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「プラットフォームが提供する価格設定AIが市場へ及ぼす影響」の概観

Kaede Hanazawa
April 21, 2024
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 「プラットフォームが提供する価格設定AIが市場へ及ぼす影響」の概観

研究テーマ: プラットフォームが提供する価格設定AIが市場へ及ぼす影響
について、その概観をゼミで発表した際の資料

Kaede Hanazawa

April 21, 2024
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Transcript

  1. 2 ⾃⼰紹介 l ⽒名: 花澤楓 l 出⾝: 千葉県 l 専攻:

    実証産業組織論 l 関⼼分野: プラットフォーム、シェアリングエコノミー l 経歴: l ⽊更津⾼専 情報⼯学科(2018年4⽉-2023年3⽉) l 横国 経済学部 3年次編⼊(2023年4⽉-現在) はじめに
  2. 4 問題の背景 l AIがビジネス(企業)において積極的に利⽤されている l Google, Amazon, Meta, Microsoft などなど

    l AIによる価格設定(Algorithmic Pricing; AP)も⼀般的 l どう価格設定するのがいいのかわかんない → AIにお任せ! はじめに (from https://sell.amazon.com/tools/automate-pricing)
  3. 19 AIによる(⾃然発⽣的な)カルテルは違法ではない l AIによるカルテルの場合 l AIは企業の「利潤最⼤化」が⽬的だった l カルテルを組むことが、利潤を⼤きくするための良い⽅法だ!と学習してしま う可能性がある l

    競争的な価格(と思われる⽔準)よりも、価格が⼤幅に⾼くなる可能性がある l AI同⼠は、個々の学習の結果として⾼い価格を設定する(と指摘されている) l AI同⼠で、「カルテルを組みましょう」と意思疎通はしない はじめに:問題の背景
  4. 22 企業はAIを使ってカルテルをするインセンティブがある l 研究結果: l 理論分析: l 価格設定AIを各企業が導⼊することで、暗黙的なカルテルが形成されることがいくつかの 条件のもとで⽰されている l

    Salcedo (2015); Brown and MacKay (2023) など。 l シミュレーション・実証分析: l ドイツで、ガソリンスタンド市場の多くの企業によって導⼊された事例を分析した。 l より完全競争的な市場においてガソリン価格及びマークアップ率が上昇したと報告されて おり、カルテルが形成されたことを⽰唆。 l Assad, Clark, Ershov, and Xu (2024). l 機械学習アルゴリズム(Q学習)で価格競争をシミュレーションし、カルテルが形成された ことを確認した。 l Klein (2021), Calvano et al (2020). はじめに:問題の背景
  5. 24 価格設定AIで実際どんな影響があるのか? l どれだけ価格が上がっているのか? l 消費者にとってどれだけ嬉しくないことが起きているのか? → 定量的に判断することで、政策的なインプリケーションを得たい l 極端な例:価格設定AIを販売・利⽤することは禁⽌するなど

    l カルテルが組まれているのかどうかを区別する、というタスクは関⼼の 対象外とする(外部からは分からない) 問題意識(リサーチクエスチョン) (現⾏の独占禁⽌法では捉えられていないので改善したい)
  6. 27 Airbnbと、その地域のホテルは競争しているはず l Airbnbに部屋を登録する事業者をホストという l ホテルは各企業によって運営されている l 短期宿泊市場(観光・出張, etc)で競争している l

    (短期的には)価格競争をしているはず l ホテルは、建物の増築⼯事によって部屋を増やすことができる。(⻑期) l 短期では、価格しか動かせない。 l ⺠泊施設も同様の事情があるはず 分析の対象:「Airbnb.com(⺠泊) vs ホテル」市場
  7. 28 Airbnbと、その地域のホテルは競争しているはず l 市場構造 l Airbnbが参⼊したことで、ホテル収⼊が減少したことが⽰された l Farronato and Fradkin

    (2022), Zervas et al (2017). l 競争関係にあることのエビデンス l なぜ: ⺠泊(Airbnb上) vs ホテルに注⽬するのか? 分析の対象:「Airbnb.com(⺠泊) vs ホテル」市場 ホテルC vs ホストC ホストB ホテルA ホテルB ホストA ⺠泊(Airbnb.com) ホテル vs vs vs vs vs vs
  8. 31 理由2: ⺠泊事業において、Airbnbは⼀強 l 他の⺠泊仲介サービス: l STAY JAPAN l エアトリ⺠泊などが存在する

    分析の対象:「Airbnb.com(⺠泊) vs ホテル」市場 https://stayjapan.com/ https://minpaku.airtrip.jp/
  9. 34 ホストがみんなSmart Pricingを使うとどうなる? l Airbnbは、全体としての売り上げを最⼤化したい(利潤最⼤化) l ホストが部屋を貸し出すと⼿数料(3%)で儲けることができる l まるで “Airbnb”

    1社が、多数の財(部屋)を持つ企業として解釈で きるのではないか。 l つまり:AirbnbがAIを通して、全体の価格を決める状況 l 「全体の売り上げ(Airbnbの売り上げ)の最⼤化」を⽬的関数として、 Smart Pricingを設計しているはず 分析の対象:「Airbnb.com(⺠泊) vs ホテル」市場
  10. 37 2つのシナリオを⽐べて、価格設定AIの影響を推定 l 仮定:「現実には、みんなSmart Pricingを使う」 l だいぶ強い仮定に思える l この仮定を正当化し得る理由 l

    ホストが⾃ら価格設定を⾏なう場合、スポーツ・⾳楽イベントなどの需要要因を観察し、 同⼀市場における他の部屋価格を考慮することが必要。 l 曜⽇ごとに価格を設定する必要や、数⽇前まで予約が⼊っていない場合は価格を減少させ ること(ダイナミックプライシング)を考慮するなど、 l ⾃らで⾏う価格設定には多⼤なコストが発⽣する。 l Smart Pricingを有効にすることで、AIがダイナミックな価格調整を正確な需要予測を通し て⾏う。 l ホストは価格設定を⾏う際のコストを限りなく⼩さくできる 「みんながSmart Pricingを使っているわけではない」と仮定してモデルを推定することで、 モデルの頑健性(robustness)を確認でき得る(と思っている) 分析⽅法
  11. 39 3つのステップで分析 分析⽅法 Step① Step② 需要関数を推定 ⽣産関数を推定 Step③ 均衡の計算・⽐較 •

    効⽤関数を仮定 • ここで、 • 効⽤最⼤化問題を解く • 需要関数を得る • 各ホスト, ホテルは利潤最⼤化問題 を解く • by FOC; • Airbnb上の全てのホスト集合を とすると、 • としてシナリオ1を計算 • シナリオ2は各ホストが⾃分の部屋 集合のみで考える • シナリオ1の均衡価格を𝑝∗ • シナリオ2の均衡価格を𝑝∗∗とする • 効⽤関数を以下の通り書き直す この式を全ての消費者について 合計したものが、 価格設定AIによる消費者への影響。
  12. 40 3つの問い 1. AI同⼠が価格競争をするときに、カルテルを組むのは現実的? l カルテルを抜け出して(逸脱して)⾃分だけ低い価格をつけたほうが得? 2. ホストが、Smart Pricingを使わない理由(インセンティブ)はあるか? あるならどういった理由がありそうか。

    3. 企業がAIを使う事例(⽣成AI, 画像認識, etc)で、 他に競争上良くない(価格が不当に⾼くなる等)例・市場はあるか? l スーパーが価格設定AIを導⼊すると、野菜や⾁の値段は上がる? l ファミレスやカフェもそうなる? 最後に