Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

kubellが挑むBPaaSにおける、人とAIエージェントによるサービス開発の最前線と技術展望

Avatar for kubell kubell
June 18, 2025

 kubellが挑むBPaaSにおける、人とAIエージェントによるサービス開発の最前線と技術展望

2025年6月18日(水)開催のFindy主催「AI Engineering Summit」での発表資料です。
イベントページ:https://ai-engineering-summit.findy-tools.io/
登壇者:株式会社kubell 藤井 謙太郎

Avatar for kubell

kubell

June 18, 2025
Tweet

More Decks by kubell

Other Decks in Technology

Transcript

  1. 2 自己紹介 藤井 謙太郎 株式会社kubell インキュベーションディビジョン R&Dグループ長 / 新規事業開発グループ 新卒で富士通株式会社に入社。基幹システムやERP導入などのプログラマやプ

    ロジェクト管理を経験後、PwCコンサルティングに参画。金融機関向け経営管 理プロジェクトに従事。Laboro.AIにてAIを活用したアプリ開発やAI受託開 発、カメラやIoTなどを活用したPF事業開発および戦略策定のコンサルティン グを主導、執行役員に就任。 2024年4月株式会社kubell(旧 Chatwork株式会社)に入社、AI分野における 新規事業の推進とR&D領域を担当。 (@kentaro_fujii_) ふじい  けんたろう
  2. 4 事業概要 • 国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」を展開。業界のパイオニアであり国内利用者数No.1*1、導入社数は91.4万社*2を突破 • 圧倒的な顧客基盤のあるプラットフォームを背景に、チャット経由で業務を請け負いDXを推進するBPaaSを展開  ビジネスチャット「Chatwork」 BPaaS (Business Process

    as a Service) • 国内利用者数No.1*1 有料ユーザーの97%が中小企業ユーザー • 日本の1/5を占める導入社数91.4万社以上*2 754万ユーザー • 全業界・全職種の方が日常的に使うプラットフォーム *1 Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView Customized Report 2024年4月度調べ月次利用者(MAU:Monthly Active User)調査。 調査対象はChatwork、Microsoft Teams、Slack、LINE WORKS、Skypeを含む41サービスを株式会社kubellにて選定。 *2 2025年3月末時点 チャット経由で業務を請け負いDXを推進 業務代行 経理・総務・事務など幅広い業務に対応 人事・労務など専門性の高い業務に対応 採用 経理・会計 労務 営業事務 AI・SaaSを徹底活用
  3. 5 Chatwork アシスタント a お客様 BPaaS領域でのサービス展開 • 現在のBPaaSの主力商品は「Chatwork アシスタント」と「Chatwork 労務管理」

    • 中小企業のノンコアビジネス全域に展開すべく、業務領域を拡大中 月に10時間から必要なタイミングで必要な分だけ作業を依頼可能 経験豊富な アシスタントが対応 専任サポート お客様担当者 アシスタントチーム 経理 事務 総務 採用 Chatwork 労務管理 勤怠管理システム・給与計算など労務に関する業務を一括で対応 給与計算 賞与計算 年末調整 マイナンバー 知識が豊富な 労務専門スタッフが対応 労務チーム 専任サポート AIエージェント AIエージェント
  4. 6 ChatworkはヒトとAIが協働するプラットフォームへ • AIエージェントの登場により、特定領域で展開する従来のSaaSは厳しい局面になると予想(SaaS is dead)。一方でビジネスコミュ ニケーションを担うChatworkはその影響を受けず、引き続き企業内で重要な役割を担い続ける • テクノロジーは今後も日々進化し続けるが、それらを効果的に活用するには一定のITリテラシーが必要。当社はBPaaSを通じ、AIや SaaSに不慣れなユーザーでもテクノロジーの恩恵を受けられる世界を実現していく

    • Chatworkはコミュニケーションツールとしての位置付けから、BPaaSオペレーター・AIエージェントとも連携した「ヒトとAIが協働 するプラットフォーム」として進化。中小企業のDX推進を総合的に支援するポジションを目指していく WEB制作 事務 営業 労務 従業員 総務 BPaaSオペレーター AIエージェント 経理 Web制作 秘書 採用
  5. 8 AIエージェントのチームのミッション プロトタイプ開発・運用 事業開発 • ビジネスモデル探索 価値創出・収益化・成長性の観点からAI エージェント活用のBPOモデルを設計 • 戦略的顧客選定

    AIエージェント適用効果の高い顧客セグ メント、業務の特定 • スケール化戦略 N1ユースケースの個別開発から共通プ ラットフォームへ展開可能な領域の発見 と拡大 • デザイン・設計・実装 ユーザー体験を重視したUI/UXの設計と 迅速なプロトタイプ実装。AIエージェン トのデザイン・実装。 • 最新技術の活用 進化の早い技術の評価と迅速な組み込み • 共通基盤構築 複数のAIエージェントを統合管理するス ケーラブルな基盤の開発
  6. 11 短期的に実現するBPaaSにおけるAIエージェントの活用イメージ BPaaS利用企業 BPaaSサービス アシスタントは、専門知見+AI エージェントや各種技術を使い こなし業務を実行 利用企業は自らSaaSやAIの活用を 推進することなく効果を得られる 利用企業はアシスタントを通じてAIエージェントを利用

