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PolicyGarage_生成AIでどう広がるか.pdf

Avatar for Hirokazu Suzuki Hirokazu Suzuki
April 11, 2026
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 PolicyGarage_生成AIでどう広がるか.pdf

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Hirokazu Suzuki

April 11, 2026

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  1. 自己紹介 Copyright 2026 PolicyGarage 1 ▪ 鈴木宏和 ▪ 現職 ・株式会社グラファー

    Govtechストラテジスト ・総務省行政管理局 技術総括アドバイザー ・NPO法人PolicyGarage データサイエンティスト ▪ 経歴 大学卒業後、財務省に入省。財務省、金融庁、内閣官房等に約15 年在籍し、財政・金融・地方創生・行財政改革分野の政策立案、 調査分析に従事。内閣官房では行政データ利活用改革や生成AIを 用いたプロダクト開発を推進。 2025年11月にグラファー入社。AIを活用したプロダクトの企画・ 開発に従事するほか、総務省技術総括アドバイザーとして各省の 生成AI活用・BPR推進にも従事。 政策設計とAI技術を横断し、行政DXを構想・設計・実装まで推進 するハイブリッド人材。島根県出雲市在住。
  2. 今日のお話 Copyright 2026 PolicyGarage 2 ▪ 2つの開発事例を通じて、PolicyGarageの知見が生成AIでどう広がるかを紹介 住民向けコミュニケーションを支援するCivic Reach、法令改正の背景や影響を整理するLawsy Alertsを題材に。

    ▪ 生成AIが行政実務の「実装」をどう変えつつあるか 構造化されたフレームワークがAIの指示として機能する。作るハードルが劇的に下がった。ただし、汎用AIに丸 投げでは専門家水準の出力は出ない。 ▪ 行動科学・デザインの知見がAIで現場に届きやすくなる可能性を考える 暗黙知の形式知化、ハーネスエンジニアリング、AIの出力検証。行動科学・デザインの知見がAIで現場に届きや すくなる可能性を考える。
  3. Civic Reach:何を解いたか Copyright 2026 PolicyGarage 4 ▪ 行政の「ラストワンマイル問題」 通知やチラシは送っているのに、住民に読まれない。行動に繋がらない。 この「実務の制約」と「住民の行動のギャップ」を、生成AIと行動科学で橋渡しする。

    ▪ 行政職員向け → 文書改善ツール / 市民向け → 行動サポートツール 既存PDFをアップロードするだけで、行動科学に基づいた改善案を提示。 市民側では、届いた通知の内容を解読し、次に何をすべきかをステップ形式で案内。
  4. スラッジ監査:OECDフレームワークをAIの評価基準に Copyright 2026 PolicyGarage 6 Search Costs 重要情報が 埋もれていないか 25点

    Decision Costs 自分が対象か 判断しやすいか 25点 Cognitive Costs 専門用語や長文で 理解を妨げていないか 25点 Emotional Costs 威圧的な語調が 含まれていないか 25点 OECDのスラッジ監査レポートに基づく4カテゴリ × 各25点 = 100点満点。 フレームワークをもとにしたスコアAIの評価基準に。 方法論はこちらに記載 → https://github.com/hrkzz/civic-reach/blob/main/methodology.md
  5. EASTフレームワーク と Human-in-the-loop Copyright 2026 PolicyGarage 7 ▪ EASTフレームワークによる改善案生成 Easy・Attractive・Social・Timely

    の4軸で改善指示を自動生成。 既存PDFをアップロードするだけ。新しいソフトを覚える必要なし。 ▪ Human-in-the-loop:行政文書でハルシネーションは許されない AIが文書から日付・金額・連絡先等のKey Detailsを自動抽出しリスト化。 職員が確認してから生成を実行。「AIがドラフトし、人間が決定する」を徹底。 ▪ 市民向け機能:届いた通知を「アクション」に変換 内容の解読 → ステップ形式のガイド → 問い合わせ文の自動生成。
  6. G7 GovAI Grand Challenge Honourable Mention Copyright 2026 PolicyGarage 8

    ▪ G7各国・EUから152件の応募、Honourable Mentionを受賞 「国際的な政策議論に根ざした興味深いテーマ」「完成度と成熟度が非常に高い」と評価。 日本の行政現場が抱える課題は、G7各国と驚くほど共通している
  7. Lawsy Alerts:何を解いたか Copyright 2026 PolicyGarage 10 ▪ 法令改正が「届いていない」という問題 多い日に90件以上の法令が更新。実務に直接響くのは省令が多いが、メディアはほとんど報じない。 既存サービスは主要な法律改正に限定。

    ▪ すべての法令改正を日次で検知し、判断と行動に直結する情報に変換して届ける 省令・規則まで含めたすべての改正が対象。「法令を読むものから届くものへ」。 ▪ 透明性の担保 ソースコードはOSSとして公開。900件以上の法令改正を処理。 限定的ながらウェブでも公開 → https://www.lawsy.jp/
  8. 差分駆動の設計と改正タイプの自動分類 Copyright 2026 PolicyGarage 13 ▪ 差分駆動の法律AI 法令全文ではなく、前回改正との差分(diff)を起点にリサーチ。 「何が変わったか」だけをLLMの入力にすることで効率と精度を両立。 ▪

