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書を持って、自転車で町へ出よう

Yuritaco
December 13, 2024

 書を持って、自転車で町へ出よう

Yuritaco

December 13, 2024
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  1. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 今の時代、贅沢とはモノを持つことではない。 ひと昔前ならメルセデス・ベンツに乗ることは贅沢 のきわみだった。 (中略)わたしの場合の贅沢とは簡単だ。楽しみ方を 教えてくれる人、快感を伝えてくれる人と過ごす時

    間が贅沢と言える。例えば山を散策する時、ひとり で歩いてもおもしろくはない。汗はかくし、足は疲れ る。苦しいだけだ。 ところが素晴らしい同伴者がいるとたちまち黄金の 時間に変わる。 ” “ 『ニューヨーク美術案内』 千住博 野地秩嘉
  2. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) とても共感する。ただし、私は、、、 内向的 視覚優位 • 人からずっと話を聞いているのは苦痛

    • もっと自分で内省する時間がほしい • 話(聴覚情報)を聞くのは得意じゃない • 聞くより見るのが快楽 私が最も贅沢だと思うのは、本・映画・ポッドキャストなどから 情報を入れながら、知らない土地を、ひたすら自転車で移動すること
  3. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 目 次 1. 私の考える贅沢 2.

    私の贅沢遍歴 3. 贅沢事例:ベトナム自転車旅行 4. 贅沢して考えたこと
  4. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 目 次 1. 私の考える贅沢 2.

    私の贅沢遍歴 3. 贅沢事例:ベトナム自転車旅行 4. 贅沢して考えたこと
  5. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 贅沢ポイント 美しい風景 最高の没入感 本などを読むことで風景が シネマティック

    冒険のワクワク感 いくら食べても 罪悪感ゼロ VRよりイマーシブ 携帯電話、何にも干渉さ れずにひたすら風景 その土地の歴史、文化、 そこで生きた・生きる 人々を知ることで、風景 がよりシネマティックに 解説つきの歴史写真み たいな感じ 知らない場所、何が起こ るかわからない、子ども のときに感じていた冒険 のワクワク感 自転車で漕ぎ続けるの で恐ろしい消費カロリー =いくら食べてもOK
  6. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 目 次 1. 私の考える贅沢 2.

    私の贅沢遍歴 3. 贅沢事例:ベトナム自転車旅行 4. 贅沢して考えたこと
  7. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 現在(‘24年末) ‘22年お盆休み ‘23年お盆休み ‘24年GW ‘22年年末

    名古屋→東京 3泊4日 大島 2泊3日** 台湾 6泊7日 ベトナム 7泊8日 妻・娘の実家帰省のタイミングを活用し、自転車旅行を断行* *妻には大変感謝しています; **フェリー1泊
  8. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) ‘24年GW ‘22年年末 名古屋→東京 3泊4日 大島

    2泊3日 台湾 6泊7日 ベトナム 7泊8日 ベトナム旅行の行程や思ったことを共有したい 現在(‘24年末) ‘22年お盆休み ‘23年お盆休み
  9. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) なんでこんな個人的な旅行のことを共有したいか、、、 楽しかった 自分と似た人向けに 贅沢を提案したい 忙しいパパ向けに

    越境体験を提案したい 純粋に楽しかったので誰かと 共有したい そして自分の楽しい思い出を 整理したい 「もの」から「こと」への価値転 換の中でも、その人の特性 (例:内向的、視覚優位)に応じ た「こと」の例が示されていな いよう感じた 忙しいパパでもできる越境体 験の例を提示して、社会人・パ パになってからも越境体験が 社会全体として増えることを 1mm促進したい
  10. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 目 次 1. 私の考える贅沢 2.

    私の贅沢遍歴 3. 贅沢事例:ベトナム自転車旅行 4. 贅沢して考えたこと
  11. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) なんでベトナムなのか、、、偶然→後付けで運命 偶然、ホーチミン・ルート 自転車旅行を発見 思い出の場所 何か、海外で面白い自転車ルートないかなと

    ググっていたら、偶然、ホーチミン・ルート(ベトナ ム戦争時の北ベトナム側の補給ルート)を発見 なぜかワクワク 12歳のとき、国境なき医師団(国際的なNPO) の子どもレポーターとしてベトナムを訪問。ストリ ートチルドレンと接しショックを受けた 大人になって、もう一度、ベトナムをゆっくり見て、 思い出に浸り、考えを巡らせてみたかった 出所: https://www.cyclingvietnam.net/package/cycling-ho-chi-minh-trail/; https://pedalpowertouring.com/world-cycle-tour-blog/vietnam/cycling-the-ho-chi-minh-trail/
  12. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 自転車 鉄道 飛行機 手段 行程

