M5Stackのコミュニティを題材に、書籍「遠くへ行きたければ」の内容を深彫していく https://hackcamp.jp/events/seminar/cocreative-switch/
コミュニティの書籍「遠くへ行きたければ、みんなで行け」内容紹介となぜ出版したかM5Stack,オープンハードウェア,ハードウェアハッカー高須正和スイッチサイエンス国際事業開発ニコ技深圳コミュニティ共同発起人开源社(中国オープンソースアライアンス)早稲田ビジネススクール大公坊創客基地(iMakerBase)ガレージスミダ研究所
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自己紹介 事業/研究/コミュニティ深圳ほか世界各地のパートナーを開拓し、先進的な開発ツールを輸出入・共同開発、投資,企業間提携などを行う。大公坊創客基地,MakerNet等の中国企業で海外向け事業開発を事業:スイッチサイエンス他 グローバルビジネスデベロップメント研究/布教:早稲田ビジネススクール招聘研究員/非常勤講師「深圳の産業集積とマスイノベーション」開源社(中国最大のオープンソースアライアンス)ニコ技深圳コミュニティ Co-founderほか、様々なコミュニティ事業=仕組みになっていて利益を生むもの事業開発=事業を作ること研究や布教=講演や執筆などで少しはお金になるけど、基本的には仕組みになりづらいもの2008~11年間で39都市107回のメイカーイベント参加ほか、浜野製作所のガレージスミダ研究所 主任研究員、コミュニティ=社会的な価値が生まれる前、事業や研究でもできないところをやる面白ければ仲間が増えるし、熱が冷めると終わる
今日のテーマ モノづくりとコミュニティ・中国人が自分がほしいオープンハードウェアを作ったら、なぜか日本でコミュニティができて、たくさん売れた。・高須の仕事は、そういうコミュニティのまわりでできている。・作ることで人が集まってくる・見落とされがちだが、どう協力できる仕組みを作れるかが、多くのビジネスで大事・特に本人がクリエータぽいCEOなほど、自分が本気でほしいマニアックなものを作ったほうが、成功に近づく・スタートアップがシェア探しに行くとだいたい失敗するので、先にモノ作って興味を示してくれる人がどこにいるか探したほうが良い
M5Stack(2018年日本発売開始)・社長ジミー・ライは、もと中国南方電網のエンジニア・しょっちゅうスマートメーターを開発している間に、「多くのメーターに共通する機能を製品にしよう」と思いついて起業・社長室に専用の部品ボックスと作業台を起き、プロトタイプを自分で作る。いつも身の回りには試作品が転がっている・Arduino IDEが利用可能で、IoT開発に必要なwifi/BTをあらかじめ備えたESP32シリーズのCPUを採用した開発ボード。日本でもArduinoを置き換える勢いで普及が進んでいる・画面、バッテリ、ボタン、Grove,GPIOなどを備え、安価(1500-5000円程度)・毎週1つ以上の新ハードウェア/センサー類を発表し、拡張性が高いオープンソースハードウェア(部品リスト,ピン番号などの開発に必要な情報があらかじめ公開されているハードウェア)買ってくれば使える。ソリューションを開発する上でM5Stack社の取引開始稟議書、審査や許可が要らない。必要な情報はオンラインで公開されている
NTT研究所のIbuki 山口大の密回避システムNHK研の触覚デバイス全日本学生児童発明くふう展で特許庁長官賞(11歳)深圳M5Stackの大成功企業の研究所から小学生の発明まで、2018年の発売開始から現在も成長中
クローズアップ現代 「ものづくりxAI」特集 2021年10月20日放送これらの開発ボードは深圳M5Stack社(社員50名,日本発売開始2018年)の製品弊社スイッチサイエンスは日本での販売責任代理店ソリューションを販売しているのが日本の高専発startup
開発ボードという製品マイコンチップ、無線機能、I/O端子などをひとまとめにしたもの用途や価格に応じて多様なボードが存在する利用者はソリューションを開発するエンジニア、IoTシステム開発を学ぶ学生など代表的な開発ボードRaspberryPi(英国)などを使って開発・適合するセンサを選ぶ・センサーを処理するソフトをつくる・動作確認の画面をつける・ケースを3DプリンタなどでつくるM5Stackシリーズを使って開発完成までまだまだ、本質(ドアセンサー)以外の時間がかかる..完成。アイデアの検証ができる!(Proof of Concept)M5Stackシリーズは 「アイデア→実際に作ってみて試す」までの時間を最小化する例:入退室を記録するシステムを開発する
