリティ、細かいPDCA など。QCD を10x 4/ 展開のポテンシャル(※ 検証中の仮説) 手段としてローコードで模倣は容易、他プレーヤーが追従しやすい (範囲の広がり) ダッシュボードはメディアにもツールにもなる * 1 政策ダッシュボードチームでは、デザインを最上位においたダッシュボード開発を志向 (参考)https://speakerdeck.com/hik0107/data-design-and-government
  30. Positioning (着眼点) B 模倣・横展開に関する可能性 * 図:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/ebpm/dai5/siryou4-2.pdf (2025, EBPM 推進委員会 第6

    回)より引用 デジタル庁の内部人材が要件の整理や実際の制 作を行うことで、従来のデータの取組と異なる ベネフィットを多く提供できていると考える。 調達が不要となるため、従来の行政の時間軸と 比して、極めて迅速に成果物を出すことが可能 (3 ヶ月〜等) 。契約なども必要なく、データの やり取り等もスムーズなことが多い。 行政内部の組織であることから、政策の実情の 把握なども外部よりは柔軟に勘案しやすい。 霞が関の変革を目的する組織であるため、常に クオリティに妥協せず、成果物の品質を担保、 また、常に実験的・革新的な取組を志向。 従来の霞が関の方法論(行政官× 外部事業者) では構造的に難しかったポイントにアプローチ
  31. Positioning (着眼点) B 成功のためどこに着眼したのか Answer :ダッシュボードという方法論を始め、戦略的に意図を持ったポジショニングを志向 政策実務 × データの価値 ×

    将来の広がり × 実現性 の交点を踏まえた、実存的なValue Proposition を戦略的に設定 ダッシュボードという方法論を軸に「Policy Implementation × 見える化」という特定のユースケースからエントリー しつつ、適用範囲を徐々に拡大 民間人材の専門性を活かし、従来の行政の水準に比して、大幅に魅力的と思えるQCD を提供 --------- データ活用を組織で成功させるためには戦略的なポジショニングの検討が必須。個々の分析者の興味範囲や、経営陣 の思いつきでデータの適用範囲が決定される、などはよくある。が、この戦略性の欠如がデータ活用の成功から最も 遠ざかる行為であると言わざるを得ない。
  32. 革新的な プロジェクトの事例 上部構造との接続 ・行政組織との連携強化 正当性の獲得 ケイパビリティの 確立(チーム) 多数の事例創出 力学 実績

    経験 連携 試行錯誤と成長 行政プロセス (文書等) リソースの 正当化 1 0 2 3 5 4 Cold Start 問題の 最初のトルクは 必要 加速ループ 取組の拡大のためのコアループ How to Play (どのように仕掛けるか) C 政策ダッシュボードを成功させるための循環サイクル(Flywheel ) プロジェクトの基本的な拡大のループは下記の通りで、概ね成功* していると思料。NEXT フェーズとして、次頁にみる拡張ループを志向する必要。 政策ダッシュボードのプロジェクトがこれまで企図してきた 循環サイクルは左図の通りで、概ねここまで成功している。 具体的な事例を作り出すことを起点(①/ ②)とし、PJ チームの ケーパビリティを確立・拡張(③)し、それによって より革新的な事例の創出 上部構造との接続(④) を可能にする。 ここでの「上部構造」とは、行政において、広範囲影響力を持つ組織や権限主体を 指している。具体的には、庁内の幹部や(総理直下である)内閣官房組織、行政内 で影響力の強い会議体などが該当する。 上部構造との接続によって、他省庁との連携など、新しい事例を 創出するための力学を生み出すことができる。 (④→①) また、上部構造との信頼関係は行政における正当性の獲得の契機 となる。具体的には行政文書への取組の記載などの機会である。 * 補足: 「概ね成功」 に付いて ー PJ 開始からの変化に基づく現状認識である。 ②事例 0 →20 件(予定含む), 7 府省庁 | ③チーム 1 名→約15 名 | ④内閣官房デジタル行財政改革会議・内閣府経済財政諮問会議 等との連携|⑤前述の通り 閣議決定文書2 件を含む、多数の文書に取り組みの推進方針が記載
  33. 革新的な プロジェクトの事例 上部構造との接続 ・行政組織との連携強化 正当性の獲得 ケイパビリティの 確立(チーム) 水平展開の ケーパビリティ樹立 データ活用の

