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Transcript
⼤量⽣産が価格を引き下げるメカ ニズム 2025.11.08
アジェンダ 1 基本原理:アダム‧スミスと分業 2 コスト削減のエンジン:規模の経済 3 ⾰命の実例:フォード‧モデルT 4 視点の拡張:関連概念の整理 5
成⻑の限界:規模の不経済 6 戦略的インプリケーションと結論
01 第1章:基本原理 - アダム‧スミス と効率性の夜明け
国富論:⾰命的な問いかけ 国家の富の定義を「蓄蔵」から「⽣産」へ転換 1776年刊⾏の『国富論』は経済学を体系化した画期的な著作 当時の重商主義は富を⾦銀の蓄積量で測っていた スミスは国の真の富を「国⺠が年間に⽣産し消費する⽣活必需品と便益品の量」と定義 経済分析の焦点を「富の蓄蔵」から「富の⽣産」へ移⾏させ、労働⽣産性向上が国富増⼤の鍵と提唱
専⾨化の⼒:分業(Division of Labour) 労働⽣産性を⾶躍的に向上させる最⼤の要因 分業の定義 複雑な製造⼯程を単純な作業に分解し、各労働者が特定の作業に特化すること ピン⼯場の事例 10⼈の労働者が分業で1⽇48,000本以上のピンを製造。⼀貫⽣産の数百〜数千倍の⽣産性向上
分業がもたらす驚異的な⽣産性向上 スミスが分析した3つの要因 熟練度の向上 単純作業の繰り返しで速さと 正確さを習得 作業転換時間の節約 作業間の移動ロスを排除 機械の発明と導⼊ 特定作業への集中が改善への 着想を促す
分業がもたらす経済的帰結 低コスト化と商業社会の成⽴、そして負の側⾯ コスト構造の変化: 労働価値説に基づき、分業による労働時間激減が製品の本質的価値と⽣産コストを 低下 商業社会の成⽴: 専⾨化は他者との「交換」への依存を⽣み出し、市場メカニズムを形成 「⾒えざる⼿」: 個々の利⼰的な交換活動が、意図せず社会全体の富を増⼤ 負の側⾯:
労働者が単純作業に⽣涯費やすことで「⼈間として到達しうる限りの愚かで無知な存在にな る」と警告
02 第2章:コスト削減のエンジン解剖 - 「規模の経済」
中核概念の定義:規模の経済(Economies of Scale) ⽣産規模の拡⼤に伴い、製品1単位あたりの⽣産コストが低下する現象 企業の⽣産規模(⽣産量)が拡⼤するにつれて、製品1単位あたりの⽣産コストが低下する現象 事業が⼤きくなるほど効率的に⽣産活動を⾏え、コスト上の優位性が⽣まれる ⾝近な例:ピザの配達料。1枚でも10枚でも配達料は⼀定のため、10枚注⽂すれば1枚あたりの負担は 10分の1に ⼤企業が中⼩企業よりも競争上有利になりやすい重要な鍵
決定的な違い:固定費と変動費 規模の経済を理解するための2つのコスト概念 コストの種類 定義 具体例 固定費 ⽣産量の増減に関わらず⼀定に発 ⽣する費⽤ ⼯場の賃料、⽣産設備の減価償却 費、管理部⾨の正社員給与、研究
開発費、保険料 変動費 ⽣産量に⽐例して増減する費⽤ 原材料費、部品費、⽣産ラインの パート‧アルバイト⼈件費、動⼒ 費(電気‧ガス)、梱包費、輸送 費
コスト削減の主要メカニズム:固定費の分散効果 ⽣産量が増えるほど、製品1個あたりの固定費負担が減少 規模の経済が機能する最も根源的なメカニズム 固定費の総額は⽣産量にかかわらず⼀定 ⽣産量を増やせば増やすほど、⼀つの製品が負担すべき固定費の割合が⼩さくなる 例:⽉額100万円の固定費 - 100個⽣産の場合: 1個あたり1万円 -
10,000個⽣産の場合: 1個あたり100円
優位性の源泉:規模がもたらす多様な効果 固定費分散以外のコスト削減要因 購買⼒(バイイングパワー) ⼤量⼀括購⼊によるボリュームディスカウント で変動費を直接引き下げ 技術的優位性 ⾼価な最新鋭設備への投資が正当化され、労働 コスト削減、⽣産性向上、品質安定化に貢献 経営の専⾨化 財務、法務、マーケティング等に専⾨家を配置
し、組織全体の運営効率を向上 財務的優位性 社会的信⽤が⾼く、有利な条件で資⾦調達が可 能(低⾦利)
03 第3章:動き出した⾰命 - フォード ‧モデルTの事例
⼿仕事からコンベアへ:組⽴ラインの誕⽣ アダム‧スミスの分業原理を極限まで突き詰めた⾰新 フォード登場以前の⾃動⾞産業は熟練職⼈による⼿作業の「クラフト⽣産」が主流で⾼価 フォードは「⼤衆のための⾞」創造のため⽣産⽅式の変⾰を決意 1913年、ハイランドパーク⼯場で移動式組⽴ライン(ベルトコンベアシステム)を本格導⼊ 労働者は定位置で単⼀作業を繰り返し、⽣産性が驚異的に向上 1台のシャシー組⽴時間が12時間以上からわずか1時間33分に短縮