    AIエー ジェント AIエー ジェント AIエージェント AIを扱えるアシスタント AIエージェント オーケストレーター バックオフィス担当・経営者 kubell SaaS・ツール 手動操作 upload AIエージェントへの 自然言語での指示 API 連携 顧客利用SaaS・ツール API 連携 手動操作 upload Chatwork
  7. 13 AIエージェントとは 人が決めたフローで 「検索→整理→出力」のよう に複数のLLMタスクを実行 RoutingやParallelなど ある程度短いがパターン が多いタスクを実行 AIエージェント ※

    引用:DeepLearning.AI(Agentic Design Pattern) ユーザーが指示した 単一タスクを 1つのプロンプトで実行 tools mem ory 単体ツール single-shot Workflow MultiAgent シンプルな1アクション 業務効率は限定的 Agentic Workflow Retri eval LLM LLM LLM LLM Orchestr atorLLM LLM 自然言語の指示でLLMが自律的 に必要な処理を考え判断実行 限定的な範囲で自律的に処理 パターンに応じた 業務を柔軟に対応 Reflection Plannin gLLM Workflow LLM Workfl ow Workflow 行動計画をPlanningし 必要なコンポーネントを呼び 出し実行Workflow自体を生成 複雑で高度な業務を 実行可能 LLM 複雑性・自律性の向上
  8. 17 AIエージェントの良いところ 抽象化 モジュール化 外部リソース連携 • 人の行動の抽象化 reseacher、coder、 browser、reporter等 •

    専門知識の言語化 暗黙知の形式知化 • 環境適応型の実行 環境と結果の知覚、状 況に応じた動的な処理 • 思考のモジュール化 プロンプトを機能単位で 分割・再利用。特化した タスクに限定することで 精度の改善 • 保守性の確保 拡張性・メンテナビリ ティ • 外部リソース活用 API、ファイルシステム、 MCP等 • 知識の動的拡張 外部データ活用、行動の 記録と活用 • 非同期での業務実行 人に依存しない柔軟なト リガー発動。柔軟な協調 LLMの能力を活用し、様々な要素を掛け合わせることで大きな潜在力がある
  9. 18 業務パターンごとの注力する技術は異なる ブラウジング型 対話・修正型 ワークフロー型 アクションを行う型 定型的な手順で処理を進める業務 例:申請業務、書類データの確認業務 UXポイント •

    パーソナライズ: 過去データによる個社 や人判断の踏襲 • 説明責任: 判断に必要な根拠提示 重要技術 • OCR • 確実性を高めるプロセス アウトプットを生成し対話で修正する業務 例:記事作成、資料作成、コンテンツ作成 UXポイント • 意思決定サポート: 何を持ってアウトプッ トを決定するか • 修正容易さ: 段階的な指摘への対応 重要技術 • 画像生成 • 対話UI • 人のフィードバック反映 画面を見ながらデータ収集・処理を行う業務 例:Web情報収集、データダウンロード、整合性確認 UXポイント • 説明責任: 収集した根拠の提示 • 構造化: 取得した情報の構造化 重要技術 • スクレイピング • ブラウジング 環境を認識しながら柔軟に行動する業務 重要技術 • プランニング • 状況認識 UXポイント • 説明責任: 思考過程の明示 • 前提確認: 行動前の前提理解や確認
  10. 21 開発に必要な人材 AIエージェント開発に必要なロール 開発ステップ Difyなどのノーコードツールや生成AI ツールでプロンプト開発や仕様を検討し つつ、初期的な実装を行う プロトタイプ開発(PoC) 精度改善・エージェント高度化 運用・モニタリング

    プロダクション実装 プロトタイプを実用に耐えられるように プロンプトやエージェントパターンを見 直し改善活動を行う。最も長く必要。 試験利用もしくはサービス利用をするた めの環境に実装 PM・LLMエンジニア PM・LLMエンジニア PM・LLMエンジニア・バッ クエンド・フロントエンド エンジニア 並行して事業検討 を行うBizDevや セールスが必要 プロダクトとして 拡張していくよう になるとPMから PdMにシフトする AIエージェント開発は、デファクトがなく試行錯誤型の開発が必要なため通常の事業開発や プロダクト開発と進め方や考え方が異なる。現時点はQuick&Doneでスピードが重要!!
  11. 23 プロトタイプ開発の対象の考え方 タスクタイプ A 業務レベルのユースケース・複数に共通するタスクレベル・を選定してプロトタイプを開発 タスクタイプ A タスクタイプ A タスクタイプ

