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サイトをアクセシブルにするための受発注のセオリー

Rikiya Ihara
May 19, 2016
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 サイトをアクセシブルにするための受発注のセオリー

Rikiya Ihara

May 19, 2016
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Transcript

  1. サイトをアクセシブルにするための
    受発注のセオリー

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  2. 本日の流れ
    自己紹介
    Web制作プロジェクトの流れ
    アクセシビリティ方針と実際の発注例
    問題を起こしやすい要件
    まとめ
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  3. 自己紹介
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  4. BA
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  5. ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)
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  6. デザイニングWebアクセシビリティ
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  7. Web制作プロジェクトの流れ
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  8. 各種ガイドライン
    制作プロセスに関するガイドライン
     ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン
     JIS X 8341-3:2016 対応発注ガイドライン
     JIS X 8341-3:2016 試験実施ガイドライン
    ※「ウェブコンテンツのJIS X 8341-3:2016 対応度表記ガ
    イドライン」は「準拠」の表記に関するもので、これら
    全てに関連する
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  9. 方針をいつ立てるのか?
    発注のパターンによって異なる
     方針を先に考えてあるパターン
     自分たちで決めておく or 外部発注で決める
     制作発注と同時に方針も考えるパターン
     方針がないまま進んでしまうパターン
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  10. プロジェクトの流れ(受託まで)
    10
    「ウェブの仕事力が上がる標準ガイドブック 3 Webディレクション」より

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  11. 方針を先に考えてあるパターン
    11
    ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン
    JIS X 8341-3:2016 対応発注ガイドライン

















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  12. 制作発注と同時に方針も考えるパターン
    12
    ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン
    JIS X 8341-3:2016 対応発注ガイドライン




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  13. アクセシビリティ方針と
    実際の発注例
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  14. 方針がないと……
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  15. 方針がないとどうなる?
    配慮が全く行われない
     公開に実は必要だったとなっても後の祭り
    適切な判断ができない
     判断がぶれる、人によって判断が異なる
    合意形成ができない、覆る
     プロジェクト内、あるいはクライアントとの衝突
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  16. 方針があればそれでいいのか?
    方針があっても、
    適切でないものだと効果を発揮しない
     あいまいな方針を立ててしまう
     誤解に基づいて方針を立ててしまう
     手段が目的になってしまう
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  17. 無理のない範囲で
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  18. 明確に定める
    ガイドラインに沿って
    目標とするレベルを決める
     特にアクセシビリティが重要ならレベルAA
    適用範囲、期限などをはっきりさせる
     基本的にはサイト全体、公開時に対応でよい
     例外ができてしまう場合は明確にする
    18

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  19. 実際にあったこんな発注
    19
    あまり良くない例

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  20. あいまいな方針を立ててしまうケース
    20

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  21. 21
    セキュリティ、Web標準、
    アクセシビリティに配慮し
    制作すること。
    実例

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  22. 勢いはあるが……
    具体的に何をどうすれば良いのかからない
     「配慮する」といっても人によって基準がまちまち
    22

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  23. 23
    JIS X8341-3:2010に基づく
    アクセシビリティを
    確保すること。
    実例

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  24. 24
    アクセシビリティについては
    「JIS X 8341-3:2010」に
    準拠すること。
    実例

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  25. JISに沿うことはわかるが……
    目標とするレベルが不明
     たとえばAAの達成基準を
    満たすべきなのかどうかわからない
    25

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  26. 誤解に基づいて方針を立ててしまうケース
    26

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  27. 27
    文字拡大機能
    ブラウザの機能ではなく、
    ページ上のボタンをクリックすることで
    CSS を切り替え処理等により容易に
    文字サイズを変更できるようにすること。
    サイズについては3サイズ程度
    選択できるようにすること。
    実例

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  28. その結果
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  29. 手段が目的になってしまうケース
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  30. 30
    以下ランキング同業種内1位評価獲得
    • 全上場企業ホームページ充実度ランキング調査
    • IRサイト総合ランキング
    • 主要企業Webユーザビリティランキング
    • インターネットIR表彰
    実例

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  31. ランキング対策の「アクセシビリティ対応」
    31

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  32. アクセシビリティに配慮
    と言われたとき、
    何を思い浮かべますか?
    アクセシビリティに配慮したサイトとは?
    32

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  33. 神戸市
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  34. さまざまなボタン
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  35. ところで……
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  36. 総務省 みんなの公共サイト運用ガイドライン
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  37. 2.1.4. ウェブアクセシビリティ対応に関する誤解
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  38. 2.1.4. ウェブアクセシビリティ対応に関する誤解
    注意点!
    ホームページ等において、音声読み上げ、
    文字拡大、文字色変更等の支援機能を
    提供する事例がありますが、これだけでは、
    ウェブアクセシビリティに対応している
    とは言えません。
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  39. Webアクセシビリティの確保は特別なことではない。
    障害者差別解消法の施行で考えるべき企業サイトの品質
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  40. 植木さんのコメント
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  41. 文字サイズ変更ボタンや
    音声読み上げ機能は
    必要なのか?
    よくある質問
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  42. 「JISに準拠していれば、
    どちらもいらない」
    植木さんの回答
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  43. 植木さんのコメント続き
     実際に試すと、ほとんど文字の大きさが
    変わらない文字サイズ変更ボタンが少なくない
     最近のWebブラウザであれば
    ズーム機能を標準で搭載している
     意味のない文字サイズ変更ボタンは
    やっている感を出すための免罪符に近い
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  44. 神戸市の場合
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  45. 神戸市の場合
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  46. 実際にあったこんな発注
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    なかなか良いと思える例

