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抽象代数学の勉強はじめました!その1

reodon
November 15, 2020

 抽象代数学の勉強はじめました!その1

reodon

November 15, 2020
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Transcript

  1. 抽象代数学の勉強はじめました!
    ~ 手始めに『整数と群・環・体 −素数と数の認識
    論』を読んでみた ~
    日本 Android の会秋葉原支部ロボット部 第 98 回勉強会
    2020/11/15
    reodon

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  2. 2
    発表の流れ
    1)自己紹介
    2)書籍について
    1)書籍の目次
    3)著者について
    4)第 1 章「素数に関する入試問題から」
    5)群・環・体について
    6)まとめ

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  3. 自己紹介
    名前 : reodon
    職業 : AI エンジニア?(学習データ作成)
    Twitter : reodon@reodon2
    鹿児島のエンジニアサークル「ヒラマサ」で
    Flutter の勉強中です
    最近、中国語を習っています
    インターバルトレーニングにハマっています

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  4. 4
    書籍について

    月刊誌「理系への数学」の連載
    「素数と数の認識論」の15回分を
    まとめたもの
    – 「現代数学」の旧ヴァージョン

    全体構成
    – 16章
    – 205ページ

    2017年5月20日 初版発行 (ISBN : 978-4-7687-0467-7)
    – https://www.gensu.jp/product/ 整数と群・環・体-素数と数の認識論/

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  5. 5
    著者について

    河田直樹 氏(KAWATA, Naoki)

    予備校講師
    – 実際の生徒の質問や入試問題が記述されている

    数理哲学研究科

    東京理科大学理学部数学科卒業
    – 同大学理学専攻科修了

    著書
    – 『世界を解く数学』(河出書房新社),『数学的思考の本質』(PHP研究所),『優雅な
    eiπ=-1への旅』(現代数学社)など

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  6. 6
    目次( 1/2 )
    1) 素数に関する入試問題から
    2) 素数を拾う
    3) 素数と合同式
    4) ウィルソンの定理と群
    5) 剰余環
    6) 剰余環から体へ ← いまここ!
    7) 位数と直積群
    8) ベルトラン・チェビシェフの定理

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  7. 7
    目次( 2/2 )
    9) 巡回群とラグランジュの定理
    10)
     準同型定理と有限巡回群
    11)
     いくつかの具体的問題
    12)
     カーマイケル数
    13)
     原始根と位数
    14)
     原始根の存在定理
    15)
     合成数と原始根
    16)
     今後の指針と展望

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  8. 8
    1 章 .1 「素数に関する入試問題から」

    フェルマーの最終定理
    – n が 3 以上の自然数であるとき,以下の数式を満たす自
    然数 x, y, z は存在しない.

    1995 年,英国のアンドリュー・ワイルズによって証明された
    xn+ yn=zn

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  9. 9
    1 章 .2 問題 1-1

    フェルマーの最終定理を知らないものとして、以下
    の命題を証明せよ
    – 1998 年の信州大学・理学部,経済学部の問題
    x , y , zを0でない整数とし ,もし等式 x3+ y3=z3 が成立しているならば ,
    x , y ,z のうち少なくとも1つは3の倍数である.

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  10. 10
    1 章 .3 解答 1-1

    この問題は「 x, y, z がすべて 3 の倍数でない」
    と仮定して,矛盾を導けばいいだけの話で,
    ‘合同式’を用いれば簡単に証明できる.(原文
    ママ)

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  11. 11
    1 章 .4

    「フェルマー予想」,「ポアンカレ予想」が解決され,
    残された有名な未解決問題は「リーマン予想」のみ

    教え子からこれらの問題に関する質問をされるように
    なった

    この書籍では,受験生や大学初年級の学生を対象に,ご
    くやさしい素数や整数の話題から始めて,「リーマン予
    想」の入口まで案内したい

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  12. 12
    1 章 .5 問題 1-2

    素数に関する問題
    – p, 2p+1, 4p+1 がいずれも素数であるような p をす
    べて求めよ

    2005 年の一橋大学の入試問題

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  13. 13
    1 章 .6 解答 1-2

    2 <= p <= 17まで調べるとp = 3のときのみ条件(p, 2p+1, 4p+1全てが素数)を満たす

    pを3で割ったときの「余り」に着目する
    – 余りが1のとき
    – 余りが2のとき
    ∴ pが3以外の場合は条件を満たさないので,求めるpは3 

    2 p+1=2(3k+1)+1=3(2k+1)
    4 p+1=4(3k+2)+1=3(4 k+3)
    p=3k+1(k∈ℕ)
    p=3k+2(k∈ℕ)