M5Stack成功の原因■何よりも、安心して使えるオープンなハードウェアであること-ソリューションを開発する上でM5Stack社の取引開始稟議書、審査や許可が要らない-必要な情報はオンラインで公開されている■現役エンジニアならではの優れた製品企画-プロトタイプ開発を圧倒的に早くするオールインワン(バッテリ,LCD,ボタン,無線)■深圳ならではの開発・製造力-プロトタイプから工場のDXまで、様々な用途に対応するセンサー、周辺機器-1000個単位のフレキシブルな自社製造ラインと、深圳で設計開発することによるサプライチェーンが可能にする超高速な製品開発(毎週1つ以上新製品発売)■それらが組み合わさった魅力的な製品と、ユーザーの支持やフィードバックが生んだコミュニティM5Stackユーザのコミュニティは、日本のユーザが中心になって作り上げた
M5Stackとスイッチサイエンス,日本ユーザの関係日本での総代理店M5Stackシリーズの販売は今も日本が最大日本30%,US25%,中国20%,ほか5%「先進的な開発ツール」について、日本は今も大きな市場(中国やアメリカのエンジニアは、一度流行ってからじゃないと買わない)2018年メイカーフェア東京でスイッチサイエンスと共同出展するM5(弊社はM5Stackに資本参加しています)同社のパートナーには弊社スイッチサイエンスの他にもSORACOM,Softbank等日本企業が並ぶ
成功のカギは「コミュニティ」モノが良いことだけでなく、安いこと、どこでもちゃんと買えること、情報が多いことは、モノと同じぐらい大事。アイデアだけも製造だけでも社会は変わらない3年間で17冊の関連本200名以上が集まるユーザ会各大学・電子工作ショップで買える
弊社/僕がとった投資とリスク■時間や工数の投資/リスク-世界でも無名な、オール中国製の製品に注目し、マーケティングをした-日本でのユーザコミュニティ活動支援-全製品での日本での法規対応等コンサルティング(日本法規NGなものは入れない、日本で売れそうなものは共同リリース等)-マレーシア、タイ、シンガポール,US,UK等の提携先ネットワークをシェア■事業面での投資/リスク-日本での総代理店(卸売とカスタマーサポート含む)-ごく少額の投資(M5Stackは創業資金を米有名VCであるSOSventures/HAXから入れているので、後から弊社みたいな小企業が入るときにいろいろ説明する必要があって面倒だった)■財務面での投資/リスク-中国からの仕入れ時は前払い、日本の販売時は請求書払対応スタートアップ協業/投資との醍醐味「一緒にプロダクトを大きくするチーム」
コミュニティについてもっと深く知りたい#遠くへ行きたければ本の内容紹介
#遠くへ行きたければ 本の内容300ページ以上ある厚い本だが、内容が具体的で細かいだけで、大意はシンプル最初の100ページ・コミュニティとはどういうものか何ができるか、人々はなぜ参加するか・コミュニティの性質(いっしょに何かを作る、ファン同士で交流するなど)後半の200ページ・コミュニティをつくり、運営していくための具体的で詳細なガイドライン・企業がコミュニティやる上でのよくある失敗などのケースガイドライン・コミュニティ構造の理解(コアメンバーとカジュアルメンバ、導入路の設計やコミュニケーションルール)・詳細な実施ガイドラインミッション(大きな目的)→ビッグロックス(ミッションを数字と結びつける)→担当者がアサインされた四半期実施計画→報告書のフォーマット
豊富で詳細な具体例人がコミュニティに入っていく図 カジュアルメンバー、レギュラーメンバー、コアメンバー半年ごとにやる仕事をリストアップしよう、レビュー日付を入れようコミュニティ/ボランティアだからふんわりやるのは間違いで、数値計画とレビュー計画ガッツリたて、数字を週次で追い込み、関連メンバーや上司に説明するのが超大事みたいなことが書いてあるのがとても大事
もともとプロ翻訳者でもない僕が、なんで「遠くへ行きたければ」の翻訳をしたのか?