    Type A(形式的更新) / Type B(実質更新)の自動分類 Type A:参照条文・引用先の更新のみ。検索最小、影響なしを明記。 Type B:要件・罰則・手続等の実質変更。Deep Researchで背景・影響・対応を詳細に。 ▪ 情報の重要度を可視化すること自体がUI/UXとして価値がある 実務者が「形式改正なら確認不要」「実質改正は要対応」と即座に判断できる。
  9. L1〜L4:法令ドメインの調査手順を構造化してAIに Copyright 2026 PolicyGarage 14 L1 一次情報 法案5点セット(概要・要綱・理由) L2 公式解説

    ポイント・報道発表・施行日整理 L3 運用ルール ガイドライン・Q&A・リーフレット L4 背景 審議会報告書・国会資料・附帯決議 専門家が頭の中でやっている調査手順を、AIが実行可能な形で書き下した。 プロンプトはこちらに記載 → https://github.com/lawsy-jp/lawsy-alerts/blob/main/src/lawsy_alerts/infra/revision_report_creator.py
  10. レポート7セクション:実務者が知りたい順番をそのまま構造に Copyright 2026 PolicyGarage 15 1 概要 誰に・どんな影響があるか 2 背景

    なぜこの改正が行われたか 3 改正内容 何がどう変わったか 4 実務影響と対応 具体的な影響とToDo 5 施行・経過措置 いつから・経過措置 6 今後の展望 附帯決議・未解決論点 7 結論 まとめ 六法全書や原文を開かなくても、このレポートだけで改正内容を正確に理解できる粒度で記述。
  11. instructionsのBefore / After Copyright 2026 PolicyGarage 16 Before:汎用プロンプト 「Web上の信頼できる情報を徹底的に調べて レポートを作成してください」

    → 個人ブログやニュースサイトの断片を拾う → 法案5点セットに辿り着かない → 附帯決議を探しに行かない → 情報源の階層化がない After:ドメイン知識を構造化 L1: 法案5点セットをsite:go.jpで探す L2: 公式解説・施行日整理資料を探す L3: ガイドライン・Q&A・リーフレットを探す L4: 審議会報告書・国会資料を探す → 法令実務の調査手順がそのまま指示に → 出力の質が根本的に変わった
  12. 「届ける側は出している。でも届いていない。」 Copyright 2026 PolicyGarage 19 住民接点のラストワンマイル 通知やチラシは送っている。 でも読まれない。行動に繋がらない。 → Civic

    Reach が取り組んだ課題 法令制度伝達のラストワンマイル 法令改正は官報に載っている。 でも誰にも気づかれない。 → Lawsy Alerts が取り組んだ課題 どちらも同じ構造。この共通パターンの中に、皆さんの現場にも応用できるヒントがある。
  13. 構造化されたフレームワークが活きる時代になった Copyright 2026 PolicyGarage 20 ▪ 行動科学のフレームワークは、生成AIへの指示として極めて相性がいい OECDのスラッジ監査:4つの心理的コストで評価 BITのEASTフレームワーク:4軸で改善 これらは論理的に構造化されているからこそ、AIへの指示としてそのまま機能する。

    ▪ 法令ドメインも同じ 「法案5点セット → 公式解説 → ガイドライン → 審議会資料」という調査手順は、 構造化されているからこそAIに実行させられる。 ▪ 皆さんが研修や実践で身につけてきた知見も、同じように活かせる
  14. 作るハードルが劇的に下がった Copyright 2026 PolicyGarage 21 Civic Reach 1人 × 1週間

    企画・設計・開発・デモ動画まで完走。 生成AIを開発プロセス全体にフル活用。 Lawsy Alerts 4人 × 6週間 全員が本業を持ちながらの参加。 毎日90件以上の法令改正を処理する パイプラインを構築。 エンジニアチームがなくても動くものが作れる。問われるのは「何を作るか」を定義できるかどうか。
  15. 汎用AIに丸投げでは出てこない Copyright 2026 PolicyGarage 22 ▪ 汎用的な生成AIに「分析して」「改善して」と聞いても、専門家水準の出力は出ない Lawsy AlertsのBefore/Afterが端的。「信頼できる情報を調べて」では法案5点セットに辿り着かない。 Civic

    Reachも「分かりやすくして」ではOECDの4コストに基づく分析はしない。 ドメイン知識を構造化してAIに埋め込んではじめて、専門家水準の出力が出る。 ▪ そしてドメイン知識の多くは、専門家の頭の中にある暗黙知 「この改正を調べるなら法案5点セットから」という調査手順も、通知を見て「ここで離脱する」と 判断する視点も、言語化されなければAIには渡せない。構造化の前に、まず形式知化が必要。 ▪ ドメイン知識の形式知化と構造化こそが、AIプロダクトにおける専門家の本質的な貢献
  16. 暗黙知を形式知にする — 実践のヒント Copyright 2026 PolicyGarage 23 ▪ 判断プロセスを言語化する:「あなたはどこから調べますか?」 専門家は無意識に最適な手順で調べている。この「当たり前にやっていること」を言葉にするのが第一歩。