⼤量⽣産の経済学:価格、賃⾦、そして市場の創造 モデルTの価格推移と⾼賃⾦戦略 1909年 発売当初の価格 1913年 ベルトコンベア導 ⼊ 1914年 最低⽇給「5ドル」 導⼊
1925年 価格が⼤幅に下落
⼤量⽣産が駆動する「好循環」 フォード‧モデルTが⽰したダイナミックな成⻑エンジン
04 第4章:視点の拡張 - 内部経済、外 部経済、および関連概念
内部経済 vs 外部経済 規模の経済がもたらす利益の発⽣源 内部的な規模の経済 ⼀企業の内部努⼒によって⽣じるコスト優位性 企業の規模拡⼤に伴う経営判断や施策で達成 原材料の⼤量⼀括購⼊による割引 ⾃社⼯場への最新鋭設備の導⼊ 研究開発費を多くの製品に分散
マーケティングや管理部⾨の効率化 外部的な規模の経済 特定の産業や地域全体の発展によって享受でき るコスト優位性 個々の企業の規模とは無関係に、外部環境から もたらされる恩恵 産業クラスターの形成(例:シリコンバレー) 専⾨労働⼒の集積による採⽤コスト抑制 サプライヤー網の効率化による輸送‧在庫コス ト削減
「経験曲線効果」との明確な区別 コスト削減のドライバーと性質の根本的な違い ドライバー 現状 ある⼀時点 の⽣産規模 導⼊後 累積⽣産量 性質 現状
静態的(ス ナップ ショット) 導⼊後 動態的(時 系列) 主要要因 現状 固定費分 散、⼤量購 ⼊、設備投 資 導⼊後 学習、習 熟、作業改 善、プロセ
補⾜:「範囲の経済」について 複数の事業を同時に運営するメリット 定義 単⼀企業が多⾓的な事業を同時に運営することで、それぞれ独⽴運営するよりコストが低減される効 果 規模の経済との違い 規模の経済は「⼀つの製品をたくさん作る」メリット、範囲の経済は「関連する複数の製品を⼀緒に 作る」メリット 具体例 飲料メーカーがジュースとミネラルウォーターを⽣産。共通設備、物流、販売チャネルを活⽤しコス
ト削減
05 第5章:「⼤きいことは良いこと」 の限界 - 規模の不経済
成⻑が重荷に変わる時:規模の不経済の導⼊ 管理の複雑化や内部⾮効率の増⼤により平均コストが上昇する現象 企業が⼀定規模を超えて拡⼤し続けることで、製品1単位あたりの平均コストが上昇に転じる現象 経済学のグラフでは、⻑期的な単位あたり平均コストはU字型の曲線を描く 規模の不経済は、U字曲線の右上がりの部分に相当 企業にはコストが最も低くなる「最適規模」が存在し、過剰な拡⼤は競争⼒を削ぐ結果を招く
複雑性が⽣み出す隠れたコスト 組織の巨⼤化に伴う情報伝達や管理上の摩擦 コミュニケーションのオーバーヘッド 組織拡⼤に伴いコミュニケーション経路が爆発的に増加。意思決定遅延、連携停滞、俊敏性喪失 重複努⼒と官僚主義 部⾨のサイロ化により情報共有が困難。異なる部署が同じ機能やシステムを重複開発する無駄 オフィス‧ポリティクスとインセンティブの歪み 巨⼤組織で蔓延しやすく、会社全体の利益より⾃⾝の地位や部署の利益を優先する⾏動
現代的課題:過剰⽣産と在庫リスク ⽣産効率の追求が市場の現実から乖離する戦略的な不経済 アパレル業界の事例:⼈件費の安い海外⼯場への委託が多い 効率的な⽣産ライン維持のため、⼯場は⼤きな「最低発注数量(MOQ)」を設定 アパレル企業は数ヶ⽉先の不確かな需要予測に基づき、⼤量発注を強いられる 結果、深刻な過剰⽣産問題が発⽣(⽇本国内で供給された⾐料品の半分以上が売れ残り) 売れ残り在庫は⼤幅な値引き販売や廃棄処分につながり、当初の⽣産コスト削減分を上回る損失 これは、⽣産規模そのものが戦略的な⾜枷となる「戦略的な規模の不経済」
06 第6章:戦略的インプリケーション と結論
競争兵器としての「規模」 規模の経済が企業にもたらす絶⼤な戦略的柔軟性 価格競争⼒と市場シェアの獲得 低いコスト構造は価格設定における優位性を与 え、市場シェア獲得や⾼利益率確保に貢献 参⼊障壁の構築 ⼤規模な初期投資が不可⽋なため、新規参⼊者 にとって極めて⾼いハードルとなり、既存企業 の市場ポジションを維持
総括:現代企業のための時代を超えた原理 「量の追求が効率性を解き放つ」原理の光と影 分業: アダム‧スミスが⽰した⽣産性向上の原点 規模の経済: 固定費と変動費のメカニズムによるコスト削減の核⼼ フォード‧モデルT: 理論が現実を変⾰した好循環の事例 規模の不経済: 組織の⾮効率や過剰⽣産リスクといった成⻑の限界
結論:量の錬⾦術は、⽣産効率の追求、俊敏な組織設計、市場需要への深い洞察の絶妙なバランスの 上に成り⽴つ 現代の経営者は、この原理の光と影を深く理解し、賢明に活⽤することが求められる
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