最初の翻訳書「ハードウェアハッカー」「ハードウェアをどう作るか」という問いから、世の中すべての仕組みにつながる普遍的な問題を、他にない解像度で解き明かすものだった。有名な本ではないが、間違いなく人類をアップデートする本で、「翻訳のプロでもない自分が、翻訳出版する価値のある本」だと考えた。翻訳してどうだったか監訳の山形浩生さんが、「コイツ、頭おかしい…(いい意味で)」と言った内容なので、すごい本なのはお墨付き当時、チームラボからハードウェアの会社スイッチサイエンスに転職したばかりの僕にとっても意味があってハードウェアに詳しくなれ、MITの合宿でメンターがやれた
#遠くへ行きたければリスクを取って、オープンハードウェアでコミュニティを作ったことで、M5Stackの仕事で成功した。オープンとは?コミュニティとは?を追いかける伽藍とバザールから#遠くへ行きたければ
中国のオープンソースイベントで、技術そのものに加えて、「いかに、やりたがるやつを会社の枠を超えて参加させていき、プロジェクトを良くしていくか」という話が盛り上がっていたApache way=Community Over Codeコミュニティはコードを超えるどういう社会が、文化が、コミュニティが「好き勝手やることの社会貢献」を生むのかどうやってエンハンスするのかキーマンの一人は、ゲストリストの筆頭にいたJono Bacon(X-PrizeやUbuntuでコミュニティやってた)People Poweredを知ったきっかけ
#遠くへ行きたければ の原書「People Powered」をチェックする
Amazonでの人気Great Kindleシリーズに入ってるレビュー98(「僕にはそれが楽しかったから」が215,伽藍とバザールで168, ハードウェアハッカーで115なのでおおむね同クラス。 MAKERSで330,Factfulnessで1万なので、一般向けの本よりは少ないが、無視できる数字ではない)推薦者Linux Foundationのジム・ゼムリンGitHub CEOのNat FriedmanRed Had CEOのJim WhitehurstマイクロソフトCTOのKevin Scott「怪しい伝説」のジェミー・ハイネマンYcombinatorのGia Scintoなど、「ちょうど日本にない産業」の人たちが絶賛している#遠くへ行きたければ の原書がアメリカでどのぐらい人気か
#遠くへ行きたければ の英語版は、僕の前の翻訳書「ハードウェアハッカー」ぐらいの人気なので、良い本だけど日本語版が出るかは微妙。技術評論社に聞いてみたら、翻訳権はあいていて予定がないという。前著「アートオブコミュニティ」は日本語版出てたけど、2018年出版の「遠くに行きたければ」の予定がないということは、このままだと日本語版出ないだろう。「やろう」と思った
#遠くへ行きたければ 翻訳を始めてみて、-良い内容だが、突拍子もないものわけじゃない。ハードウェアハッカーは「読むだけで凄さがわかる」本だが、 #遠くへ行きたければ 手を動かさないとフツーの本に見えてしまう。-2021年4月17日に、Code for Japanの関さんや日本のOpenChainグループと「身も蓋もない日中オープンソースの話」というイベントをし、関さんがそこで「伽藍とバザールとオープンガバメント」という発表-「これだ!」と、解説や序文の内容がおもいつく
並行して、中国最大のオープンソースアライアンス「開源社」にもコミットしていく オープンソースの最前線は?-オープンソース活動を中国で盛り上げるための団体-年1回のCOSCON開催-年1回のレポート発行-ほかハッカソンや様々なイベントなど-公式wechatアカウント、ビリビリ動画のチャンネルなどで情報発信-メンバーは理事2名の推薦、その後メンバー全員の選挙で決まる 現在100名程度政府関係者、大学教授、アリババやHuaweiなどのOSPO,VSCodeの中国ユーザグループ、起業家やファンドなど(今のところ高須は唯一の外国人メンバー)中国全体では、オープンソースへの理解はまだまだなので、布教活動をしていくのが役割
「開源社」各ワーキンググループグループ⾧マイクロソフトリサーチアジアでReactorのプロジェクトマネージャグループ副⾧SegmentFault(技術コミュニティ)COOグループ秘書 ポスドクシステム運営 freeCodeCamp成都法務VC(中国国営自動車会社の知財ファンド) アナリストメディア PRマネージャイベント⾧ Huawei AI大会の運営&Evangelistイベント副⾧ Huawei AI大会のエコシステム管理コミュニティ連携Datawhaleスタートアップ CEOコミュニティ連携 副⾧インフルエンサー大学連携/OSS教育師範大学教授メンバー開拓 webエンジニア財務 大企業の財務部⾧顧問委員会開拓 マイクロソフトのAI製品マネージャコミュニティ連携、顧問開拓、システム維持などのワーキンググループごとに知見のあるメンバーがプロボノ的に運営している 本業と開源社での活動がリンクしてる人が多い
COSCONイベントでは優秀メンバーの表彰も高須も「コミュニティ連携の星」【やったこと】-このOSCやシンガポールFOSSASIAなどで開源社/中国オープンソースの活動紹介-中国開源年度報告等のレポート日本語翻訳-中国のメイカーフェア、メイカースペースなどに開源社を紹介し、無錫ではCOSCONのサテライト会場に(中国人がみんなOSSや開源社を知ってるわけでなくて、むしろ知らない人のほうが多い)-COSCONハードウェアトラックでの登壇、中国でのメイカーフェア等で開源社の話を紹介-少しは中国語を勉強しています 2021年、中国での発表は中国語に(それまでは英語でやってた)【開源社の表彰コメント】高須正和氏は、中国のオープンソースコミュニティに深く関わる国際的な友人であり、开源社の最初の、そして現在でも唯一の外国人正会員となっています。毎年開催される「オープンソース・ハードウェア・フォーラムCOSCON」に参加して以来、オープンソース協会が発行する「中国オープンソース年度報告」の日本語版を翻訳するなど、オープンソースコミュニティの普及に積極的に取り組んでいます。様々な国際的なオープンソースイベントで、开源社をアピール。 また、オープンソースのコミュニティグループや毎年開催されるオープンソースカンファレンスでは、積極的に中国語を学び、中国語でコミュニケーションをとっています。开源社の国際協力大使とも言えるでしょう。
#遠くへ行きたければ 出版プロジェクトのゴールこういった本の内容が広まり、日本からCode for Japanみたいな活動やM5Stackのような事例がもっとたくさん出てくるようになること
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