    Lawsy Alertsでは調査手順を書き出したらL1〜L4の4階層になった。 ▪ 情報源に優先順位をつける:「何を信じて、何を信じないか」 「go.jpドメインの一次情報を最優先」「個人ブログは出典不可」。これを明示するだけで出力の質が根本的に変 わる。 ▪ 品質のルールを言語化する:「ダメな出力とは何か」 「条文番号の羅列禁止」「埋め草的ToDo禁止」「AIが勝手に日付や金額を書き換えてはいけない」。「何がダ メか」を定義できるのは現場の専門家だけ。
  17. ハーネスエンジニアリングという考え方 Copyright 2026 PolicyGarage 24 ▪ AIが正しく動ける「環境」を設計する 馬具(ハーネス)が馬の力を正しい方向に導くように、AIの出力を意図した方向に制御する環境設計のこと。AI に賢く振る舞ってもらうのではなく、賢く振る舞わざるを得ない環境を作る。 ▪

    何を信じて、何を信じないか AIがミスした(個人ブログを拾った)→ その場で直すのではなく、L1〜L4の検索パスを構造化して二度と同じ ミスをしないよう環境を改善した。品質ルールを明文化し、AIの出力を制約した。 ▪ 行政実務における「ハーネス」とは何か 皆さんの現場の暗黙知——調査手順、情報源の優先順位、品質基準——を言語化・構造化すること。それがAIに とっての「ハーネス」になる。技術の話ではなく、現場の知見を形にすること。
  18. AIの出力を検証する — 信じすぎず、疑いすぎず Copyright 2026 PolicyGarage 25 ▪ ハルシネーションの問題は生成AIがどれだけ進化しても残り続けている 行政文書では、日付・金額・連絡先が1つ間違うだけで致命的。技術の進歩で「いつか解決する」問題ではなく、

    構造的に付き合い続ける問題。 ▪ 「どこを仕組みで担保し、どこを人間が見るか」の線引き Lawsy Alertsでは画像にルールベース評価、レポートはドメインエキスパートが目視レビュー。Civic Reachでは Key Details抽出→職員確認→生成実行のHuman-in-the-loop。 ▪ 「AIがドラフトし、人間が決定する」を基本設計にする 全部を人間が見るのは現実的でない。全部をAIに任せるのは危険。この線引きができるのは業務を知っている現 場の人だけ。
  19. PolicyGarageの活動こそが、形式知化と構造化の蓄積 Copyright 2026 PolicyGarage 26 ▪ PolicyGarageは行動科学とデザインの知見を形式知として蓄積してきた 月例研究会、全国の自治体への研修・伴走支援、行動デザインチームの体制構築支援、BIT豪州との国際連携、 出版(『自治体職員のためのナッジ入門』)、そして自治体ナッジシェア。 ▪

    自治体ナッジシェアには70件以上の事例が集約されている がん検診、保健指導、防災、環境、税……。この蓄積を2つの事例と同じ方法でAIに組み込めば、ナッジの専門 家がいない自治体でも行動科学に基づいた改善が現場で回せるようになる。その実装の入口は、先ほどお伝えし た3つのステップにある。 ▪ 皆さんの現場の知見こそが最も価値のある入力 どの通知で住民がつまずくか、どの手続きで問い合わせが多いか。 その暗黙知を形式知にし、構造化することが、生成AI時代に最も価値を持つ。
  20. まとめ — 今日お伝えしたかったこと Copyright 2026 PolicyGarage 28 ▪ 構造化された知見 ×

    生成AI = 専門家がいなくても現場で回せる Civic Reachでは行動科学のフレームワークを、Lawsy Alertsでは法令実務の調査手順を、それぞれAIに組み込ん だ。どちらも「専門家の判断プロセスを、AIが実行可能な形に翻訳した」ことが核。PolicyGarageの活動は、こ の翻訳の元になる知見を蓄積してきたもの。 ▪ 皆さんへの問いかけ:あなたの現場の暗黙知は何ですか? どの通知で住民がつまずくか。どの手続きで問い合わせが多いか。どの書類で離脱するか。 その知見を言語化し構造化できれば、生成AIで実装可能になる時代がもう来ている。
  21. リンク Copyright 2026 PolicyGarage 29 ▪ 法令を"届くもの"に変える — Lawsy Alertsの設計思想とビジネスロジックのすべて

    https://note.com/hrkzz/n/n5e1071a66969 ▪ 行政のラストワンマイルを生成AIで埋める:G7 GovAI Grand Challenge 開発記 https://note.com/hrkzz/n/n3251bfbadd18