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  47. アクセシビリティについては
    「JIS X 8341-3:2010」に準拠すること。
    達成等級は以下の通り:
    達成等級AA 準拠
    47
    実例

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  48. 表記
    ウェブアクセシビ
    リティ方針の提示
    又は公開
    目標とする適合レ
    ベルの達成基準の
    試験結果
    追加表記事項
    準拠 必須
    試験を実施し、達成
    基準を全て満たして
    いることを確認
    なし
    一部準拠 必須
    試験を実施し、達成
    基準の一部を満たし
    ていることを確認
    今後の対応方針
    部分適合に関する記
    述(適用する場合)
    配慮 必須
    試験の実施の有無、
    結果は問わない
    目標とした適合レベ
    ル又は参照した達成
    基準一覧
    ただし…… 「準拠」の意味、分かっていますか?
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  49. アクセシビリティ、
    ユーザビリティについて、
    弊社のレベルを考慮いただき
    準拠基準をご提案ください。
    49
    実例

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  50. 制作と合わせて方針の提案も求めるパターン
    50
    ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン
    JIS X 8341-3:2016 対応発注ガイドライン










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  51. 制作と合わせて方針の提案も求めるパターン
    方針や策定プロセスも提案してもらえばよい
     あいまいに書くよりも、ずっと良いアプローチ
     受注側の力量が問われる
    51

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  52. 「 JIS X 8341-3:2010」 の「等級A」への
    準拠を検討しているが、本方針は
    要件定義工程でのWEBサイト検討状況を
    踏まえ決定する想定です。
    アクセシビリティ方針の検討方法についても
    ご提案ください。
    52
    実例

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  53. アクセシビリティ、ユーザビリティへの
    対応が不充分のため、リニューアルを機に
    対応させたい。
    今後の更新に備えてアクセシビリティ、
    ユーザビリティを踏まえた更新ガイドラインを
    作成し、ルールを徹底したい。
    53
    実例

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  54. 目的をドキュメント化する例
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  55. ヤフー株式会社ウェブアクセシビリティ方針
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  56. 目的をドキュメント化する
    なぜアクセシビリティに取り組むかを明文化
     何のためのアクセシビリティなのかを押さえる
     公開されている他社の方針を参考にするのも良い
     ただし、意味も分からずにコピペはNG
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  57. 問題を起こしやすい要件
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  58. 方針があればOK、ではない
    アクセシビリティ方針が明確にできても、
    その方針を守ることができるかは別の話
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  59. アクセシビリティ確保のために
    コストがかかる要件
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  60. 動画
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  61. 動画の問題点
    映像が見えない状況がある
     スクリーンリーダー、テキストブラウザなど
    音声が聞こえない状況がある
     スピーカーなし、静かな場所、移動中など
    すばやく知りたいときに向いていない
     流し読みできない
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  62. 例: 動画に字幕や文字起こしをつける
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  63. 動画を採用する場合の注意点
    動画にはテキスト情報が必要
     分かりやすく伝えられる動画は有用!
     あらかじめテキストを用意できない場合は
    テキストの追加や字幕などに追加のコストが必要
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  64. 紙媒体用のコンテンツ
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  65. 紙媒体用のコンテンツの問題点
    Webに適したフォーマットになっていない
    ことが多い
     スキャンしたPDFでテキスト情報がない
     PDFの作り方によっては、読み上げ順序が不適切に
     グラフや図版が多用され、テキストの説明がない
     きわめて複雑な表が使われている
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  66. 紙媒体用のコンテンツはどうするべきか
    紙媒体用のコンテンツは再構成が必要
     そのまま使うことはできないと考えるべき
     紙媒体の原稿を使うときには追加のコストを見込む
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  67. 全くアクセスできなくなるような
    問題を起こす要件
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  68. CAPTCHA
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  69. ブラウザやOSの機能への干渉
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  70. アニメーションするコンテンツ
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    http://www.city.nishitokyo.lg.jp/

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  71. 西東京市曰く
    上部に、市の俯瞰図とたくさんの動くイラス
    トを配置し、楽しくいきいきとした西東京市
    を表現(自治体ホームページのトップページ
    としては初の試みです) 。
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  72. まとめ
    アクセシブルな受発注のセオリーとは
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  73. 最初からアクセシビリティを考えて発注
    後から改善することは困難
    適切なアクセシビリティ方針を定めること
     無理のない範囲で明確に定める
     難しければ提案を依頼しても良い
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  74. きわどい要件は慎重に
    追加コストが必要な場合も
     動画、紙媒体の転用(PDF)などは要注意。
    採用する場合はそれなりのコストを見込むこと
    無理そうな要件は避ける
     CAPTCHA、右クリック禁止、
    止まらないアニメーションなどはNG
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  75. さあ、はじめよう!
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  76. デザイニングWebアクセシビリティ
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  77. ありがとうございました
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