    B タスクタイプ C タスクタイプ B タスクタイプ D タスクタイプ E タスクタイプ F タスクタイプ F タスクタイプ F 業務ユース ケース1 業務ユース ケース2 業務ユース ケース3 優先度高 優先度高 優先度中 優先度高
  12. 24 ユースケースタイプ  共通タスク プロトタイプ開発の優先度の考えて方 ビジネスインパクトと早期の技術実現性を軸にプロトタイプの優先度を検討 技術実現性 ビ ジ ネ ス

    イ ン パ ク ト 戦略的投資 Quick Win 様子見 効率化候補 タスクタイプA タスクタイプB ユースケース1 タスクタイプF タスクタイプE タスクタイプF 優先度高 優先度中 優先度低 タスクタイプD ユースケース2
  13. 25 解像度の向上 段階的な解像度を高めるクイックなプロセスの重要性 プロトタイプの段階的実装 経費精算、請求書発行など領 域で大まかなタスクを特定 データ化 チェック 仕訳作成 パターン分類

    パターン増 プロセス分解 思考過程 判断基準 なぜこうするのか? このケースは・・・ このケースは・・・ 例外エッジケース増加 対応可能なケース Phase1 Phase2 Phase3 分解したタスク別に確定領 域をDifyやn8n、Pythonな ど手早い手段で実装 部分的な実装やパターン 増によりPython実装で Agentに移行 1つの業務レベルの開発 他の業務との統合や拡張 複雑化など ドメインの理解度に応じた段階的な実装方法を実行中。いきなり開発はNGとしている特徴。
  14. 26 プロトタイプ開発の例 Phase1 身近に利用・改善できる工夫 • Dify / n8nなどのビズでも使用 できるノーコードツール •

    Googleスプレッドシートから GASで起動するエージェント • ブラウザプラグインから実行す るエージェント • Phase1で利用したDify / n8nな どのノーコードツールをAPIで 利用しつつ段階的にPython移行 • 集中的な業務利用に移行するた めにUI/UXの見直し • Langfuseなどを評価基盤に移行 従来のエンジニアリングとは 異なる領域や動きが必要 Phase2 段階的な拡張・実装 本格的な利用に移・ AIエージェントの責任範囲が拡張
  15. 30 そもそも電子化 できない 承認ワークフローが あったりなかったり データを ダウンロード できない SaaSを利用していてもその前の情報 整理が圧倒的に多い

    多くの手入力業務 多くのシステムや Webサイトへのログ インから情報抽出や ダウンロード作業 よしなにやって欲しいと 言語化困難 一気通貫を阻む壁の例
  16. 経費精算での例 領収書データ化 (OCR) 経費精算の業務だけでも様々な代表的なパターンが存在 各プロセスも個社ごとに個別に異なる 経費精算 SaaS 会計/給与計算 SaaS 会計/給与計算

    SaaS 領収書データ化 (OCR) 経費分類 & 申請妥当性 チェック 経費分類 & 申請妥当性 チェック 科目判定 登録データ 作成 登録 データ化 パターンA 経費精算 SaaS 使用なし パターンB 経費精算 SaaS 使用なし パターンごとにフローが異なり 使用エージェントも異なる 妥当性確認は会社 ごとに異なり 言語化しにくい ある程度のパターン化と人による確認のタイミングをうまく設計するのがポイント
  17. 33 業務パターンごとの注力する技術は異なる ブラウジング型 対話・修正型 ワークフロー型 アクションを行う型 定型的な手順で処理を進める業務 例:申請業務、書類データの確認業務 UXポイント •

    パーソナライズ: 過去データによる個社 や人判断の踏襲 • 説明責任: 判断に必要な根拠提示 重要技術 • OCR • 確実性を高めるプロセス アウトプットを生成し対話で修正する業務 例:記事作成、資料作成、コンテンツ作成 UXポイント • 意思決定サポート: 何を持ってアウトプッ トを決定するか • 修正容易さ: 段階的な指摘への対応 重要技術 • 画像生成 • 対話UI • 人のフィードバック反映 画面を見ながらデータ収集・処理を行う業務 例:Web情報収集、データダウンロード、整合性確認 UXポイント • 説明責任: 収集した根拠の提示 • 構造化: 取得した情報の構造化 重要技術 • スクレイピング • ブラウジング 環境を認識しながら柔軟に行動する業務 重要技術 • プランニング • 状況認識 UXポイント • 説明責任: 思考過程の明示 • 前提確認: 行動前の前提理解や確認
  18. 34 AIエージェント✖ヒューマンインザループによる実行基盤 非同期処理 人の応答時間は不確定 並列処理 エージェントが同時稼働 動的分岐 AIと人の判断により処理フ ローが動的に変化 再処理

    どの地点から再開するのか ステートの管理 拡張性 業務ごとに増加するパターン への対応 品質評価 LLMの出力の品質を 定量化し想定外を監視 様々なエージェントが人が協調して業務実行するシステムをスケーラブルに するAIエージェント向けのしくみが必要 マルチテナント ユーザーの個社ごとに異なる テナント ガードレール 入出力における個人情報や 機密情報などの除去