    自転車 走行距離 Day 1 飛行機でハノイへ入国 Day 2 自転車を漕ぎまくる ハノイ→ニンビン 100km Day 3 自転車を漕ぎまくる ニンビン→Tho Xuan 100km Day 4 自転車を漕ぎまくる Tho Xuan→Thai Hoa 120km Day 5 自転車を漕ぎまくる Thai Hoa→Vihn 夜行列車でVihnからフエまで移動 100km Day 6 フエ観光 10km Day 7 自転車で空港へ 飛行機でフエからホーチミンまで移動 20km Day 8 飛行機でホーチミンから帰国 計450km Day 2 Day 3 Day 4 Day 5 Day 6 Day 7 © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ)
  13. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 自転車は 日本から携行 荷物は最低限 ルートは 移動しながら

    ホテルは 2泊先までとる クロスバイク(ロードバ イクではない)を、 Amazonで数千円で 買った輪行袋にいれて 持参* 背負いながら走れるバ ックパック一つ 汗をかきまくるので、 外着は一着のみ、毎日 洗って干す Google Mapで、逐次 次の町までのルートを 検索 交通量と田舎度合い (野犬いない)を天秤に かけ勘でルート選択 ビリヤードと同じで、最 後の手までイメージし つつ、具体的には2手 先までは考えておく 旅の進め方 *多くの航空会社で通常の預け荷物として預けることが可能
  14. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 旅行のハイライト② ホーチミン・ルート、そしてホーチミンに思いを馳せる ホーチミン・ルート博物館 @ハノイ ホーチミン廟@ハノイ

    ホーチミン・ルート ・マイルストーン@ゲアン省 Ho Chi Minh: A Life William J. Duiker 著 ホーチミン・ルートを走り ホーチミンの史跡を訪れ ホーチミンの本を読む ホーチミン生家@ゲアン省 ホーチミン・ルートはジャングルの中の補給路なので現在は存在せず、その近くの国道をひたすら走っていただけで、実際のホ ーチミン・ルートについてイメージが具体化されたわけではなく、何か面白い発見があったわけではありませんでした。 ただし、道中読んでいたホーチミン氏に関する本が面白かったです。ホーチミンは、欧米では手垢のついた人物で、なかなか客 観的な評価が難しい人物ですが、今回読んだホーチミンの本は、アメリカ人によって書かれた、彼の人生を丁寧に描いた本でし た。特に彼の人生から刺激を受けたのは、今から見るとスーパー未知な世界に飛び込んでいく姿です。20代のころ、欧米の政 治・経済・社会をじかに見にいくために、フランスの商船に乗り込んで、石炭をくべたり、コックをしながらフランスを目指しまし た。しかも船にのっていた期間は2年です!その間にフランスのみならず、アメリカや西アフリカを訪問しました。当時、仕事を やめて渡米を控えていた私としては、ホーチミンに比べれば自分の挑戦なんてノーリスクだと励まされました。 ホーチミン・ルートを走り ホーチミンの史跡を訪れ ホーチミンの本を読む
  15. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 旅行のハイライト④ 旅行の中で見た映画が泣けた シリーズ7まで制作されている、ベトナムで大ヒットの家族ドラマ映画。な んと英語字幕で上映されていたのでたまたま見ました。 ストーリーは、田舎で一人暮らしをしている73歳のおばあちゃん(左の絵

    の中央上)が怪我をしてしまい、怪我の療養中は誰かの助けがいるので、 5人の子ども夫婦(左の絵の下)の家を順番に回るという話。 まさにベトナム版『東京物語』で、最初は子ども夫婦から邪見に扱われます。 世界共通なんですね。ただし、『東京物語』との違いは、ちゃんと家族の絆 が再生され、ハッピーエンドになっている点。 ベトナムでも、都市化、核家族化が進み、田舎的な濃い人のつながりをベ ースとした生活習慣・文化と、都市的・西洋的なそれが衝突をしている様子 が垣間見れてとても面白かったです。そしてストーリーもしっかりできて おり、観客を泣かせる場面もうまく作りこまれており、ベトナム映画のクオ リティの高さに驚きました。 ちなみに、ハノイで暮らす長男夫婦の生活は、きれいなマンションに今時の ファッションで韓国ドラマの一場面かと思うほど洗練されていたのが印象 に残っています。
  16. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 目 次 1. 私の考える贅沢 2.