    力学形成 データ活用の 自発的発生 データ文化の 形成 多数の事例創出 機能する構造と モデルの型化 力学 実績 経験 連携 試行錯誤と成長 モデル化 拡張 各省庁・行政全体でのデータ活用の推奨 行政プロセス (文書等) リソースの 正当化 ルール等 1 0 2 3 5 7 6 4 8 Cold Start 問題の 最初のトルクは 必要 加速ループ :成功したプロセス (2 周目以降に着手) :未解決のプロセス 取組の拡大のためのコアループ 9 How to Play (どのように仕掛けるか) C 政策ダッシュボードを成功させるための循環サイクル(Flywheel ) ①- ④のコアループ+⑤ を引き続き継続しつつ、⑥- ⑨の拡張ループを展開し霞が関に新たなデータ活用文化をSetting できるか。 (→模索中)
  34. 革新的な事例 の創出 <1 つ目の事例の苦悩ーCold Start 問題> コアループを回すために初手として、革新的な事例 を扱う必要がある。 「マイナンバーカードのダッシュボード」を最初の エントリーにしたが、知見がない中で、大苦戦

    ここをやりきるのがまず難しい <核となりうる事例への着眼・活用> ダッシュボードのニーズを探る中で、それが普遍的 な問題なのか、特有の問題なのかに常に留意 Principle−Agent モデルの発見 <現在地:地平を広げ続ける> ダッシュボードを下記のユースケースに応用 ロジックモデルとの融合(介護, 2024 ) 団体の情報ディレクトリ(水道, 2025 ) 事例集(自治体のシステム共同調達, 2025 ) 利用シーンの地平を常に広げる試みが必須(苦難) 事例の複線化 <事例の複線化とリソース問題> 同時複数の事例を創出する際のリソース・マネジメ ントが課題。案件発生も人材採用も時期のコントロ ールの不確実性が高いため、Chicken-Egg 問題 他の要素と密結合 ❸のケイパビリティの確立 ❶の新規事例の創出 ( ❹上部構造との接続とも無関係ではない) <横展開性のあるモデルの活用> Principle−Agent モデル 現在のダッシュボードの多くがこの形式の応用 <現在地:多くの事例創出に成功> 総務省(デジタル関係) 文部科学省(校務のDX 等) 厚生労働省(電子処方箋、介護等) こども家庭庁、その他 多数 ケイパビリティの確立(チーム) 新しい事例への挑戦や、類似の事例を反復すること でチームが成長 行政的知見, 技術的知見 従来の行政(外部事業者含む)の資源との差別化 技術力、アジャイルな行動、最速のPoC 破壊的な変革を志向しつつ、融和的/現実的 <現在地:チームの成長> R4 :1 名 → R6 :9 名 → R7 :15 名程度 トップ人材の採用、拡大のコントロールは常に課題 Project Manager 行政官 補佐級 Data Engineer BI Engineer 行政官 課長級 Designer CxO 1 0 2 3 データ整備・ 自動化 ダッシュボード 実装 情報設計 案件推進 戦略策定 行政プロセス How to Play (どのように仕掛けるか) C Flywheel の要素に関する補足(①- ③)
  35. 正当性の獲得・行政組織との連携強化 <行政の行動原理の理解とコントロール> 行政では常に行動の「根拠」が求められる 価値ある取組→実施する という回路はなく、多数 のステークホルダーに対する説明可能性が必要条件 になる(当初これを理解しておらず、苦心) 一方で強い根拠を持たせすぎると歪みをきたす、と いう繊細な構造を持っている(より高次元の悩み) 部分最適を全体へ強制的に横展開、など

