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難題に挑むデータアナリティクス: 意思決定を支える分析の舞台裏 /Data Analytics...

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February 18, 2025
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難題に挑むデータアナリティクス: 意思決定を支える分析の舞台裏 /Data Analytics Tackling Tough Challenges: Behind the Scenes of Decision-Supporting Analysis

2025/02/14開催 "ZOZO Tech Meetup ~データサイエンス~" にて発表した資料です。
https://zozotech-inc.connpass.com/event/342873/

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Kousuke Tachibana

February 18, 2025
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  1. © ZOZO, Inc. 株式会社ZOZO AI・アナリティクス本部 ビジネスアナリティクス部 データサイエンスブロック 橘 孝祐 たちばな こうすけ 2022年5月

    分析未経験で中途入社 、2年10カ月目 趣味: ランニング、登山、ロードバイク 最近の難題: 注文住宅の要件定義とすり合わせ 2
  2. © ZOZO, Inc. 9 難題をかみ砕いてみる:事業的複雑性 解が見えているかどうか?社にとっての重要度や関係者の多さを総合的に考慮 事業的複雑性 大: 社としての重要度が高い、 かつ解くべき問の自由度や抽象度が高い

    社内外の関係者をも巻き込んで推進していく 中: 解くべき問の自由度や抽象度が高い 社内関係者が複数部署 小: 解くべき問が見えている 関係者も少なくいわゆる「定番」案件
  3. © ZOZO, Inc. 12 事例①:案件概要 送料無料CP • 不定期で税込み◦◦円以上のお買い物で送料が無料になる施策 ◦ ◦◦円は2025年1月末現在で12,000円

    ◦ 送料は2025年1月末現在で330円 • 関係部署は1つのみ(マーケティング本部) 求められている効果検証内容 • 施策効果はどれくらいであったか?(純増金額、ROAS) • なぜその施策効果の大きさとなったか?(解釈性) • これまでの送料無料施策と比較してどうだったか?
  4. © ZOZO, Inc. 13 事例①:なぜ難題であったか? ①A/Bテストができない施策である • ZOZOTOWN全体施策のため、A/Bテストを行うことがユーザー体験を損なう可能性がある • A/Bテスト用に諸々を整えるのに開発コストがかかる

    ②非エントリー型の施策である • ユーザーが施策を意識して購入したかどうかがはっきりとは分からない 技術的新規性:中 事業的複雑性:小 過去の手法そのままでは解決できない 関係部署は一つかつ問いも明確
  5. © ZOZO, Inc. 14 事例①:これまでのアプローチ • 午前中の実績を元に午後の反実仮想の値を算出 ◦ 施策開始時間が12時だった際に用いていた手法 ◦

    ◦:当日の施策状況を忠実に反映できる ◦ ✕:施策開始時間が0時の場合は使用不可 実績-反実仮想 = 純増 (青-赤がプラス) ※図の数字は本資料用のダミーデータです
  6. © ZOZO, Inc. 18 事例①:こう解決した_詳細 ③実績-反実仮想から純増効果を算出 ⇐純減 (青-赤がマイナス) ⇒純増 (青-赤がプラス)

    各価格帯別の純減と純増を合計して 施策全体の純増とする ※図の数字は本資料用のダミーデータです
  7. © ZOZO, Inc. 19 事例①:今後の課題 前提としている仮定が強いことによる制限 • この手法は「送料無料CPで変化するのは単価のみ」という強い仮定を置いた上での純増算出 ◦ 「施策が無ければその日に買わなかった人」の純増は考慮できていない

    • 一方で、純増が少なくともこれくらいは出ている というベースラインは出せている ◦ 実施回毎に同じ手法で結果を出すことにより、相対的にどうだったのか?の評価は可能 過去に例のない状態になった場合に反実仮想が予測不可能 • コロナのような購買行動全体に影響を及ぼす場合 • 商品価格の大幅な高騰など受注価格に影響を及ぼす場合 ◦ 過去の実績がアテにならなくなる
  8. © ZOZO, Inc. 22 事例②:案件概要 受け取り辞退に対する対策提案 • 配送された商品がお客様の元に届いたものの、受け取り辞退されるケースがある • その後は配送業者様からZOZO倉庫に返却となる

    ◦ 出荷コスト、返却対応コストなどがかかる • 商品代金をお客様からお受け取りすることができない ◦ 事前に決済されていた場合は返金となる ◦ 代引きや後払いの場合はもちろん請求はできない 求められている効果検証内容 • 受け取り辞退の現状を分析し、受け取り辞退を減らす対策の提案をしてほしい • 対策を行った場合のコスト削減額はもちろん対策実施による売上毀損も考慮してほしい
  9. © ZOZO, Inc. 23 事例②:なぜ難題であったか? ①解くべき問の自由度や抽象度が高い • まずは現状を把握する必要がある • その後、現実的に実施可能な対策案を模索する必要がある

    ②提案までのプロセスが多段階になる • 現状把握、対策案立案、対策実施時のコスト削減・受注影響を踏まえた効果算出 技術的新規性:小 事業的複雑性:中 手法自体はデータ収集とまとめ 問いの自由度や抽象度が高い
  10. © ZOZO, Inc. 25 事例②:こう解決した_詳細 ⓪対面する事業部とのコミュニケーションを要所要所で密に実施 • 肌感覚ベースの情報や対策を現実的に実行可能か?という観点のヒアリング • 認識のズレが起こらないよう、質問シート形式で記載してもらう形に

    • 社内ということもあり、コミュニケーションの敷居はそれほど高くない コミュニケーションを密に実施した結果 • 現状分析についてアテができた ◦ 受け取り辞退をしている人は代引きや後払い決済が多いかも? ◦ ゲスト購入の受け取り辞退が多いかも? • 不要なシミュレーションを事前に防ぐことはできた ◦ ◦◦という対策は△△という観点で現実的に難しいので、試算まで行う必要はないかもです
  11. © ZOZO, Inc. 26 事例②:こう解決した ①得られた情報を元に現状分析を実施 • ユーザー軸 • 決済軸

    • 分析結果については社内情報となるため、今回は割愛とさせていただきます ②現状から考えられる対策案の検討 • 対策案については社内情報となるため、今回は割愛とさせていただきます ③対策案を実施した場合のコスト削減額をシミュレーションとして算出 • コスト削減額と対策の影響で売り上げ毀損となる額を考慮して算出 • 厳密にはわからないため、不明部分は変数でパラメータ化することで総額を幅で算出 • 具体的なシミュレーション結果は社内情報となるため、今回は割愛とさせていただきます
  12. © ZOZO, Inc. 28 本日のまとめ 難題の定義 • 技術的新規性×事業的複雑性 • それぞれ3段階で定義

    難題の事例 • ①技術的新規性が高い例:送料無料CP ◦ これまでのアプローチが使えないため、生データから再度アプローチ検討 ◦ 強めの仮定を置きつつも一定以上の質で純増を算出する手法を考案 • ②事業的複雑性が高い例:受け取り辞退に対する対策提案 ◦ 密にコミュニケーションを取り、自由度の高い分析の方向性を固めた