    私の贅沢遍歴 3. 贅沢事例:ベトナム自転車旅行 4. 贅沢して考えたこと
  17. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 自転車旅行の醍醐味とは レヴィ・ストロースの『悲しき熱帯』では、アマゾンで原住民 の集落を訪れ、過酷な調査をしている最中、自分が好きで もないショパンの旋律が頭の中で繰り返されることを不思 議に思います。そして、ストロースは自分の身体的な疲労

    や孤独感を越えて、人間の心の中で文化や記憶がどのよう に作用するかを観察しています。 そう、自転車旅行の醍醐味とは、過酷な状況下で、存分に 考える時間があるなか、自分の中でどのような思考が織り なされるか観察することだと思います。
  18. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 旅行中に考えたこと① グローバルスタンダードは退屈、、、でも批判するのは? 旅行中、ベトナムのPodcastを聞きながら自転車を漕いでいました。ベ トナム在住のイギリス人がベトナムのイケてる起業家やデザイナーに英語 でインタビューするという番組でした。ただし、正直あまり面白いと思い

    ませんでした。みんなグローバルリーダーみたいなことを言うのです。 サステナビリティが大事、DEIが大事、テックで社会をよくする的な。も ちろん、その主張自体には同意しますが、聞き飽きた紋切り型の主張に 辟易としてしまいました。 ただし、彼らを批判するのは間違っている気もしました。彼らが近代化し ていく中で、西洋的な価値観を強めて発展していくのは全く自由です。 批判したくなった根っこには、自分の中にベトナムの中にエキゾチックな ものを見たいという欲望があり、もっと土着的な価値観を持っててほし いと勝手に思ってしまっている自分に気づきました。 日本人である自分は、オリエンタリズム批判をする側でだと思っていまし たが、される側にもいとも簡単に回ってしまったことに驚きました。「撃 って良いのは、撃たれる覚悟のあるやつだけ」です。
  19. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 旅行中に考えたこと② 犬に吠えられると怖い。犬がみんな怖くなる 旅行中、何度も犬に追いかけられました。野犬ではなく番犬です。ベトナム の田舎町に行くと、防犯上の理由から番犬が道路に放たれています。私の ような自転車旅行者は格好の餌食で、道中、犬を見つけるといつも目をあ

    わせないように、何食わぬ顔で横を通りすぎようとするのですが、半分く らいの確率で「ワンワン」とすごい勢いで追ってきます。不審者を追い払う のが目的で、さすがに噛みつかれることはないのではと頭では理解して いますが(実際嚙みつかれるませんでした)、怖いです。これはホモサピエ ンスが持っている動物としての記憶に紐づく原始的な怖さです(ヘビの鳴 き声が怖いと感じるのに似た怖さです)。 しまいには、都市部のペット犬も怖くなります。すべての犬が追いかけてく るのではという妄想に取りつかれます。今思うと滑稽ですが、実際、行き たいレストランの前に犬がいたので、その店に行くのを諦めたことがあり ました。そのとき思いました。不謹慎な話ですが、ゲリラ戦を戦う軍人は、 似た恐怖を感じていたのではないかと。普段は温厚な民衆の中に、突如攻 撃をしかけてくる勢力が紛れ込んでいる怖さ。誰も信じられない不安感。 自転車旅行で何に一番感情を揺さぶられたかというと、圧倒的に犬です。
  20. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) 旅行中に考えたこと③ そして、ストリートチルドレンはいなかった 12歳のときに訪れた90年代後半のホーチミンにはストリートチルドレンがあふれていま した。ホテル街を歩くと、物乞いをする子どもがお金をくれと群がってきました。その姿 にショックを受け、途上国支援を志した原体験となりました。でも、今回の旅行ではストリ

    ートチルドレンは一人もみませんでした(実際には見えにくいだけでストリートチルドレン はいまだ存在するようです)。 それは良いこですが、なぜか心の奥でざらつきが残りました。なんでだろう。。。自分が敵 だと思って戦っていた相手が、誰かに倒されてしまった感覚。ちょっと違う。。。ドン・キホ ーテのように自分は風車と戦っていたのでは、ということに気づかされてショックを受け ている感覚に近い気がしました。 もちろん、ストリートチルドレンが大量にいたというのは厳然たる事実で、解決するべき 問題であり、「風車」とは違います。でも、自分はベトナムのストリートチルドレンという問 題に対して向き合ったことはなく(国際協力の仕事をしてからは、中南米の最貧国で学校 を建てたり、道路を作るための事務作業をしていました)、ストリートチルドレンに出会っ たショックから、途上国の貧困や、南北格差など、自分が戦うべき大きな理想を作り上げ ており、その理想を支えていた問題が忽然と消えてしまい、理想が夢想だったのではとい う思いが生じてきたことによる心のざわめきな気がします。 ただ同時に、20年以上前の記憶を、当時と同じ場所にいながら思い返すという行為は、 甘美でノスタルジックな感覚に浸れ、幸せな時間でもありました。 写真出所: Vanity Fair “Mark Edward Harris’s Photographs of Vietnam, 40 Years After the War” 1992年ハノイでの写真
  21. © For Information, Contact Yuritaco(ユリタコ) さいごに © For Information, Contact

    Yuritaco(ユリタコ) 内向的・視覚優位の人にとって、 自転車旅行はシネマティックな体験でとても楽しいです それだけでなく、越境体験を通じて、 自身の価値観や思い込みを気づかされるような経験ができます そして、疲労や孤独感の中で 過去の記憶やそのとき感じたことが、 走馬灯のように喚起され、まさにトリップできます 書を持って、自転車で町に出よう