    → ❾の設計の難しさ <現在地:適切な文書での宣言> 行政文書にて政策ダッシュボードの推進を明記 デジタル社会実現に向けた重点計画(閣議決定) デジタル行財政改革会議(総理議長会議) → リソースの正当化等・取組の説明力に有用であり ❸ケイパビリティの確立 に欠かせない 機能する構造とモデルの型化 <Principle-Agent モデル> 再三だが、Principle-Agent モデル、特に自治体ごと の政策進捗の差異の可視化等は汎用性が高く複数の 省庁で採用の実績がある よりモデル化・型化が望まれる 数は少ないが、他組織庁が独自にデジタル庁の政策 ダッシュボードを模倣し展開した事例(❽に該当) 水平展開のケーパビリティ樹立 <ダッシュボードの設計の汎用化> ダッシュボードのデザインのガイドブック を公表 汎用的なツール・部品を作っていく必要 <外部のケーパビリティの接続・育成?> 事業者との連携の可能性を模索 行政内部人材の啓蒙/育成/ネットワーキング 上部構造との接続 <データ活用のジレンマ> データのような中長期的営みは、個別の事業部では 優先度が低い(民間企業でも普遍のテーゼ) 経営陣や事業戦略室など上部構造のアジェンダとし なければ大きく進まないのが実態 ただし、上部構造は強い成果とランダムな要望を求 める傾向があるため、確たるケイパビリティが必須 <スタート地点> 最初の事例ではデジタル監のイニシアチブを活用 最終的にはデジタル大臣の力学も <現在地:政府の上部構造へのアドレス> 内閣官房はその一例。デジタル行財政改革会議が、 2022 年に組成された際に偶然関与 総理直轄の会議体として、DX 系を中心に有力な 政策へのアプローチが可能に(介護、教育等) 直近では内閣府との連携を強化 5 6 7 4 How to Play (どのように仕掛けるか) C Flywheel の要素に関する補足(④- ⑦)
  36. 電子処方箋の普及政策におけるダッシュボード活用の洞察 デジタル庁ダッシュボードの活用と今後の示唆 デジタル庁ダッシュボードを活用して、各都道府県に対して、地域 ごとに、周囲の都道府県の医療機関・薬局の導入状況を示しつつ、 導入要請を実施するとともに、令和5年度補正予算・令和6年度補 正予算で措置した都道府県による医療機関・薬局向け補助金の措置 を要請。また、全国平均より導入率が低い都道府県薬剤師会に対し て、当該都道府県の導入状況や他の都道府県の事例などを説明し、 導入を要請。 ダッシュボードについては、自身の都道府県の状況を見える化によ

    り客観視できると評価され、その結果、都道府県内における薬剤師 会等による導入要請や、都道府県内における医療機関・薬局向けの 導入補助金の事業化の後押しへと繋がった。 ー第3 回政策改善対話(電子処方箋)より, 2025 *1 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaizentaiwa3/kaizentaiwa3.html (2025, デジタル行財政改革会議 政策改善対話・第3 回) ダッシュボードを活用した取組の充実等 2024 年7月には、 「電子処方箋の導入状況に関するダッシュボード」を 作成し、 都道府県別・病院、医科診療所、歯科診療所、薬局別の導入状 況を「見える化」し、月次で進捗状況を把握することを可能とした。こ のダッシュボードを活用し、導入が低調にとどまる都道府県について は、都道府県と連携して、関係団体 や中核的な医療機関等に積極的な働 きかけを行うといった取組を進め、電子処方箋の面的な普及を促進して いる。 こうした取組に関し、2025 年6月の「政策改善対話」での議論 も踏まえ、更なる取組として、市町村単位での導入状況の「見える化」 や電子処方箋の導入の 阻害要因を踏まえた進捗状況の把握の検討など、 その取組の充実を図る。 ーデジタル行財政改革会議取りまとめより(2025 )*2 Works? (政策ダッシュボードは「機能する」のか) D
  37. ダッシュボードの新たな地平 これまでの、Principle/Agent 問題へのアプローチとは異なるタイプのダッシュボードを複数リリース 水道事業の経営指標のダッシュボード, 2025 年6 月 水道事業における経営改善の効果を定量的かつ容易に計測する ための環境を整備するため、経営状況等に係る指標(収益・費 用、資産・負債、老朽化、

    耐震化等)を地方自治体間で比較可 能な形で提供する政策ダッシュボードを策定し、2025 年6月中 に公表する。 その後、政策ダッシュボードが、水道事業の経営改善に向けた 取組への住民理解の醸成に向けた効果的なツールとして小規模 自治体も含めた全国の地方自治体で活用されるよう、効果的な 活用方法を 2026 年度に提示する。 ジャパンダッシュボード, 2025 年7 月 2025 年夏に「ジャパンダッシュボード」を公開する。これは、我が国 の主要な政策に関するデータ(経年推移を含む。 )を、各省庁に加え、 地方公共団体や民間企業等が 容易に分析利用できる状態で格納・公開 するものであり、今後、EBPM の共通データ基盤となることを見据えて 更にデータ等の拡充を順次進めることとする (デジタル行財政改革会議事務局, 2025 *1 ) データに基づく政策立案を推進するため、我が国の経済・財政と暮らし を見える化する「ジャパンダッシュボード」を整備する。 (経済財政諮問会議,2025 *2 ) 今後の展望と課題 *1 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digital_gyozaikaikaku/kaigi11/kaigi11_siryou9.pdf (2025, デジタル行財政改革会議事務局) *2 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/decision0613.html (内閣府, 経済財政諮問会議)