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  14. 14
    群の定義

    空でない集合Gの元a, bに対して2項演算*が定義され,a*b G
    ∈ が成り立ち(Gが*に関して‘閉じ
    ている’),かつ以下の3条件を満たすとき,Gは*に関して‘群(group)’をなす.
    1) 結合的 Gの任意の元a, b, cに対して
    が成り立つ.
    2) 単位元の存在 Gには1つの元eが存在して,Gの任意の元aに対して
    が成り立つ.
    3) 逆元の存在 Gの任意の元aに対して
    を満たすGの元bが存在する.
    (a∗b)∗c=a∗(b∗c)
    a∗b=b∗a=e
    a∗e=e∗a=a

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  15. 15
    群のざっくりとした説明

    (誤解を恐れずに言えば,)*は掛け算の「×」あるいは足し算の「+」だと思ってよい.
    – *が×のとき,単位元eは「1」
    – *が+のとき,単位元eは「0」

    Gが整数の場合
    – 加法に関して群をなす.
    – 乗法に関して群をなさない.

    Gが有理数の場合
    – 加法に関して群をなす.
    – 「0」を除いた場合(G-{0}),乗法に関して群をなす.

    可換性を持つ群(a*b = b*a)を可換群(Abel群)という.

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  16. 16
    環の定義

    Rを空でない集合とし,この集合の任意の元a, bに対して,
    – 加法(足し算,和):a + b ( R)

    – 乗法(掛け算,積):a・b ( R)

    という2つの演算が定義され,この演算について以下の4条件が満たされるとき,集合Rは‘環
    (Ring)’をなす.
    1) Rは加法について,可換群をなす.
    2) Rは乗法について,結合律(associative law)を満たす.
    3) 乗法は加法に対して以下のような分配律(distributive law)を満たす.(a, b, cはRの任意の元)
    4) Rは乗法に関して単位元eをもつ.
    ・4番目の条件は,流儀によって要請されない場合もある.4番目の条件を満たす環を‘ユニタリー環’と
    いう.
    (∀ a∈R,∀ b∈R,a+b=b+a)
    (∃e∈R ,∀a∈R ,e⋅a=a⋅e=a)
    a⋅(b+c)=a⋅b+a⋅c
    (b+c)⋅a=b⋅a+c⋅a
    (∀ a∈R ,∀ b∈R,∀ c∈R ,(a⋅b)⋅c=a⋅(b⋅c))

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  17. 17
    環のざっくりとした説明

    ‘ 環’とは整数世界 Z のように「足し算,引き算,
    掛け算が自由に行える構造をもった世界」と理解
    してよい.

    例えば ...
    – 整数全体の集合,有理数全体の集合,実数全体の集
    合,複素数全体の集合
    – さらに,以下のような集合も環である.
    S={a+b √2|a,b∈ℚ}

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  18. 18
    体の定義
    R を環とし,「 1 」を R の乗法に関する単位元とする.
    いま a R
    ∈ に対して
    となる元 x が R に存在するならば, a を R の‘単元’と言
    い, x を a の逆元と呼ぶ.

    そして,環 R の「 0 」(加法に関する単位元)以外の元
    が単元であるとき,これを‘体’という.
    ax=xa=1

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  19. 19
    体のざっくりとした説明

    要するに,環 R の「 0 」以外の元すべての集合( R-{0} )が
    乗法に関して群をなすとき, R を体という.

    端的に言ってしまえば,‘体’とは「足し算,引き算,掛け算,
    割り算がその集合内で自由に行える世界」のことである.

    例えば ...
    – 有理数の世界,実数の世界,複素数の世界
    – 集合 Γ = {1, -1}

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  20. 20
    まとめ

    無味乾燥な教科書ではなく,読み物としてもおもしろい
    – 多様な引用があり,教養も深められそう

    理解できていない証明があるので,じっくり考えたい
    – 初心者向けの数学コミュニティをご存知であれば,教えてください!

    2章以降の話題もスライドにまとめる予定
    – 素数
    – 合同式
    – ウィルソンの定理

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