2023/03/23 に 開催された「スクエアfreeセミナー」での発表資料です。 『登記所備付地図XMLデータ』に触れてみよう 〜法務省が公開した大規模オープンデータとは一体何なのか〜 と題して、2023年1月に法務省から公開された地図XMLデータの基本的な紹介をいたしました。
イベントURL(そのうち「過去開催」のページに移動するかと思います): https://www.opensquare.co.jp/free-seminar.html
『登記所備付地図XMLデータ』に触れてみよう〜法務省が公開した大規模オープンデータとは一体何なのか〜スクエアfreeセミナー #140 地図情報が世界を変える2023/03/23坂井 恵 (@sakaik)Twitterハッシュタグ#sqsemi
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「法務省が、なんか土地に関する情報を一挙に公開したらしいぞ!?」
自己紹介なまえ: 坂井 恵 (さかいけい)主なアカウント: @sakaik生息地域① : 日本MySQLユーザ会 (副代表)生息地域② : OSGeo日本支部 (運営委員)生息地域③ : 有限会社アートライ (代表)• 「(自称)超濃厚なニワカ」: 自分で言うのもアレですけど、興味を持つと しつこいです• 測量士補• 最近感動した本「位置情報エンジニア養成講座」• 良い本なのだけど、唯一の難点は「緑であること」(オンライン登壇的な視点で)
「法務省が、なんか土地に関する情報を一挙に公開したらしいぞ!?」もう一度。
今日は• 今後「登記所備付地図データ」の話題を目にするようになるかもしれません• 話題が出たときに「あぁあれね」とか「この部分が改善されたのか」などと分かるように思い出してもらえたら嬉しい• 人に話す機会があれば、ちょっと知ったフリができるように• 私が「面白い!」と感じたものをお伝えします。気楽に面白がって聞いていただければ嬉しい(今日の話は、ややIT技術者向けに寄せています)。※オンライン登壇って皆さんの反応が見えないので、かなり孤独です。TweetやZoomのチャット欄などで反応いただけると嬉しいですTwitterハッシュタグ#sqsemi
登記所備付地図データXMLがやってきた!https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00494.html
1月23日 登記所備付地図データXML公開!https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00494.html
登記所備付地図データ ダウンロード
このデータは何?• 全国の土地(敷地)の情報• エリア(位置と形)• 名前(地番)• 全国規模の「オープンデータ」• 一部界隈から大盛り上がり• ただし現時点では課題も多い• まずは公開されたことに対するリスペクトを• この段階で公開してくれたことで、実際に様々な動きが起こりました!
「法務省登記所備付地図XMLデータ」• いくつかの用語の理解が肝要。分解してみよう。• 法務省• 登記所• 備付地図• XMLデータ
登記所備付地図不動産登記法第十四条(地図等)登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。2 前項の地図は、一筆又は二筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を表示するものとする。3 第一項の建物所在図は、一個又は二個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番号を表示するものとする。4 第一項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付けることができる。5 前項の地図に準ずる図面は、一筆又は二筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を表示するものとする。6 第一項の地図及び建物所在図並びに第四項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録することができる。
登記所備付地図• 明治から脈々と続く権利情報• 検地・刀狩• 廃藩置県・地租改正• 「筆」の単位で管理• 地図の変更タイミング• 複数の筆をひとつにまとめたり• 1つの筆を複数の筆に分けたり• 最新状態確認のための調査、測量したり
登記所備付地図作成事業全国の、もっと正確な情報となるよう何年もかけて整備実施中https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00236.html
登記所備付地図XMLに含まれる情報• つまりは「筆」に関する情報 (権利情報は含まない)今ここ何番地? (法務省地図 on Maplibre)by 土地家屋調査士 白土洋介氏https://office-shirado.github.io/Moj_Maps/
AMX Project興味を持った人たちによる情報公開、情報交換、実証実験の場例えば:• データの再配布• ベクトルタイル公開• 地図上へのデータ表示• メタデータの解析などhttps://github.com/amx-project
「登記所備付地図データ」はどんなデータ?
登記所備付地図データの概要• XMLファイルである• 全国の「筆」の情報が含まれている• ポリゴン(土地の形と位置)• メタデータ(地番、精度区分、作成日等)• 全国分なので、とてもとても膨大なデータ• ファイル数は、県によってかなり差がある。• 最大の愛知県や千葉県で 16,000ファイル程度• 最小の沖縄県や香川県で 2,200ファイル程度
登記所備付地図データの概要• (私見) 登記所にあるあの地図をスキャンした程度、と考えると良いかな、と。(実際はメタデータがデジタル化されているのは勿論、位置(形)に関する情報もすべて座標情報としてデジタル化されています)• 最近調査しなおして、とても正確になっている地域もあるし• 明治の最初に描いたきりのエリアもある→ 基本的な考え方:紙の地図が持っていた以上の情報は持っていない特に期待しすぎちゃってる人に向けては
登記所備付地図データXMLの構造全体構造
空間属性(点)• 点(Point)の座標値が定義されている
空間属性(線)• 線(Curve)が、Pointをつなぐ形で定義されている
空間属性(面)• 面(ポリゴン;Surface)の情報が、Curveから構成されている
主題属性• 点、線、面、筆に関するメタ情報• 画像では筆の部分を紹介
図郭• デジタル化の元にした紙の地図に関する情報。
地図「XML」データご覧のとおり、• とても美しい構造(私見)• でも、このままじゃ使いにくい→ じゃぁどうしよう (つづく)
「座標」についてXMLファイルの中身を見てきたとおり、「座標」の情報を持つのは、原則として「点」のみ(一部例外あり)。座標は「緯度経度」だけではない!→さまざまな座標系備付地図XMLファイルで使用されている座標系は、日本の「平面直角座標系」である。
平面直角座標系• 2023/02/16 「来たぞ登記所備付XMLデータ(1)」にて詳説• https://speakerdeck.com/sakaik/moj-map-xml-data-digest• 正確に位置や距離を表すには球面上での計算が必要• でも球面上での計算って、すごくすごくすごく大変• → 平面に投影して、許容できる歪み範囲で利用しよう!• これが「平面直角座標系」です。ちゃんと日本の法律でも定められている、歴とした手法です• 日本を19のエリアに分けて、それぞれの「原点」を定め、その原点からのタテヨコの距離で座標を表す• もちろん、平面直角座標系の座標から、地理座標計(緯度経度)へ変換できる
(参考)平面直角座標系→経緯度への変換• 出典:国土地理院https://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/surveycalc/algorithm/xy2bl/xy2bl.htm
公共座標系と任意座標系登記所備付地図XMLデータの座標表現には以下の2つがある• 公共座標系• 平面直角座標系の座標値で表されたもの• (1~19系の(自身が含まれるエリアの)原点からのタテヨコで表したもの)• 任意座標系:• その地図内で適当に原点を定めて記述されたもの• 当然、日本地図上のドコに乗るかは、これだけでは分からない• 「精度区分」値が示されているデータは平行移動のみで正しい位置にマッチさせることができそう(坂井独自調査)※今回公開された地図XMLデータでは、この「任意座標系」のデータが非常に多い(地域差あり。最低の千葉県では87%が任意座標系であり、逆に最高の沖縄県では4%程度。
地図「XML」データご覧のとおり、• とても美しい構造(私見)• でも、このままじゃ使いにくい→• (1)変換して使うか• (2)変換されたものを使うか話を戻します
地図XMLデータ:自分で変換したい場合• デジタル庁コンバータ• 地図XMLファイルを GeoJSONに変換• https://www.digital.go.jp/news/4b7250a3-3fcf-4b83-8d52-4bb131e1ba9d/• 坂井ツール• 地図XMLファイルを GeoJSONに変換• https://github.com/sakaik/kuwanauchi_xml_digest/tree/main/scripts
坂井ツール(mojxml2json.py)の使い方動作環境:Python (>=3.8)が動作する環境• GeoJSONに変換したい ZIPファイルたちをフォルダに集める• 中にXMLファイルがひとつだけ含まれているZIPファイル• mojxml2json.py と xy2do.py の2つのファイルを取得する• https://github.com/sakaik/kuwanauchi_xml_digest/tree/main/scripts• 入力フォルダと出力先フォルダを指定してスクリプト実行• 例: $ python3 mojxml2json.py ./datafolder/ ./outputfolderたったこれだけ!デジ庁ツールとの違いは• 環境の用意がシンプル• XMLファイルではなくZIPファイル群のフォルダを指定• 「代表点」情報を含んでいない(残念)• その他、多少のメタデータが多め• 任意座標は勝手に変換しません
変換済のデータを使う場合AMX Project の amx-a• ベクトルファイル配布• PMTiles形式など• https://github.com/amx-project/a-spec
活用事例(フロント)• 今ここ何番地?• by 土地家屋調査士 白土さん• https://office-shirado.github.io/Moj_Maps/• MAPPLE法務局地図ビューア• by マップル さん• https://labs.mapple.com/mapplexml.htmlその他いろいろ!プログラム書ければ、誰でも作れる! 誰でも試せる!
記事紹介最近、登記所備付地図XMLに関する記事も出始めました。INTERNET Watch (2023/03/15)『「登記所備付地図」の電子データを法務省が無償公開→有志による「変換ツール」や「地番を調べられる地図サイト」など続々登場』https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/chizu3/1485850.html※ AMX Projectの活動が紹介されています。
さいごに
坂井の提言• 1年単位ではなく、最初は特にこまめな更新を!• まずは形式的なミスを適宜直してほしい、直したい• 入力項目を誤って登録したもの(使用プログラムとバージョンが逆、など)• 任意座標系の値なのに「公共座標系」として誤って公開されているもの• ファイル内の文字化けの排除• フィードバックの窓口の明確化を!• 今のところフィードバック先はないと認識• データの正確性への進化の道を!• (これは上2つに比べると少しずつ進化していければ良い)• 精度区分なしのデータファイルの精緻化• 図郭分裂筆の統合• 任意座標系から公共座標系への移行
まとめ• 「法務省登記所備付地図XML」が公開された• XMLファイルの中身は、点から線、面へと積み上げられ、面に対して、地番等のメタ情報が紐付けられている• XMLのままでは使いにくいので、GeoJSONやベクトルタイル等に変換して使用する• 座標系には、任意座標系と公共座標系がある。この地図XMLには任意座標系が多いのは今後の進化に期待。• データがオープンになったので、様々な試みが広がっている